それでは本編どうぞ!!
「ついにやってきましたわ!大洗女子学園!!!」
4月、彼女は大洗女子学園の学園艦に降り立っていた。
「ええと、まずは事務室に行けと書類に書かれておりましたが…………こっちですの?」
ここ大洗女子学園は中高一貫校であるため、引っ越してきた凪沙は高校一年生ではあるがあくまで転入となる。そのため周囲には誰もおらず、ただ一人でこの巨大な学園艦の中を探し回らねばならなかった。
………………が、不幸なことに彼女はどうしようも無いほどの
方向音痴であった。
「…………………ここ、どこですの?」
数十分後、凪沙は一人首を傾げていた。彼女の前には錆びた鉄条網で封鎖された通路が。つまり…………
見事に、船底の方まで迷い込んでいた。
「とりあえず、この奥が怪しいですわ!」
そして無鉄砲にも、その先の“無法地帯”へと突き進もうとする。そんな所に入ったら最後、おそらく二度と上には戻れないだろうが、しかし彼女はそのままポケットから出したニッパーを前に突き出し—————————
「………………やめときなよ、その先は行かない方がいい」
と、寸前で掛かる声。振り向くと、後ろには一人の生徒が。
「これはこれは!お初にお目に掛かりますわ!わたくしは天草凪沙ですの、貴女は?」
途端に、にっこりと笑顔になった凪沙がその生徒に駆け寄り、手を取ってブンブン振る。生徒はその唐突な接近にやや怯んでしまった。
「うわっ…………いきなり来るね、君」
「だってわたくしに話しかけてくださった方に、挨拶をするのは当然のことでしょう?」
至極当然のようにそう言い切る凪沙。生徒は、それを不思議そうに、可笑しそうに見ていたが、やがて微笑した。
「………私は島原ななせ。行こう、ここは長居する所じゃない」
そう言って、ななせはくるりとUターンして歩き出す。凪沙も無論ですわ!とそれに続いた。迷いなく進むななせに、凪沙は感服したように言う。
「凄いですわね!こんな迷路みたいな所でスイスイと進めるなんて、尊敬いたしますわ!」
「……………まぁ、普通科の人たちは船底の辺りには来ないからね。………でも、そうするとなぜ君はこんな所にいたんだい?」
「分かりませんわ!」
即答。ななせは頭痛を抑えるかのように頭を指で押した。典型的な迷子だが、それでもこんな奥まで潜り込んでしまう重症者は珍しい。………とすると?
「うーん…………あ、成る程もしかして君、転入生の子?」
「そうですわ。中高一貫校ですので珍しいでしょうけれど」
そうか………と納得した様子のななせ。やがて、二人は市街地のある最上甲板へと戻ってきた。
「学校まで案内するよ。………でもこの格好だと目立つな」
「??………そう言えば、貴女の制服はちょっと違いますわね。白くて可愛いですわ!」
ど直球で褒められ、ななせの顔も若干緩む。そして帽子の位置を整えつつ、この学校についてのいくつかのことを教えた。
「これは船舶科の制服だよ、そして君が着ているのは普通科。それ以外にもいくつか科があって………でもまぁ、普通は他学科の人とはあんまり関わりはないかな」
「そうなんですの?」
「うん。私の所の船舶科は、この学園艦を動かしたり、当直したりしてほとんど船内か艦橋……ホラ、あそこに見える大きい塔。あそこにいるからね、物理的に会う機会が少ないんだ」
「ふむふむ、成る程分かりましたわ!でも、貴女とは会えましたわ!!」
………相変わらずの直球ストレート。だが、流石にもう慣れたのか、ななせは微笑して頷くのみ。そして、しばらく市街を歩いた後、大洗女子学園の校舎が見えてきた。
「……………あっ!すっかり忘れていましたの!!少しお尋ねしたいのですけれど………………」
校門前で、突然大声をあげる凪沙。ななせもこれには驚いて目を丸くしている。
「………びっくりした。どうしたの?」
「——————この学校の戦車道チームは、何処で活動していますの?」
「………戦車道??うーん、この学校は
—————————確か、やってなかったと思うけど」
………………………………………??
「??????????」
「やっているって聞いたことないし、そもそもこの学校のクラブ活動自体そこまで盛んじゃないし…………って、大丈—————————」
「————————説明を!!!!要求致しますわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ドビュン、と、鉄砲玉か何かのようにその場を走り去る凪沙。校門内へ吶喊していくその背中を呆気に取られて見送るななせは、しかし彼女がとんでもない方向へ向かっているのを見て慌てて追いかける。
「ちょっ、天草さん違うよ、そっちは崖だよ——————————!!」
「——————ひええええええ!!お、落ちますわ、落ちてしまいますわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
…………と、ともかくも、凪沙はまず一人目の友人を手に入れたのだった!!代わりに、彼女の目的を根底から揺るがしかねない重大事実をも知ってしまった訳だが…………………
※
「たのもう、ですわ!!」
ドパン!と重厚な扉を勢いよく開き、そのままズカズカと中に入り込む凪沙。その後ろには、ゲンナリした顔のななせ。校門からここまで辿り着くのに何度暴走する凪沙を止めたことか!最上甲板に来るまでの時とは大違いだった。
「んな!?何だお前は!!ここは神聖なる生徒会長の部屋だぞっ!」
慌てて振り返った片眼鏡の黒髪のっぽが喚くが、一目でそれが小物と判断した凪沙は、当然の如く無視。ただ真っ直ぐに、中央の巨大なデスクの前に突き進み、バンッ!と両手で叩いた。
「貴女がここの生徒会長さんですの?!十分なご説明願いますわ!!」
いきなりそんな事を言われ、目をぱちくりさせる生徒会長角谷杏。が、やがて呆れたような感心したかのようにポツリと言った。
「…………いやー、最近のワカモノは元気だねぇー」
「会長!叩き出しましょうこんな無礼なやつ!!」
凪沙の背後では、未だ片眼鏡が騒ぎ喚いているが、それを黒っぽい茶髪の巨乳が慰める。
「まぁまぁ桃ちゃん、お話ぐらいは聞いてあげても良いんじゃない?」
「桃ちゃん言うな!」
………妙な夫婦漫才は、しかし凪沙の眼中には全く入らない。
「まぁいいや、それでー?ご説明って言っても、一体何のことやら具体的に言ってくんないと分からないよー?」
「無論、
「「「ッ?!」」」
堂々と胸を張って言い放つ凪沙。その声に、何故かとんでもない衝撃を受けたように生徒会の三人は硬直した。
「何故、この学校に戦車道がないんですの?!それについて貴女の見解と対応策をお聞かせ願——————「……あるよー、戦車道」?!」
干し芋をかじりながら、しかしやや視線を鋭くした角谷が遮るように呟いた。それを聞き、部屋の隅で居心地悪そうにしていたななせが驚いたように言った。
「…………私の知る限り、この学校では戦車道なんてやってなかった筈だけど。それ、本当なの?」
対し角谷はああ、と干し芋を振りつつ言い直した。
「正確には“これから始める”かなー?でももうチーム作るのは決まってる訳だし、まぁどっちでもいっかなーって思ってさー」
「…………
掴み所のない角谷の論法に、毒気を抜かれたようにななせはポツリとこぼし、沈黙した。
…………が、しかしもう一人の方は沈黙なぞするはずがなかった。
「ほ、本当ですの?!それは大変喜ばしいことですわ!!素晴らしい大英断ですことよ生徒会長さん!…………?でもそれでは何故今年になって急に………」
「あー、なんかね、今戦車道始めると国からお金いっぱい貰えるんだー。ウチも色々厳しいしさ、まぁやるだけで貰えるならやったほうがいいじゃん?」
「成る程!分かりましたわ!!では最初の集いからぜひわたくしも参加させて頂きますわ!!」
大はしゃぎする凪沙。その様子に、角谷も嬉しそうに頬を緩める。…………が何故だろう、ななせにはそれが、笑顔というよりむしろ何かいたたまれないかのような、どこかそんな顔に————————
「ありがとね、……………えーっと?」
「おっと、わたくしとしたことが大変失礼致しましたわ。わたくしは天草凪沙、本日よりこの大洗女子学園普通科に転入してきた高校一年生ですわ!!」
「…………高等部船舶科一年、島原ななせ。………でも、私は………………」
戦車道はやらないけど……と続けようとしたななせ。船舶科だし、特に興味もないし。常に無常感を抱えるななせにとっては、それは当たり前の選択であった。
が
「まあ!島原さん貴女わたくしと同じ学年の方でしたのね!!これからもよろしくお願い致しますわ、
「え、ああうん。こちらこそよろしく…………」
「むふー!これで乗員一人確保ですわ!!あと三人、頑張って探しますわよーーー!!」
「…………っく、あはは!やっぱり君面白いね。………うん、分かったよ
どこまでも全力で突き進む凪沙の様子に、遂に笑い出すななせ。そして吹っ切れたようにすっきりとした笑顔で、にっこりと承諾する。これまであらゆるものに感じていた無常感は、まるで溶かされていくかのように消えていた。
元々如何なるものへの興味もなく、ただ惰性の日々を過ごしてきた島原ななせの人生が、
一人のとんでもないお嬢様の手によって、変わっていく。
そんな気が、した————————
「勿論ですわ!……………だけど、ありがとう」
やや顔を赤くしてそう小さく言う凪沙。その仕草にまた、ななせはくすりと笑ってしまう。
「わっ、笑わないでくださいまし!!」
「ふふふ、ごめんごめん………それじゃ、私は船舶科の仕事があるから行くね」
「分かりましたわ!」
そう言って、ななせは軽く手を振り生徒会室から去っていった。残る凪沙も、しばらくの間手を振り続けていた………が
「…………いやぁ、最近のワカモノは………いいねー青春だねー」
角谷がニヤニヤと言い、片眼鏡——河嶋桃は顔を真っ赤にして口をパクパクさせ、巨乳もとい小山柚子はなんとも形容し難い顔で微笑んでいた。
「んなッ………何ですの!その変なニヤニヤ顔は!!………とっ、兎に角わたくしも失礼させて頂きますわ!事務室に行かなければならないんですの!!」
「事務室ー?………あー、転入の手続きとかかー。別にそこ行かなくてもいーよー、ここでやったげる」
良いものを見た、と言わんばかりに美味そうに干し芋をかじっていた角谷は、手をひらひらさせこともなげに言った。それを聞き、不満げだった凪沙の顔はあっさり緩む。
「え!本当ですの?!まことにありがとう存じますわ!!」
「うんうん、初の戦車道やってくれる人だからねー。こんぐらいどーって事ないない」
「処理するのは私ですけどね………でも良かった、転入生で戦車道に興味ある人が入ってきてくれて。うん、じゃあ天草さんその書類、見せてくれるかな?」
苦笑いしていた小山は、しかししみじみとそう言う。そして凪沙から転入関連の書類を受け取り、調べ始めた。
「………うん、必要なのは揃っているから大丈夫です。それじゃあ、クラスとか出席番号とかを調べておくから、明日の朝始業前にまたこの生徒会室に来てくれるかな?」
「かしこまりましたわ!それではよろしくお願い致しますわ!!」
そう言って、凪沙は軽い足取りで部屋を出ていく。それをどこか嬉しそうに見送る生徒会三人。
と
「…………あ!すっかり忘れていましたわ!!……………あの、一つお許し頂きたい事がございまして……………」
「??んー?どったの?」
「……………実はまだ
扉から顔だけ出し、心底申し訳なさそうに言い残して、瞬間脱兎の如く走り去る凪沙。だが、生徒会一同にとってはそんな事どうでも良くなるくらい、今の凪沙の言葉が衝撃的すぎた。
「?!えっ、ちょっ、天草ちゃーーーん?!わたくしの戦車って、どう言う事—————————????」
必死に尋ねる角谷。………が、もはや遙か彼方に去ってしまった凪沙には聞こえない。奴はとんでもない爆弾を残して行きました………………
放心状態の角谷は、しばらく会長席で惚けていた。が、しかしすぐにくつくつと笑い出した。
「……………いやぁ、すごいねぇ。戦車持ってるって………本当なら、これは……………………」
——————本当に、出来るのかもしれない。
………………そして、運命の歯車が揃い始める。その先にあるのは、果たして—————————?
なんかどんどん凪沙の口調が某薔薇尻さんみたくなっていく不思議。なんでだろう?
ところで船舶科の制服可愛いですよね!ね!!ね!!!サメさんチームや劇中に出てた船舶科モブ、あれは可愛い。やっぱ海の制服はいいな!
お気に入りとか感想書いてくれた方及び評価してくださった神様ありがとうございます土下座。これで執筆モチベが超回復しましたがんばるぞ!
…………とは言うものの、次話は例によって未定。一応今のところは1日1話を目標に頑張るつもりで調整し検討していく方向なのですが………
それでは今後ともよろしくお願い致しますわ!!