それでは、本編ですわ!
「結局間に合わなかったじゃないか天草ーーーー!!」
キレ散らかす河嶋。その目の前で
華麗に土下座する、凪沙………………………
「本当に、申し訳ございませんですの!!!!」
姿勢から何まで完璧な土下座は、しかしお嬢様がやるとかなり滑稽であった。さらに、横にいる角谷がとりなす様に言う。
「まーまー。今日は練習試合だったんだし良いじゃん。……………にしてもいやー驚いたよ、まさかこんなとんでもない代物が天草ちゃんの戦車だったなんてねー」
どこか茶化す様に笑う角谷。しかし、その目は笑っておらず、むしろ何故か恐怖しているかの様な…………
「………確かに、戦車はすごい、いやハッキリ言ってヤバい物であり、そこは感謝するべきなのだが………しかしそれでも遅刻は許さん!いいか次の
「え?!公式戦出るんですか?」
と、そこにぼろぼろになったIV号チームの面々がやってくる。その中央にいたみほは、意外なことを聞いたせいかかなり驚いた様子だった。
「そーだよー。あ、これ聖グロさんからのプレゼント」
例の如く干し芋をかじりながら、角谷がのんびり答えた。それと同時にみほに渡したのは……………
「紅茶の詰め合わせ?」
「すごいです!聖グロは好敵手と認めた相手にしか紅茶を渡さないんですよ!」
目を輝かせ優花里が説明した。それを聞き、一同感心する。
「そうなんだぁ」
「優雅で素晴らしいですわ!」
「はい!まさに“昨日の敵は今日の友”ですね!」
………みんなではしゃいでいると、これもいつもの如く角谷が嫌な現実を告げる。
「あ、負けちゃったからあんこう踊りねー。————勿論、こーいうのは連帯責任だよー?」
「「「「え」」」」
※
「も、もはやこれまでですわ…………………」
ドサリ、とついに凪沙は倒れた。そこに、慌てて駆け寄るななせ。
「ちょ、しっかり凪沙!」
「いや、しっかりとか無理ですわあんなの公開処刑でしょう大体なんですのあのヤバい踊りはっていうか踊りはいいんですけどあの服考えた奴は性犯罪者予備軍のど変態ですわもう死ぬしかありませんわーーーーーーーー!!!!」
「な、凪沙ーーーーーー!」
と、そこに
「あっはっは!まったくホンマおもろいなぁ凪沙はんは」
「ちょっと笑いすぎっすよ、薩摩センパイ!」
「そうっすよー!なぎちゃんさん私らの身代わりにやってくれたんすよ?」
やって来たのは、腹を抱えて大笑いする一人の女子生徒と、それを咎める二人の生徒だった。そう、彼女たちこそが
————凪沙の、新たな仲間たちであった!
「うーむたしかにそうやな、ホンマすまへんなぁ凪沙ハン許したってや…………………くくくでも御免な笑うてしまうのは堪忍やあはははは!」
………先頭で、謝りながらも笑うのをやめないかなりの畜生。その名は薩摩茜と言い、
新た加入した、E100の砲手である。
「うわー、ほんとドン引きっすセンパイ………」
「やっべー、マジ鬼畜っすね薩摩センパイ………」
そして、その茜を、やべぇ奴であるかの様にドン引きしている二人は、日向皐月と日向芽衣。共に二年次の双子であり、二人ともE100の装填手を務める。
………………で、凪沙はどうやってこの少女達を
まず、茜とは——————学園艦の、最上甲板で出会った。
……………………学園艦から落っこちかけながら。
「くくくくく、まったく凪沙はんは会った時からおもろいもんなあ。あん時もあんさんとんでもない事になっとったなぁ。うちもまさか船から落っこちかけた人見たの初めてやったで〜」
茜はそう思い返しながらまだ苦しそうに笑っている。それを、恨みがましい目で見ながら凪沙は呟いた。
「……………確かにわたくしが
「いやー、うちの趣味やからなぁ。凧揚げおもろいで〜?今度一緒にやろな?」
け、結構ですわ………とゲンナリして遠慮する凪沙。だが、断られたというのにそれすらも面白そうな茜に、ようやく凪沙も少しずつ笑顔になる。
「まぁ、ですがメンバーに加わって頂いたのは…………感謝、していますわ」
「あっはっは!別にかまへんよ、うちもまぁ戦車に興味あったし、こーんなおもろい子に誘われて断るなんて事せぇへんよ!」
どうにも胡散臭い似非関西弁も、しかし仲間となれば頼もし………頼もしい?
「騙されちゃダメっすよ!この先輩の胡散臭さはヤバいっす!」
「そうっすよ!大体商業科なんて金儲けの事しか頭に無いヤバい奴の巣窟なんすからー!」
「…………うーん、あんたらの方が酷ない?」
後輩っぽい口調の双子。こちらとは……………いや、こちらとも凪沙の遭難原因での邂逅であった。
「なぎちゃんさん、とんでも無い天然さんなんすから、くれぐれも詐欺とかに引っかかっちゃダメっすよー?」
「そうそう、こーいう胡散臭い輩が一番危ないっすからねー」
「うがー!わたくしは天然さんなんかではありませんわ!」
………艦内で遭難中、空腹で死にかけていた所を凪沙は双子に救われたのだった。なんでも、二人は艦内の一画で完全自給自足生活をしていたといい、そこで全て手作りのカレーを恵んで貰ったのだった。恐るべき事に、器(アルミ製)すらも手作り溶鉱炉で作ってしまったのだという。
彼女らは農業科だというが、しかしそれにしたってとんでもない超スキルの持ち主である………その時の縁で、凪沙は頭が地面にめり込むほど頼み込み二人に装填手になって貰ったのだった。
二人曰く、「いい運動ー」だというが…………
「艦内で遭難するのはとんでもない天然さんだけっすよー。だ、か、ら!私らが付き添って!」
「例え火の中水の中に迷い込んでも、生き抜けるようサポートしてあげるっす!」
「良かったね凪沙!これで野垂れ死には免れたよ!」
「う、嬉しいような悲しいようなですわ………………」
………………五人で談笑していると、そこへ数人の人影が。
「——————おや?奇遇ですわね」
その先頭にいたのはダージリン。いつもの如くアッサムとオレンジペコを引き連れ、
「………?どちら様ですの?」
…………まぁ、そりゃそうだ。凪沙らはタッチの差で試合に間に合わず、結局ダージリンらと会っていないのだから。訝しげな凪沙を、実に興味深そうに眺めつつダージリンは自己紹介する。
「あら、これは失礼。私はダージリン、聖グロリアーナ女学院戦車道隊長を拝命しているわ」
「あら!御丁寧に有難うございますわ!わたくしは————」
「天草凪沙さん、ですわね?存じておりますわ。—————貴女の戦車、実に興味深いですわ。…………………ねぇ、貴女、聖グロに来る気はない?」
————————?!怪しく微笑みながら、ダージリンがとんでもない事を言い出す。ななせは思わず目を剥き抗議しようとしたが、それより先に凪沙がにっこり笑って答えた。
「………そこまで言って頂けるとはまことに光栄ですわ!しかし、わたくしは一度生やした根を引っこ抜くつもりは毛頭ございませんの。…………申し訳ありませんが、その話をお引き受けすることは出来ませんわ」
丁寧に、しかしキッパリと断る凪沙。だが、ダージリンは特に気にした様子もなく微笑んで了承した。
「それは残念。貴女の所作といい、
そして、聖グロノーブルシスターズは去っていく。そうだ、とダージリンは思い出したようにくるりと振り返り、凪沙の手にあるモノを握らせた。
「今紅茶を切らしてしまっているの。その代わり、これを受け取って?」
……………ダージリンらが再び去った後、掌を見てみると
「………………飴?」
数粒の飴玉が。一粒食べてみると…………………おいしい紅茶味。
「妙なものを頂いちゃいましたわ!」
「…………妙な人だったなぁ」
「うーん…………これが紅茶っすかー」
「今度うちの畑でも育ててみるっすー」
みんなで飴玉を味わう。………………その輪から少し離れ、一人茜だけは
「…………ふーむ、アレが
低く、小さく何かを呟いていた————————
※
——————そして、少々時が流れ
5月末。埼玉スーパーアリーナにて、第63回戦車道全国高校生大会の組み合わせ抽選会が開催された。
大洗勢はそろって現地入りし、会場内でその時を待っていた。
『—————大洗女子学園、2番!』
おおっ……………と名も知れぬ弱小校にしては大きすぎるざわめきが起こる。まぁしかし当然といえば当然だ。なんせ
「………あのE100を持っているって言う所か」
「しかも隊長はあの西住流本家の娘らしいぞ」
「確かに今の戦車道じゃその二つあれば良いところまで行くんじゃないのか?」
………まず先日の練習試合でお披露目されたE100が映像と共に全国に拡散。そして同時にそこの隊長が西住みほらしいという情報もそれに付け足され、今や大洗はちょっとしたダークホース扱いであった。
…………さらに、その相手が相手であった。
「一回戦の相手は………なんだ知破単か」
「突撃馬鹿相手とか、E100前に押し出しときゃ余裕で勝てるだろ」
「かー、つまんね」
………クソ雑魚扱いの古豪、知破単なのだから。
「——————知破単?どこそれ」
大洗の席で、沙織が首を傾げる様に尋ねるも、やはり事情を知っている優花里やみほは苦笑いするのみ。
「あー………戦車道における結構な古株なんですが、その戦法が突撃だけという妙な学校でして……………」
「練度も高いし、士気も低く無いんだけど…………」
それを聞き、なーんだと沙織は安堵する。それなら勝てそうじゃん!………が、みほはそこまで楽観的には考えられなかった。
「うーん………たしかに評価は低いけど、でも——————」
と
『———9番、黒森峰!』
ワァァァァァァァァァァァ!!!!と更に巨大なざわめきがそれをかき消した。
「ぎゃあああああああ!!」
「ちょっ、アリサ副隊長なんで10番引いたんですか!?」
「私のせい?!」
…………見ると、最前列で陣取っていたサンダース大付属の生徒らが、阿鼻叫喚の大騒ぎをしていた。それは恐慌状態と言ってよく、実に………………見苦しい—————————
「Shut up!!!!」
————が、それを打ち消す一つの叱責。サンダース大付属高の隊長、ケイだ。普段のフレンドリーな表情など面影もなく、不甲斐ない隊員達を冷徹に睨みつける。が、すぐにくるりと振り向き
ステージ上を見つめる。そこには……………
「ヘイ、まほ!お互い頑張りましょう?」
——————天下の、西住まほが。表情をいつものにこやかなものに戻したケイは、手を振って友好的に挨拶した。対しまほは黙って会釈をし、すたすたと去っていく。
「………な、なんだよあれ。私らサンダースなんて眼中にも無いってか」
「ふざけんな…………そもそも、お前らだって去年負けてるじゃないか!」
「そうだ、そうだ!黒森峰は———————
——————もう、王ではない。
「勝つぞ、勝ってやるぞ!!————Hooray!!!!」
「「「「Hooray!!!!」」」」
……………………その様子を、実に下らなそうに眺めた後、一人の少女が席を立った。
「……………行くぞ、西」
「え、あっ、はい!」
まったく、くだらない。何が勝利だ、そんな物は戦車道にあらず。
「勝手にやっていろ、愚物どもが。しかし——————」
私は、我が校だけは、ひたすらに
道を、歩もうぞ。
……………小さく、しかししっかりと呟いたその少女。
彼女の名は———————辻つつじ。
知破単学園の、戦車道隊長である。
※
かくして、トーナメント表が埋まる。
順に—————————
第一試合 新潟ビゲン高校 対 ヨーグルト学園
第二試合 大洗女子学園 対 知破単学園
第三試合 ポンプル高校 対 プラウダ高校
第四試合 ワッフル高校 対 コアラの森学園
第五試合 黒森峰女学園 対 サンダース大付属高校
第六試合 アンツィオ高校 対 マジノ女学院
第七試合 BC自由学園 対 聖グロリアーナ女学院
第八試合 青師団高校 対 継続高校
……………優勝旗を掴むのは、どこか。黒森峰?プラウダ?それとも—————
「はっ!関係ありませんわ!!わたくしは、わたくしの戦いをするだけなのですわ!!」
—————ダークホースは不敵に笑う。
第63回戦車道全国高校生大会、開幕
…………やや短くなった。き、気にしないでね(冷や汗)
新たなメンバー!!似非関西弁に、妙な双子に……………うん、流石に登場人物紹介のページ作った方が良いな。そもそも私自身がこんがらがりつつあるし………
そしてぇぇぇぇ!!トーナメント表発表!!すんげぇ改変しましたしかし後悔はない!!俺はこれが見たいんじゃあ!!
第一回戦、対知破単学園…………なにやら隊長の人物が出てますが……………一応完全なオリキャラではないですよ。設定等はオリジナルにしますが。
次回?登場人物紹介をぶっこむか、もしくは本編であれば戦車道カフェとか色々……です!