ガールズ&パンツァー 超重戦車烈伝   作:信濃氷海

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遅くなり申したで候。

それでは本編どうぞですの!


8. 喫茶対談

 抽選会が終わって、凪沙とななせはアリーナ近くの戦車道喫茶ルクレールへと来ていた。茜や皐月、芽衣はそれぞれ用事があるとか紅茶の種を仕入れにとか言って離脱しており、いまは凪沙とななせの二人だけだった。

 

「着きましたわ!」

 

「うーん………なんてマニアックな喫茶……………」

 

 店の前で、凪沙が嬉しそうに言い、ななせは感心したような呆れたような呟きを漏らす。しかも、店内はほぼ満員………………やっぱりみんな戦車好きなんだなぁと心中で考えていたら

 

 

 

 

 

「申し訳ありません!只今全席満席でして…………相席であればご案内できますが」

 

「構いませんことよ!」

 

「うん、相席で大丈夫です」

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼致しますわ……………ん?」

 

「ええ、構わない………………わ……………………」

 

 

 

 

 

「あ?!貴女は!?」

 

「お、大洗の制服ーーーー?!」

 

 

 

 

 

 

 

「「……………………チェンジ!!!!」」

 

「いや、出来ないから……………………」

 

 

 テーブル席で向かい合い、素っ頓狂に叫ぶ凪沙と()()()()()

 

 側でそれを眺めながら、頭を押さえ顔をしかめるななせの声は、しかし虚しく宙へ消えていった……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ゴホン、取り敢えずお初にお目に掛かりますわ!わたくし大洗女子学園一年の天草凪沙と申しますの!!以後よろしくお願い致しますわ!!!」

 

「私は島原ななせ。同じく大洗の一年」

 

 人差し指を突きつけ合っていた二人だが、しかし凪沙の方はすぐに再稼働を果たし、いつもの如く大声でハッキリと元気よく華麗に挨拶した。そしてななせも簡潔にだが続けて挨拶。

 

 それを酢を飲んだよかのような妙な表情で見つめていたエリカは、しかしなんと言って良いのか分からず沈黙を続ける。

 

 ………………次に声を発したのは、思いもよらぬ人物だった。

 

「………こちらこそ宜しく。私は黒森峰女学園三年西住まほだ。……………妹が世話になっている」

 

「隊長?!こんな子たちにそんな………………」

 

「エリカ………お前の気持ちも分かるが、しかし挨拶すら返さないというのは……………」

 

 困ったように少し首を傾げ、まほがエリカの方を見る。さしものエリカも敬愛する隊長にそう言われてしまうとどうにも弱い。うぐっ、とほおを引きつらせ、渋々凪沙に挨拶を返した。

 

「…………同じく黒森峰女学園二年、逸見エリカよ。…………………まぁ、戦車道人口が増えるのは良いことだし、歓迎してあげない事もないわ!」

 

 ………が、それでも少々刺々しくなるのは仕方がない。仕方がないのだが、その言い方はまるで———————

 

 

「…………妙なツンデレさんですの?でも、ぶっちゃけ少々気色悪—————モガッ!?」

 

「————それはどうも、逸見先輩。しかし良いんですか?私たちは…………」

 

 遠慮もなくぶっちゃけようとした凪沙の口をとっさに塞ぎ、ななせが誤魔化すように礼を言う。が、当のななせ自身()()()事情を断片的ながら聞いていたため、強硬派筆頭(と思われる)エリカが意外と友好的な事に疑問を抱いたのだが。

 

 しかしそれを聞くと、エリカは全ての表情を消し去り能面のような顔で凪沙たちを見た。まるで、感情を殺しているかのように———————

 

「…………フン、関係ないわそんな事。勿論あの子(西住みほ)の事は許せないし、それに擦り寄ってあわよくばを狙う能無しどもは大嫌いよ。……………でも、貴女たちは違うじゃない。自分で戦車(E100)を買うくらい熱意に溢れているのなら、戦車道をする権利は十分あるわ」

 

「…………だからなんで皆さんそんな事ご存知なんです?」

 

 淡々と言うエリカの理屈に、しかしアレは実はわたくしの勘違いだったんですわあははとも言えず、仕方なしに情報の漏洩について仏頂面で疑問を呈する凪沙。

 

「あら、せんしゃ倶楽部の整備士が雑誌に言いふらしたたわよ。———“大洗のE100はワシが育てた”とか何とか」

 

「あのクソ爺今度あったらマジでぶっ○してやりますわ!!」

 

 キレて青筋を立てながら吠える凪沙。それを慌てて押さえながら、ななせはため息をつく。

 

「な、何なのいきなり………でもそうね、そしたら貴女黒森峰へ来ない?そういう下らない情報漏洩も対処してあげるわよ。なによりE100はもともと私たち黒森峰がレンタルするつもりだったし、整備もまともに出来ない弱小校にいる事はないわ」

 

 どう?悪い話じゃないでしょう?とエリカは当然のように言う。またスカウトかよ………とななせは呆れ、普通に断ろうとした

 

 

 が、それを凪沙に抑えられる。

 

 

「…………くくく、あはは、あーっはっはっは!まったく大笑いですわ、まさに愚劣な勝利至上主義を盲信する輩の傲慢さですこと!—————でも宜しくってよ、そんなお馬鹿さん達にこのわたくしたち大洗が、戦車の性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えて差し上げますわ!!」

 

 おーほっほっほ!!と高笑いしながら、最大限の侮蔑を込めてエリカを睥睨する。………………が、その言い分には少々無理があるだろうとエリカは呟いた。

 

「…………そんなこと言うあんただってE100乗ってるじゃない」

 

 しかし凪沙は動じない。

 

「あら、何もおかしくありませんわ。だって()()()()()()()()()()()()()()。所詮頭ではありません故、貴女がたとは違いますわ」

 

「はぁ?なにそれ、最初から諦めてるとか理解できないわ。聖グロの隊長じゃないけど、鶏口牛後の方が良いに決まってるでしょ」

 

「鶏口牛後!そんなもの結構ですわ。頭空っぽのアホ鳥になるくらいなら、尊敬すべき立派な牛を支えた方が良いに決まっているでしょう?」

 

 無論、いつかは越えてみせますが…………と闘志を燃やし言い放つ凪沙。それを、理解不能のように唖然として眺めていたエリカだが、やがて吐き捨てるように言った。

 

「…………あっそ、なら好きにすれば。例えあんたたちが何か小賢しくやった所で、優勝するのは当然私たちよ!もし…………ま、あり得ないだろうけどあんた達が決勝に来ても即叩き潰してあげるわ」

 

「………無論高々数ヶ月で強豪校に比肩できるなどとは考えておりませんわ。ですが来年、再来年は木っ端微塵にして差し上げますわ!」

 

 案外堅実に答える凪沙。それを見て、まぁ気に食わないがそういう姿勢ならば良かろうとエリカも(不機嫌顔ながら)納得した様子。

 

 

 

 

 と、話が終わったのを見て

 

 

 

 

「………そろそろ注文しよう。ここは私が払うから、天草さんと島原さんも好きに頼んでくれ」

 

 

 

 

 

 メニューをパラパラ見ていたまほがキリッと言った。途端に目を輝かせる凪沙と、えええ……と驚くななせ。そしてエリカは………

 

「ちょ!隊長そんなことしてやる必要ないで—————」

 

「……エリカは嫌か?」

 

「嫌ではありませんとも勿論です隊長!!さぁあんた達とっとと選ぶわよ!」

 

「「ええ…………………」」

 

 それでいいのか黒森峰。まぁともかく、凪沙たちは妙ではあるが楽しい(?)コーヒーブレイクを過ごした。

 

 

 

今回の結果:黒森峰も女子高生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「————それじゃあ困るんだよねー、勝ってもらわないと」

 

 学園艦への帰還途中、送迎船の甲板で角谷は告げる。いつもとは違いどこか本気の混じるその様子に、丁度「出場できるだけで幸せだ」という話をしていた優花里とみほが訝し気に尋ねた。

 

「………出場して戦うだけでもいい経験になります。なにもそこまで勝ちに拘らなくても……………」

 

「いや駄目だ!我々は勝たなくては駄目なんだ!!例え相手がプラウダだろうが黒森峰だろうが、勝たなくては、我々は—————!」

 

 感情を爆発させ、()()を口走りかける河嶋。それを小山が慌てて止め、誤魔化すように角谷が続けた。

 

「まぁ何にせよ次はあの知破単でしょ?西住ちゃんが居ればよゆーよゆー」

 

 じゃ、宜しくねーと手を振り、角谷たちは去っていく。困惑したように黙り込んでしまうみほに、優花里は慌てて言った。

 

「まぁ生徒会なんて普段からあんな感じですよ!それに会長の言う通り知破単相手ならば一回戦は—————」

 

「いや…………多分そこまで甘くない。確かに知破単の評判は悪いけど、いくら相手が弱くとも私たちが強くなるわけじゃ無いから。…………それに、どんな編成で来るか一回戦だから予想しにくいし、もしそれで奇襲突撃されたら……………」

 

 難しそうに考え込むみほを、心配そうに見つめる優花里。やがて、学園艦に到着し二人はまた明日と別れるが……………

 

「……………西住殿の負担を、何とかして減らしたいな……………」

 

 一人の帰り道、その間も優花里は悩んでいた。しかし、負担を減らすと言っても一体どうやって———————

 

 

 

 

 

 

 

「!そうだ!!——————確かレギュレーションでは容認されていたから…………!」

 

 

 

「おー、面白そうなこと考えたみたいねんなぁ。……………うちにもちょぉーーーっと教えて貰えへん?」

 

 

 …………思いついた瞬間、突如現れる謎の影。

 

 

 

 

 

 って言うか、茜だった。

 

 

 

 

 

「?!あ、あなたは一体…………」

 

「んー、うちは商業科三年の薩摩茜っちゅーもんや。これからE100の砲手やることになったんでな、よろしゅーなー………………そんで、なに考えはったん?内容次第では————なんか出来るかもしれへんし、な」

 

 グイグイ詰めてくる茜に、最初は不審そうに警戒していた優花里も段々と慣れてくる。で、まぁ戦車道の先輩ならば相談するのもありか、と考え………

 

「実は…………………………」

 

 内容を聞いた茜は、したり顔で大きく頷く。そして

 

 

 

「なーるほど、な。はっはっはそんな事なら万事うちに任せとき!」

 

 

 

 笑顔で、サムズアップした—————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辻つつじは知破単学園戦車道部隊の隊長である。そして、三年生の彼女にとって次の大会は、事実上最後の試合であった。何故なら、彼女はあらかじめ『夏の大会で引退する』と常日頃より言っていたからだ。

 

 そして、その後継者は……………

 

「お待たせいたしました!辻隊長殿!」

 

 戦車道科の校舎の前で、隊長の証の銀時計を握り締めながら立っていた辻に、不意に声がかけられた。

 

「うむ、概ね時間通りだ。では、行こうか」

 

「はい!」

 

 声を掛けてきた少女、この人物こそ辻の後継者であり、現副隊長の西絹代である。この日、二人は後日に迫る全国大会に備え昼食を兼ねた作戦のすり合わせを行う予定であった。  

 

「隊長殿、車庫にバイクとサイドカーがありますので、少々お待ち………」

 

「いや、歩こう。すぐそこだ」

 

 ……………しばらく歩いていると、向かいからやってくる一両の車。それはやがて二人のそばで止まり、

 

 

「………おやおや、良い御身分だな外食とは」

 

「せ、生徒会長殿……………」

 

 生徒会専用車に乗った彼女は、この知破単学園生徒会長その人である。そして、彼女こそ————

 

 

 

 ———————知破単における戦車道排斥派の、首魁であった。

 

 

 

「………そう言う貴様こそ、その車を乗り回すとは職権濫用ではないのか?」

 

「ハッ!少なくとも万年負け犬共に比べれば実に多大に学園へ貢献しているんだ!これくらいは良かろうよ、なぁ………“突撃馬鹿”殿?」

 

 辻の凍て付く視線も、しかし生徒会長は軽蔑したように眺め返すのみ。“突撃”か“勝利”か、それを巡り長年対立するこの構図(戦車道科対生徒会)は、しかし年々生徒会側へと傾きつつあった。

 

「またぞろコソコソと倉庫から何か出しているようだが、しかし覚えておけ。戦車は貴様の私物ではない、学園の物だ!それを呆気なく馬鹿の一つ覚えで突撃して無駄にするなぞ、断固許されん背信行為だぞ?………まったく、少しは貴様のお父上を見習————」

 

「………行くぞ西」

 

「は、はい!」

 

 もう限界だった。辻は唸るようにそう言い歩き出す。…………何が私物だ、貴様やあの愚物(父親)の方がよほど政治を私物化しているではないか!

 

 背後で未だ何か喚いている生徒会長を無視し、辻は冷たい目で突き進む。突撃こそが我が校の伝統であり、辻にとっての真の“道”だった。勝利や敗北を超越した、それこそが理想の———————

 

 が、ふと立ち止まって傍に必死についてくる西を見る。しかし、だとしても……………

 

「…………福田はいい子だ。大事にしろよ、西」

 

「?…………はぁ、確かにちみっこくて愛嬌のあるいい奴ですが…………」

 

 唐突に妙な事を言い出した辻に、困惑したように答える西。まぁ今はいい、今は……………だが

 

 ——————“道”は、自分で見つけなければ意味がない。例えそれが、突撃でなかったとしても……………………

 

 

 

 

 

 

 

ドォォン!!

 

 

 

 

 

 

 と、その瞬間響き渡る砲声音。音の方向は———————戦車道棟!

 

「行くぞッ」

 

「はい!」

 

 急遽予定を変更し、現場に急行する二人。そこでは………………

 

 

「探せーーー!まだどこかにいるはずだ!」

 

「くそっ、倉庫の中全部見られたぞ!」

 

「艦の外に向かう全ての通路を遮断しろ!」

 

 

 下から上への大騒ぎが起きていた。近くにいた生徒を捕まえて話を聞くと、どうも倉庫において不審者が出たらしい。知破単の制服を着た二人組だったが、戦車道倉庫への入庫時に提示した学生証が先日紛失した物であり、さらに名前を聞くと逃走したため発覚したと言う。

 

 で、現在大捕物の真っ最中なのだが…………

 

「やめろやめろ、無意味だまったく。労力の無駄遣いだやめさせろ」

 

 ため息をついて辻は捜索を止めさせる。そもそもこんな所に忍び込むのなんて戦車道の対戦相手くらいだし、それは連盟に認められた行為でもある。例え捕らえた所で何が出来るわけでもない。

 

「し、しかし我等の()()()を見られてしまいました!」

 

「別に良かろうよ。元々我が校に()()があるのなぞ公然の秘密だっただろうが」

 

 そして、辻は証拠として差し出された一枚の写真を見る。そこには…………

 

 

「…………フン、にしてもスパイとしては落第だな。まったく間抜け共め」

 

 

 

 ………結構バッチリ、優花里と茜が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって、九州は熊本。山麓の盆地一帯を占める西住流本家において…………

 

 

 

「…………まさかこんな事をするとは」

 

 感情のない声が、部屋全体に響き渡った。それを間近で聞き、ぴくりと肩を震わせる西住まほ。彼女の目の前の机には一冊のスポーツ雑誌、そしてそこでは

 

 

 

 大洗女子学園のE100と西住みほが、デカデカと特集されていた。

 

 

 

 

「!……………あの子、は………………」

 

「まほ、無理に庇おうとするのはやめなさい。あの子がこんな馬鹿げた事を選択した以上それ相応の()()をしなくてはならないわ」

 

 

 

 …………そして、その言葉とともに立ち上がる————西住流師範、西住しほ。彼女は眼下で縮こまるまほを睨みながら、

 

 

 

 

 

 

「————————ドイツへの視察が終わり次第、あの子を連れ戻しに行きます」

 

 

 

 

 

 

 

 ——————そう、宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




人物紹介は書けませんでした土下座かわりに本編載せるから許して。

まほさん、原作見てると色々言葉数足りないから誤解されてる気がしますよええ。エリカ?アレ完全に悪役じゃんどこをどう見ても擁護できないし………でも、もし原作が黒森峰視点だったら同じ発言でも色々違ったんだろうなぁ…………

辻つつじさん登場!そして知破単内部での不穏な対立………まぁ万年一回戦負けだからね仕方ないね。父親………?いったいだれなんだろう??

そして次回はいよいよ第一回戦開幕です!!ついにようやくE100初陣です!!

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