とある夏の日に夏祭りに出かけたメカクシ団。
そこでメカクシ団が出会ったのは、なんとキドとカノとセトの知り合いだった!
どうやらその人は三人と同じ孤児院出身みたい。
再会を喜ぶ四人とメカクシ団のひと夏の思い出!

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初めての小説です。
拙い文章ですが、楽しんで頂けると幸いです。


カゲロウデイズ 〜the childhood friend〜

「おいし〜い」

「うん。美味しいね。りんご飴なんて食べたのいつぶりだろう」

「僕も最近食べてなかったなぁ」

 

「ご主人! 次あのおばけ屋敷行きましょう」

「はぁ⁉︎ なんでわざわざ行かなきゃなんねぇんだよ。ってコノハ、お前買いすぎだろ」

「大丈夫。シンタローのもあるよ」

「いや、そういう問題じゃねぇんだよ」

 

 辺りはすっかり暗くなり、星がはっきりと見える時間になった。

 だというのにこんなに賑やかなのはなぜか。それは今日が夏祭りだからだ。

 俺たちも団員全員で来てみたわけだが、どうやらこの祭りはそれなりに人気があるようで、屋台が立ち並ぶこの通りは人で溢れ返っている。すぐにはぐれてしまいそうだが、皆そんなことは気にしてないようだ。

 

「ねぇキド。そろそろ時間じゃない?」

「もうそんな時間っすか。それじゃあそろそろ移動するっすか?」

 不意にカノとセトに声をかけられた。

 時計を見ると時刻は午後八時を廻ろうとしていた。もうすぐ夏祭りのメインディッシュである花火が始まる時間だ。

 ここからだと見えずらいし、見えやすい位置に移動した方が良さそうだ。

 

「だな。おーいお前たち、そろそろ花火始まるから移動するぞ」

「「「は〜い!」」」

 

           *

 

 とりあえず広めの場所に来たが、そこはもう人でいっぱいだった。一応花火は見えそうだが、周りの人にぶつかりそうでヒヤヒヤする。

 

「セト〜、人いっぱいいるよ〜」

「大丈夫っすマリー。俺から離れちゃダメっすよ」

「団長さん、思ってたより混んでますね」

「そうだな。くれぐれも人にぶつからないように……」

 

「「うわぁ⁉︎」」

 

 言ったそばから人にぶつかってしまった。

 とりあえず、謝らないと……。

 

「すみません。ちょっとよそ見してました」

「いえ、私の方こそすみません」

 どうやら相手に怪我はないようだ。幸い俺も無傷だし、一安心だ。

 

 ……ん? ちょっと待て。この声、どこかで聞いたことあるぞ。

 そう思い、俺は顔を上げる。

 そしてその人の顔を見て、俺は驚愕した。

 

「……なな、み……?」

「……え?」

 

 その人……いや、七海も顔を上げ、俺の顔を覗き込んだ。

 すると予想通り、七海もかなり驚いた顔をした。

 数秒の沈黙の後、七海が口を開いた。

「……もしかして、キド?」

「……あぁ、そうだ……」

「ん? キド、どうしたの?」

「どうしたんすか? キド」

 

 不意に後ろからカノとセトが声をかけてきた。

 そして二人も七海を見た後、俺たちと同じ顔をした。

「……え? ……七海?」

「……もしかして、七海っすか?」

「……嘘。……カノ……セトも?」

 

「久しぶり‼︎」

「うわぁ⁉︎」

 

 七海が急に抱きついてきた。相変わらず元気が有り余ってるな。

「七海、ほんと久しぶりっすね」

「うん。二人共、すごい成長したね」

「あれ? 僕は?」

「カノはあんまり変わってないかな〜」

「そんな〜」

「あと二人共、喋り方変わったよね。なんで?」

「いや、まぁ、それは……」

「とにかく色々あったんす」

「ふ〜ん。まぁそういうことにしておこう」

「……なぁ、話についていけないんだが」

 

 しまった。シンタローたちをすっかり置いてけぼりにしてしまっていた。皆ポカンとした顔をしている。

 慌てて七海が口を開く。

「皆にちゃんと説明した方が良くない?」

「そうだな。とりあえず一旦、人がいないところに移動しよう」

「わかった」

 

           *

 

 俺たちはとりあえず、人が少ない木の下に移動した。移動中に花火が上がり始め、皆花火に注目している。

 

「さて、見とれているところ悪いが、互いに自己紹介してもらうぞ」

 俺がそう言うと、皆勝手に自己紹介し始めた。

 おまけに誰かが喋るたびに七海が口を挟んでくるから、かなり時間がかかった。

 特にキサラギとエネの時は長かった。

「なんでモモちゃんがこんなところにいるの⁉︎」だの「何この子⁉︎ スマホの中にいる‼︎ どうなってるの⁉︎」だのうるさかった。

 まあ、気持ちは分からなくもないが……。

 

「……そ、それじゃあ、七海も自己紹介頼む」

「OK! 私は姫島七海。三人とは同じ孤児院出身で、同い年だよ〜。よろしく‼︎」

 七海がそう言うと、皆も「よろしく」と返した。

 

「っていうかまさかあの三人にこんなに友達ができるなんて、当時は私が唯一の友達だったのに……うん! 意外!」

「そ、そこまで言う⁉︎」

 カノはそう言ったが、七海の言ったことは間違ってはない。

 

 当時の俺たちは職員の方々や他の入居者に化け物呼ばわりされていたんだ。七海はそんな俺たちの唯一の友人だった。特にセトとは物心ついた時にはもう仲が良かったらしい。

 もちろん七海は他の部屋に住んでいて、俺たち以外の友達も沢山いたが、毎日のように107号室に遊びに来てくれて、俺たちの心のオアシスになってくれたんだ。

 

「ほらほら〜、喋ってばかりじゃあれでしょ? ちゃんと花火見ないと〜」

「あぁ、そうだな」

「っていうか、一番喋ってるの七海っすよ」

「まぁ、気にしたら負けだよ」

 

           *

 

 あの後俺たちは花火を見ながら七海と喋りまくった。

 あいつはあいつであっという間に全員と仲良くなってるし……。

 

「……へぇ〜、皆もそういう特別な能力あるんだ」

「はい。しかも団長さんたちのおかげでコントロールできるようになったんです」

「あいつらも成長したね〜。昔は全然制御できてなかったのに〜」

「七海って、どこまでこの力のこと知ってるの?」

「当時の三人が知ってるとこまでは知ってるよ。あの三人私には能力のこと話してくれたからね。

 でもその時は能力があるってことと当時の三人が認識出来てた範囲のことしか知らなかったから、皆の話聞いて驚いたことだらけだよ」

 

「七海、俺たちそろそろ帰ろうと思うんだが……」

「あ、もうそんな時間なんだ。じゃあ最後に皆の連絡先教えてよ」

 七海は笑顔でそう言いながら、携帯を取り出した。

 俺たちも携帯を取り出し、七海と連絡先を交換した。

 

「よし、これでいつでも皆と話せるよ」

「うん。またたくさんお話ししようね」

「もちろん! それじゃあ私もそろそろ帰ろうかな」

「おう。それじゃあな」

「ばいば〜い」

 七海はそう言いながら帰っていった。

 

「俺たちも帰るか」

「そうだね〜」

 俺たちもアジトに向け歩き始めた。

 道中も話題は七海のことばかりだった。

 

 ……七海。お前は全然変わってなかったな。

 その明るさもテンションの高さも。

 俺たちは色々あって変わってしまったが、お前は平和に暮らしていたんだな。

 まさかこんなところで再会できるなんて誰も思わなかったよ。

 

 またあの時みたいに、笑い合おうな。

 

           *

 

 ……あいつら、大分変わっていたね。

 もちろんいい意味で。

 当時のあいつらにこのことを教えてあげたら、さぞ驚くだろうな。

 

 ……さて。

 あとは任務を遂行するだけだね。

 あいつらの幸せそうな顔を見れたから、思い残すことは何もないよ。

 

 ……メカクシ団。

 あいつらを笑顔にしてくれてありがとう。

 一応、感謝はしてるよ。

 でも、任務があるからね。

 

 それじゃあ、行きますか。

 

 

 

 

 

 そして私は、拳銃を片手に歩き出した。

 

 

 

 

 



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