英傑召喚師   作:蒼天伍号

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神仏習合と神仏分離の歴史はややこしいから、もしかしたら間違ってるかもしれないっす。
その時は優しく教えてほしいっす。

正直、権現の概念が少し不安。

まあ、勢いで書いていくんで。
よろしく!!(クソデカボイス


同時襲来

手長足長の連携は完璧だった。

 

 

「くそったれ!」

 

悪態を吐きつつ刀を振るう。

バフを上乗せした攻撃に、さしもの奴らも抗いきれない。

 

……のだが、片方を仕留められそうな絶妙なタイミングでもう片方からの援護が飛んでくる。

数合やり合っただけでも、奴ら単体の戦闘能力よりも俺が上なのは分かっている。

しかし、二体の連携は単純な戦闘力を上回るほどの脅威だった。

 

ゆえにこうして攻めきれずにいる。

 

 

「うおっ!?」

 

隙を見せた手長に斬撃を加えようとしたところ、横ばいから足長の回し蹴りが飛んできた。

慌てて飛び退き、なんとか奴の足に取り付けられた刃から逃れる。

 

左手で銃を抜き発砲。

弾切れと同時に、空のマガジンを抜き同じ手で新しいマガジンを膝に立てて素早くリロードする。

 

その間、手長足長は手と足を用いて銃弾全てを捌いていた。

 

 

「埒があかない」

 

余力を残すために、身体に負担が掛からないほどに強化魔法を掛けたにも関わらず、たかが二匹を始末できない。

一方で、ヤコウ、ガシャドクロ、涅槃台を相手にする仲魔の方はすでに壊滅寸前になっていた。

 

「まだか主よ! もう保たないぞ!」

 

「サマナー、我ノ“鎖”ヲ解クガ良イ」

 

オサキの泣き言に加えて、イヌガミから提案が飛んできた。しかしそれは到底承服できるものではない。

 

「これは出し惜しみしてる場合じゃないな……!」

 

意を決して、俺は切り札の一枚を切ることにした。

 

 

敢えて仁王立ちで待機し、手長足長の攻撃を待つ。

 

突然停止した俺に警戒しながらも二体は交互に攻撃を加えてくる。

即ち、刃の付いた長腕と長脚だ。

 

初手に繰り出されたラリアットが当たる寸前に、懐から家で用意していた札を取り出してスイッチを押す。

 

「“テトラカーン”」

 

俺の詠唱(スイッチ)に反応して、瞬時に俺の前面に不可視の膜が張られた。

その表面へと手長のラリアットが直撃。

 

「っ!?」

 

瞬間、刃が弾かれると共に手長の胴体にバッサリと斬り傷が刻まれた。深々と切り開かれた傷からは遅れて夥しい量の鮮血が溢れ出す。

それは手長の攻撃がそのまま自身に跳ね返ったことを意味する。

即ち、物理反射結界である。

 

応じて、ゆっくりと仰け反る手長。しかし、相棒の惨状を見た足長が即座にこちらに回し蹴りを行ってきた。

 

だが、単体の戦闘力はたかが知れている。

 

難なく躱して脚部に斬撃を加えた。

 

「っ!!」

 

片足を両断された足長はバランスを崩して倒れ込む、そこへすかさず飛びかかり、無防備な胸部に鋒を突き立てた。

 

ざくり、と貫通した刃をそのまま上へと引っ張り頭頂部から真っ二つに切り裂いた。

 

足長はビクビクと痙攣してすぐに生き絶える。

俺はすぐに、弱っている手長に近寄り横へ一閃、両腕ごと胴体を斬り裂いた。

 

 

勢い付いた俺はその勢いのままに、仲魔たちが奮闘する場所にまで駆ける。

そこでようやく気付いたが、空の様子がどうもおかしい。よく見れば街並み含めた風景全てが赤黒く歪んでおりここがすでに『異界化』している事実を理解した。

 

だが、そんなのはどうでもいい。

 

見れば仲魔たちは、皆一様にボロボロでオサキの幻術とイヌガミの怒涛の魔法連発で辛うじて身を守っている様子だ。

そして、今まさに無防備なクダの肢体に向けてガシャドクロの巨大な手が振り下ろされようとした。

 

 

「クダ!!!!」

 

強化されたスピードでクダに一直線、その身体を抱え上げて転がるようにその場から離れる。

間一髪、骨の手が地面に叩きつけられアスファルトを粉砕しながらクレーターを作り上げた。

 

「大丈夫か、クダ?」

 

「ン……アア、問題ナイ」

 

抱えたクダに目を向け確認すると、なぜかクダは頬を染めながら視線を背けた。なんなんだ、その反応。

……いやすまん、俺にケモナー趣味はないんだ。

 

ひとまずボロボロなクダにはCOMPに戻るように告げるが。

 

「イヤ、マダ、ヤレル」

 

なんでか妙なやる気を出して大人しく戻ろうとしない。

無理やり戻してもいいが、今後を考えるとやりたくない。

 

どうしたものか。

 

「主よ!! 限界じゃぞ!」

 

怒声のようなオサキの叫び声を受けて、仲魔のピンチを思い出した。おまけに一体抜けたことでいよいよヤバイ戦況になっているんだろう。いや寧ろよく持ち堪えた。

 

とりあえずクダを一旦下ろそうとして、“彼女”の小さな足で首をてしっ! っと叩かれた。

俺が抗議をする前に続けてクダが告げる。

 

「我ヲ、纏エ」

 

「“飯綱法”か? いや、でもアレはーー」

 

「四ノ五ノ言ワズニ、ヤレ」

 

いつになく真剣な声音に、俺もクダの覚悟を感じた。

 

「……分かった」

 

俺は指先に魔力を集中させ、懐から取り出した『白紙の札』へと『飯綱法』の術式を書き込んでいく。

 

 

信濃国は飯綱山に伝わる『飯綱権現』が授けるとされた『飯綱法』。

管狐の別称たる『いづな』を操る術として修験者などを中心に習得されてきた妖術の類だ。

主に戦勝の神として武将を中心に厚く信仰され、江戸時代には高尾山の寺院が徳川の庇護化にも入っているが、飯綱信仰自体は内容が多岐に渡って複雑化している関係で未だに全容は解明されていない。

 

 

まあ、要するに飯綱法は会得した術者が扱う魔法みたいなものである。

 

 

 

「“オン チラチラヤ ソワカ”」

 

真言を唱え、印を結ぶ。術式の書かれた札が輝き燃え尽きて、クダの身体はくるくると俺に巻きついてきた。

やがて、俺の身体と溶け合うようにして馴染んでいく。

 

飯綱法の一つ、『纏』の術だ。

術師が適切に育てることで“七十五匹に増えるとされる”管狐だが、実態はMAGを溜め込むことによる分裂が正しい。つまり、成長した管狐は身体を自在に変化させることができるということ。

 

ならば、溜め込んだMAGをそのままに術者に“纏わせる”ことで強力な補助効果を齎すことも可能なのだ。

対象の能力を上昇させる一種の『礼装』のようなものである。

 

加えて、纏った状態ならば管狐の能力を自分のものとして自由に扱うことも可能となる。

 

要するに、ヒデオ・クダモードという奴だ。

 

 

 

馴染んだクダは、青いオーラのような靄のような形で俺の身体を取り巻いている。

手を握って開く動作を繰り返して確認したが、術は完璧に成功している。正直な話、久々だったので上手くできるか心配だったのだ。

いや、この場合はクダがーー

 

「と、そんなこと考えてる暇はないな」

 

再度、戦闘の中へと狙いを定めて突撃する。

強化魔法に加えてクダからの“ブースト”を受けた脚力は凄まじく、瞬きの間に数十mの距離を跳躍する。

 

その勢いを乗せて、仲魔たちに意識を向けているガシャドクロに大振りの横薙ぎを加えた。

 

「っらぁぁぁぁ!!」

 

どでかい(まと)でしかない頭部、そのこめかみに直撃した刃は頭骨を粉砕しながら横に抜ける。

 

バラバラと骨片を落としながらぐらりと傾くガシャドクロの巨体。

骨の身体が倒れるまでの間に仲魔たちのもとに着地する。

 

着地早々に、オサキが駆け寄ってきた。

 

「遅いぞ!! もう少しで八つ裂きのぺしゃんこにされるところじゃったわ!!」

 

地団駄踏みながらプンスカするオサキはちょっと微笑ましい。

が、着物は破れ肌は幾つもの傷が刻まれており痛ましさの方が大きい。

 

 

俺が増援に来たことで、相手方は様子を伺うことにしたらしく警戒したままジリジリと距離を取っていた。

 

一方、涅槃台だけは楽しそうな笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってくる。

 

「まだ隠し球があったんですか? やれやれ、出し惜しみのお好きな方だ」

 

肩を竦める動作は一見して油断の塊だが、よく観察すればそこに隙などないことは分かる。

また、前回の油断を払拭するように奴の身体からは“大姫のモノと同じ”黒い靄のようなものが立ち昇り異様な魔力量を見せつけてくる。

否が応でも、今回の涅槃台が『本気』であることを思い知らされる。

 

くるり、と回転させた錫杖を構えて涅槃台は続ける。

 

「ガシャドクロ、戻りなさい。傷ついた貴方ではこの先は荷が重い、私とヤコウで殲滅します」

 

「……分カッタ」

 

渋々、といった様子で送還されるガシャドクロ。光に変換された身体は、涅槃台の腰にぶら下がる“小瓶”の中へと仕舞われた。

 

光の収まった小瓶にキュッとコルクを締めた涅槃台は、ゆっくりと腰を落とした。

応じて、奴の背後に控えていたヤコウも隣に並び立つ。

 

「“我が師・テンメイ”より授かった()()、私が幼少の(みぎり)より鍛え続けた()()()()()()()()

存分に味わってもらいましょう」

 

獰猛な笑みを浮かべ、奴は襲いかかってきた。

 

併せて、ヤコウも突撃してくる。

 

 

「オサキは幻術で援護! イヌガミはアギ系で俺の援護を頼む。

前衛は俺一人で十分だ」

 

というか任せられそうにない。

とにかく、二体を仲魔に近寄らせるわけにはいかないので奴らの突撃に合わせるように刀を構えて立ち向かう。

 

と、先行してきたヤコウには『青い炎』を放って足止め。狐火の亜種にあたる“能力”だが、クダモードの俺はあいつの技を自分のものとして扱うことができる。

 

 

「そぅら!」

 

声に反応して視線を向けると、楽しそうな笑顔で涅槃台が錫杖を突き出してくる。

バフに加えて飯綱法による強化を経ても、その速度は目を見張るほどのものだ。

慌てて刀を合わせて攻撃を逸らした。

 

だが、奴は即座に錫杖を横薙ぎにしてきた。

 

「ぐっ!」

 

続け様に技を叩き込んでくる。が、俺でもなんとか対処できる。というよりクダを纏ったことで俺の動きに、クダのサポート……『青い炎』による援護が入る。

 

そのおかげで、涅槃台の達人並みの杖術にも対抗できていた。

 

「ほう、それはもしや“飯綱権現”の授けし妖術……」

 

巧みな杖捌きの最中にも奴は余裕を持った声音で語りかけてくる。こっちは返事もできないほどに切羽詰まってるってのに。

 

やがて、ヤコウを包んでいた青い炎が掻き消された。

と同時にヤコウは、イヌガミ、オサキの方へと方向転換する。

 

「くそっ!」

 

前衛は任せろ、と啖呵を切って早々に突破されるなんて情けなさ過ぎる。

とはいえ、涅槃台の実力は予想以上だ。いっそ惚れ惚れするほどの杖術の腕前に加えて、時折混ぜられる『密教系魔術』による攻撃が地味に痛い。

具体的な術理は不明だが、おそらくは『ハマ系』の術式。

 

それらを巧みに織り交ぜて杖を叩き込んでくる。

 

「ははっ、やはり弱いですなヒデオ殿! 以前に風の噂で聞いた“天使使いのサマナー”としての戦歴、その足元にも及ばぬ体たらくだ!

いったい、何があったというのです? 実力あるサマナーが力を落とすなど、そうそうあることでも無い」

 

「っ、ごちゃごちゃうるせぇ!」

 

奴の杖による攻撃のわずかな隙を狙って、懐から『札』を取り出す。これも家から持ってきた『切り札』の一つ。

そこに書き込まれた術式は『緊縛』を為すモノ。

 

「オン マカ キャロニキャ ソワカ!」

 

スイッチに応じて込められた術が発動する。魔法カテゴリで表すならば『シバブー』に相当する、がその中でも特別“強力”な術式を使っている。なぜならば、涅槃台という“術に長けたサマナー”にも効果を与えるようにするため。

このために、即席で使える他の緊縛術ではなくわざわざ札に書き込む面倒をかけたのだ。

 

「ぬぅ!?」

 

札が燃え尽きると同時に飛び出してきた“魔力の糸”は、目にも止まらぬ速さで涅槃台へと巻き付いた。

そして、全身を締め上げると共に糸から“注連縄”へと姿を変える。

 

「なっ、こ、これは!」

 

日本の神社でも、大きなところではよく見かける注連縄。その意味は“神域への境界を表す”と同時に“立ち入り禁止”を意味することもある。

つまりは“其方と此方の境目”であり、そうであるならば当然、“其方からも”手を出せない。

 

「ちっ……この術式、『菊理姫』の祝詞を混ぜているな?」

 

御明察。

菊理姫は、イザナギ&イザナミの黄泉比良坂での夫婦喧嘩で出てくる女神様だが。この女神様、なんと夫婦喧嘩の仲裁を行なって見事にその場を治めてしまった口上手なのだ。

そのことから、縁結びやらのご利益を司る女神様として厚い信仰を受けていたりする。

一方で、神仏習合の折に白山信仰と融合して『白山権現』の一柱になっていたりもする。

先のスイッチは、白山権現の方の真言(マントラ)だ。

 

まあ、要するに。俺が今回使った術の力は『くくる』ことに定評のある菊理姫の力を、白山権現の方から持ってきたということ。

 

俺が知る中でも上位にある『緊縛術式』の中に、くくる、という概念において強い影響力を有する菊理姫の祝詞を加えることでより強固な“結界”を形成することができる。

 

その結果が今も涅槃台を縛り上げている注連縄である。

 

 

ただ、其方から手出しできないならば、やはり此方からも手出しはできない。

それに、俺程度が作った術式など涅槃台であれば解除することも不可能では無いと予想する。

 

だからこれは時間稼ぎだ。

奴が身動きできない間に、ヤコウを仕留めるための。

 

 

 

仲魔たちの方を見れば、騎乗する馬を操って猛攻を加えてくるヤコウに対し。イヌガミが前衛を務め、その背後で幻術と『呪術』を使って援護するオサキ。

しかし、やはり両名ともに『リミッター』を付けた状態では明らかに力不足。不利な戦況だった。

 

なので考えるまでもなく、すぐさまそちらに駆け寄り、ヤコウの横ばいから斬撃をお見舞いした。

 

「っ!!」

 

クダモードになってからの飛躍的な能力向上に、ヤコウは反応出来ずまともに斬撃を受けた。横っ腹を掻っ捌く一撃。

だが、悪魔はその程度で死にはしない。

 

「小癪ナ!!」

 

すぐに態勢を立て直し、馬の蹄でこちらを攻撃してくる。

それを躱して、再び刀を振るう。

 

しかし、どうもコイツは“手練れ”らしく紙一重の差で躱されそのまま距離を取る。

その間に、こちらもオサキたちと合流した。

 

「おい」

 

「まあ待て、あっさり突破されたのは謝る。だから今はヤコウを片付けることに協力してもらいたい。

いけるな、イヌガミ?」

 

今にも飛びかかってきそうなオサキを宥めながらイヌガミに声をかける。

ところが、どうにも“鎖”が外れかけているらしく。()()()()()()()()()()()()()()()()()敵を睨んでいる。

 

「イヌガミ……おい!」

 

「ン……サマナー、カ。何用ダ?」

 

何度か呼びかけてようやくこちらに気が付いた。その時には表情もいつものなんとも言えないモノに戻っていた。

 

「いや……とにかく、ヤコウに攻勢をかける。魔法で援護できるか?」

 

「無論ダ、ソモソモ、前衛ナド、()()()()デハ無茶ダ」

 

分かってる。だから、お前の“鎖”が外れる前にさっさとケリをつけてしまおう。

 

「……っていうか、レイランたちはまだ着かないのか!?」

 

メールを送ってからかれこれ三十分は経過している。

常人ならいざ知らず。あいつらは『人外』のサマナー連中だ。奴らの拠点たる佐助稲荷からもそう遠くない。

それがこうも遅れているとなるとーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーヒデオたちが涅槃台と交戦する一方、メールを受けて一目散に稲荷神社を発ったレイランたちも『敵と交戦』していた。

 

ヒデオたちがいる『地蔵堂』から北に三㎞ほど。

とある『寺院』の敷地内にある丘の上にて、彼女らは『敵悪魔』と相対していた。

 

 

というのも、メールを受けてから程なく。地蔵堂周囲の『悪魔反応』とは別に、『強大な悪魔反応』が検知されたのだ。それも『涅槃台を上回るほどのエネルギー量』。

 

そのためレイランは、ヒデオたちへの援護として半数のサマナーを地蔵堂に回し。残りを引き連れてそちらの悪魔反応へと向かった。

 

住宅街の只中にある寺院、その裏手にあたる丘には小さな公園があり、奥には木々生い茂る小さな森。その中にある小さな墓標の前にてレイランたちは一体の『悪魔』と相対する。

 

 

「神族級のエネルギー反応……! でも『協会』のデータには無い。新手の『魔神』……?」

 

焦燥するレイランの前には、黒いフードを目深に被った『女』が真っ赤な紅を塗った唇をニヤリと歪ませている。

全身を覆う黒いローブのようなモノからは、『認識阻害』の魔術が感知され、その中から『強力な神族反応』が漏れ出ている。

レイランのGUNPで解析できたのはそこまでだ。

 

それ以上の情報に関してはなぜか『エラー』ばかりが表示されてあてにならない。

 

そしてなにより。

レイランの周囲に倒れる無数のサマナーの『死体』。

この死体が出来上がったのは、レイランたちがこの悪魔と出会って一分もしない内だった。

 

突如として『女』から放たれた『黒い霧』を受けたサマナーたちは尽くが死に絶え、なんとか回避したレイランを除いて部隊は全滅していた。

 

 

率直にデタラメな強さだ。

が、相手が『古き神』ともなれば納得もする。

 

レイランとて、仕事の中で古き神々と戦う機会は腐るほどあった。その尽くを打倒せしめたからこそこうして生きてここにいる。それだけの実力があるにも関わらず、目の前の『悪魔』には“恐怖”すら感じてしまう。

 

「いや……弱気なんてらしくないわよね」

 

しかし、彼女は『葛葉』の末席に名を連ねる者。

人に仇なす悪魔から『民』を守るのが使命であり、命を賭しても果たすべき義務であると心に強く誓っていた。

 

一度、頬を両手で叩いた彼女は一転して戦意を高めて冷静さを取り戻す。

その手には『母から貰った拳銃』と『父から貰った刀』を構える。

遠近双方を間合いとする特殊戦闘技術を会得する彼女の基本スタイルだ。

 

対して、『女』は口元に笑みを浮かべたままに。レイランの構えに応じてゆっくりと“宙に浮遊する”。

そして、ローブの下から()()()()()を滝のように放出した。

 

「っ!!」

 

そのナニカ、の正体に気付いたレイランは思わず眉を顰めた。そして迫る“ソレ”に回避行動を取ろうとして……素通りされた。

 

「え……?」

 

呆気にとられ、すぐに背後に向かった“ソレ”を目で追うと。

地面に倒れ伏した『死体』へと群がるのを見た。

 

黒いナニカ……否、()()()()は複数のグループに分裂してそれぞれに死体へと覆い被さり。

やがて、()()()()へと入り込んだ。

 

「さあ……私の可愛い“娘たち”、()()()()()

 

「っ!!」

 

ねっとりと、肌にベタつくような声で『女』が述べた言葉に、レイランは直感した。

 

そして、その予想通りに()()()()()()()()()()()

 

まるでB級ホラーに出てくるゾンビのように、ゆっくりとぎこちない動きで起き上がる死体たち。その肌は一様に『腐乱』して、腐り落ちた肉体の穴からは“蠅が出入り”している。

 

そんな有様であっても、GUNPのプログラムには『生前の能力値』がはっきりと表示されていた。

あの『女』には一瞬で殺されたものの、レイランが連れてきたサマナーたちはいずれも手練れだった。その全てが一瞬にして敵に回ったことを意味する。

 

「下衆が……!」

 

しかし、この光景を見たレイランが抱いた最初の感情は焦りではなく。こんなことをした『あの悪魔』への激しい怒りだった。

伝説の葛葉一族に属する者としての誇り高い精神が、いかなる窮地をも戦意に変える。

 

 

対し、『女』は自らが『生成』した『動く死体たち』の背後に控えてレイランをニヤニヤと見つめている。

 

その傲慢、驕りにレイランは内心感謝した。

 

同時に襲いかかってこないならば、幾らでもやりようはある。

 

だがまずは。

外道の手に落ちてしまった元同僚を成仏させるところからだ。

 

リクルートスーツの内ポケットから破魔系魔法の込められた『札』を数枚取り出した彼女は、GUNPを操作して二体の悪魔を召喚する。

一体は、いつも頼れる相棒として重用しているオルトロス。

 

もう一体は、()()()()()()()()()に身を包んだ四つ腕の美男子。魔神カテゴリに属する強力な悪魔の一体。

 

その名を『魔神マハーマユリ』。

又の名を『孔雀明王』。

 

「マハーマユリ、彼らを成仏させるわ。協力して」

 

「もちろんですとも、我が主よ」

 

レイランの指示に、彼は快く頷く。

自らを従えるサマナーへと“絶対の忠誠”を誓っているがゆえの反応だ。傍のオルトロスはすでに“屍鬼系に有効なアギ魔法”を準備している。

 

それを確認してレイランも迫る『死体』へと意識を戻した。

 

 

「さあ、行くわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




注連縄は別に拘束具ではないけど。
とある賛否両論漫画に触発されて、つい……。
時間という概念の最小単位が云々……って俺に理解できると思ってるんですかねぇ(半ギレ

ムカついたのでシバブーにしてやった。
パララマでもいいよ。


ところで、コップクラフトってアニメがマジで面白いんだけどみんな知ってた?
二期やってほしいわぁ。ティラナちゃまかわいい。
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