あれは嘘だ!!!!
これが言いたかった。満足、終わり。
……嘘です、すみませんごめんなさい。いや、アレとかコレとか使わなければそこらの中堅と同レベルの弱々ヒデだから、、
-追記-
ちょっとラブコメ臭がする?
きっと気のせいさ!(隙あらばラブコメ投入マン
対神性呪殺魔剣『試製ヒノカグツチ-01
それがこの魔剣の正式名称である。
……いや、厳密には『第十六期奥山流・試製対神呪殺魔剣“火之迦具土”甲一種丙型壱号器』とかいう長ったらしい名前ではあるが。
こっちの名称だと『俺のこと』にもなるからややこしいのだ。
ヒノカグツチ、という名を持つ魔剣というとサマナー界では比較的有名な部類にある。
とはいえ、『誰でも持っているわけではない』のが実情。
というのも、この剣。名前にもある通り『強力な神性特効』を秘めている。神に対して効力を発揮するアイテムというのは古今東西それなりに生み出されているが、その中でもこのヒノカグツチという剣は『ぶっちぎりで最強』の性能を持っている。
……いや、真に最強の性能を持っているのは一部の『傑作』だけだが。
ところで、なぜヒノカグツチがそんな性能持つ剣になっているのかというと。その訳は話せばだいぶ長くなる……なので少し端折って話そう。
まず、ヒノカグツチは日本創世神話に登場する創世神たるイザナギ・イザナミ夫妻の御子である。それも、イザナミの胎から産まれた子どもとしては末子にあたる火の神だ。
……ところが、この神、火を司るがゆえに産まれた時から(物理的に)大炎上しており、そんなのが“アソコ”を通り抜けたがためにイザナミは酷い火傷を負ってしまう。そしてそのまま火傷が悪化してなんと死んでしまうのだ。
これにブチ切れたのが夫たるイザナギ。
徐に十握剣を手に取った彼は、あろうことか自らの息子たるヒノカグツチの首を跳ね飛ばし殺してしまう。
……まあ、この後イザナギは、黄泉の国へと妻を連れ戻しに行ったはいいものの。イザナミの肉体が『腐っていた』のを見て、なんと妻を気味悪がって逃げてしまう。これにはイザナミもキレた。
黄泉の兵隊をけしかけて追跡し、やがてイザナギが大岩で道を塞いだことで夫婦は決別。この時の口論で、人間には『寿命』が出来ましたとさ、という傍迷惑な夫婦喧嘩のお話につながる。
また、この時、口論がヒートアップしていた夫婦を仲裁したのが菊理姫だったりする。
と、以上の神話から分かる通り、ヒノカグツチは創世神殺しを行った稀有な神さまなのである。
海外でも、“古い主神を殺してその身体から世界を作る”といった説話はよく見られるものの、端的に創世神殺しをした神話というのは珍しい。
そして、“奥山の秘術”によってこの創世神殺しの特性のみを抽出して造り出された剣こそが『ヒノカグツチ』というわけだ。
……まあ、俺が奥山から離反している現状からして組織内部の情勢自体は“お察し”な上に、俺自身は“失敗作”なわけだが。
ーーそれでも、涅槃台ごときを殺すには十分過ぎる力だ。
「うおぉぉぉ!!」
『対象』の排除のみに精神を集中。
自らの『半身』たるヒノカグツチと『同調』。
ヒノカグツチの『システム』より導き出される『最適解』へと『動作』を『直結』させる。
自然、振るわれた一太刀は涅槃台の『隙』を突いた一撃となる。
「ぬぅ!?」
奴が咄嗟に泥を操作して作った壁。複雑怪奇に絡み合った『泥』による防御壁に隙間はない、が、即席の壁である以上はどこかしらに存在する『綻び』。
それらを『的確』に突いて容易く壁を焼失させた。
驚愕する涅槃台へと間断なく刃を振るう。
「がっ!!」
バッサリと斬り裂いた胸部、だがコイツがそれくらいで死なないことは知っている。
なので、続け様に剣を振るった。
「小癪な!」
そこへ、瞬時に持ち直した涅槃台は錫杖による巧みな杖術を繰り出し対抗してくる。
やはり、ちょっとやそっとの『戦闘経験』では覆せないほどに熟達した腕前だ……が、それも俺とヒノカグツチによる『計測』には及ばない。
そもそも、奴が“神を纏っている”時点で勝ち目はない。
『解析……50%』
突如、ヒノカグツチの刀身から『機械音声が響く』。
そのことに、否、音声が告げる『解析』という単語に涅槃台はひどく焦りを見せ始めた。
「なんだ……なんなのだソレは!?」
「ヒノカグツチだ」
奴の問いに答えながらも剣を振るう手は止まらない。
「違う! 違う違う!
“ソレ”は
そりゃそうだろうさ。
なにせ、『試作品』だからな。
加えて、“このタイプ”は市場には出回らない。
『奥山』の『悲願』のための『研究』に費やされるだけの存在だからだ。
……それでも、やはり、『正規品』の方が数は少ないし性能も天地の差がある。
どこまでいっても『失敗作』は失敗作だし、『試験用』であることには変わりないのだ。
それでも。
『生きた神殺し』。
『奥山さま』が望んでやまない『最強の神殺し』を造る礎とされた『俺』にはそれ相応の『機能』が備えられている。
『解析完了、対象を
暫くして、再び剣から告げられた『情報』に僅かだが驚いた。
奴が操る泥は『主神』に属する存在だと言うのだ。
あの、ゼウスやオーディンなどと同格と語られては流石に焦ると言うもの。なにより、
……疑問は湧くが、考えるのは後回しだ。
『出力リミッター解除。
呪殺階級“
音声を聞き、刀身にエネルギーが充填されたことを確認した俺は、一際大きな一撃を加えて涅槃台の錫杖を弾き飛ばした。
そして、無防備となった奴へとヒノカグツチを大きく振りかぶる。
「燃えろ、
声に合わせて刀身が一気に燃え上がる。
それをそのまま、涅槃台の肢体へと振り下ろした。
ーーーー
ーー
ー
ーー不意に、昔の記憶が脳裏に浮かび上がった。
アレは、俺が
ーーああ、なるほど。これが“走馬灯”というやつか。
下働きとして労働していた頃、容姿から『尼僧』たちに可愛がれていた頃、それに嫉妬した『男ども』に目をつけられ
そして……テンメイ様に出会い、『力』を授かった頃。
ああ、懐かしい。
“我が怨讐の起源”から“師との出会い”まで……いや、『泥』を賜った頃の記憶も見える。
ーーああ、そうだ、思い出した。
私はーー
ーー私を侮辱した全てを殺す力が欲しかったのだ。
真っ二つに分かれ、炎に包まれながら地に落ちた涅槃台の亡骸を見ながら、『システム』に耳を傾けた。
『対象沈黙……排除に成功しました』
その声にホッと息を吐いた。
……だが、そういう油断によって二回も不覚を取った今日この頃。
念のため周囲を警戒し、スマホの索敵機能もチェックして入念に入念を重ねて。
敵がいないのを確認した俺はようやく緊張を解いた。
「お、おい、主!!」
声に振り向けば、焦った様子で駆け寄るオサキとニョロニョロと宙を泳いでくるイヌガミ。
側に到着するなりオサキは、なぜかドロップキックをお見舞いしてきた。
「ぐぉっ!?」
近頃、腰痛が酷いのを気にしている腰へと的確な蹴りが入る。当然、呻き、悶え、膝をついた。
対して、シュタッと着地したオサキは腰に手を当てて睨んでくる。
「なんじゃなんじゃ、ソレ!? ワシは何も聞いとらんぞ!」
ついで、ヒノカグツチを指差しながら怒鳴る。
一方でイヌガミは、ヒノカグツチを
とりあえず興奮するオサキを宥めようと、よくウシワカにやる「どうどう」の仕草を行うも、逆に青筋を浮かべた彼女に脛を蹴り上げられた。
……これは、弁慶が泣くのも納得の痛さだ。
ふと、脛を抑えて蹲る俺へとイヌガミが近寄ってきた。
「
「そ、そういう問題じゃ……ってぇ、アイツ本気で蹴りやがったな」
イヌガミから『挑発』にも似た言葉が投げかけられるが、正直、それどころじゃないくらい痛い。腰と脛が痛い。
「ふん、それでも手加減してやった方じゃぞ。そのような隠し球があるならば先に言っておけ、たわけが。
……心配して損したわ」
最後の言葉はちょっと恥ずかしかったのか声のトーンが落ちた。
なんだなんだ、そんな可愛い反応されるとギャップ萌えで俺が萌死ぬぞ?
「愛奴め」
「っ、このっ!」
ニヤニヤして言ってやると、今度は頭頂部にかかと落としが襲ってきた。いい感じに決まった音が響いて、遅れて凄まじい鈍痛が襲い来る。
だ、だから手加減しろと……!
そんなこんな茶番を繰り広げて、不意に、ウシワカがいないこと。彼女がまだ戦っていることを思い出した。
「こんなことしてる場合じゃない、次はウシワカの援護にーー」
言いかけて。
直後。
背後の『異界化結界』が破壊された。
ーーぬるり、と割れた空間から一人の『女』が抜け出てきた。
黒いローブを頭まですっぽりと被った奇妙な出で立ちの女だ。
瞬間、手に持つヒノカグツチから『警告音』が鳴る。
『警告、周囲に“主神級”の神族反応アリ。警告、周囲にーー』
ついさっき聞いた単語に、背筋が凍った。
が、未だ戦闘態勢であった精神を奮い立たせて即座に剣を構える。
「オサキ、イヌガミはCOMP内にいろ……消耗した俺では、たぶん守り切れない」
「馬鹿者が。ワシらだけ除け者なんぞ、許すと思うか?」
「右ニ同ジク」
「おい、冗談言ってる場合じゃーー」
『解析完了……及び情報修正、対象を“魔王級”の神格と断定します』
魔王?
というと真っ先に思い浮かぶのは『ベルゼブブ』に『ベリアル』といった大物だが。
そもそも『女』である時点でそれらではないと分かる。
……いずれにしても、あの女の放つ『力』は“涅槃台を大きく上回っている”。
ゆえに、こうして立っているだけで奴よりも『強い相手』だと嫌でも分かってしまう。
加えて、魔王級。とくれば、冷や汗が出てしまうのも無理からぬことだと思う。
「……だが、神格なんだろ?」
なら……
最終階級『終世炎儀』であれば或いはーーと言ったところか。
これが『人間』とか『竜』とか『神以外』だったならちょっとヤバかったかもしれないが。
相手が神である以上は、『俺の領分』になる。
それにーーヒノカグツチを抜いてしまった以上は、神相手に退くわけにはいかない。
これを見てしまった神は、須く“殺す”。
……いや、“オサキ”は例外だけど。
覚悟を決めて剣を構える俺に、女は不意に笑みを見せた。
その瞬間、女の背後から『無数の蠅』が飛び出してくる。
「っ!!」
一直線にこちらに向かってくる大群へとヒノカグツチを振り下ろす。すると、呆気なく燃えて消滅してしまった。
……ふむ、あの蠅も『奴の一部』ということか?
で、あるならば僥倖。
本気を出させる前に殺してやる。
女へと『照準を合わせた』俺はいざ立ち向かおうとして……ふっと女の敵意が消えたことに気がついた。
その切り替えの速さに思わず足を止める。
訝しむ俺へと女はひらひらと手を振って見せた。
「やめやめ、こんなところで『神殺し』と戦うなんてリスクとリターンが合わないわ。
……あーあ、涅槃台もこんな、灰になっちゃって」
てくてくと歩いた彼女は、涅槃台の亡骸の側で屈み込み、亡骸が変じた『燃えカス』をひとつまみ手に取ってサラサラと風に流した。
「見込み違いだったかしらねぇ……テンメイが絶賛するから賭けてみたんだけど。“我が王”をお迎えするに足る働きはできそうにないわ」
知らない話をペラペラと聞かせる女。いったい、何が目的なのか?
警戒する俺を他所に、不意に立ち上がった彼女はこちらに向き直る。
「どう? ここは一時休戦ってことにしない? そっちも相当消耗してるんでしょう?」
口元しか見えないが、あくまでにこやかに語る彼女。
確かに、言う通り、今からこの女まで相手にするのは少し……ぶっちゃけかなり荷が重いというか余裕で死ねる。
良くて“相討ち”だ。
「……逃げたければ、逃げればいい。こちらも追撃しない」
「交渉成立ね。ふふ、涅槃台が粘ってくれた間に
ねぇ、“かわい子ちゃん”」
そう声をかけながら背後を向く女。
すると、その背からこちらを覗くようにして一人の『少女』が姿を現した。
姫カットに、少々『ラフ』な着物を羽織った中学生くらいの少女だ。
「……」
しかし、その片目には大きく『包帯』が巻かれそれに隠れるようにして薄らと『魚の鱗』のようなものが見える。
いや、良く見ればしっかりと女のローブを掴む左手にも包帯が巻かれている。
……それに、どこか
不安そうな表情でこちらを見る少女に、不敵な笑みを向けながら女は再び口を開いた。
「うふふ、
そう言い放つと、今度はふわりと宙へと浮かび上がる。応じて、ローブに掴まる少女もふわりと浮かび上がった。
ーーその時、怒号と共に一発の弾丸が女に放たれた。
「喰らえクソ
たいへん汚い言葉と共に放たれた数発の弾丸は、しかし女の手前に展開された『不可視の壁』によって防がれた。
壁に当たると同時に炸裂する閃光からして、アレは『破魔弾』である。それも、超高額の一級品。
それを簡単に防いだ女も気になるが何よりーー
……とても汚い言葉、その声に覚えがあった俺はその発生源へと目を向けて、思わず驚いた。
女が結界を破壊して出てきた穴、そこから出て来たのはやはり『レイラン』。
しかし、その身体は至るところがボロボロで『血塗れ』になっていた。頭からも現在進行形でドクドクと夥しい量の血が流れ出ているが、それを意に介さず強い眼光で女を睨んでいる。
とはいえ、消耗が激しいのか時折フラフラとしながらなんとか立っている状態だ。
ーーあの反応を見るに、どうやらあの女と一戦交えたと見える。
そして、あのレイランがここまで『ボロボロにされている』。その事実から、やはりあの女悪魔は“相当な強さ”を誇るということだ。
戦わなくて良かった……。
「アハハ、まだ生きてたのねお嬢ちゃん。気に入った、次に会ったら
そんな激おこぷんぷん丸……否、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態のレイランを嘲笑うかのように、上空から笑い掛ける女。
おい、やめろ。と思ったが時既に遅し。
ピキッという音が鳴り響いたかと思うと、抜刀したレイランが大きく振りかぶっていた。
「◯ね!! クソババアァァァァ!!!!」
罵倒と共に振り下ろされる彼女の刀。その鋒から『数十mの大きさを誇る緑光の斬撃』が女に向けて放たれた。
アレは『葛葉ライドウ』の系譜に伝わる奥義の一つだ。
アイツ、いつの間に『十六代目』の技を……
「っ!!」
さすがに焦ったのか真顔になった女は、瞬時に魔法陣を展開すると瞬きの間にその場から『消え去った』。
おそらく『瞬間移動』、『テレポート』の類にある術を使ったのだろう。
なに、古き神ならさして珍しくもないチート行為である(白目
対象を失った斬撃は、遥か上空にまで舞い上がって。
特大の爆発とともに緑光で空を彩った。
「クソッ!! あ◯ずれが、必ず殺してやる……!」
フラフラしながら物凄い形相で恨み言を呟くレイラン。
……正直、近づきたくないが、あの怪我を放っておくことはできない。
「レ、レイラン……?」
恐怖を押し殺して声をかけるとーー
「ア゛?」
「ひぇっ……!」
例の、社で向けられた眼光よりも数百倍強い視線を向けられた。
これは大量虐殺できる視線。
……と、まあ、怖がっている余裕があるわけでもないので。すぐに懐から『宝玉』と呼ばれる霊薬を取り出して彼女にかざす。
すると、『宝玉』が輝き、その光がレイランの身体を覆って数秒。
一瞬にして怪我が全快した。
……どうやら、『深手』に至る傷は無かったようで一安心。
傷が治ったことで少しは落ち着いたのか、フッと眼光を弱めた彼女が口を開いた。
「ああ、なんだアンタか……」
「なんだ、とはなんだ。……まあ、無事で良かったよ」
なるべく優しく、そう声をかけてみると。
ビクッ、と肩を揺らして目を見開いた。
「は、ハァ? ちょっと……気持ち悪いんですけど?」
目を泳がせながら、やがて顔を背けるレイラン。
……おやおや〜? キレ芸のキレが悪いですぞぉ?
「う〜ん? もしかして、お兄さんの不意の優しさにときめいちゃったりなんかして?」
ちょっと場を和まそうというか、緊張をほぐしてやろうという気遣いで述べた発言だったのだが。
ーー直後、冷たい視線と共に放たれた鋭い正拳突きが胸部にクリーンヒットとした。
「おいおい主、ウシワカのところに行くんじゃなかったのか?」
責めるような目つきで忠告してくるオサキ。
そういえばそうだった。
「いや、アイツなら大丈夫だろうと……」
正直、そこまで深刻なほど心配してはいない。
あの大姫らしき悪魔自体、涅槃台よりも弱い反応だったし、なによりもーー
「ウチのウシワカは『最強』だ」
「……冗談で言ってるなら殺してるところじゃが、本気っぽいんじゃよなぁ」
当たり前だ。
あの『天才』で『強い』ウシワカが、遅れを取るなどとは思えない。
……唯一、あの『泥』は警戒すべきだが。先程スマホで確認した限りでは『無傷』で健在であった。
おっとり刀で駆けつけても十分過ぎるだろうと思う。
それどころか「手柄を横取りしないでいただきたい!」とオサキあたりに逆ギレしそうな感もある。
「まあ、アイツだけ残してのんびりしてるつもりもない。行くぞ」
ーーその頃、ウシワカと大姫は一進一退の攻防を続けていた。
いや、正確には“ウシワカの方は攻めきれないでいる”。
それというのも、やはり、例の『泥』。
彼女の賢眼であれば、一眼でアレの『危険性』は察知できた。
故に、泥を避けて攻めようとするも。大姫自身、彼女の危惧を読んで巧みに泥を操り妨害する。
これによって、圧倒的に戦闘能力で劣る大姫相手に攻められず、かと言って、鈍重な泥に捕らえられるほどノロマではないウシワカ、という膠着状態が続いていた。
ーーそんな折、不意に両者の間の『空間』に光が招来する。
「……あら、まだ戦ってたのね」
そこに現れたのは先程ヒデオたちの前に現れた女悪魔。
一緒に居た少女は何処かへと消えて、かわりにその手には『光球』があった。
それをこれ見よがしに大姫へと向ける。
「ほらほらぁ……ここに、貴女が愛してやまない、愛しいカレがいるわよぉ」
子どもをあやすような言動、平素なら大姫の不興を買う行いだ。
……しかし、大姫の視線は、彼女の手にある『光球』へと一点に注がれている。
そのまま数秒の後、突如として大姫は駆け出した。その手に大量の泥を抱えて。
「あぁ……ああ! 義高様!!
義高様、義高様! 義高様義高様義高様義高様義高様義高様……!!!!
……オ、オ前カァァァァァァァァ!!!!」
やがて、“般若のような形相”に変じた彼女は泥を放ちながら女悪魔へと迫る。
「あら怖い。……でもぉ、隙だらけよぉ」
鬼女の猛攻になんら怯むことなく、女悪魔はゆっくりと片手で魔法陣を描く。
そして、大姫の放つ泥が当たる瞬間。
魔法陣から放たれた眩い閃光が大姫を包み込んだ。
「ギャアァァァァァ!?」
悍しい悲鳴をあげてのたうち回る大姫。
そこに二重三重の魔法陣を展開した女悪魔は、光から解放された大姫を『半透明の球体』の中へと仕舞い込んだ。
「はい、おしまい」
宣言と共に球体内部に紫の電撃が迸り、直撃を受けた大姫はすぐにぐったりと意識を失ってしまった。
「貴女は大切な実験体だからねぇ……大切にーー」
そこまで言って、その背後にウシワカの刃が迫っていることに気付いた。
咄嗟に振り向き、その刃を“手で弾く”。
「チッ!」
舌打ちするウシワカに、女はなおも笑い掛ける。
「残念だけど、
そこまで言いかけて、ふと、彼女は何かに気づいたように笑いを引っ込めた。そして数秒、ウシワカの顔を見つめて、やがて得心がいったかのように手を打った。
「あら、あらあらあら……そういうことだったの。『彼』が『あの寺』で失敗しちゃったのは。
そう……貴女、
ニヤリ、口元に悍しい笑みを浮かべた女が告げる。
対してウシワカは頭上にはてなマークを浮かべそうな顔で片眉を上げた。
「これはいい発見だわ、いい傾向だわ。そうとわかれば早速、『彼』に任せてみましょう、ええ、そうしましょう」
一人で納得したように頷いた女悪魔は、球体に閉じ込めた大姫を引き寄せると。
再び、『テレポート』によってその場から消え去った。
「ウシワカー!」
ーーそれからすぐに、レイラン他仲魔たちを引き連れたヒデオが合流した。ウシワカへとかけられた声は、まるで彼女の心配をしていないかのように間延びして気が抜けていたが。
ーーその姿を目にしたウシワカは、一転して満面の笑みでその傍に馳せ参じた。
「主殿! 無事だったのですね! ええ、ウシワカは信じていましたとも!」
「あ、当たり前だろ……ああも発破をかけられたら俺も本気を出すしかあるまい?」
「死に掛けとったじゃろ……」
黙れオサキ。
あんなキラッキラした目で言われたら少しでも調子いいこと言わないと。なんていうか、失望されかねないしな。
「……と、どうやら雌猫も一緒のようですね。それも、随分……ふふっ、遊び呆けた後の様子で」
「あ゛?」
ちらり、とレイランを見たウシワカは。彼女の衣服がボロボロなのを確認してから「フッ」と鼻で笑った。
当然、レイランの方もブチィ!っとカットインが入りそうな様子で青筋を浮かべてガンを飛ばす。
ちょ、やめて!
今のレイランは普段よりカッカしてるんだから!!
「とはいえ……主殿、その腹部の穴は?」
そのまま喧嘩でも始めそうな勢いをぶった切って、突然真顔になったウシワカが俺の腹の穴を見ながら神妙な様子で聞いてきた。
「ああ、これは……まあ、“コイツ”を出した代償というかなんというか。まあ、コレを戻せば元に戻るから」
「なるほ……ど?」
良い子なウシワカは、俺の説明を素直に聞いて頷きかけて……ヒノカグツチを見てはピシリと固まってしまった。
直後、焦った様子でまくし立てる。
「あ、主殿!? こ、この業物は一体……いえ、業物どころか、かの『神器』の一振りにも匹敵、或いは凌駕する神剣とお見受けしますが?」
さすがはウシワカ。一眼見て『コイツ』の格を看破するとは。
『リン』から貰った『冬木の資料』に書かれていた『芸術審美』スキルに匹敵する目利きだ。
名付けるなら『芸術審美(剣)』というべきか?
「あー……ちょっと、この場では真面目に説明するのは避けたいんだがな」
「神殺しの剣、ヒノカグツチよ」
言葉を濁してなんとか退路を探す俺を他所にあっさりバラすレイラン。
お前、もうちょっと空気読めよ……
「ヒノカグツチ……確か、創世期の神話において伊邪那美神を焼き殺した火神であったと存じますが」
なんで知ってるんだウシワカ。
いや、天才だからか……
とはいえ、説明はまた後日にさせてもらいたい。
なにせ、ずっと剣を出しっぱなしにしているせいで“腹部の激痛”が現在進行形でメンタルを削ってくるのだ。
「……まあ、その話はまた今度な。とりあえず社にでも戻って一休みーー」
言いながら、溜息を吐きながら剣を『仕舞う』。
ーーその瞬間。
「ごぼっ!?」
突然、喉奥から迫り上がってきた『液体』を抑えきれずに口から吐き出す。
赤く生々しい液体は、地面に真っ赤な水溜りを作り出した。
「あ、あれ……?」
続けて、視界が赤く染まる。頬を伝う生暖かい液体を感じとりながらも、ついで襲う強烈な目眩に耐えきれず、その場に倒れ込んだ。
「主殿っ!!!?」
驚愕の表情を浮かべたウシワカがすぐに屈み、こちらを覗き込む……いや、ちょっと近すぎるけど。目と鼻の先に彼女の凛々しく美しい顔が迫っている状況は色々とーー
そこまで考えて、遅れて襲ってきた全身の激痛により俺はすぐに意識を失った。
予め言っておくと教授の話は、しません。
だって、名探偵の名言とか知らないし…
雰囲気でホームズかっけぇ! って言ってるけど、ほとんどホームズの話知らないんだよねぇ…
正直、主人公関連とかイヌガミとか消化しきれるか心配で(ry
-追記-
やっちゃったよ、腹無いって言ってんのに鳩尾とか。。
……仕事から帰ったらお気に入りとか凄いことになってて『歓喜の舞』を披露しながら(他には誰もいない)部屋で書き書きしました。
ずっと見てくれてる人も本当にありがとうございます!!
書く気がもりもり湧いて来たぁ!!