英傑召喚師   作:蒼天伍号

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軽微なキャラ崩壊(と言ってみたがいうほど崩壊してない)があります。

いやほら、歳取ると涙脆くなるっていうし…



事後処理

夕凪市北区にある廃寺。

創建年不明、創建者不明、廃寺となった日付・原因その他謂れも不明な謎の寺として市内外問わず、廃墟マニア、オカルト好きなどに密かな人気がある場所。

 

一方で、デビルサマナーによる『定期駆除指定地域』に定められている通り、野生の悪魔が集まる『危険地域』でもある。

 

 

そんな危険エリアにて、『ローブ姿の女』は一人佇んでいた。

 

目の前には、廃寺となる前の寺院にて『本尊』と崇められていたであろう巨大な『像』。

しかしその造形はおよそ“仏像のそれらとは趣きを異にする悍しさ”を持っていた。

ーーそれはつまり、この寺を占領していた“集団”がいずれの仏教宗派にも属さない“異物”であったことを示す。

 

 

「懐かしき“父上”のお姿によく似て……」

 

像を愛おしげに撫でながら女は、憂いに満ちた息を漏らした。

 

ーー父にして“主”たる王の現界。それを望む彼女にとっては例え“偶像”であろうともその似姿に哀愁を抱いてしまうのは無理からぬことであった。

 

そんな、一時の安らぎを楽しむ彼女の側へと無思慮に“出現”する一人の男の影があった。

 

 

彼女がいる廃寺内の部屋、薄暗く視界のはっきりしない闇が支配する場所では必然“影”が占める空間の割合は大きい。

その影より、ぬるり、と抜け出るように出現する男がいた。

 

「……いやはや。よもや“ストック”を一つ消費する羽目になるとは思いませんでしたよ」

 

薄ら笑いを浮かべて溜息混じりに語るのは『涅槃台』。

ヒデオに断ち斬られ、たしかに焼滅した男であった。

その手の中には“真っ二つに割れた小さな地蔵型のストラップ”がある。

 

「相変わらず不粋な男ねぇ……ま、呼んだのは私なんだけど」

 

ちらり、と涅槃台に視線を向けた彼女は先ほどまでの憂いを潜めて“妖しげ”な雰囲気を見に纏う。

 

「“幻霊融合体”、成功したらしいですね? やれやれ、これで我が師の“オーダー”も半分が終えたところですか」

 

「“空想の顕現”に“冬木式の解明”、後者に関しては私の目的にも一致するから協力してあげたけど。あの男もよくやるものね、あれだけ力を得ておきながらまだ足りないなんて。

富に名声に地位まで手に入れておいて、欲深な人間だわ」

 

「それが人間というものでしょう? ……それに、“金とか地位”は力を得るための“手段”に過ぎません。

“全ては力の為”、それが()()()ですから」

 

ーー愉しそうな笑みを浮かべて語る涅槃台とその師は、結局のところ同類であった。

だからこそ、師弟にして同志という固い“繋がり”と高度な意思疎通のもとで最高のパートナーとして最効率で互いの目的のために動くことができる。

 

 

 

「ーーして、この寺に呼び出したということは。『彼』の尻拭いをさせられるということですね?」

 

一転、つまらなそうに述べた涅槃台へ女は小さな笑みで応える。

 

「安心なさい、彼の失敗のおかげで原因ははっきりしたわ。その対処法についてもね。そのものずばり、“貴方の泥”が鍵よ」

 

「ーーほう? 詳しく聞かせてもらいましょう」

 

女の言葉を受け、涅槃台はスッと目を細めて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー都内某所。

昼夜問わず人で溢れ、賑わいを見せる煌びやかな都心から離れ。寂れた、或いは落ち着いた雰囲気を残す旧時代の建築物に塗れた路地裏。

その中でも一際大きな雑居ビルは、“表社会から隠れるモノたちの拠点”としては十分な条件を揃えていた。

立地的、ひいては風水的・魔術的な側面を鑑みて、およそ“彼らに都合がいい”霊地であるのは間違いない。

 

即ち、デビルサマナーたちを束ねる中立組織『サマナー協会本部』である。

 

そこには“二代目会長”を始めとした最低限の幹部連中は揃っているものの。主な職員は、サマナーたちとの連絡係であるオペレーター陣、そして備え付けの工房に篭る『技術者』だけである。

 

というのも、『初代会長』の意向により組織の中心メンバーが一点に集まりすぎるのは危険だとされたからである。

「ここを潰されても、関西、九州に拠点あれば安心だよね」とは初代会長の言。

……たぶんに、初代会長が『己の腕力のみで名だたる悪魔をシメてきた』ことによる絶対的な自信と、『近しい者たちと殺し合った経験』からの『人間不信』が化学反応を起こした結果閃いてしまった“迷案”なのは組織上層部にとってはもはや『常識』となっているものの。

策としては、組織防衛の方針としては、まあ、間違ってはいない。という判断により現在まで継続してこの体制は引き継がれている。

 

 

閑話休題。

 

 

そんな、サマナー協会三大拠点の一つたるビルの廊下をカツカツと靴音を響かせながら歩く女性。

近頃、協会でも一目置かれているデビルサマナー『レイラン』である。

 

いつものリクルート姿にカチューシャを装着して、堂々たる態度で廊下を進む。

 

その姿に、本部へと訪れていた新米サマナーや若年の職員たちは憧れと畏怖の念を込めた視線を送る。

 

それらを一身に受けながらも彼女は動じず、それが当たり前であり自らの責任の負うところ。と真摯に受け止めていた。

それも『己は由緒ある葛葉の巫女であり、この国を死守すべき存在』であると硬く定義し、納得してその役割を受け入れているからこそ。

ーーだが、その在り方は別の面から見れば“自分を殺す”のと同義である、と協会勤めの一部職員からは同情の念を向けられているが。

 

 

 

 

そんなレイランが向かった先は、本部に複数用意された応接間。

ソファと机、気持ちばかりの調度品の他には『複数機能を備えた多重結界』しかない寂しい部屋だ。

 

そこで彼女と対面しているのは魔術協会から派遣された魔術師。

特徴的な髪型をした()()の女性だ。

脚を組み、腕を組んで眉を顰めた威圧的な視線を送っている。

 

「ーーで、肝心の『盗品』については回収できなかったと?」

 

女性は一切の慈悲を感じさせない冷たい声で問う。

 

「はい……その点については申し開きようもありません」

 

対し、レイランは()()()()()()()()()()()()()()()

 

「? ……ああ、日本人(ジャパニーズ)のDOGEZAってやつ? そういうのは要らないわ。私が欲しいのは『結果』よ」

 

女性はきっぱりと言い放つ。

声音からしてどこか“勝気”な印象を抱く彼女の口調は、普段のレイランなら眉をしかめるものだが。

さしもの彼女も、自らの失態を棚に上げるほど愚かではない。

ちなみに、レイランがしたのは土下座では無くお辞儀なのだが。山中に篭っている一族の女性が知っているはずもない。

 

それに、この銀髪の女性はレイランへと依頼を寄越した『依頼人』その人である。

 

「……ですが、幾つかの情報を得ることはできました。本日はそちらのご報告をさせていただきたく」

 

直後、僅かに顔を上げて女性へと向けられた視線は強い信念に満ちていた。そこからは『葛葉の巫女』としての強い責任感と同時に『なんとしてもやり遂げる』という信念が伝わってくる。

 

「っ、言ってみなさい」

 

その瞳に、僅かに気圧されながら女性は続きを促した。

 

 

「ありがとうございます。

 

ーーまず、私どもが討伐した涅槃台の『遺品』より、奴に“指令を与えた人物がいる”という情報を得ました」

 

たとえ()()()()()()()()()退()していようと、腐っても魔術協会。

力ある魔術師の巣食う魔窟へと無謀にも襲撃を仕掛けた連中だが、わざわざそんな危険な真似を『立案者』がするとは考えにくい。

そのことから協会も当然のごとく『黒幕』の存在を考慮していた。

 

「……ですが、残念ながらその人物の詳細情報は掴めませんでした。『COMP』に残された記録では一貫して『テンメイ』の呼び名が使われており、やり取りの合間にも“テンメイなる人物の素性を推測させない配慮”が見受けられました。

このことから、黒幕は“裏社会ないし表社会にて一定の地位にある人物”と考えられます」

 

「……」

 

レイランからの情報に、銀髪の女性はしばし思考を巡らせる。

 

地位ある者が“天体科”から“アレ”を盗む? その動機は?

加えて、伝承科から盗まれた“モノ”を考慮すると、犯人の目的は『空想の具現化』。

目的は分かる、分かり易過ぎるほどに。

 

だが、“動機”が分からない。

 

 

わざわざ魔術協会に属する施設を襲ってまで手に入れようとした、とすると。真っ先に『魔術師(同業者)』が疑わしく思える。

しかし、魔術界隈で『我が家』と『伝承科』の力を知らぬ者はいない。仮にも君主(ロード)を同時に二つも敵に回すなど、相手の今後の魔術師としての活動を考えれば自殺行為だ。

 

襲撃犯が雇われだとすると尚更魔術師とは考えにくい。

 

となるとーー

 

 

 

悪魔召喚師(デビルサマナー)といえば、神秘を扱う界隈では有名過ぎるほどの『戦士』である。

対して、魔術師とは本質的には『研究者』だ。

 

生粋の戦士と、戦える研究者。どちらが戦闘において秀でているかなど明白。……無論、『例外』は存在するが、それでも大半は生粋の研究者である魔術師。戦闘におけるセンスの優劣は実際の戦場では致命的な差になり易い。

戦いを知らぬ怪獣と戦い方を熟知した戦士、たとえ力があろうと使い方を知らなければ話にならない。

一般的な魔術師とサマナーを単純な戦闘能力で比較すれば、半人前サマナーを殺すのには熟達した魔術師を数名動員するほど。

 

当然、魔術師がサマナーを雇った、という考えが自然なのだろうが。それは先に述べたとおり、そもそもの動機からして不明瞭だ。

 

なにより、()()()()()使()()ということが普通の魔術理論ではあり得ない。

 

前提として、魔術とは『基盤』に沿って行使されるもの。

それを、“全く異なる基盤同士を併用して発動”するなど素人考えにも程がある。

使う『道具』が強力であればあるほど、性質の違いは儀式に致命的な障害を発生させる。

魔術師であれば絶対にしない悪手だ。

 

……だが、それはあくまで『真理に辿りつけない道筋』というだけの話。例えば『民俗学者が何の前触れもなく新エネルギー開発を試みる』ようなもの。『物理学者が民俗学の研究を始める』でもいい。

要は、『目的がそぐわない』のだ。

 

しかし、単純な、『戦闘スキル』として考えるなら別だ。

性質が反発しない限りは、同質の術式同士を掛け合わせて威力の増強を試みるのは正しい。

更に、『研究者』たる魔術師と比べて。サマナーたちは『日常的に神秘と矛を交えている』。

それはつまり、『霊的研鑽の差』に直結する。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

要は、『神の扱う権能が一般魔術師には使えない』のに対して。『神の位階にまで研鑽を積んだサマナーは、同等の力を行使できる』ということ。

 

対し、魔術師は『力自体に興味はない』。

あくまで『真理』に到達するための手段であり、真理に至れるならば別に魔術でなくとも構わないというのが魔術師の基本的なセオリー。

真理に至る『近道』が『この世界の魔術』であるから魔術師となっているに過ぎないのだ。

 

 

このことから、先述の『戦闘能力の差』に繋がる。

 

まとめると、霊的研鑽を積んだサマナーに魔術師は勝てない。ということ。

 

 

数少ない()()()()()()()()()()も、西暦上で何度も繰り返された『教会の異端狩り』によって大きく数を減らしており。

現状として『和平協定』を結んだ魔術師のみが一応の生存を許されていることから、わざわざ『禁忌』を大々的に侵したがる魔術師はいない。

 

 

以上の点を以って、犯人が魔術師という考えは決め手にかけると判断した。

 

すると残るのは、『力を欲するサマナー』ということになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーその後、続けて語られた報告に耳を傾けた銀髪女性はその推測をより確信に近づける。

 

 

「ーーつまり、“社会的地位を築いている力あるサマナー”が黒幕ということね」

 

かいつまんで結論を述べる女性に、レイランも首肯する。

 

「加えて、“神族級の魔王”と“()()()()()()()()()()()()()”が協力している、と」

 

 

そう言ってーー

 

 

 

ーー内心、頭を抱える女性。

 

それをおくびにも出さず平静を装いながら女性はソファに腰掛けて尊大なポーズを、()()()()維持していた。

 

そのことに気づかないまま、レイランは話を続ける。

 

「……正直に申し上げて、今回の一件は“私の一存では扱いきれない”案件です。

無論のこと、『依頼は必ず達成』しますが。

 

協力者と目される『両者』に関しては、魔術協会の総力を上げて対処にあたるべきと思われます」

 

レイランの言葉に、女性は再び内心応える。

『できるならやっている』と。

 

しかし、()退()()()尚も派閥争いに権力闘争と、暗闘に明け暮れる腐敗した協会が総力を上げるなど。

率直に夢物語であった。

 

数少ない例外でも、十年以上前に起きた『ユグドミレニア討伐戦』くらいなもので、その時でさえ数名の力ある魔術師と、斥候としての『使い捨て』を動員したのみ。幹部連中は自らの椅子から動くこともなかった。

 

だからこそ彼女はレイランに依頼したのだ。

……したというのに。

 

「ふぅ……(なんでいつまで経っても達成できないのよ!? 貴女は極東でも有数のサマナーなんでしょ!? それが、ひと月以上取り掛かって達成できないどころか、新たな脅威まで見つけてきて……。

おまけに『古き神に類する強大な魔王』と『ダークサマナーのコネばかりもってる仲介人』ですって?

い、い、いい加減ーー)

 

「……いい加減にしてよ、もう!!」

 

「え……?」

 

ーー突然、目の前で頭を抱えて叫んだ銀髪女性に、レイランは間の抜けた声を出してしまった。

 

そんな彼女のことなどお構いなしに女性は捲し立てるように声を張り上げた。

 

「私は、栄誉ある()()()()()()()の後継者なのよ!? お父様の期待に応えるために頑張って、頑張って頑張って頑張って……! 怖い思いだってたくさんして!

それなのに、ある日いきなり()()()()()()()()()()()、取ってつけたように私が当主に祭り上げられて!

でも、誰も付いてきてくれなくて……!

私だって頑張ってるのよ!!」

 

「え……いや、あの……?」

 

いきなり何の話だ、とレイランは思った。

しかし、目の前で、まるで発狂したように喚き散らす女性は。なんというか、どことなく『可哀想』に思えて怒る気にもなれない。というか純粋に『哀れ』。

 

「そんなところに、魔王? 魔王ですって?

なんで(ウチ)が魔王なんかに目をつけられなきゃいけないのよ!」

 

「いや、厳密には敵の目的は『盗まれたモノ』の方であってアニムスフィアにはこれといった執着は無いものかとーー」

 

「それはそれで悔しいのよ!」

 

めんどくさいなこの女、とレイランは思った。口には出さない。

 

ーーアニムスフィア現当主の名誉のために断っておくと。

涅槃台たちダークサマナーの襲撃に始まり、その混乱に乗じた他勢力からのちょっかい、さらに便乗した『教会』からのちょっかい。

それらの対応にまごついたことによる自陣営からの『クレーム』などなど……。

最近は立て続けに『不幸』が重なって、ただでさえ『トラウマ』と『生来の気弱さ』で小心者な彼女の精神に多大な負荷が掛かっていたのだ。

 

だからこそ、『信頼できるサマナー』の前で泣きはらしてしまうのも仕方がないことなのだ。

 

「お父様が遺した家をあんなにして、魔王にまで狙われるなんて……うぅ……きっと、私は無残に殺されて地獄に連れて行かれるんだわ! そこで永遠に、こう、“四人くらいで回す謎の棒”を回させられるんだわ!! うわぁぁぁん!!」

 

遂には床に膝をついて泣き出した。

これにはレイランも、どうしたものかと慌てた。

率直に、応接間で依頼人を泣かせている図というのは外聞が悪い……もとい、目の前で号泣している三十路手前の女性というのは見ていて心地いいものでもない。

 

 

ーーこのあと、数時間かけて女性を宥めたレイランは、銀髪の彼女が連れてきていた護衛の女性たちに身柄を引き渡し、主に精神的に疲労困憊の状態で帰宅することになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーレイランが、号泣する『ロード・アニムスフィア』を必死に宥めている頃。別の応接間にて寛ぐ人物がいた。

 

「ふむ? なんだか女性の泣き声のようなものが聞こえる気がするが……」

 

「気のせいです」

 

即答するのは、その人物と対面に位置するソファに腰掛ける少女。

『悪魔召喚プログラム研究の権威』、“リン”である。

 

彼女の視線の先で優雅に脚を組むのは、白いタキシードを纏い、真っ白に染まった癖っ毛を持つ若い男性。

その顔には、僅かだが()()()()()()()が窺える。

両者を知る者からして、その関係性を推測するのは容易い。

 

「それで……ご用件をお聞かせ願えますか?」

 

そう語るリンの表情は硬い。

敵意こそ無いものの、最大限の警戒と、緊張を抱いているのが見て取れるようだ。

 

ジッとこちらを見つめるリンに、男性は優雅な笑みを浮かべながら応える。

 

「無論、()()()()、“出来損ない”に関することだとも」

 

笑みを崩さずにサラリと飛び出す冷徹な言葉に、リンはピクリと眉で反応した。

 

男からすれば、この態度は『同じ研究者』たるリンだからこそのものであり、ともすれば平時よりもリラックスしていると言えた。

 

「……いったい、誰のことをおっしゃっているのかーー」

 

一瞬、しらばっくれようとした彼女の言葉に被せるように男は続ける。

 

「召喚プログラム研究者にして、『ヴィクトルの養子』たる君のことは高く評価している。

……その『情報収集能力』についてもね」

 

「っ!」

 

「知っているはずだ、あの失敗作の素性を。だからこそ手を貸し、貸される関係にあるのだろう?

その前提で話を進めるがーー」

 

リンの返事を待つことなく男は続ける。

 

「先日、()()()が君の研究資料から興味深いモノを見つけてきたんだ」

 

ばさり、と手に持っていた紙の束を机に放り投げる。

 

「『ヒノカグツチ』、その解析を目論んでいたね?

時期は残念ながら特定できなかったが、君は一度、“アレ”のデータを解析しようとして……()()()()()()

 

机にばら撒かれた紙、資料には『奧山秀雄』の名前と、『ヒノカグツチ』の単語が記載されている。

そこにはデータと思しき数値やグラフが複数載っているものの、末尾において『中断』の文字と共にぱたりと記載が途絶えていた。

 

「……」

 

紙をチラリと見てから、視線を男に戻して外さないリン。応接間に結界がある以上はおいそれと下手なことはできないものの。

男が放つ『異様なMAG』を考慮していつでも動ける準備をしていた。

 

「安心したまえ、私が問題とするのはそこでは無い。

……いや、もちろん『口実』にはさせてもらうが。

私が欲しているのは、ここに併記してある『悪魔憑依』の方だ」

 

指で指し示しながら告げる男の顔は相変わらず優雅な笑みで固まっている。そこには警戒も緊張もなく、ただ単に『挨拶するような気軽さ』だけがある。

 

「率直に、このデータが欲しい。対価として『ヒノカグツチの件』は不問にしよう。

別に、()()()()()()()()()()()()からね」

 

「……脅迫、と受け取ってよろしいのですね?」

 

必死に、不敵な笑みを浮かべてみせたリンに、男は不意に破顔した。

 

「ハハハ……! いや失礼。あの『神童』と称された『リン嬢』にしては面白い冗談だと思ってね。

分かっていると思うが、我々の力をもってすれば君らを殲滅することなど容易い」

 

「そんなことになれば、召喚プログラムの研究は大幅に遅れることになるわ」

 

()()()()()()()。なにせ我々は『我々だけの力で戦える』。わざわざ悪魔を使役する必要もなく、諸機能を使う必要も無い。我々はサマナーではなく『バスターズ』。討伐者だ。

それも、()()()()()()()()、ね?」

 

正面から脅迫する男に、しかしリンは苦い顔のままに首を振らなかった。

 

見兼ねた男は「少し話をしよう」と人差し指を立てた。

 

 

「我々が扱うのは『神殺し』の火だ。しかしながら、この火というのは面白いものでね。日本に限らず、火を用いた『神話の概念』というのは多面的存在として多用されている。

 

ある神話では人類文明の象徴として、ある神話では聖なるモノとして。

 

ーーそして、ある神話では『世界を燃やすモノ』として」

 

ふと、男の指先に目を向けると、淡い焔がマッチのごとく灯るーーしかし、そこに込められた『力』は、名だたるサマナーを目にしてきたリンをして驚愕に値するほどであった。

同時に()()()()()()()()()()事実に内心驚愕する。

 

「即ち■■■■■の再演。根本的に、我々の火は『全てを燃やせる』。

それを扱うともなれば当然、“並の存在では耐えられない”。

 

だからこそ、“ソレ”が欲しいんだ。作品を試す的としてね。

 

……さて、ここまで語れば“反抗”などという愚かな選択肢は消えるはずだが、どうかな?」

 

男は、自らの対価として情報を与えた。研究者たるリンが喜ぶような情報を。

 

ーーしかし、同時に齎される『恐怖』の方が優っているだろうことは理解していた。

要するに脅迫で相違ない。

 

 

 

やがて、表情を歪めながらもリンは渋々首肯した。

先程見せられたマッチほどの小さな火、アレだけで優に()()()()()()()()()と理解したからだ。

それを本気で使われたらどうなるかなど想像に難く無い。

 

「良い判断だ。安心したまえ、()()()()()この力を『神殺し』にしか使わない。ただ、それだけの為にあるのが我々だからだ。

……だが、『自衛』ともなれば話は別だがね」

 

フッと火を消した男は再び背もたれに体重を預ける。

対して、リンは絞り出すような声で答えた。

 

「……了解しました。

 

『奥山』現宗主『()()()()』」

 

 




魔術師は、あくまでこの世界での魔術師となりますので、型月とは若干異なりますが、基本方針は大体同じです。
つまり、、

『真理の扉開くためならなんでもするマン(ウーマン)』



ちなみに『魔法使い』は存在しません(断言
ついでに『二十七体の化け物的なの』もいません(断言

……そこら辺出しちゃうと型月なっちゃいますからね、仕方ないね。
というか単純に扱いきれn(ry

型月産ジャンヌの属性について、どれだと思いますか? ※結果は今後の参考にさせていただきます。

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