英傑召喚師   作:蒼天伍号

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歪み・一

「そっち行ったぞ、ウシワカ!」

 

とある軍事施設内、迫り来る“アーバンテラー”たちへと発砲しながら声を張り上げる。

 

「承知!」

 

直後、少し離れた位置から彼女の声が返ってきた。

それを確認し、こちらも援護に向かうべく目の前の敵へと再度銃撃を行う。『破魔弾』の込められた銃撃を受けた二体のアーバンテラーはその場で光に包まれ消滅した。

 

しかし、

 

「うぉ!?」

 

その後ろから突進してきた三体が、手にした銃器を乱射してきた。

慌てて物陰に隠れてやり過ごす、と同時に弾切れとなった愛銃へとリロードを行う。

そのまま待機し、角を曲がって現れた一体へと即座に発砲。

 

「っ!!」

 

驚愕した表情のままにそいつは昇天した。

残り二体。

 

俺は間髪入れずに、魔力を灯した指先で宙に“文字”を刻んだ。

 

「“祓い給え、清め給え”」

 

刻むのは“神代の日本”で使用されたとされる“神代文字”の一種。内容は、祓を司る四神が一柱“速秋津比売神(はやあきつひめのかみ)”の力を僅かに借り受けるというもの。

それを刻んでから即座にバックステップ。

ちょうどその時、角から残りの二体が現れた。

 

奴らは、必然曲がり角直近に配置していた神代文字に衝突する。

それが“発動”の合図となり、文字から膨大な水量の“渦潮”が飛び出した。

 

「っ!?」

 

渦潮は、突然の出来事に混乱するアーバンテラーを一瞬で呑み込んでそのまま蒸発するようにして消えた。

久しぶりに、『神道系』を使ったが特に問題なく使用できて内心ホッとする。

 

「神道系はあんまり使いたくないんだけど、そうも言ってられないしな」

 

ぼやきつつ、こちらの『掃除』を終えた俺はすぐさまウシワカの援護に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕凪市内を通る大通りに沿って南へ数km。

夕凪とも盛んに交流がある港町から、さらに船を使って沖合へ一時間。

 

そこには昭和中期に廃棄されたままの無人島があった。

 

 

廃棄以前には、島民が数千人単位で暮らし独自の文化を築くほどの栄えぶりであったが、当時の軍国主義の政策を受けて島は軍事拠点化。

様々な兵器類を量産する工場が立ち並んだ。

 

しかし、戦火によって民家含めた工場は軒並み壊滅。終戦後も復興する『価値』が認められなかったことからそのまま無人島として放棄され、戦時中の“忌まわしい研究”を鑑みて地図からも消されることとなった。

 

 

……と、言うのが俺が有していた情報だった。

だが、ここ数年、この忘れられた島に目をつけた『テロリスト』たちが不法に占拠し、尚且つ、『悪魔を使った兵器開発をしている』という情報が入った。

ただのテロリストなら大人しく表の法治機関にお任せするが、『悪魔』が絡んでいるとなればデビルサマナーの管轄だ。

 

よって、協会は『島内に潜む悪魔とこれに関わる“人間”の殲滅及び研究資料の回収』を依頼化。協会内でも『経歴の長い』サマナーに向けて発行した。

事前に与えられた情報からして、比較的『簡単』な依頼と判断した俺はこれを受領し、こうして現場に赴いたわけだ。

 

 

「“キラーチョッパー”に“タトゥーマン”か、雑魚だな」

 

ウシワカと共に部屋内の悪魔を掃討した俺は、床に倒れ伏した悪魔たちを眺めてつぶやいた。

 

ウシワカの方へ来ていた悪魔は、先述の二種。今、床に転がっている奴らである。

こいつらは、人間が悪魔化した存在であり姿こそ人間とほぼ同じだが、れっきとした『悪魔カテゴリの存在』である。とはいえ、元人間ゆえかそもそもの地力の差か、こいつらはさして脅威となる能力も無い正真正銘の雑魚である。

 

……ただ、俺が相手にした“アーバンテラー”は一味違う。

テロリストが悪魔化したのがアーバンテラーという悪魔なのだが、こいつら、斬撃と“体術”“を反射(カウンター)してくるのだ。

単なるテロリストが一体どうやってそんな達人みたいな技能を手に入れたのか知らないが厄介なことに変わりない。

 

なので、ウシワカの方へ向かわないようこちらで引き付け、奴らが反射できない銃と魔法で仕留めた。

 

しかし、一体、撃ち損じていたらしい。

 

「……一体だけ私の剣撃に“かうんたー”を仕掛けてきた奴がいました。どこぞの名のある剣士だったのでしょう。

無論、返り討ちにしてやりましたが」

 

要するにゴリ押しね。床に一体だけ真っ二つになってるアーバンテラーを見て察した。

 

 

 

だが、どうもこの島に来てから“件の悪魔兵器”とやらを見ていない。出てくるのは悪魔化した人間ばかりだ。アーバンテラーの数からしてたぶん、ここを利用していたというテロリストたちの成れの果て。

 

「資料についてはそこそこ回収できてるんだがな」

 

そう言って、机の上に乱雑に置かれている紙束を手に取る。

 

「“デビルタンク”……?」

 

あまりにもまんまな名称に思わず口に出してしまった。

気を取り直して内容に目を通すと、注釈の書き込みが繰り返された設計図に、詳細な生産計画が記載されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー自宅で目覚めた後。

 

二、三日療養した俺はすぐに依頼を受け始めた。

仲魔たちからは止められたが、“不調を治すための荒療治”であることを説明して不承不承ながら認めてもらうことに成功。

二件ほど、夕凪市内の軽い討伐依頼で肩慣らしした俺は、協会の担当者が寄越してきた今回の依頼を受けるに至った。

 

その際に、レイランが『奴らとの取引』をする旨を打診してきた。どうやら、俺が療養している間にコンタクトを取ったらしく、先方はいつでも受け付けると言ってきたらしい。

 

無論、断った。

 

動いてくれたレイランには悪いが、俺はもう奴らと関わりたく無い、思い出したくないのだ。

 

俺が拒絶の意思を伝えると、彼女はひどく怒ったが一歩も退かない俺に根負けして“好きにしろ”とのお達しをいただいた。

もちろん、好きにさせてもらうつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでは修行にならないな」

 

回収した資料を鞄に突っ込んだ俺は、ウシワカと共に施設内を探索していた。

道中では、暴走したセキュリティマシン、所謂『ガードメカ』の類が襲ってきたり、悪魔化したテロリストから襲撃を受けたがさすがにこいつら相手に不覚を取る俺らではなく。

危なげなく殲滅しつつ探索を続けた。

 

 

 

「……それにしても、少しキナ臭いな」

 

というのも、これまでの探索で見つけた“かつて実験室だった”であろう部屋は全て“後片付けがなされた後”であり、回収できた資料も棚の後ろやベッドの下に落ちていたものばかり。

稀に、机に置かれたままの紙束もあったりしたが、そういう部屋には悪魔化したテロリストたちがわんさか控えていた。

 

ここから導き出されるのは、『すでに引き払われた施設』という最悪の結果。

……それにしては“慌てて逃げた”ような有様だが。

 

 

「いや……()()()()()()()()()()()?」

 

考えられるのはーー実験体の暴走。

俺自身、身に覚えのあるトラブルだ。というか当事者だけど。

 

だが、だとすれば。ちょっと、この施設は“危ない”かもしれない。この依頼自体、簡単ではないのかもしれない。

 

「主殿?」

 

急に歩みを止めた俺を不思議そうに見つめるウシワカ。……その肢体は、頭から爪先まで返り血でべっとりと濡れていてかなり猟奇的。

……だが、これはこれでーー

 

「ちょっとな。……もしかしたら、今日のところは撤退したほうがーー」

 

或いは協会に援軍を要請するか。

 

 

ーーその結論に至って直後。

全身が震えるほどの爆発音と共に目の前に白煙が立ち込めた。

いや。

 

目の前の通路、その片側の壁が破壊されたのだ。

 

 

数秒して、煙の晴れ間から僅かに“何かの姿”が見えた。

おそらくは壁を破壊した張本人。こんなベタな登場してくる奴なんて、大抵ロクな奴じゃない。

イベントボスとか、そういうやつ。

 

咄嗟に刀と銃を構え、ウシワカへ指示を出そうと目を向けると。そこには既に戦闘態勢にある彼女の姿があった。相変わらず判断が早い奴だ、まあ、こちらもいちいち指示しなくて済むから楽だけど。

 

「下手に飛び出すなよ、先ずは敵を知るところからだ」

 

「分かってます、あまりバカにしないでください」

 

そうは言うけど、お前、時々勝手に突っ込んでるじゃん。

……彼女の言葉は信用できないので、こっそりと強化魔法を掛けておいた。カジャ系三種の三段積みである。

 

それが出来るだけの時間、煙の中にいる“何か”は動くことなくジッとしていた。

なので、こちらも警戒だけは強めてジリジリと後退。

 

面倒なことに、今は狭い通路で対峙している状態だ。

これでは広範囲攻撃は避けられないし、逃げても確実に背中を突かれる。だからこそ、戦うしかない。

 

 

やがて、白煙の中から“重厚な機械音”と共に()()が現れた。どう見ても屋内で使っちゃいけない類の奴。要するに()()()()()である。

 

「っ、くそ!!」

 

ーーその狙いが完全に俺へと向いていることを認識してすぐ、前方に身を投げるようにして床へと伏せた。

 

直後に鳴り響く轟音、遅れて背後の方で爆発音が轟いた。

 

真上で放たれた大砲の衝撃で頭がぐわんぐわんとしながらも、なんとか身を起こし敵を視認した。

 

「ようやくおでましか」

 

煙の晴れた通路に陣取るのは“戦車”。

迷彩色に塗られ、丸みのあるコンパクトな印象を受ける見た目からして、チハ。九七式中戦車チハである。

戦時中の日本が使用した、旧時代の戦車だ。

 

さすがに通路には収まり切らなかったのか、破壊した壁の向こうから乗り出すようにして半身を押し込み、通路を完全に塞ぐ形で鎮座している。

これではジャンプして通路を進むこともできず、狭い通路ゆえに背中を向ければ狙いを付ける必要もなくダメージを受けるは必定。

 

つまり、()るしかない。

 

視認から一秒ほどで決断した俺は、即座に目の前の車体へと飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー恋愛、ですか? すいません、そういうのはちょっと分からないです。

 

ある日の昼下がり、庭で掃き掃除をする彼女は困った顔でそう言った。

別に、何か用があったわけじゃなく。特に意味もない質問だった。ウシワカとて見た目は年頃の少女だ。『英傑』というのがどういう存在なのか未だによく分からない俺ではあるが、見た目が少女であれば精神もそれに準ずるだろうと推測するのは道理だ。

オサキという前例があったからかもしれない。

 

しかし、返ってきたのは単純明快で、しかし、いやだからこそタチの悪い答えだった。

 

彼女は、本気で恋愛というものが分かっていない。

トキメキとか、淡い感情とか、まったくもって理解できずしようともしない。それどころか、俗に『愛』と称される感情についてあまりにも無知、ともすれば不自然なほどに理解していなかった。

これまでの言動やらで薄々感付いていたが、今回のこの『あっけらかんとした態度で即答する様』を見てようやく明確に理解した。

 

彼女は、愛を知らない。

 

そうなると色々と辻褄が合ってくる。

これまで会ったことも無かった兄に惚れ込み、彼のためだけに、ほかの一切を捨ててただ『勝利する機械』と化した彼女。

ーーそれは、ただひたすらに他者からの愛を求めたから。もっと言えば『愛というものを知らず、それを教えて欲しかったから』。

 

きっと、彼女は兄に対して抱いた『愛』の表現方法も知らなかったのだろう。だからこそ、兄が“初めて褒めてくれた”敵将の首級を、ひたすらに持って寄越した。それに恐れをなした兄に余計嫌われるようになっても、それをきちんと説明してもらえなかったから改めることも出来ず。

 

加えて、彼女は“失敗したことがなかった”。

やろう、と決めたことは大抵成功し、やれ、と言われたことは大抵成功させた。

周囲に窘められることもなく“成功”だけを積み重ねて成長したために、改めるという手段すら理解できず、『自分がこのように思ったのだからきっと正しい』と自然に思考する回路を構築してしまった。

無論、議論の場では他者からの批判を受けることもあっただろう。その場合はそれに則した改案を即座に提示し、()()()()()()()()()

 

彼女の人生は()()()()()()()()で出来ていた。

 

 

 

ーー今だから確信を持って言えるが、あの日見たやけに鮮明な『夢』は彼女が辿った人生そのものだ。

 

あの時は単なる妄想と切り捨てたが、上記のような解釈を仮定するならば全ての辻褄が合う。

 

そして……その解釈を肯定するなら最期の瞬間に、彼女はようやく“自身の歪み”と認識したのだと。

 

つまり、彼女より失われた“欠落した記憶”を取り戻すことが出来れば、彼女もようやく自らの“歪み”と相対することが可能となる。

 

そう考えると、なんと親近感の湧くことか。

いや、厳密に言えば俺と彼女は真逆の性質にある。方や『天才』と自他共に認める日本の大英雄であり、方や『失敗作』と蔑まれ、事実として『誤った選択』ばかりを繰り返した末に燃え尽きた『落ちこぼれ』。

似てる、などとは恐れ多くて口にも出せないが。

 

歪みを持って生まれて、それを“他者から教えてもらった”という一点においては彼女と俺の境遇は逆転する。

 

その“歪み”こそがまさしく彼女が今抱えている失陥であり、本人が自覚せずして自らの運命を不運に寄らせている原因。

俺が『彼女』に教わって育むことが出来た『愛』という何より大切な“想い”を、ウシワカはきちんと得ることなく果てた。

それはなんというか、あまりに“悲惨”だろう。

 

 

だから俺は。

 

出来るなら、彼女のその歪みを。最愛の人と離別する原因となった“ソレ”を治してやりたいと、傲慢にも思ってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁああっ!!」

 

接近と共に抜刀、居合の斬撃を迷彩色の金属ボディに叩き込む。

数多の悪魔を屠ってきた我が愛刀の斬れ味は、今更鉄如きで止められるはずもなく、その無骨な車体を斬り裂いて然るべきと確信していた。

 

だが。

 

「っ、んだと!?」

 

拒絶するような重い金属音を響かせて、渾身の一撃は呆気なく弾かれた。そこには傷一つなく、迷彩色のボディが変わらずにある。

 

無傷。幾らなんでもそれはないだろう、と若干のショックを受けた。『竜』の鱗にさえ届いた刃が、こうもあっさり弾かれるなんて。

こいつはメ◯ル系のスライム的なモンスターかなにかか?

生憎とメ◯ル斬りは習得していないんだが。

 

「っと!!」

 

驚愕する俺へと、『敵』はハッチ付近に装備された『機銃』を素早く俺へと向け。即座に発砲した。

車体の周囲を回るようにして回避するが、恐ろしい回転速度と精密すぎる照準でたちまちこちらを捉えてきた。

 

「ちぃ!!」

 

足を止めず愛刀の刃を這わせるようにして機銃掃射を受け流すが、流石に無強化で『悪魔による銃撃』を防ぎ切れるはずもなし。隙を見て、カジャ系三種を己に掛ける。

 

「主殿!!」

 

そこへ、ウシワカが飛び込んできた。

得意の跳躍によって、タンク上部に積まれた機銃へと一直線に突撃。その銃身を一刀のもとに両断した。

 

が。

 

「こいつ!?」

 

いつの間にか、チハの車体の上を這うようにして“肉感のあるナニカ”が蠢いていた。まるで蔦のように先を伸ばしたソレは、壊れた機銃へと群がるようにして集まり、すっぽりと包み込んでしまう。

 

そして、数秒後一斉に離れた時にはすっかり再生された新品同然の機銃の姿が現れた。

 

「再生……!!」

 

元に戻った機銃は再び俺を、いや、俺たちを同時に相手取るようにして乱射し始めた。

加えて、車体側面からは“新たに”ミサイル発射管のようなものまで現れているではないか。

 

自己修復からの自己改造?

普通の悪魔ではないのは分かりきっている。しかしこんな、現代兵器と完全に融合した新兵器とも呼ぶべきナニカは知らない。

 

デビルタンクなんてふざけた名前の割に洒落にならない性能だと思った。そして、このタンク。資料によれば複数台現存している。

 

「悪魔合体によって自己修復・自己改造・装甲強化の能力を発動してるのか。……いやいや、盛り過ぎだろう」

 

竜の鱗よりも硬い装甲とか、旧式の量産品とは思えない硬度である。加えて他二つのパッシブスキルの豪華さ。

……こういう手合いには、必ず一点だけおそろしく脆い“弱点”と呼べるものが存在しているのがお約束である。

そう簡単に『完璧な兵器』など作れるはずもないしな。

 

 

「たぶんゴリ押しでも行けなくはないんだろうが」

 

“残り”があるのを考えると、ここで無駄な消耗をするのは避けたい。

なので早速、こいつの弱点とやらを探してみる方向でウシワカにも指示を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー頭が痛い。

 

胸が痛い、腹が痛い、腕が痛い、足が痛い。

痛い痛い痛い……!!

 

全身を這うようにして痛みが迸る。

原因は明白、“ヒノカグツチとの同調エラー”によるものだ。

 

平素でも鈍痛が絶え間なく続くというのに、こうして激しい戦闘を行いながら魔法など使えば当然、悪化する。

それが、今俺の全身を苛む痛みの嵐だ。

 

 

本来なら同調エラーなどという不可思議な現象は起きるはずがない。ヒノカグツチに“合わせて”造られているのだから当たり前だ。

 

だが、『霊力欠乏症』を発症した場合は例外となる。

ヒノカグツチと同期するための霊力が不足することで、『拮抗』していた“俺”と“魔剣”の()()が曖昧になるのだ。

俺が己を認識する“自我”に魔剣の“システム”が流れ込む。

“己”ではない“ナニカ”が“脳”へと侵入した拒絶反応で全身に痛みが走る。

 

加えてヒノカグツチは“神”だ。

人の身体に神が侵入すればどうなるかなど、考えるまでもない。

 

キャパオーバーによる崩壊、或いは『破裂』。

 

今の俺はまさに“生”と“死”の狭間にある。

 

 

 

これをどうにかするには、『自身の霊力の上昇』が必須。つまり、強い自我でシステムの流入を食い止めるということ。

もしくは……専門機関による『調整』だが、こちらは断固として拒否したい。

 

そうなると必然、霊的研鑽≒精神修行をするしかないのだが。

 

……いざ実践してみると、想像を絶する苦行であることを思い知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

いつの間にか“二基”に増えた機銃掃射をなんとか躱しながら車体を隅々まで見て回る。

 

しかし、思いの外、機銃掃射が鬱陶しくてイマイチ成果が上がらない。

 

そんなこんなしているうちに、奇襲を仕掛けてきた『触手』によって拘束されてしまった。

 

「うおっ!?」

 

先程、機銃を再生して見せたあの蔦みたいなピンク色の肉である。チハの車体を侵食するようにウネウネと蠢き胎動する姿は率直に吐き気を催すほどのグロテスク。

 

十中八九、コレがチハと融合した“悪魔”とやらなのだろうが。あまりにも改造され過ぎてて元ネタが分からない。

資料の記述にあったとおり、複数種の悪魔を無差別合体させたキメラのようなものなのだろう。

 

「弱点とか、そういう項目はまだ見つけられてないんだよなぁ」

 

手持ちの回収済み資料には設計やら『自慢』やらが無駄に羅列されていて肝心の弱点が一言も書かれていなかった。

まったく使えない紙屑である。

 

と、無駄な思考を垂れ流している間に機銃がこちらへと真っ直ぐに向けられる。

ラクカジャの強化分でまず致命傷にはならないだろうが。痛手を負うのは避けられない。

 

さて、どうしたものか。

 

 

 

「見つけた、そこだっ!!!!」

 

そんな時、車体を挟んで向こう側からウシワカの元気な声と遅れて肉を断ち切る音が聞こえてきた。

その瞬間。

 

『ピギィィィィ!!!?』

 

醜い鳴き声のようなものがチハから発せられ、応じて俺を拘束していた触手が解けて床に垂れ下がる。

 

「っと」

 

着地してすぐに視線を向ければ、車体に絡み付いていた触手がジュウジュウと煙を上げながら干からびて黒ずんでいくのを見た。

 

どうやら、ウシワカが仕留めてくれたらしい。

 

「主殿ー!」

 

車体の影から身を出して手を振る彼女は笑顔だ。その頬に真っ赤な返り血が付いているのを除けば、無邪気な可愛さを感じさせる笑み。

 

「ご苦労さん、助かったよ」

 

「何のこれしき。黄色い目玉をちょいと斬ってみたら案外簡単に死んでくれました!」

 

明るい声でバイオレンスな内容を語るのはもはやお約束だ、見慣れた光景ゆえに今では愛らしさすら感じる。

 

とりあえず、死んで悪臭を放ち始めたデビルタンクから離れるべく、ウシワカへと急いで合流してそそくさとその場を離れた。

 

 

 

型月産ジャンヌの属性について、どれだと思いますか? ※結果は今後の参考にさせていただきます。

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