英傑召喚師   作:蒼天伍号

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NOCTURNE、EXTRA双方ともリメイクおめでとうございます(今更)。

……というかありがとうございます嬉しいです。今回も初手良妻でプレイさせていただきます(その先はry








狐神と犬神・一

ーー怨嗟の声が聞こえる。

 

この地のみならず、周辺地域からも『呪い』が集まってくる。

 

 

 

ーーなぜ、と思った。

 

“彼女”より役目を受け継いで久しく、これまで私は“夕凪”のために尽くしてきた。

それ自体は苦ではなく、なにより楽しい人の営みを見守る日々。

それがいつまでも続くと思っていたのに。

 

 

 

ーーしかし、この地には“呪われし霊場”が存在した。

 

それがいつ出来たかは知らない、気づけば放棄されており、それを形作る結界の管理を放棄したがゆえに“術式”は崩壊し、やがて周囲の“怨嗟”を集め出した。

怨み、妬み、嫉み、哀しみ、悪意、敵意、怒り、慟哭。

数多の負の感情が渦を巻き、一箇所に集められている。

 

これを見た私はかつてない恐怖を覚えた。

欠片たるこの身には薄れた記憶しか残らないが、“大陸にいた頃のオリジナル”や“女神であった頃のオリジナル”の記憶にもない、極大の呪いであると直感した。

 

だが、この渦には“要”足り得る存在が無かった。

 

かつてその役目を果たしていたであろう古い異国の秘術は崩壊して久しく。渦は、暴走するだけの“災害”とも呼べるシロモノに成り下がっていた。

いずれは集めた怨嗟の重さに耐えきれずに爆発四散し、周囲を焦土に変えて滅びる運命にある。

 

ゆえにこそ、ソレは“私を要石に選んだ”。

 

 

この地の“土地神”たる私は基点とし、より効率的に、能動的に怨嗟を集め出した。

 

 

“怨嗟の渦”が私の中に入ってきたあの日、あの時の苦痛は決して忘れはしない。

身に覚えのない呪いが内でのたうち回り、私の自我を怨嗟で塗りつぶそうとしてくる。

 

耐え難い苦痛と共に、私は“怨霊へと堕ちた”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクカジャによる加速を得て数分。

北区にある山の麓、以前に訪れた廃寺へと俺たちは到着していた。

 

「っ、無数の“悪魔の気配”がある! この先は其奴らのテリトリーじゃ!」

 

長い石階段を駆け上がりながら、オサキが告げる。

軽くスマホで調べたところ、確かに数え切れないほどの“悪霊反応”がある。

同時に、廃寺を中心とした異界化が為されていることも。

 

「だが“ウシワカの反応もある”。なら突撃あるのみだ!」

 

今更悪霊如きにビビってはいられない。

大切な“身内”がピンチなのだ、なりふり構っていられる状況ではない。

 

……とはいえ無策なわけでもない。

まずは、悪霊の代名詞たる“ムド”による事故死を防ぐためにテトラジャを全員に掛ける。

仲魔たちはそれぞれに呪殺への対抗策を有するが、人間たる俺は特に呪詛に弱い。つまりは俺への保険が主だ。

 

 

石階段を上りきった場所は、本来の庭ではなく。

異界化によって形成された古い墓地に変容していた。

枯れ木がまばらに立ち並ぶ墓地には濃い霧が立ち込め、その中から悪魔反応が無数に検知された。

 

……それらはとりあえずスルーして。

肝心のウシワカの反応を探る。

 

「このまま真っ直ぐ行った先に反応がある。悪霊たちは極力相手にしないで一気に駆け抜けるぞ!」

 

スマホには無数の反応が表示されており、これらを全て相手にするとなると相当な時間を浪費する。ヨシツネの実力がウシワカを上回っている以上はあまり時間をかけるわけにはいかず、ならば最優先にウシワカと合流し、そのあとでヨシツネを撃破……とは行かずとも、撃退ないし無力化し脱出なりなんなりした方がいい。

 

そう考えて、駆け出そうと大地を蹴り出した時。

 

プログラムのセンサーに新たな悪魔反応が検知された。

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、ほほう! 実に面白い。

()()()()を経ればこうも容易く()()できるとは。

じゃじゃ馬であった『泥』も、よく身体に馴染んでいます」

 

新たな反応がセンサーに掛かると同時に、前方の霧から聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。

しかし、それは本来なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。ゆえにこそ、思わず駆け出した足が止まる。

 

「この……声はっ!?」

 

予想外の出来事に、必死に考えを巡らせる俺を他所に。声の主はゆっくりと霧の中から歩み出た。

 

 

「お久しぶり、というほどでもありませんが。ええ。

こうして再び(まみ)えることができて光栄です。

()()()()・ヒデオさま」

 

狂気に塗られた笑みを浮かべるその顔は忘れるはずもない。

先日の鎌倉での戦いにおいて焼き殺したはずのダークサマナー。

涅槃台永楽慈。

 

確かに俺が殺した相手だった。

 

 

「フフ、なぜ生きているのか、そう言いたげな顔ですね。

ですがそれ自体は特に意味のないこと、この場においてはさして重要ではない事柄だ」

 

楽しげに笑う奴の首元には()()()()()()()()()()()()()が見られ、その姿も記憶にあるものとは若干異なっていた。

 

人柄と比べて不相応なほど清廉な袈裟は無く、剥き出しの上半身には()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そして、その肌は“青白く見える”。

 

 

「いや……お前の言う通りだな、理由に意味はない」

 

冷静に考えれば、悩む必要は無かった。

俺の邪魔をするならば倒すだけだ。

 

加えて、“こいつへの対処法は既に知っている”。

 

……今の俺がどれだけ扱えるかは不明だ、確かに修行しようとは決意したが、たかが数日の、しかもあの程度の悪魔戦闘ではさしたる意義はなかったように思う。

 

とはいえやるしかないのは変わらない。

 

「来い……ヒノカグツチ!!」

 

手を宙に突き出し、“念じる”。

呼び出すのは己の半身、“封”を解いた今ならば願うだけで呼び出すことができる。

 

自宅で試した時と同じように、目の前の空間が燃え盛り中から剣が現れる。その瞬間に、()()()()()()()()()()()()()()()()が耐えられないほどではない。

 

その柄を握りしめて、構える。

 

「いくぞ、ヒノカグツチ」

 

……。

 

「……ん?」

 

おかしい、ヒノカグツチが“反応しない”。

本来ならば自動的に『神性』に反応して解析を始めるはずだが……。

 

「……」

 

試しに『思考同期』の度合いを高めてみるが……

 

「神性反応なし……?」

 

返ってきた“データ”は、()()()()()()()()()()という探知結果だけだった。

 

 

 

一方、一連の俺の動作を見ていた涅槃台は僅かに()()()()()()

 

「んー? 如何なされたのかなヒデオ殿?」

 

皮肉げな笑みを浮かべて奴は宣う。

 

……しかし、意味がわからない。以前の戦いでは主神級とさえ出ていた神性反応が全く無いなどーー

 

「まさか……食っちまったのか?」

 

最初に奴が言っていた『同化』という言葉、そのままの意味と受け取るならばーー

 

「ええ……()()()()()()()()()()()

 

にっこりと、心底嬉しそうな表情で奴は頷いた。

 

「っ!!」

 

ゾワリ、と背筋を駆け抜ける悪寒をなんとか抑え、すばやくスマホのスキャンを涅槃台へと掛ける。

 

画面に表示されるのは“超人”の二字。

あれだけのエネルギー反応を放ちながらも、あくまで奴は人間であるという解析結果。

 

そのことに内心舌打ちした。

 

「しかし……」

 

チラリ、と仲魔たちを見ながら呻く。

神性を有しないならば()()()()()()()使()()()()

初手から俺の切り札が封じられた。

 

加えて、スキャンした涅槃台のステータスは“前回を上回っている”。

前回使った策はおそらくは役に立たない。

 

依然として涅槃台はニヤニヤしながらこちらの様子を伺っている……否、余裕を見せている。

さらには、いつの間にか奴の周囲には悪霊カテゴリの悪魔たちが大量に集まっており、奴に侍るようにして待機していた。

 

 

最悪の展開だ、悪霊だけならばどうとでもできるものを。パワーアップした涅槃台まで相手にするとあれば無視して駆け抜けることも難しいだろう。

なにより、彼我の戦力差は歴然である。これではウシワカを助けるどころか俺らが全滅しかねない。

 

 

そんな焦る俺の腕へと、こつん、と小さな拳が当てられた。

視線を向ければ例によってオサキがそこにいた。

 

「ここが使い所じゃな、主よ?」

 

好戦的な笑みでこちらを見つめる彼女。その目は、“信頼”の色を帯びている。そのことに無意識に腰が引けた。

 

それを目敏く見抜いたオサキが一転、むすっとした顔になって腰を蹴飛ばしてきた。

だ、だから腰はやめろと……!

 

「たわけが、貴様はワシの主、マスターたるサマナーじゃ。ドンと構えておれば良い。

今、気張るべきはワシ()なのじゃからな!」

 

むふーん、と効果音が付きそうな顔で(無い)胸を張るオサキ、とその横にふわふわと移動してきたイヌガミ。

 

「話ハ聞イテイル。ヨウヤク鎖ヲ解ク気ニナッタヨウダナ」

 

どこか嬉しそうな声音に、複雑な内心を隠す。未だ、彼、彼女らの“信頼”に応えられるだけの自信が俺に無いからだ。

 

だが、ここで彼女らの枷を解かねば負けるのは事実。

 

俺は半ばヤケクソになりながらも彼女たちに掛けた“封”を解いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー魔力で編んだ“鍵”を携えて、(あるじ)が手を伸ばす。

 

鍵が近づくにつれて“私”の胸元に“錠前”が浮かび上がり、全身に広がる“鎖”が実体化する。

 

「……ちょっと痛いぞ?」

 

ーー心配そうな瞳をした主が語りかけてくる。だが、そんなのは些事と返答するより他ない。

今更、多少の痛みで泣き喚くはずもなし。

 

それでもやはり申し訳なさそうな顔をした主は、意を決して私の胸元に現れる錠へと鍵を挿入した。

 

「んっ……!」

 

ーー瞬間、僅かに、ズキリ、と痛みが走る。そしてカチャリと解錠の音が響くと共に鎖は砕け散った。

応じて、私の中に“清らかなる神気”が巡り始める。それはこの夕凪山において遥か昔から崇め奉られてきた“古代神”、“原初の自然神”の神気に他ならない。

 

かつて、人が“国”を持たず、自然と共に歩んでいた時代の力。即ち、自然を司る“権能”。

()()から受け継いだ“夕凪神”としての力。

 

そして、後代において修験者たちの信仰を受けて成立せし“夕凪権現”としての“権能”。

 

それら全てが、正当な所有者たる“私”の元へと返ってくる。

 

「ーーおかえりなさい」

 

懐かしい気持ちを噛みしめながら、今、数百年ぶりとなる“女神”としての私を解放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗だ……」

 

目前にて、『女神への変生』を果たした仲魔を見つめ呟く。

 

幼かった容姿は瞬く間に“妙齢の美女”のものへと変化、応じて小さな巫女装束は“華美な装飾を身につけた神衣”に再構築された。

 

その身から溢れ出る“神気”は紛れもない正当なる“女神”のものであった。

 

 

「ーー主よ」

 

膨大な神気が可視化された“後光”に目を細めていると、彼女の方から穏やかな声が聞こえてきた。

声音もいつもの小生意気なロリボイスではなく、威厳すら感じられる美声だ。

 

「どうした?」

 

「改めて感謝するぞ。貴様の仲魔となって幾年、ようやく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

言って、にっこりと微笑む彼女は率直に“胸が高鳴る”ほどに綺麗だった。

 

「あー……どうも? いや、感謝なんていい。今は奴らをーー」

 

そのことが気恥ずかしくて目を泳がせながら話題を変える。

 

「そうじゃな、では……行くとするか」

 

そんなヘタレな俺の反応を気にすることなく、優雅な仕草でオサキは涅槃台と悪霊たちが群れる方へと振り向いた。

 

 

 

 

「おお……おお!! 素晴らしい!!!!

この神気、神力、美貌! どれをとっても不足はない! 古の時代、未だ人間たちが自然と共にあった頃の“(ソウル)”そのものではないか!!

ハハッ、やはり私の目に狂いはなかったようだ! 夕凪神がこれほどまでに…………()()()()()()()()とは!!」

 

女神となったオサキを見て、しかし。

涅槃台は()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「化け物が……」

 

悍しくも醜い“外道”の姿に吐き気すら催す。

そんな俺を他所に、オサキは優雅なままで“ひらり”と両手を広げた。

 

瞬間。

 

 

『ギャアァァァァァァアアァ!!!?』

 

涅槃台たちの方向から夥しい数の悲鳴が発せられた。

慌てて視線を向ければ、そこには“無数の光柱に身を焼かれる悪霊たちの姿”があった。

 

霧を物ともせず光り輝く柱は、スキャンを掛けずとも凄まじい威力を持った魔法であると理解できた。

即ち『上級破魔系魔法(マハンマオン)』に相当する破邪の閃光である。

 

 

「ぬぅ!?」

 

例によって涅槃台にもソレが放たれるが、さすがに“人”である奴には威力が軽減されてしまうらしく、両手を交差したままに光柱を耐え抜いた奴の姿があった。

 

だが、奴の周りで蠢いていた無数の悪霊たちは一瞬にして消え去っており、それだけでも戦況としては十分な結果と言えた。

 

「あとは、貴様のみじゃ」

 

マハンマオンを放ったオサキは、さして消耗した様子もなく憮然とした態度で涅槃台を見据えている。

未だ全身から魔力が溢れ、応じて“俺から供給されるMAG”も増加していく。

当然ながら凡夫の俺は消耗からの疲労感を覚えるが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まだ、まだだ」

 

オサキだけではおそらく、足りない。

呪いに抗っている彼女は、本当の意味での全力が出せず、涅槃台は必ずその隙を突いてくるだろう。

ならば、もう一手、彼女の力となる存在を解き放たねばなるまい。

 

“その存在”へと振り向く俺に合わせて、ふわふわとイヌガミが傍に近寄ってきた。

そして首をこちらに向けて催促する。

 

「サア、解ケ」

 

その言葉に自然と顔が強張る。

オサキの方は彼女自身が力を制御してくれるものの、イヌガミは逆に俺の方が手綱を握ってやらねばならない。そうしなければ俺の方が“食われてしまう”からだ。

 

「……頼むぞ」

 

しかし、彼とて俺の仲魔だ。

心配こそあれ“敵視”はしない。

 

要は俺がうまくやればいいだけのことだから。

 

気を引き締めて、いざイヌガミの首輪へと手をかけ、握り。

それを引きちぎった。

 

 

 

 

「グ……オォォォォォォ!!!!」

 

瞬間、一瞬だけ苦悶の表情を浮かべた彼は空に向かって雄叫びをあげた。同時に、彼を中心として“闇色の魔力”が可視化され柱を形成。天高く噴き上がる。

 

それに応じて、イヌガミの肉体が生々しい肉音を立てながら変形していく。

 

小さな前足は、雄々しく逞しく大地を踏み締めるモノに。

細長い胴は、猛々しくも勇ましい猛獣のモノに。

その端からは立派な白毛に包まれた長く大きな尾が。

 

黒く、どこか可愛げのあった頭部は“怒りに染まり、敵意と憎しみのみを発する鬼神のごとき風貌へ”。

 

本質を抑えるための鎖は今解かれ。

ここに、古き“祟神”。古き“呪具”。邪を以って“正を問う”荒神たる異端の権現、『四国生まれの蠱毒兵器』が再臨した。

 

 

 

 

 

「フゥゥ……!

 

感謝するぞ、サマナー。こうして久方ぶりに力が振るえること、実に嬉しく思う。

かつて共に駆けた日々のように、蹂躙し、破壊し、喰らい尽くすことで我らが敵の悉くを滅ぼそうぞ」

 

力を解き放った()()は、取り戻した四肢で荒々しく大地に降り立ち。期待と戦意に満ちた顔でこちらを見つめた。

 

「ああ……敵はまさしく外道の権化、お前の“呪詛”で本物の“悪意”というのを教えてやれ」

 

「ググッ……分かった」

 

唸るような笑いを零して、彼は大地を蹴った。

地面をクレーターのように抉ってしまうほどの初動、それによって生じるスピードはもはや音速に等しい。いや、加速も含めればそれ以上だ。

文字通り弾丸となった彼が向かう先は、当然、邪魔なあのダークサマナー。

 

「うっ、く……!」

 

犬神の動きに合わせて疲労感は倍増する。

仮にも“二体の権現”を召喚しているのだ、寧ろ、これで気を失っていないあたり、存外に俺も成長……もとい“かつての力を取り戻しつつある”ようだ。

 

「あとは頼むぞ……二()とも」

 

俺の役目は、なんとかこの疲労に耐え抜き彼らを現界させ続けること。それを果たすべく、俺は膝を突きながらも必死に意識を保とうと心を奮い立たせた。

 

 








僕のお姉ちゃんのアンケートはそこまで明確な答えは求めてないので気楽に答えてやってください。
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