英傑召喚師   作:蒼天伍号

38 / 104
皆ね? 気付いてると思うけどね? 敢えて言うね?
曼荼羅の某アヴェ見た時ね? オレね?

「ホアァァァァァァァァァアアアアアァァァアアァアアアアアアアアアア!?!?!?!?!?」

……って、なった。
その後の一枚絵で無事に死んだね。仕方ないね。
仕方ないからこれからは地縛霊として頑張るね(?)

※特別意訳:PU2はよ。






東京・三

 泣き腫らす少女を宥め賺し、憎悪の視線を向けるメカクレ少女をなんとか落ち着かせること数十分。

 

 

 ようやく落ち着いた両名を前にして、遂に理性的な会話をすることができた。

 

「えー、と。結局、なんで襲ってきたんだ?」

 

 腕を組んで顔を背ける少女へと視線を合わせて問いかける。

 

「くたばれオッサン」

 

「オッ!?」

 

 なるべく穏やかな口調を心掛けて声をかけた俺に、ちらり、と視線を向けた少女はそう応えた。

 

 うーん……このメスガキ。

 

 

「お館様、やはりこの者共はここで斬り捨てるべきでは?」

 

 そして、メスガキの隣で終始俺を睨み続けるメカクレを見てチヨメちゃんが冷静に告げてくる。

 いや、あのだからね? 殺しちゃダメだって。

 戦国ムーブで進言されても困る。

 

「俺に発情しやがったロリコン野郎に話すことなんざねぇよ」

 

「ぐ、ぬ……そ、それはお前が仕掛けた術だろうが!」

 

 もちろん、俺とて常日頃から女性に劣情を向けているわけではない。あの意思を無視した欲情の感覚からして十中八九何かの術か“異能”であるのは明らかだ。

 

 

 取りつく島もないメスガキに四苦八苦する俺を見て、メカクレ少女が小さく溜息を吐いた

 

「……ハァ、幻女(まほろめ)。この人、もう発情してないみたいだから大丈夫だよ」

 

 そして先程までの“敵意”を緩めて傍のメスガキに語りかける。

 

「……」

 

「貴女がどうしてもって言うから“試した”けど、あれだけ戦えればもう十分なんじゃない?」

 

「……ちっ! 仕方ねぇな、分かった。分かったよ鈴女(すずめ)

 

 幻女と呼ばれた少女は心底嫌そうに舌打ちをした後、渋面で口を開いた。

 

「オレは男、特に“大人の男”が嫌いだ。ああ、見るだけ、聞くだけ、その概念を感じるだけで虫唾が走る。

 (オレ)たちの(はら)に種をぶち撒けることしか考えてねぇ万年発情期のクソ猿どもだ!

 

 ……そんなクソ共の一匹が同じエリアに配属されたと聞きゃあ……気に食わねぇのは当たり前だろ」

 

 深い、深い()()を込めた声で彼女は語った。

 単純な好き嫌いとか男女差別とかそういう次元じゃない。あの目は心の底から“男という概念を嫌悪している”。

 殺したいほどに。

 

「……だから、闇討ちで殺そうと?」

 

 俺の問いに幻女は鼻で笑った。

 

「別に殺しゃしねぇよ。……んまぁ、()()()()()()()は頂こうと――」

 

 そこまで言いかけた幻女の頭部に、鈴女と呼ばれた少女の手刀が振り下ろされた。

 ズドン、と重音が轟くほどの一撃が頭頂部を凹まさんばかりにめり込む。

 

「ぎゃっ!?」

 

「言い過ぎ。そこまでするとは聞いてない、私はただ腕試しをするだけと聞いた」

 

 平坦な声音でつらつらと簡潔な言葉を発した鈴女は続けて、ちらり、と俺を見た。

 そこには最早俺への“憎悪”は無く、初見と同じように“完全な無関心”だけがあった。

 

「突然の襲撃、失礼致しました。一応、同じエリアを担当する者として改めて自己紹介しておきます」

 

 実に礼儀正しいのだが抑揚の無い声ゆえに全く謝られた気がしない。いや、別に俺も()()()()で死ぬつもりはないからいいけどさ。

 ……若干、危なかったのは秘密である。

 

 複雑な気持ちになる俺へとくるりと振り向いた鈴女は、改まったように足を揃え、両手を下方で丁寧に合わせてからペコリ、とお辞儀した。

 

「“壬生一族(みぶいちぞく)”にて当代の“依代”を務めさせていただいております、鈴女と申します」

 

「っ!」

 

 壬生一族、その名前を聞いた俺は僅かに驚いた。

 

 壬生一族と云えば、葛葉と並んで國家機関に仕えている“異能集団”。

 壬生の名を冠する通り、彼女たちは“常陸国風土記(ひたちのくにふうどき)”に語られる“夜刀神(やとのかみ)”を使役する土着のサマナー集団でもある。

 風土記の記述には、夜刀神が住み着いていた土地の国造が彼の“蛇神”を脅して追い出した……と記述されているもののこれは厳密には間違いである。

 

 元々、夜刀神は同地の土着神にして土地神。つまりはその地の農作やら河川やらを管理する御霊であり、失われれば一時的にせよ同地の自然環境にまで影響を及ぼすは明白。これを追い出すなど正気の沙汰ではない。

 その為、この地の者たちは夜刀神を追い出してなどおらず国造から民草に至るまでこの神を奉じていた。

 

 また、夜刀神と云えば“見ただけで子々孫々まで呪い殺す”という凄まじい神気の持ち主であり、風土記にあるように「打ち殺せ」などと命じたところで返り討ちにされるのが関の山。

 そんな無為無駄な犠牲を払うよりも、かの神を“崇め奉り”その神気の恩恵に預かった方がよっぽど建設的だ。

 

 無論、当時の人々もそのように考え壬生氏の中でも“巫女”の適性を持つ女性を“依代”とし代々、夜刀神の力を借り受けてきた。

 その力は凄まじく、当時の國家機関に相当する組織にも重要視され古くより同組織に仕えてきた。

 また、巫女を輩出・選定した者たち、即ち“神官”の家系にあたる者共においてもなんらかの形で夜刀神の恩恵が与えられ自然、この家系含めた一部の者たちは“一族”を成し今日に繋がる“壬生一族”へと発展した。

 

 

 この壬生一族の中でも、特に有名なのは“十四代目ライドウ”と同時代に活躍したとされる“殺眼の綾女”である。

 彼女は同一族の“女性”たちを部下として率い、國家機関からの命に従い数々の悪魔やらダークサマナーたちを討ち果たしたという。

()()()()に発生した“秘密結社コドクノマレビト事件”においても獅子奮迅の活躍をしたものの、同結社の副首領・倉橋黄幡(くらはしおうはん)と激戦の末惜しくも敗れ戦死したという。

 あのライドウも彼女には尊意を示し、近くに来た際は必ずその墓前へと参ったという。

 

 

 

 ――そんな壬生一族の一人が、しかも当代の“巫女”たる女性がまさかこのように幼い少女であるとは。

 なんとも()()()話だ。

 

 

 

 

 

「そして、こちらが幻女」

 

「フンッ!」

 

 傍のメスガキを手で示しながら紹介する鈴女に対し、メスガキ……もとい幻女は鼻を鳴らしてそっぽ向いた。

 

 鈴女が巫女だとすると幻女とやらは彼女の部下という立場なのだろうが。あまり上下関係がしっかりしているようには見えない。

 まあ、こんな年頃の子たちがちゃんとした上下関係を作っていたら逆に心が痛むだろうが。

 恐らくは“友達”のような間柄なのだろう。

 

「まさか壬生の巫女と会うことになるとはな……俺は奧山秀雄。彼女は俺の仲魔だ」

 

 自己紹介を受けたならこちらも応えねばならない、と語ってみたのだが。

 

「存じています。迫司令から同エリア担当のサマナーの情報は受け取っておりますので……奥山様にも同様のデータが届いていたと思いますが?」

 

「え……?」

 

 慌ててCOMPを弄って確認してみると、たしかに真琴から本作戦に参加するサマナーの情報が送られていた。

 そんな俺の様子を見て、鈴女が小さく嘆息する。

 

「まさか、作戦データの確認も出来ていなかったんですか? ……大人として恥ずかしくないんですか?」

 

 やはり抑揚の無い声であるものの、どこか侮蔑を含んだ言葉。……君も相当に毒舌だな。

 

「依頼に関するデータの確認はサマナーの常識ですよ。それもこんな大規模の作戦ともなれば情報の不足は自分の死のみならず同僚たちの死にも繋がります。……しっかりしてください」

 

「ご、ごめん……」

 

 淡々と事実だけを告げてくる鈴女の気迫にやられ思わず謝ってしまった。いや、実に正論ではあるけども。

 そもそも、その同僚を殺す気で襲ったの君たちだよね?

 

 謝る俺を見て再び小さく嘆息した鈴女はくるりと反転して、僅かにこちらに振り返る。

 その横顔、瞳はやはり“無関心”に染まっている。

 

「それでは私たちも仕事がありますので。幻女」

 

「……おう」

 

 名前を呼ばれ、先を歩く鈴女の後に続いて幻女もこの場を去ろうとする。その背に俺は声をかけた。

 

「あんま気張り詰め無いようにな、適度なリラックスも大切だぞ」

 

 立ち去る鈴女の背が、なんだか“焦っている”ように見えてせめて助言でもしてやろうという意図だったのだが。

 

「余計なお世話です。貴方こそ、精々死なないように気をつけて」

 

「そのままくたばっちまえ!」

 

 冷徹な声音で吐き捨てるように述べた鈴女は“歩法”のようなものでその場から消えるように去り。幻女に至っては捨て台詞のようなものを残してやはり歩法で消えた。

 

「随分と、嫌われてしまったなぁ……」

 

 俺の対応は無難だったと思うんだがなぁ、と残された俺たちはなんとも言えない気持ちを抱える。

 

「……あの娘、あの歳で中々のやり手でした」

 

 冷静に告げてくるチヨメちゃんに頷く。

 

「そりゃそうだろ。なんだって壬生の巫女、夜刀神の神体を“その身に埋め込んだ”存在だからな」

 

 ――その真価まで発揮されてたら、俺たちは死んでいただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ヒデオたちのもとから去った鈴女たちは、壬生一族で習った“隠形”によって衆目から隠れながら、歩法によってビルの上を飛び移り移動していた。

 

「なぁ、鈴女! ちょっと速すぎるって!」

 

 ぐんぐん、と空を駆けるようにして先を進む鈴女の背に。幻女は息を切らしながら声を投げた。

 

「速やかに該当地域を浄化する。それが私たちの任務だったはずよ?」

 

「そ、そうだけど……ちょっと休もうぜ!」

 

 幻女以上の速さで進む鈴女はしかし、至って冷静な声で返答する。そこには息切れなどなく未だ豊富な体力を温存していた。

 対し幻女は今にも墜落しそうなほど消耗し、息切れはもとより身体中から汗が滲んでいた。

 

「だめ」

 

 そんな疲労困憊の相棒の願いをバッサリと斬り捨てる。

 

「なっ!? おい!」

 

「いったい、誰のせいで遅れてると思ってるの?」

 

「うっ」

 

 不満を漏らす幻女に、鈴女は強い口調で応えた。

 そして畳み掛けるように続ける。

 

「任務外の消費時間は約五十分、これは貴女の我儘の結果よ? 私たちには本来、サマナーに攻撃を仕掛ける命令は下っていない」

 

「悪い……ごめん」

 

「……貴女の“想い”は十分に分かってる。その上で、抑えて欲しいと思ってるの。これから私たちは“上に”行かないといけない。その時に今回のような事を繰り返されたら壬生は終わる。

 綾女様を失った私たち壬生一族がどれだけの苦境に立たされているのか、貴女だって知ってるでしょう?」

 

 ――加えて、“コドクノマレビト事件”では配下であった壬生の女も相当数失うという痛手を負った。

 この結果を受けて國家機関は、壬生一族を“降格”させた。実力主義で国家第一の機関からすれば当たり前の沙汰で、理屈は私たちとて理解している。だが事実として戦力も食い扶持も失った私たちは苦しい生活を強いられ、それは私たちの代になっても回復していない。

 これは壬生の人間なら誰しもが知っている“失態”であり、サマナー界隈でも情報通なら既知の事実だ。

 故にこそ、今の壬生は()()()()()()

 

「……」

 

「九十年よ、九十年経っても壬生一族は立ち直れていない。どころか緩かな衰退の道を歩んでいる。

 それを、私たちで変えるの」

 

 私は失敗しない。負けない、屈しない、死なない。

 

 壬生一族歴代の巫女の中でも“最高の依代”たる私は絶対に負けられない。

 絶対に、失敗するものか。

 

 私は()()()()()()

 

 不甲斐ない先祖、結局は()()()()に負けた腑抜け。今日まで続く一族の衰退を招いた()()敗北者。

 

 地獄の底で見ているといいわ。貴女の失敗を踏み越えて私たちは壬生一族を立て直してみせる。

 必ず、私たちが壬生を国家最強の退魔組織にしてみせる。

 

 

「だから……お願い。上に上り詰めるためには貴女の助けが必要なのよ幻女」

 

「っ……し、しょうがねぇな! わぁったよ! ……死ぬ気で追い掛ける」

 

 私の言葉にほんの少し頬を赤らめて幻女は吠えるように応えた。

 

「じゃあペース、上げるわね」

 

「ハァ!?」

 

「“あの男”に、獲物を取られてもいいの?」

 

「っ!!!!」

 

 その言葉一つで、幻女は目の色を変えた。

 “憎悪”に煮え滾る色へと。

 

()っっっっっ()ぇに負けねぇ!」

 

「その意気」

 

 私は笑みを溢して彼女を見た。

 ……少し()()な鼓舞の仕方をしてしまったけど、これは()()()()()だ。

 

 私たちは()()()()()()()()()()()

 

 使えるものはなんでも使って、前に進まねばならない。

 

 全ては壬生一族繁栄のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――鈴女たちが去ってしばらく。

 

 時間もちょうどいいとして俺たちは休憩を取っていた。

 サマナーや悪魔といえども、知性と理性、心を持つ存在だ。

 適度な休息は必要である。

 

「……何度見ても、この東京とやらの繁栄ぶりは圧倒的でござるな」

 

 周りに聳えるビルの群れを見上げながらチヨメちゃんは感嘆の声を漏らした。

 側から見ると完全に田舎から来たおのぼりさんだが、白ワンピという服装のチヨメちゃんを見ては微笑ましさが先行してしまう。

 

 ちなみに今は、辺りをビル群に囲まれた小さな公園のベンチに腰掛けている。都会の中のオアシスとでも呼ぶべき公園である。

 昼時からズレているために今は人の気配も皆無だ。

 

「現代人の俺でも来る度に思うよ。それもこれもこのビルの数……あ、ビルって分かる?」

 

 戦国時代出身のチヨメちゃんに確認するように問い掛ける。

 

 ―ーウシワカの頃から分かっていたことだが、英傑とやらは()()()()()()現代知識の付与が為されない。

 これは恐らく、召喚サーバーに相当する()()()()()に関係している。聖杯とやらは英霊召喚にあたってサーヴァントに現代知識を一通り叩き込むという話だが。

 英傑は、本当に必要最低限の“常識”くらいしか付与されない。

 例えば現代の“死生観”だとか“法律”だとか。

 もっと分かりやすく言うと「現代では簡単に人殺しちゃダメだよ?」くらいな感じ。

 他の常識についても実にフワッフワした認識しかなかった。

 

 故にこその問いであったのだが、チヨメちゃんは少しムッとした表情で抗議した。

 

「お館様、拙者を侮り過ぎでござるぞ? アレなる石の塔がビル……でござろう?」

 

 ビルの一つを指差しながら少しドヤ顔で応えるチヨメちゃん。

 

「そして、道を高速で行き交う馬なき車は自動車。自動車と同等の素早さにて走る二輪の車はオートバイ。時折、通過する二輪で足を忙しなく動かしているのが自転車。

 ……ふふ、拙者とていつまでも無知ではないのでござる」

 

 してやったり、といった様子のチヨメちゃん。頬の緩みが抑え切れていない。

 かわいい。

 

「えらい、えらいねぇチヨメちゃん」

 

 思わずその頭を優しく撫でてしまうのも仕方ない。

 

「お、お館様、ここは公共の場にて!

 

 ……流石に恥ずかしいでござる……」

 

 ござるござる、と慌てながらも逃げようとしないあたり満更でもないらしい。良い良い、よきにはからえ〜。

 

 

 

 一頻り撫で撫でした後は、コンビニで買ったウ◯ダーを啜る。

 本当なら一服もしておきたいが、都内ではヤニのある方の一服は厳しく取り締まりされているので我慢である。

 ……発狂しそう。

 

「あの、お館様」

 

 二人仲良くベンチに腰掛けていると、傍のチヨメちゃんがコンビニおにぎり片手に心配そうな視線を向けていた。

 

「どした? あ、他に買ったお菓子も全部あげるよ?」

 

 てっきり、同じくコンビニで買ったお菓子類が欲しいのかと思い手に持つビニール袋を彼女に差し出した。

 

「いえ、そうではなく……昼食は、その心太で済ませるつもりでござるか?」

 

 心太て……この素晴らしく“効率的”は栄養食をご存知でない?

 

「心太じゃないけど……これ、結構美味しいよ?」

 

 食べてる時はあんまり気にしてないけど、と空になった容器をぷらぷらと振って見せる。

 

「それだけではお腹が空くのではござらぬか?」

 

「あ、そういう? うーん、仕事の時は大体コレで済ませちゃうからなぁ」

 

 長期に渡る任務、一日掛りで挑む依頼など気の抜けない、或いは“時間が惜しい”時は簡単な栄養補給で済ませている。

 

「いざとなれば、“魔剣”を稼働させてあらゆる栄養素をエネルギー変換できるし」

 

「よ、よく分かりませぬが。もう少しちゃんとした食事をなさった方が良いのでは……?」

 

 まあ、“人間としては”それが正しいのだろうが。

 ここ五年ほど、食事自体にあまり“意味を見いだせない”。栄養が必要ならその分摂取すればいいしエネルギーならばとりあえず“燃やせば”事足りる。

 

「……というか、チヨメちゃんの方がよっぽど栄養足りてない体つきじゃない?」

 

 俺の言葉にチヨメちゃんは一瞬で頬を赤らめる。

 

「ど、どういう意味にござるか!? どこを見て言っておられる!?」

 

 直後、バッと両手で身体を抱いた彼女は少し怒ったように応えた。

 

「あ、いや……別にそういう意味じゃ、俺は“大きさ”とか気にしないし」

 

 寧ろ小さい方がいいまで……げふんげふん!

 大きさで価値を計るのは無意味だ。

 

 というかやっぱり小さい自覚あったんだね……。

 

「しかも“今の姿”って全盛期の姿なんでしょ?」

 

 英傑、に限らず()()も同じと聞くが。

()()()()彼らは“全盛期”の姿を取って現れるという。ウシワカに関しては、義経とは別枠の『牛若丸』としての全盛期の姿だろう。

 

 つまりチヨメちゃんの全盛期はひんぬー。

 

「ぬ、ぐ! ……お、お館様も、その。やはり大きい方を好まれるのでござるか?」

 

 口惜しげな顔の後、急に不安そうな目つきで問うてくるチヨメちゃん。な、何だその反応は?

 

「いや、だから大きさ気にしないって……うん」

 

 しかしこうも“乳”の話題ばかり出されると嫌でも乳を“見て”しまう。うん、改めて見てもチヨメちゃんの乳は小さい。小さくて小ぶりで薄い。

 ……良い。

 

 というか、寧ろこっちに見せつけるように身体くねらせてないか?

 そう疑問に思ってチヨメちゃんを見てみると――

 

「お館様も、好きものにござるなぁ……(少し得意げな顔」

 

 こ、こいつ……!

 主を謀るとは不敬なくノ一め。こうなったらヤケだ、と開き直って凝視する。

 

「そ、そんなマジマジと見ないで欲しいでござる。ほんの冗談というか……そう真剣(マジ)な反応をされると困るでござるよ」

 

 数分ほど経過してからチヨメちゃんが恥ずかしそうな声で呟いた。しかしやめない。

 

「お、お館様? ……ま、まさか本当に拙者の色香に惑わされて――」

 

 不安そうな顔から一転、本気のトーンでそんなことを宣い始めるチヨメちゃん。ちょっと自信満々過ぎやしないですかねぇ。

 とても生前にくノ一やってたとは思えない発言に内心苦笑する。

 

「ふふふ……そんなに言うなら、お望みどおり美味しくいただいてしまおうか」

 

 両手を広げて不敵な笑みを浮かべる。

 

「お、おやめくだされ! 拙者は、お館様の僕なれば……!」

 

 必死に止めようとするチヨメちゃんの手を払い除け、その脇腹へと手を伸ばし――

 

 

 

 

 ――存分にくすぐった。

 

「ひゃい!? ひっ、ひぐっ!! お、お館様、おやめ、おやめくださ……ひゃわっ!」

 

 ようやくふざけていることに気づいたのか安堵の笑みを浮かべながら同時に笑いを堪えようと必死に耐え始める。

 

「これでもかー」

 

「ひっ、ひははは!! お館様ぁ!」

 

 ならば、と脇も含めてひたすらにくすぐると。次第に堪え切れなくなったのか声を上げて笑い始めるチヨメちゃん。

 かわいい。

 

 なんというか初対面から思っていたのだが。

 彼女、身長ゆえか細身ゆえかなんだか“子どもっぽい”のだ。いや、雰囲気とか性格とかはしっかりと大人ではあるのだ。

 しかし、振る舞いとは裏腹に純粋すぎる生真面目さや時折顔を出す天然っぷりのギャップがやけに可愛く見えて仕方ない。

 

 こうして戯れてみると、完全に子どもと遊んでいる気分になる。……これは中々に得難い“癒し”ではないだろうか?

 

 そう思った俺はくすぐったり、頭を撫でたり、やっぱりくすぐったりとそのまましばらく公園でチヨメちゃんと戯れていた。

 

 

 




【あとがき】
壬生一族はライドウのコミカライズで出てくる一族です。『コドクノマレビト』ってやつですね。
セイメイ()やらヨシツネやらヒノカグツチやら出てきて終始テンション上がったコミックだからオヌヌメ。串蛇ちゃん可愛い。

モー・ショボーとかアリスとかも出てきてソッチの需要もあるよ!
曼荼羅でホットな黄幡神も出るよ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。