英傑召喚師   作:蒼天伍号

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ふと、あらぬ誤解を受けそうだと思ったのでとあるキャラの素性を明かそうと思いました。
今後、戦闘に出す際にも関わる話だし今後の展開的にも問題ないかなぁとかも思いまして(言い訳

前話に続いて説明会に近い話です。次話から段々と畳みに入りたいと思ってます。




夕凪備忘録と星の使徒

 ──至徳二年、西暦1385年のこと。

 

 那須野において、瘴気を放ち生き物を殺し続けていた『呪石』は同地を訪れた高僧・玄翁和尚によって打ち砕かれた。

 周辺の人々によって『殺生石』と名付けられたこの石の源身は、上皇の寵姫であった『玉藻の前』である。

 

 玉藻の前とは、伝説に数多語られる古き妖狐の化身である。

 曰く、中国の古代王朝“殷”の紂王に寵愛を受けた后・妲己こそが玉藻の前と同一視される九尾の狐であるという。

 その後、インド、再び中国へと渡り歩きながら悪事の限りを尽くし。遂には若藻(わかも)を名乗る十六歳ほどの少女に成り代わって遣唐使の船に同乗、日本へとやって来たのだ。そして宮中へと潜り込み上皇の目に留まる。

 器量良く、愛らしい若藻はすぐに上皇の寵愛の対象となりたちまち寵姫となった。

 

 

 玉藻の前は、上皇の溺愛を受けながらもその精気を吸い取りその命を奪わんとしていた。これに気づいた『安倍の陰陽師』によって“妖狐”としての正体を暴かれ宮中から逃走。那須の地において再び悪事を働き始めていた。

 同地の領主はこれを見兼ねて朝廷へと討伐を要請、これに応えて編成された討伐隊は玉藻の前を激戦の末に見事討ち取った。

 ──しかし、古より生き続けた妖狐の執念はしぶとかった。

 

 無数の矢尻に貫かれ一太刀のもとに斬り捨てられた遺骸は石へと変じ、その身から瘴気を放ち始めた。触れるモノ全ての命を奪い殺す毒の気を。

 

 それからしばらくの間、周辺の人々を恐怖に陥れていた殺生石であったが。上述の和尚の手によって遂に打ち砕かれた。

 ──そして、砕かれた石の欠片は日本全国に飛び散った。

 

 欠片の落下地は主に“高田”という地名を持つ三ヶ所であるとされる。しかしその他にも欠片が落着したとされる伝説を有する地は存在し、飛騨の地においては『牛蒡種(ごぼうだね)』、四国においては犬神。

 そして、上野国(こうずけのくに)ではオ(・)サ(・)キ(・)と呼ばれる怪異に変じたという。

 

 ──このうち、四国の犬神は、ヒデオが仲魔とした飢怨権現こそ呪石を受け継ぎし当人である。

 

 ──また、人知れずして呪石が落下した土地もまた数多存在していた。

 

 その一つこそが『夕凪』である。

 

 

 当時、同地及び夕凪山の最高神として長く信仰されていたのは山神として崇められた『夕凪神』という女神であった。

 その歴史は古く、朝廷の支配が確立するよりも昔、人々が自然と共に生きていた古代にまで遡ることができる。

 

 自然現象の具現、神秘色濃き山の擬神化。即ち原始信仰の対象とされたのが夕凪神である。原始の神に性別の有無はさしたる意味を持たないが、この地においては“数多の生命を生み育む山の恩恵”を信仰の主体としたことで女神へと変生していた。

 それ故に同女神は比類なき『母性』をもって大いなる慈愛を惜しみなく与える慈母としての性質を獲得していた。

 ──例として、信(・)仰(・)を(・)失(・)っ(・)た(・)狼(・)神(・)を(・)神(・)使(・)と(・)し(・)て(・)保(・)護(・)す(・)る(・)、異常気象に苦しむ民へと自身の霊を削ってまでささやかな食物を送り届けるなど。

 

 そうなれば当然、自らの霊地に落着し、“オリジナル由来の怨念を撒き散らす小さな妖狐”をも慈愛の対象としてしまう。

 

 ──のちに夕凪神の地位を受け継ぎ、ある人間によってオサキという愛称を付けられる妖狐。

 

 

 

『ギ、ギギ……怨ミ、晴ラセデオクベキカ』

 

 今は親(・)か(・)ら(・)押(・)し(・)付(・)け(・)ら(・)れ(・)た(・)怨(・)み(・)に悶え苦しむちっぽけな怪異に過ぎない彼女。

 そんな彼女へと優しい笑みを向けて語りかける女神。

 

『……もう苦しまなくてもいいのよ』

 

『ッ、ダ、誰ダ!?』

 

『私はこの山の神……そして貴女の“お母さん”になる女よ』

 

 

 

 

 

 ──夕凪の山での生活は、オサキの内に押し込められた怨念を掻き消すほど『愛』に満ちたものだった。

 夕凪神からの愛、神使としての修行を行うことによってオサキの呪いは緩和され、女神から神性を分けられるほどの高貴な存在へと変じていた。

 

 そして、修行を終え立派な神使となった彼女へと女神は告げる。

度(・)重(・)な(・)る(・)施(・)し(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)自(・)ら(・)の(・)霊(・)が(・)消(・)え(・)か(・)け(・)る(・)ほ(・)ど(・)に(・)消(・)耗(・)し(・)て(・)い(・)る(・)事(・)実(・)を(・)。加えて、オ(・)サ(・)キ(・)に(・)自(・)ら(・)の(・)役(・)目(・)を(・)受(・)け(・)継(・)い(・)で(・)欲(・)し(・)い(・)と(・)い(・)う(・)願(・)い(・)を(・)。

 

 当然、オサキは困惑した。当初こそ断固として拒否しなんとか女神を存続させようと四方へ働きかけた。信仰を忘れた民にすら懇願し、その逸話はのちに『狐の御参り』として民話に語られるまでに。

 しかし、女神の消滅はもはや避けられない運命と知り。悲しみと後悔に苛まれながらも、彼女は女神の役目を継いだ。

 

 

 それから数十年は夕凪神としての務めに奔走する日々であった。

 山の管理、民への施し、霊力の整備等々。多忙を極めながらも、人々の暮らしを見守る日々は幸せに満ちた日々であった。

 時は、『応仁の乱』に端を発した戦国乱世。人々は慈愛よりも力を求めて武を尊ぶ。

 

 その流れは夕凪にも訪れ、力を求められた彼女はいつしか『夕凪権現』として崇められていた。

 山の神通力を用いて敵を打ち倒す武神……自分には似合わない神性とは知りつつも、民が求めるままにそうあれかしと変じた。

 ──それがキッカケであった。

 

 

 

 

 

 ──ところで、夕凪という土地には誰に知られることもなくひっそりと歴史の闇に消えた『渡来人』がいた。

 先代夕凪神が統治した古代に海を渡って訪れた異郷の集団。

自(・)ら(・)の(・)悍(・)し(・)き(・)信(・)仰(・)を(・)咎(・)め(・)ら(・)れ(・)故(・)郷(・)す(・)ら(・)追(・)わ(・)れ(・)た(・)邪(・)教(・)徒(・)た(・)ち(・)が。

 

 奇しくも平(・)崎(・)に(・)帰(・)化(・)し(・)た(・)古(・)代(・)民(・)族(・)に(・)類(・)似(・)し(・)た(・)経(・)緯(・)で(・)訪(・)れ(・)た(・)集(・)団(・)であったが、本質は古代王朝とは真逆であった。

人(・)々(・)の(・)悪(・)意(・)こ(・)そ(・)が(・)世(・)の(・)真(・)理(・)。そう嘯く彼らは悪意を以って奇跡を起こす邪神を本尊とし同地の人々を“悪の道”へと誘い始めた。

 そんなことをすれば当然、夕凪神の怒りに触れることとなる。

 

 夕凪の人々を破滅へと導く彼らに激怒した先代夕凪神は、邪教徒と全面戦争を行った。

 異郷由来の『悪しき秘術』を操る邪教徒に苦戦したものの、ホームグラウンドたる夕凪ではかの女神の方が有利であり、長い戦いの末に遂に女神は彼らを駆逐することに成功した。

 ──その際、僅かな残党が遠方に落ち延び後世において『亞離異満(ありいまん)教団』と称する邪教団を起こすがそれはまた別の話。

 

 故郷の脅威を駆逐した女神だが、残念なことに見(・)落(・)と(・)し(・)が存在していた。

 

 それこそが『悪意を蒐集する大魔術式』。今は廃寺となっているとある寺院の地下に設置されたソレは、長い年月をかけて、オサキの目すら欺いて悪意を集め、集め続けた果てに“崩壊”した。

 原因は術式の管理をする者が途絶えたこと。

 そして術式が崩壊したことにより膨大な渦と化した悪意は、同地の要として存在した『二代目夕凪神』へと流れ込む。

 

 ──以上の経緯をオサキは知らない。

 ある日突然、自らの内に流れ込んできた膨大な量の悪意に侵され苦しみながら祟り神へと堕ちてしまった彼女には知る由もなかった。

 

 

 ──これよりしばらく彼女は祟り神として多くの人々に恐怖を振り撒いた。

 そして、その噂を聞き付けた『ライドウ』の手によって社へと封じられる。

 

 ──それから数百年の間、彼女は社の中で独り。人々の営みを眺めることすら叶わない孤独に囚われることとなる。

 一人の男が彼女を孤独から救い出すその日まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、まあ、そんなところじゃ。ワシがこうしてここに至るまでの経緯はな」

 

 長い昔話を終えて、オサキは一息吐いた。

 その頃にはチヨメも、しっかりと彼女を見つめて話に聞き入っていた。話の途中で気付いたからだ、オサキもまた自(・)ら(・)を(・)蝕(・)む(・)呪(・)い(・)と(・)戦(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)こ(・)と(・)を(・)。

 

「その呪いは、今(・)も(・)?」

 

「ああ、今(・)も(・)ワ(・)シ(・)を(・)侵(・)し(・)続(・)け(・)て(・)い(・)る(・)。

 ……とは言っても、こうして『鎖』を付けた状態ならさしたる効力もなく、ワシ自身が気張っておればおいそれと侵食されることもないがな」

 

 からからと笑うオサキだが、身を侵される苦しみは何よりチヨメ自身が理解していた。そのことをつい先刻、後輩に説いたばかりだ。

 ──偉そうに説いたくせに、あのような体たらくを見せた自分には恥じ入るばかりだが。

 

「じゃから……なんというか、ワ(・)シ(・)も(・)分(・)か(・)る(・)。お主の苦しみはな」

 

「っ!!」

 

 不意に優しい声で告げられた言葉は、自らが鈴女に放った言葉そのものだった。

 

「もちろん全(・)て(・)と(・)は(・)言(・)わ(・)ぬ(・)が(・)……お主が自らの呪いと対面して矛を収めてしまったその心情。ワシにも理解できる」

 

「オサキ……どのぉ……!」

 

 そんなことを言われては、今のチヨメは涙を堪え切れない。ポロポロとそのつぶらな瞳から滴を溢れさせ嗚咽を上げる。

 遂には、オサキの胸へと飛び込んでしまう。

 

「オサキどのぉ、うわあぁぁぁん!」

 

「おお……これこれ、そう大声を上げてはならぬぞ。まったく、思ったよりも泣き虫じゃなお主」

 

 それを優しく抱き留めてから、震えるチヨメの背を撫で始める。

 

「……とはいえ、今は惜しみなく泣いて良い。ワシが全て受け止めよう」

 

 慈愛に溢れた夕凪神に育てられ、役目すら受け継いだ彼女はその優しさもまた受け継いでいた。

 愛の価値を何より知っているからこそ、オサキは嘆き悲しむ人間を放っておけない。自らの慈愛で必ずや癒そうと励む。

 

 ──それからしばらくの間、チヨメは自分よりも小柄なオサキの胸の中で泣き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──同刻、病室の外にある廊下にてリンとレイランが邂逅していた。

 

「お久しぶり、姚 麗蘭。今日も決まってるわね、名は体を表すとはこのことね!」

 

「フルネームはやめてちょうだい……私、そんなに可愛くないし」

 

 いつも通りに陽気に挨拶するリンに対し、レイランはげんなりした顔で応えた。

 

「あら、そんなことないと思うわよ? そのカチューシャに髪型、照れた顔とか十分に可愛いし」

 

「ほんと、やめて」

 

 ずいずいと迫るリンに、レイランは珍しくたじろいでいた。頬も僅かに赤らみ、口をへの字に曲げ眉を歪めて“照れて”いる。

 それから数分、リンによる褒め殺しを受けてレイランは完熟トマトが如き顔になってしまう。

 

 ──そこでふと、レイランは真剣な表情に戻る。

 

「……こんなことしに来たわけじゃないの。私は貴女に聞かなきゃいけないことがあって会いに来た。

 

 率直に聞くわ、リン・フランケンシュタイン。

 

 貴女、何(・)者(・)な(・)の(・)?」

 

 その言葉を受けて、その生真面目過ぎる衣服を脱がせてしまおうかと手をワキワキさせていたリンは“神妙な面持ち”に変わった。

 

「それは……どういう意味かしら? 私はヴィクトル・フォン・フランケンシュタインの養子にして悪魔召喚プログラムの研究者。それ以上でもそれ以下でも無いと自負しているのだけど」

 

「なら、遠(・)坂(・)凛(・)っ(・)て(・)誰(・)?」

 

「……」

 

 強い語気、強い意志の籠もった顔で問いかけられ、押し黙る。

 その反応を見て、レイランは小さく溜め息を吐いてから視線を晒して話を続ける。

 

「……貴女が“あの人”に協力を仰いだ英傑召喚式の研究、あのウシワカとやらを見てから私も興味を持ってね。あの人に頼んで資料を見せてもらったのよ」

 

「っ!」

 

 資料を見せるとは即ち『情報漏洩』。その事実を知ってリンは内心ヒデオへと舌打ちまじりの恨み言を呟いた。

 この研究は私と貴方だけのモノでしょう! と。

 

「その資料の中には『冬木の聖杯戦争』に関する情報もあったわ。もちろん“マスターとして参加したメンバー”の情報もね。

 その中で一人だけどうしても看過できない存在がいた。

 

 聖杯戦争において『アーチャーのサーヴァント』を召喚して戦い抜いた『生き残りの一人』。

 冬木の御三家の一角たる遠坂凛(とおさかりん)。

 

 十六年前の聖杯戦争において貴(・)女(・)と(・)瓜(・)二(・)つ(・)の(・)容(・)姿(・)を(・)し(・)た(・)魔(・)術(・)師(・)の(・)女(・)性(・)よ」

 

 ──レイランは、ヒデオと涅槃台についての相談を行った際に英傑召喚式の資料についても探りを入れていた。

 それは近(・)年(・)に急激に召喚例が増えている英傑という謎多き悪魔の存在に疑念を抱いていたからであり、この前にもと(・)あ(・)る(・)学(・)園(・)で(・)起(・)き(・)た(・)騒(・)動(・)に(・)関(・)わ(・)っ(・)た(・)際(・)に(・)英(・)傑(・)と(・)思(・)し(・)き(・)悪(・)魔(・)を(・)見(・)か(・)け(・)て(・)い(・)た(・)がために。

 

「……」

 

「この女性、聖杯戦争後には時計塔に渡って魔術を学び。今は『もう一人の生き残り』と一緒に世界を渡り歩いているらしいわ。

 つまり、貴(・)女(・)と(・)は(・)別(・)人(・)。

 

 だからこそ解(・)せ(・)な(・)い(・)。

 

 瓜二つの容姿、リンという共通の名前……そしてサマナー間で噂されている“十四年前に現れた貴女”。

 ……十四年前と言えば、南(・)極(・)で(・)異(・)常(・)な(・)霊(・)力(・)が(・)検(・)知(・)さ(・)れ(・)始(・)め(・)た(・)時(・)期(・)と合致するわ。その三年後には南(・)極(・)事(・)件(・)が発生している。更に六年後にはあ(・)の(・)騒(・)動(・)も。

 これらの事件に共通する“存在”を考えると、貴女という存在は私にとっても無視できないモノになる」

 

 ──レイランは内心では“杞憂であって欲しい”と願っていた。

 リンとは、自分がサマナーの仕事を本格的に始めた時期からの友人であり何より気兼ねなくなんでも話せる『親友』とも呼ぶべき親しい間柄だからだ。

 

 だがしかし。それと同時に自らが『國家の守護を使命とする葛葉の一員である責務』もあった。

 レイランが考察する『正体』がリンの本性であった場合、彼女は日本という國家を揺るがす『大災害』に成りかねない。

 そうなる前に……彼女は、リンを討たねばならない。

 

 

 やがて、沈黙を保っていたリンは溜め息を一つ吐いてから気の抜けた表情を向けた。

 

「三(・)十(・)点(・)、と言ったところね」

 

「?」

 

 そのあまりに軽い態度に、レイランは訝しむ様子を見せるも、リンは特に気にした風もなく語り始める。

 自らの『素性』に関するヒントを。

 

「……確かに私はお(・)母(・)様(・)に(・)望(・)ま(・)れ(・)た(・)存(・)在(・)よ。

 南極の事件を知ってるなら聞いたことあるはずよ? 

 

 超進化形態(ユーバーゲシュタルト)ってヤツを」

 

「っ!!」

 

 その単語は当然知っている。

 南極の事件において、一(・)人(・)の(・)ヒ(・)ー(・)ロ(・)ー(・)を(・)ゴ(・)ー(・)ル(・)に(・)導(・)い(・)た(・)存(・)在(・)のことである。た(・)だ(・)の(・)人(・)間(・)に過ぎない彼の背を押した偉大なる協力者にして先達であると聞き及んでいる。

 

 ──だが、『彼』は素体が人間であったが故にごく短い活動期間しか得られずに南極の『黒い暴威の中』に消え果てた。

 

「それが……なに?」

 

「そ(・)れ(・)が(・)私(・)な(・)の(・)。超進化形態、人類を『モデル』に神と対等の領域まで強制進化させた存在。神(・)と(・)人(・)を(・)繋(・)ぐ(・)た(・)め(・)の(・)存(・)在(・)。

 ……まあ、私の場合。厳密には二(・)千(・)年(・)前(・)に(・)造(・)ら(・)れ(・)て(・)失(・)敗(・)し(・)た(・)プ(・)ロ(・)ト(・)タ(・)イ(・)プ(・)の(・)改(・)良(・)版(・)と言った方が正しいのだけど」

 

 あっけらかんと、あっさりと語られた事実にレイランは口を開けて驚愕し、次いで目眩を覚えた。

 この娘はいったい何を口走っているか分かっているのか? と。

 

 正体は分かった、分かったが……そ(・)れ(・)が(・)安(・)全(・)か(・)否(・)か(・)は(・)確(・)定(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)、寧ろそ(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)正(・)体(・)だ(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)危険であるという可能性が高まってしまった。

 人類に二(・)度(・)も(・)牙を剥いた“太母”の眷属など。

 

 葛葉にとっては『駆逐すべき悪魔』そのものである。

 

 

 淡い希望を打ち砕かれた悲嘆と、葛葉という『大恩ある組織への忠誠心』から来る戦意。それでもまだ割り切ることのできない葛藤を抱えながら彼女は静かに刀(・)を(・)抜(・)く(・)。

 

「残念よ……本当に残念。貴女をこの手で斬らねばならない時が来るなんてね」

 

 勝手に決め付けて暗い覚悟のもとに刀を構えたレイランを見て、リンは心底慌てた様子で手をワタワタと動かした。

 

「ちょ!? 待って待って! 話は最後まで聞きなさいよ!?」

 

 そのあまりにも滑(・)稽(・)な仕草に、レイランも拍子抜けする。そして渋々ながらも顎で話の続きを促した。

 

「はぁ……その短気、いい加減治した方がいいわよ? 

 ……っと、無駄口はこれまで。

 

 さっき言ったけど、私はお(・)母(・)様(・)に(・)望(・)ま(・)れ(・)た(・)存在なの。

 それは何も滅(・)亡(・)を齎すことじゃないわ。

 

 二千年前に残念な結果に終わった人(・)類(・)と(・)の(・)和(・)解(・)。人と神……いや、人と『星』の共存のための橋渡しが私に託された使命なの」

 

 ──神の衰退後、急激に版図を広げ『自らの理を広めた』人類に興味を抱いた『星』はある『存在』を野に放った。

 人を真似て造られたソレは、しかし、当時人類への理解が足りなかった星の所為で人(・)と(・)決(・)別(・)す(・)る(・)羽(・)目(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)。

 それを悲しんだ星が、今一度、『人を知るため』。星を喰い潰さんと暴走する人類と“共存を図る”ために生み出し、放ったのが彼女だった。

 

 人と星の仲介人、如何にして共存するべきか? 

 その命題を丸投げ……もとい、託された存在。

 

 ──それは奇しくも古(・)代(・)文(・)明(・)に(・)お(・)い(・)て(・)と(・)あ(・)る(・)神(・)族(・)が(・)生(・)み(・)出(・)し(・)た(・)二(・)体(・)の(・)英(・)雄(・)と(・)酷(・)似(・)し(・)た(・)存(・)在(・)でもあった。

 

 これらと異なるのはリンがと(・)あ(・)る(・)因(・)子(・)を(・)そ(・)の(・)身(・)に(・)秘(・)め(・)て(・)い(・)る(・)ということ。

 

「……と、これ以上は私のプ(・)ラ(・)イ(・)ベ(・)ー(・)ト(・)に関わることだから話せないけど。

 

 ともかく!! 私が人類の敵に回ることはないわ!! 

 ……たぶん」

 

 せっかく勇ましく宣言したにも関わらず、最後に小声で心配になる一言を呟いたリンに、レイランはやはりげんなりした。

 そこは言い切れよ! と。

 もっと信(・)じ(・)さ(・)せ(・)て(・)く(・)れ(・)よ(・)! と。

 

 しかし、次いでリンが放った言葉によってレイランの疑念は容易く氷解する。

 

「……ここまで話しても、まだ信じられないかしら? 

 私は、私自身は貴女と過ごした日々を……その、悪くはないかなぁ、とか思ってたりしなくもない、のだけど?」

 

 もじもじと指を遊ばせながら、僅かに頬を赤に染めながら、キョロキョロと目を泳がせては上目遣いに懇願するように紡がれた言葉。

 その時レイランは思った。

 ──それは反則だろう、と。

 

 何よりあざといくらいの仕草に、腹立たしさと“愛しさ”を感じている自分がいることを認識して、レイランはようやく納刀した。

 

 それを見て、リンもホッとした顔をしてから頬を緩ませる。

 そして「ありがとう」と、素直な気持ちを伝えようと口を開いた瞬間。

 

 レイランは目を閉じて力の限り叫ぶ。

 

 

「あざと過ぎッ!!!!」




【あとがき】
細かいネタはまだあるんですが、それはまた各々のメイン回にでも。
とりあえず本作のリンちゃんは人外です。
モデルは言わずもがな、私が爆死したあのキャラですが(血涙)細かい設定は先述の通り異なりますので実質オリキャラです(暴論

……ところで、私、説明会を設けるために定期的に主人公を意識不明に叩き落としている気がする。

真面目に外伝考えてます。どれがいいですか?※三章の後を予定

  • イバラギン×綱の末裔
  • チャラ男RP金髪男×ゴールデン
  • 二代目会長×頼光
  • 小次郎×双剣の堕天使
  • とりあえず本編、ガンガン行こうぜ!
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