英傑召喚師   作:蒼天伍号

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真1、2に出てたマシン系は結構好きです。


基地

真新しい建造物、その高さは総じて五階層以上。全てに“魔法の類”が施され、疎らに見受けられる低階層の建物であっても厳重に“霊的保護結界”が付与されている。

 

敷地内に点在する車両はどれも重厚な見た目を受けるジープやらトラックやらだ。その全てに“茶色混じりの深緑”が塗られている。

 

道行く人々は迷彩服を纏い硬い表情で“銃器を担ぎ、時折見受けられるスーツ姿の人々も近くに護衛と見受けられる“強者”が侍っていた。

 

 

そして、これら敷地を覆う空は()()()()()()()を放っている。

 

 

「これは……」

 

――治療棟にお泊まりした翌日、昼過ぎのこと。

 

俺は自衛隊(?)の基地にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――昨日、屋上での無断喫煙を見咎められた俺は“口にするのも憚られる悍しい仕置き”を受けて疲労困憊のままに病室で就寝。

翌朝の検査の結果、もう万全に近い状態とのお墨付きをもらって退院の流れとなった。

……お仕置き受けてもピンピンしてる俺の身体がちょっと怖くなったのは秘密だ。或いは、昔の“プレイ”の影響で――

 

 

「この度はウチのヒデオがご迷惑をおかけしました」

 

手続きのために“いつの間にか”俺の保護者ということになっていたオサキを引っ張り出して応対させる。

……したらば、前述のような言葉を吐いてぺこりとお辞儀を始めた。

 

「いえいえ、いつも人々のために戦われているサマナーの方々の一助になれるのであれば、我々も本望です。

……ただ、次からは治療術師(わたしたち)の言いつけをしっかり守るようによろしくお伝えください。まして、負傷中の身で喫煙など言語道断であると」

 

対し、受付で手続きを担当するのは金髪碧眼のお姉さん。どっしりとカウンターに“たわわな双丘”を預ける様はもはや感服してしまう。何食ったらそんな育つの?

 

……ところで、以前よりお姉さんお姉さんと連呼している俺だが、“俺から見てお姉さん”ということから察するように結構な御歳であることを俺は知っている。

……確か、家を出たのが十代後半。そこから“二十年”ほど各地を転々としていたと聞いているので今は――

 

「ヒデオさん」

 

「はひぃ!?」

 

底冷えするような冷たい声が耳をついた。突然来たものだから驚いて変な声が出てしまった。

……あ、いや。なんかすごい冷たい目をしていらっしゃるような。顔は確かに笑ってるのに、目が笑っていない。

 

「此奴には“私”からも、キ・ツ・く! 言っておきますので」

 

ジロリ、とこちらに睨みを聞かせながら答えるオサキ。

……ちょ、そんな怒んないでよ。

え、そっちじゃない? 年齢の方?

 

「本来であれば二度とご利用にならない方が幸いなのですが……私、何故か次にいらっしゃる時が楽しみでなりません」

 

ゴゴゴ……! と効果音でも付きそうなほどの威圧感を放ちながら、あくまでにこやかに対応するお姉さん。

軽くちびりそうになった。

 

 

 

 

 

 

「……まったく! お主、まーた下らないこと考えとったじゃろ」

 

ロビーを歩きながらオサキが憤慨する。

……いや、ちょっと待て。さっきのもそうだけど何故みんな俺の思考が読めるんだ?

 

「顔に出ておるわ」

 

なるほど……

 

「って、そうじゃなくて! お前はもう少し落ち着きを覚えた方が良いぞ? 何か興味を持つたびにガキのようにはしゃぎおってからに……」

 

何やら怒り心頭なオサキさんはぶつくさと文句を言いながら大股で歩いている。

なんでそんな怒ってるの……。

 

 

ちなみに、ウシワカ、チヨメの両名は未だにCOMPの中にいる。

オサキだけはお姉さんに「保護者の方がいらっしゃるようで……そちらの方にご対応願います」とお願いされたので呼び出した。

 

なぜにオサキまでCOMP内なのかと言うと。協会本部の治療棟というのは広くはあるものの、流石に寝泊まり出来るほどのスペースや場所がない。まさか治療患者のためのベッドを使うわけにもいかないので致し方なくCOMP内で寝てもらうことにしたのだ。

当然、オサキは駄々を捏ねたが「回らない寿司屋でお稲荷さん奢るから……」と“口を滑らせた”結果快くOKしてくれた。

……血迷ったこと口走ったあの時の俺◯ね!

 

 

「失礼……貴方がオクヤマ・ヒデオさんですか?」

 

昨日の今日で、自分に対して怒りを発露する俺へと不意に声が掛けられた。

見てみれば、ピシッとしたスーツを着込む若々しい男性だ。シンプルながらシャープな形状でスタイリッシュな印象を受ける眼鏡と、さりげなく視界に入るスマートながら一目で高級品と分かる腕時計。

七三分けにしたサラサラの黒髪を前髪だけ垂らすようにしている所謂“営業マン”チックな佇まい。

……“振る舞い”からして、どこか“偉い人”に仕えているのだろうことはすぐに察した。

 

「何か、御用ですか?」

 

微笑を携えて、あくまで穏便な物腰で受け応える。ただし相手の言動からは注意を外さない。

俺を名指ししてまで呼び止める相手ともなれば、“過去の因縁”か“余程奇特な人物”の二通りしかいないのだから。

 

「ご安心ください。私、こういうものでして」

 

()()()()()()()()()()()()()()から、男は何やら名刺のようなものを手渡してきた。

訝しみつつも、書かれた内容に目を通すと――

 

「っ、現防衛大臣・秘書の方でしたか」

 

大國(おおくに) 典明(のりあき)防衛大臣の秘書。

細川(ほそかわ) 盛源(せいげん)

と、読み取れる内容が記されていた。

 

 

大國大臣と言えば、現内閣でもぶっちぎりトップの人気を誇る有名な政治家だ。

クールな印象を受けるイケオジフェイスはもとより、実際の手腕においても類稀なる才気をもって常に冷静沈着で最善の行動。古株に臆することなく鋭い切り口で問題提起しながらも実にスマートな流れで妥協案を引き出す策士。かと思えば、過去に活躍した大物政治家とも太いパイプを持ちそれでいてしっかりと国民向けのさりげないアピールを忘れない、という非の打ち所がないというか“完璧過ぎる”というか。

とにかく“とんでもないくらい有能な政治家”なのである。

 

無論のこと、国民受けする大國氏にマスコミは粗探しに躍起になっているが。これまでそう言ったネタが()()()()()()()ところからも彼の現実離れした政治能力が分かる。

流石に、どこも黒くないことは無いとは思うが。これまで表舞台に立ってきた彼の言動を鑑みるに、俺は少なくとも“他よりは遥かに白い”と思っている。

 

 

そんな政治家の秘書が、今俺に話しかけてきた細川なる男だという。

 

「はい。本日はオクヤマ様にお聞きしたいことがございまして」

 

超人気政治家の秘書が……?

こんなやさぐれた中堅サマナーに??

 

「ええ、貴方が先日撃退なされた()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

大國防衛大臣付き秘書官・細川の説明はこうだ。

 

――過日より大國大臣の命を狙ってきた“犯人”が見つけ出し、使役している“霊的国防兵器”。それがコウガサブロウ。

霊的国防兵器という概念については以前に説明した通りだが、これも話した通り“既に失われた技術”、いわゆるロストテクノロジーであった。

 

しかし、犯人とやらはどこからかその技術を発掘し、現代に蘇らせたのだという。

霊的国防兵器には“依代の支配”という制約があるらしく。個々に応じた依代を手にしている者の命令に逆らうことは出来ないらしい。

だからこそ、依代を手にした犯人はコウガサブロウを操って大國大臣に関連する“霊的研究施設”へと襲撃を繰り返している。

 

―ーここまでの話から分かる通り、大國大臣は“悪魔とサマナーの存在を熟知する”所謂()()()()()()()なのだとか。

まあ、秘書の彼が協会まで来ている時点で察することは容易だったが。

 

兎にも角にも。この襲撃とやらが思いの外厄介らしく、コウガサブロウが有する“甲賀流の祖”としての高い隠密性・俊敏性を前に大臣子飼いの兵隊では手に負えず。かと言って無視できないほどの被害が出てしまっているがために、仕方なく協会へと依頼の要請に参ったのだ。

――その時、ちょうど俺を発見し声をかけたという。

無論、その時点で俺が“コウガサブロウと直接戦闘した”という情報を入手しておりならば詳しい話を聞こうというわけらしい。

……いやどういうわけだ。

 

「これ、別に私じゃなくてもよくないですかね?」

 

細川氏が運転する黒のセダン、後部座席で揺られながら問いかける。ちなみにオサキは俺の真横に座らせている、がずっと仏頂面で細川氏を警戒していた。

 

 

俺が聞いた話では、俺が気を失って以後、かなりの人数があの場に駆けつけたという。中にはレイランやミカヅキ。ツナマヨにウメマルと言った今の協会でいうところの“次世代エース”たちまで来ていた。

彼らであれば話を聞くのはもとより、その討伐まで任せても問題ないように思う。

 

「いえ。それでは()()のです」

 

「困る?」

 

「はい、ご存知の通りレイラン様は『葛葉』に所属するいわば外部の人間。加えて我ら“大國派”とは主張を異にする間柄。彼女に話を通せばまず間違いなくヤタガラスの介入を招くでしょう。

一方、綱麻呂(ツナマロ)様は古く“賀茂家”に連なる御家柄、その御親類を考えれば同様に。

ウメマル様は現会長と懇意にされていることから、サマナー協会そのものとの大規模な話し合いになってしまいかねず、率直に面倒です。

ミカヅキ様は……失礼ながら()()()()()()()()

 

……他、諸々の要因を鑑みた結果。オクヤマ様にお願いするのが妥当であると結論付けました」

 

勝手に結論付けるな……いや、それよりなにより――

 

「その、()()()()()って呼び方。すみませんがやめてもらえますか? ヒデオで構いません」

 

「おっと……そうでした。

貴方は()()()()()()()()()()()()()()()()

更に、その呼び方では()()()との混同を招く。

 

大変失礼いたしました、ヒデオ様」

 

まあ……別に。どうでもいい話ではあるのだが。

“奥山様”という言葉は、あまり聞きたい“音”ではない。

 

 

何気ない呼び名であったのだろうが、俺自身予想以上に“心に来た”らしく、そこからは互いに無言のままに目的地へと車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

協会本部から車で数十分。

辿り着いたのは“基地跡”と呼ばれる大規模な廃墟群だった。

 

一律の高さをもったフェンスに囲われた広い土地。

柵の向こうに見えるのは蔦に覆われた建物の数々。それも、それなりの高さを有した四角い建物が連なる。

それらの向こうに見えるはこの廃墟群を象徴する“大きなパラボラアンテナ”と鉄塔。

 

俺でも知っている、比較的メジャーな廃墟群だ。

 

 

「こちらです」

 

異界とはまた異なる、現実的自然の織りなす風景にしばし感嘆を抱く俺をよそに。細川氏はフェンスの一角へと向かい何やらゴソゴソという仕草を経て声をかけてきた。

 

見れば彼の前のフェンスにだけ“異界の入り口”が開いていた。

緑色の整列された鉄の一角を場違い、現実離れした“極彩色の渦”で抉り取ったような。空間の裂け目とも称すべき“大きな口”。

ちょうど、人一人分が通れるだけの大きさだ。

 

「どうぞ」

 

後に続くように促し、先行して“入り口”へと入っていく細川氏。渦に触れた端から飲み込まれていきすぐに姿が見えなくなる。

側から見れば“正気度判定”をせねばならないような摩訶不思議な現象ではあるが、サマナーにしてみれば見慣れた光景である。

故に俺も、傍のオサキの手を引いて入り口を潜った。

 

 

――そして、冒頭に繋がる。

 

 

 

「なるほど、表の廃墟をベースにした異界内基地とは……防衛大臣閣下とやらは随分と“悪魔事情に精通している”」

 

或いは“魔術”。

随所に備えられた無数の多重結界や、()()()()()()()()()()()()()()()()という事実からもそれなりに知識も豊富。

 

「気付いてるか? この異界、()()()()()()()()()()()

 

傍のオサキに小声で語りかける。

この基地が位置する異界は、誰かの手で作られたものではない、言うなれば『野生の異界』。その、もともとあった異界の中にこれだけの施設を建造している。それがどれだけ“並外れているか”はサマナーや悪魔ならば誰しもが理解できることだろう。

 

「気付いている。まったく、お主は余程“桁外れの輩”に好かれるタチらしいな」

 

まったく嬉しくない。ただ、職業柄、“出生も考えれば”仕方のないことだととっくに諦めてもいるが。

 

 

 

 

細川に案内され基地を進む。道中では、すれ違う者全員が細川に敬礼し、或いは挨拶を交わしていく。

そのことから細川自身も基地内にてそれなりの顔の広さ、或いは権限を有していると分かる。

 

やがて、俺たちは立派な造りの大きな建物に辿り着いた。敷地中央部に位置する十階以上の階層を持つ建物だ。

 

例によって門番らしき隊員に挨拶した細川に促され、俺たちも後に続く。

 

内部は、厳粛な雰囲気を持ったこれまた立派な造り。大企業のビル内のように整理され清潔な空間を保っている。自然とこちらも緊張してしまうほどだ。

 

ロビーを抜け、エレベーターに乗ることしばらく。

 

最上階と目される階層で降りた細川は、最奥にある大きな扉の前で止まる。

扉の上には『総司令官執務室』と書かれている。

 

扉へと丁寧にノックした細川はついで声を上げた。

 

「細川です。ヒデオ様をお連れしました」

 

『入れ』

 

直後、扉の向こうから響いた声に身体を硬らせた。

短く、決して大きな声では無かったが、その声には十分過ぎるほどに“威圧感”が籠もっている。

 

一方、細川は粛々と扉を開いて俺たちを中へ招き入れた。

 

 

 

 

 

「ご苦労だった、下がっていいぞ」

 

「はい、それでは失礼いたします」

 

厳かな声に告げられ、お辞儀をして早々に細川は退室する。

それを見届けてから、“彼”はゆっくりと立ち上がった。

 

「……御足労、感謝するヒデオ殿。私が大國だ」

 

後ろに流した淡い栗色の髪、透き通っていながらも強い意志を感じる碧眼。細い目元に沿うように僅か見受けられるほうれい線はしかし威厳すら感じられる。整えられた顎髭も同様に。

 

雑誌やテレビで見たそのままの姿だ。

だが、こうして目の前に立つと“桁違いの覇気”を感じさせる。

“生まれながらの王者”……()()()()

例えるならば“長年の鍛錬の末に極地に辿り着いた達人”のような、そんな威厳を感じた。

 

息を呑む俺へと、大國は落ち着いた様子で俺たちをソファへと手で誘う。

 

「立ち話もなんだ、遠慮なくかけてくれ」

 

 

 

 





【あとがき】
ちなみに大臣にはモデルはいません。『ぼくのかんがえたさいゆうのせいじか』です。細川も同様。

あと、例の廃墟はリアルだともうほとんど更地らしいですね。

真面目に外伝考えてます。どれがいいですか?※三章の後を予定

  • イバラギン×綱の末裔
  • チャラ男RP金髪男×ゴールデン
  • 二代目会長×頼光
  • 小次郎×双剣の堕天使
  • とりあえず本編、ガンガン行こうぜ!
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