全て、ものべのってエ◯ゲーの所為なんだ。
「――なるほど。概ね、理解した」
コウガサブロウに関する情報を出し終えた俺に、大國は目を瞑ってから答えた。
話の途中、細川が差し入れたコーヒーを啜りやがて口を開く。
「……とはいえ、私は早々に意識を失いました。話を聞くならばやはり他の面々に――」
「いや? いるだろう、
「……」
視線を、俺の傍に座るオサキに移しながら彼は告げた。
「加えて、
英傑
俺が英傑を仲魔としていること、加えて真名まで知られていることに内心激しく動揺した。
別に、隠していたわけではないが。敢えて言いふらしたりもしていない以上は、存在感の薄い俺の情報が出回ることもないと思っていた。
「そう警戒するな、悪魔を相手とする“公的機関”ならばこの程度の情報収集は容易だ。
で、早速話を聞きたいのだが構わんか?」
あくまで冷静に、変わらない声音で問い掛ける大國。
俺はどうするべきか僅かに言い淀む。
「ワシは別に構わんぞ。隠すこともないしの」
『主殿の命であれば、私は従います』
オサキに続き、ウシワカからも念話で返答が届く。
ただ、まあ、確かに。彼女たちの言う通りだ。
彼女たちが構わないなら俺も賛成だった。
なのでCOMPからウシワカを呼び出してから二人に話を促す。
バシュン、といつもの魔法陣から現れたウシワカを見て大國が声を上げた。
「ほう……彼女が。だが一人足りないな?」
「チヨメちゃんは……勘弁してもらいたい」
念話で返答が無かったのもやはり話したくないからだろう。彼女がそう思ったなら俺はそのようにするだけだ。
俺の言葉に大國は、少し沈黙してから「まあ、問題ないか」と思ったよりあっさりと引き下がった。
こいつ、実はいいヤツなのか?
「――ならばこちらがウシワカだな? ふむ、話には聞いていたがこの目で見るとやはり新鮮だな、女のヨシツネというのは。
まるで“本来のヨシツネを見たことがある”かのような言い様だ。
その後、オサキとウシワカから件の戦闘についての詳しい話をさせた。途中、大國から質問が飛ぶこともあって話が終わる頃には日が傾く時間になっていた。
「――いやはや、歴史に記されし“英雄”の意見は、なるほどタメになった。
「っ、ど、どう致しまして……なのじゃ」
突然、素性を言い当てられ口調がめちゃくちゃになるほど動揺するオサキ。それでは唯ののじゃロリババア……間違ってはいないが。
やはりロリ形態では、肉体に精神が引っ張られて若干ポンコツになっているな。
おもむろに腕時計を確認した大國は俺に視線を移す。
「思ったよりも時間を消費してしまったな。
貴殿さえ良ければだが、我が基地でディナーでもどうかな?」
一瞬、心の内で躊躇が生まれるが、ここで引くには情報が足りない。大國が果たして
相手の意図を探る目的も兼ねて快く承諾した。
大國が呼び出した細川の案内のもと、俺とオサキ、そして呼び出したままのウシワカで基地内を歩いていた。
相変わらず清潔感漂う立派な内装に妙な緊張を覚えつつ廊下を進んでいると。
壁に貼られた一枚のポスターに目が行った。
「細川さん、あのポスターは……?」
大きな紙面にデカデカと写されているのは“大型機械”。
四脚型のロボットのようなもの。ただし、傍に置かれた人型のシルエットと比較しても巨大な体躯、上部に乗せられた長い砲塔、二基の機関銃が胴体部側面から突き出ている様はまさに“戦車”と言える。
――これらの特徴に一致するのはやはり、病院で見た自律兵器……その原型となった
「ああ、アレは
細川氏曰く、アレの名前は『T13B』。
対悪魔用機械兵器
「……戦車!?」
一瞬、理解が遅れてから改めて衝撃を受けた。
……戦車、ってあの戦車だよな?
世界の国々が陸上戦の主力として各々開発している戦闘兵器。ただし、他の軍事兵器同様に一つ造るだけでも莫大な予算が消し飛ぶ代物であり、近年の高性能化においては更なる費用増大の流れにある――
あの戦車。
「ちょっと待ってください……この“組織”は大國大臣お抱えの所謂私兵なんですよね? 幾らなんでも戦車なんて――」
しかも主力というからには当然、“量産”されるのだろう。考えるだけで頭が痛くなるような金の使い方だ。
「はは、なかなか面白いところに注目しますね。ですがご安心を。我らが大國大臣は昨年より“防衛大臣”の任を受けておりますので、そこら辺の“費用”は国庫から引き出せるんですよ」
……ってそれ税金使ってるってこと!?
「――いや、まあ、デビルサマナーとして活動するからには。国の対悪魔事情について心配する気持ちはないわけではないですが」
表社会で知られていないだけで近年は“悪魔被害が増加傾向にある”。加えて、年々、海外から流入した外来悪魔の繁殖や派閥争いなど頭の痛い案件がゴロゴロと転がっているだけに、こうして国に属する組織が悪魔対策を講じていることに安堵する気持ちもある。
「ただ、戦車はやり過ぎでしょう……」
俺の知る限りでは、これまでの国の対策として『葛葉』などの伝統的組織に要請を出すか、フリーのサマナーを招集するなどして定期的な掃討は行われていたものの。ここまで大掛かりな対策は見たことがなかった。
無論、
そこに来て、この“対悪魔戦車”の製造。
なんだか“急過ぎる”と思った。
「よくご存知ですね。無論、我々も“彼”の後始末に四苦八苦している面もありますが。既に“討伐隊”の残党は取り込み済みな上に、大臣の就任以前に各有力議員や“総理”へも話は通してありますから、そう急な話でもないのですよ」
「なるほど……」
それはそれで
――その後、道中、更に詳しい話を聞いたところ。あの戦車以外にも複数の“機械兵器”の量産計画が立ち上がっており現在進行形で着々と完了しつつあるという。
先ほどポスターにあった多脚戦車を一回りサイズダウンした所謂“屋内用”の警備ロボ。同じく屋内や狭いエリアでの活動を目的とした二足歩行型。更には“犬型”のロボや“飛行型”も存在するというから、なんというか。
戦争でも始める気なのか、と疑ってしまう。
「――それは、あまりに
ですが、肝心の対抗策たる“サマナー”を新調するには先ず才能ある若者を探した上で長期間の教育を施さねばならない。
そんなことではあっという間に悪魔どもの数に圧殺されてしまうでしょう。
対悪魔部隊についても同様です、人ではない“化物”との戦いを想定した訓練など普通の自衛隊はやりませんから、先ず悪魔の知識・生態・対処の基礎から叩き込まねばならない。
その上で訓練を積み実践レベルに持っていくとなれば……考えるまでもないでしょう」
一理ある。
サマナー或いは
それはたぶんに、その職に就ける人材の条件が“才能”に偏っているからだろう。加えて、才能だけでなく、それを実戦レベルに持って行ける人材となると五割にも満たない。
そんな少数精鋭でこの先も増え続ける悪魔に国レベルで対応できるのかと問われれば……俺も答えに窮する。
「そこで、“機械”というわけです。もとより軍事技術を培ってきた者たちに、伝統的な対悪魔を続けてきた人材を引き合わせこれを統合する。それによって生み出される“科学と幻想の融合体”こそが、これから先の国の未来を担っていくに相応しいと我々は考えています」
なるほどな、ようやく納得いった。
車での移動中、“葛葉と方針を異にする”と言ったのはこのことか。
確かに葛葉は、長い歴史で培ってきた伝統的な退魔を誇りとして掲げている。それに真っ向から喧嘩を売るような方針を取れば、そりゃあ協調路線も難しくなるだろう。
グローバルな戦力を追求するのが“大國派”というわけだ。
頭の中で色々と情報を整理していると、いつの間にか食堂に到着していた。
白い壁、清潔そうな空間の中に机と椅子が並べられた以外にもシンプルな造りだ。
「あちらで料理の注文ができます。メニューは机の上にも置いてありますのでゆっくり選んでいただければ」
空間の奥、カウンターを手で示しながら細川は告げる。
「私はまだ業務が残っておりますので失礼しますが、代わりの者を付けておきますので御用の際はなんなりとお申し付けください」
そして綺麗な礼を見せて立ち去る細川と、入れ替わるようにしてスーツ姿の若い男性が食堂に入り俺たちへ軽く礼をしてから壁際で立ち止まった。
「まあ、とりあえず飯食うか」
結構腹の虫も鳴っていた頃合いではあった。
なので、仲魔二人に座るよう促しつつ俺もメニュー表を手に取った。
「おお、これは……なかなか旨いな」
湯気立ち昇る焦げ茶色の液体、そこへ沈むように並べられたほかほかのカツ。スプーンで一口、ライスとルーを口に含みそこですかさずカツを齧る……そこから口内に広がる多幸感は筆舌に尽くし難いものがあった。
つまり、俺は注文したカツカレーの味に感嘆していた。
「むむ、これはなんとも脂の乗った鮭……」
ウシワカは、焼き鮭定食を頼んでいた。しかし大皿の上に乗せられた焼き鮭の身は、遠目でも分かるくらいプリプリふっくらとしており。それを一口サイズに切った際には照明を照り返すほどジューシーな脂が滴り落ちていた。
もちろん、これを食べたウシワカも文句なしに“美味”との感想を述べた。
あと、俺も一口もらったが確かに美味であった。
一方、オサキは――
「ほほぉ! なんじゃこの“おいなり”は!? 噛めば噛むほどにジューシーな味わいが……! むほー!」
奇声を上げるほどに歓喜乱舞していた。
ぱっちり開かれた両目は満遍なくキラキラと輝き、緩み切った頬で作られる笑みは若干“気持ち悪い”まである。そんな顔が、口に稲荷寿司を運ぶごとに量産されていく様は見ていて飽きない。
有り体に面白かった。
「いくらなんでも喜び過ぎだろう……」
「あら、“ここの食材”を考えれば特に不思議でもないんじゃない?」
オサキの百面相にげんなりする俺へと、若い女性の声が掛けられた。よく聴き慣れた声だ。
「リン?」
見ればやはりというかリン嬢の姿。両手で料理の乗ったトレーを持ちながらこちらに歩み寄ってくる。
そのまま俺の隣の椅子へと座る。
「隣、いいかしら?」
「もう座ってるじゃん……まあ、いいけど」
いつもの短パンスタイルは見ているこっちが恥ずかしくなりそうな短さだが、アメリカンな感性を持つ彼女に何を言っても無駄なのは既に理解していた。
「何の用でこんなとこに?」
真っ先に思った疑問を口に出す。
対し、リンは俺と同じカツカレーをもぐもぐしながら答えた。
「とーぜん、もぐもぐ……企業秘密よ、もぐもぐ」
まあそうだろうな、研究を主としながらも情報屋稼業に手を出している彼女だ。関係ない俺たちにおいそれと教えるわけもない。或いは誰かの依頼で動いているのかもしれないしな。
「一応、聞いてみただけだ」
「あ、そ。もぐもぐ……」
……それにしてもよく食べる娘だ。
というか人と話す時くらい手を止めてはどうだろうか?
そもそもこっち向いてすらいないし……。
ジトっとした目を向けていると、ようやくスプーンを置いた彼女が改めてこちらに顔を向けた。
「あんたこそ、なんでここに?」
「ちょっと依頼……って程でもないが、こちらの大将にお呼ばれしてね。いろいろ話を聞かれてたんだ」
「あー、“例の悪魔”のことか。
そういえば、怪我。すっかり治ったみたいで良かったわ」
ついでみたいに言われてちょっと傷付いた。
と、そこでふと気がつく。
「そういえば、ウシワカとは初対面だったよな?
紹介しよう、そっちで焼き鮭に夢中の女の子がウシワカマルだ」
手で指し示しながらそう伝えると。
「へ?」
「む?」
きょとん、とした顔のリンと口をもぐもぐさせたウシワカが見つめあった。
そこから数秒ほど流れて――
「ええ!? この子!?」
些かオーバーとも言えるリアクションでリンは驚いた。
それを見て状況を察したらしきウシワカは箸を置き、会釈して挨拶した。
「紹介に預かりました。英傑・ウシワカマルです」
「あ、ご丁寧にどうも……って、そのTシャツ私のじゃない!?」
妙に綺麗なお辞儀に釣られてお辞儀を返しかけたリンは、しかしウシワカの着るTシャツを見るなり吠えた。
吠えて、真っ先に俺を睨みつけた。
まるで今すぐにでも噛み殺しそうな目だ。
「一旦、落ち着こう」
先手を打って“どうどう”の仕草をしながら冷静に伝えてみる。
「女の子の服を勝手に又貸しするような奴相手に、どう落ち着けばいいのかしら?」
ニッコリしながらも確かな威圧感を放つリンへ、再度声をかける。
「これには深い訳があるんだ。やむを得ない事情ってやつがな……っていうか、そもそも人の家に衣服置きっぱにする方が悪い」
だが、最後まで堪え切れずに本音がまろび出た。
当然、目の前のお嬢さんは額に青筋を立てる。
当然、俺は反射的に目を瞑った。
――が、攻撃が飛んでくることはなかった。
恐る恐る目蓋を開くと。
「……まあ、確かに。置きっぱにしたのは私だったわね」
疲れた顔で深い溜息を吐く彼女がいた。
おや?
「てっきり弾丸の一発二発は飛んでくるものかと……」
「私を何だと思ってるのよ……それに、こんな場所で暴れるほど見境ないように見える?」
見える。
普段なら弾丸の後に情報料の法外な値上げコンボをかましてくるのだが。今日はそういう気分(?)でもないらしい。
「いや、そうか……そうだな」
まさか本音を言うわけにもいかないので適当に流しておく。
「なーんか引っかかる言い方。
……ま、そんなことより。
そちらがウシワカマルなのね、私はリンよ、よろしくね」
ちらり、とこちらにジト目を向けてから改めてウシワカへと視線を戻して手を差し出す。
ウシワカも箸を止め手を出して、硬い握手を交わした。
「これはこれは、いつぞやの“家出娘”ではないか!」
しばらくして、ようやくリンの存在に気付いたオサキが笑いながら声をかけていた。稲荷寿司のおかげかいつにも増して上機嫌な彼女は満面の笑みだ……というか最早“呵々大笑”、と言った様子だ。
お前は酔っ払いか。
「どーも、オサキさん。
……オサキさんも居たなら、服のこと、止めてくれても良かったのに」
ぷくっと僅かに頬を膨らませたリンが呟く。
……いや、そんなにも不満を持つとは思わなかった。そこまで怒るのならば、やはりウシワカには新品でも買い与えるべきだったか。
そういえば、チヨメちゃんに与えた服もリンの忘れ物だったと思い出す。
この場に居れば間違いなく指摘されていたし、更なる不興を買っていただろう。
「しかし……それにしてもよく食べるな、みんな」
ふと周りを見れば、オサキを筆頭にしてウシワカ、リンすら料理に夢中になっている。確かにここの飯は美味いみたいだが、それにしても夢中になり過ぎてるような。
そんな(疑り深いほどの)俺の疑問は、何の気無しにオサキが投げかけた質問によってあっさりと氷解する。
「むほっ、それにしても……もぐもぐ……いったい何処から、もぐっ、こんなにも良い素材を仕入れているのかのぅ」
「あれ、知らないの?
ここの素材は全部
実にスムーズな流れであっけらかんと述べられた衝撃の事実に、俺たちは揃って動きを止めた。ウシワカマルとオサキの二人は驚きで固まっているが、俺は疑問が心地よいほどに解消されたことから思わず動きを止めていた。
ふむ、悪魔の。どうりで
幻想に生きるモノとは即ち“そうであれ”と人が夢想したいわゆる“夢”を具現化した存在。
“美味くなれ”、“人知を超えた旨みであれ”と願われればその通りになるのが道理だ。
加えて、基地の立地を考えればもしかしたら“産地直送”なのかもしれない。
「ちなみにその稲荷寿司に使われてるお揚げは
「ゔぇぇええぇぇぇ!!!?」
リンの一言を聞いて直ぐ、オサキは盛大に吐いた。
――首都異界、二十三区方面
非科学的な色彩に染められた空の下、風を切って飛行する
先鋭的デザインの白塗りの機体、左右からは鋭くシャープな翼が生える。しかしてそのサイズは
後部に取り付けられたジェットエンジンから噴き出す炎の勢いは凄まじく、それに見合うほどに当機は高速飛行する。
更には、白塗りの機体を先頭にした
『(ピピッ)こちら
白塗り機体からは“機械じみた”声が響き、追従する機体へと通信を繋げる。
問い掛けに、しかしすぐさま全機より応答があった。それを確認し白塗りの機体は言葉を続ける。
『間もなく作戦エリアに到達する。各機、結界との接触に備え
憮然とした声に、部下たちはキリッとした声で応えた。
――機体群は二十三区上空を抜け、既に“府中”へと至っている。
『
――声に応じて、機体底部へと取り付けられた“豪奢な長槍”がその穂先を煌めかせた。
ヌッフッヒ〜!
真面目に外伝考えてます。どれがいいですか?※三章の後を予定
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イバラギン×綱の末裔
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チャラ男RP金髪男×ゴールデン
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二代目会長×頼光
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小次郎×双剣の堕天使
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とりあえず本編、ガンガン行こうぜ!