府中対悪魔防衛基地は多重結界に覆われた堅牢な要塞だ。
対物理、対魔力、霊的存在全てを拒絶する高密度結界を幾重にも重ね合わせ繭が如き様相を呈した鉄壁の守り。
その守りに対して、真正面から刃を突き立てる一団がいた。
奇妙な飛行物体群である。
機体底部に取り付けた、“無骨な機体に似合わない槍”を結界表面へと真っ直ぐ突き立てる。
ただ、それだけ。
それだけで結界は
或いは
ポッカリと空いた穴の奥に前進し、後に続く第二、第三の結界へと同じように穂先を立てて……一秒と経たずに
そうして幾ばくも経たずして一団は基地内へと容易く侵入した。
「ん? なんだ、アレは?」
基地内を歩いていた兵の一人が空を見上げて呟く。その声に釣られて同行していた他の兵が見上げる。そして訝しげな声を上げた。
それら囁きがじわじわと広がり、やがてはざわめきに繋がる。
ある者は基地司令室へと慌てて連絡し、またある者は手にした小銃を握りしめ上空に“停止”する飛行物体たちを油断なく警戒、注視していた。
――それら注目を一手に集めた飛行物体たちはしかし、落ち着き払った様子で次の行動を開始した。
戦闘機を思わせるフォルム、しかして空中の一つどころに“滞空”していられるのはひとえに
その状態のまま、彼らは翼部の下方から
より厳密には“格納されていたそれらを展開した”。
左手にはいつの間にか握られている小銃、そして右手には機体底部より掴み取った“槍”。
その槍を、黒塗りの機体群の中で唯一“白”を纏った一機が高々と掲げる。
『アンチ・サモン・フィールド、展開』
まるで“機械音声”のような、ノイズの混じった声が上空から降り注いだ。
――その直後。
「っ、な、なんだ!?」
真っ先に気付いた兵の一人が狼狽える。
波紋となって広がった不可視の
それを確認してすぐ――
――彼らは発砲した。
左手に構えた小銃……否、汎用機関銃“MG34”を屋外に出ていた兵たち全てに向けて乱射する。
無論、ただの機関銃ではない。対悪魔戦闘、
常識を超えた速度で雨霰が如く降り注ぐ“改造弾”を前に、兵たちはなす術なく。何が起きているのかすら分かないままに蹂躙される。
――とはいえ彼らも対悪魔戦を想定し訓練された兵士。新人や気を抜いていた者を除いてすぐさま物陰に身を隠し一先ずの先制攻撃に対してはなんとか対処していた。
そんな兵士を見て、粗方の“愚かな兵士”を掃討した飛行物体たちも一旦銃撃を止めて地上へと降下した。
地に立ち、肉眼ではっきり見える位置まで来たことで兵士たちはようやく飛行物体の正確な姿を捉えた。
黒塗りの、先鋭的デザインのパワードスーツらしきモノに身を包んだ人型が“六機”。それらの先頭にて率いるようにして佇む白塗りの機体が一機。
見た目通り、またそのままの所感を述べるならばやはり“機械兵士”。科学的理論をガン無視した構造で空を飛び、浮かび。今は銃と槍という奇妙な組み合わせで両手を塞いだ集団。
物陰より密かに様子を伺う兵士たちを
全員で槍を掲げた。
『
短い呟きの直後、今度は槍の穂先より
「あぎっ! ぎゃあぁぁぁぁ!!!?」
ホーミング弾のように幾度も曲がりくねった電撃はしかし、狙い
――対悪魔戦を想定した兵たちではあるものの、その装備が“戦果”に応じて更新される彼らの中には“対霊防御”が著しく低い、所謂“落ちこぼれ”とも呼べる者たちが少なからずおり。霊障電撃の前に彼らはなす術もなく炭化するのみであった。
機銃掃射、
「撃て、撃てぇぇぇ!!」
悠然と佇む“敵”に対して、生き残った兵たちはその手に持った“二十式小銃”を一斉に撃ち放った。
それに並行して、“悪魔召喚プログラム”を保有する一部兵士たちは、各々の召喚器具を用いて自らの仲魔を呼び出す――
「あ、あれ?」
――だが、それは不可能だった。
悪魔召喚プログラムはその利便性の最たる特徴として、機械端末操作によるスムーズな召喚を可能とする。
しかし、今の彼らが持つ機械端末たちはインストールされたプログラムを“停止”させており、何度操作しても起動すら出来ない。
「ちくしょう! いったいどうなって――」
理解できない状況、不利な戦況に一人の経験浅い兵士――否、“隊員”が悪態を吐いた。
そうして無防備な姿を晒した彼を、“敵”は見逃すことなく冷静に小銃で迎撃し速やかに“蜂の巣”へと変える。
だが、隊員たちも馬鹿ではないしそれなりの経験を経た歴戦の者たちもいた。
だからこそ、強力な兵装にて向かってくる“敵”を前にして冷静に陣形を組み迅速に対処を行う。
数で言えば未だ彼らの方が有利、人海戦術にて押し潰すという方針は言わずとも全ての隊員が理解していた。
――そんな彼らの希望を打ち砕くように、飛行物体たちが空けた穴から新たな機影が出現した。
飛行しながら基地へと侵入するのは、長大な翼部を備えた“輸送機”。緑色の機体は芋虫のような形を成しており、形状からすぐさま輸送を目的とした飛行物体であることを理解できる。
――巨大にして鈍重な輸送機は、隊員たちにとっても分かりやすく当てやすい格好の的。無論のこと、彼らはすぐさま輸送機へと発砲した。
手に持つ小銃だけではない、新たに武器庫より持ち出したロケットや対物ライフルを構えた隊員たちも即座に迎撃を行った。
それらに対して、“敵”は先の“戦闘機のような兵”を数名、上空へと送ることで対処する。
迫り来る弾頭や弾丸に対し、“戦闘機型の機械兵”は機関銃にて迎撃、或いは槍にて打ち払い、更には“自らの身を挺して”輸送機を護った。
有効射程有距離ギリギリの弾丸はまだしも、ロケットの弾頭を直撃させた敵は一瞬で爆炎と煙に包まれる。
――しかし、それらの中からは全くの無傷で悠然と姿を見せる“敵”の姿。
ありえない、そう口にしてざわめく隊員たちへと“敵”は容赦なく攻撃を続ける。
そうこうしているうちに、輸送機は“敵”の後ろでゆっくりと着陸した。
Me323、通称『ギガント』と呼ばれる輸送機は機体前面を口のように大きく開けて中の“荷物”を吐き出す。
荷物とは、武装した“兵隊たち”。統率された動きで次々と機体から駆け出してくる彼らの服装には一様に“鉤十字”が記されている。
駆け出してすぐ、一切の乱れも隙もないままに攻撃を開始した。
――“本物の戦争”を知る者たちによる蹂躙は、まだ始まったばかりだった。
――数分前。
リンの不用意な発言によって嘔吐したオサキの背を優しくさすりながらヒデオはジト目を向け、無言の抗議を行なっていた。
そんな彼の側へと、勝手に召喚陣が出現し中からチヨメが飛び出してきた。
「お館様!」
「うおっ!? 急にどしたの、チヨメちゃん」
いきなりCOMPが作動したかと思えば、いつもの召喚陣からチヨメちゃんが飛び出してきた。
視線を向ければ一目で分かるほどに焦っている。
「敵襲です!!」
「っ!!」
簡潔な報告、分かりやすい一言を受けて……それとほぼ同時に“嫌な感覚”が身体全体へと――
「いや、
基地全体を包み込むような“結界”の気配を感知した。元々ある結界ではない、それとは真逆。
それにこの感覚。
「……なるほどな」
嫌な予感がして咄嗟にCOMPを確認してみると。
見事に機能が停止していた。厳密にはエラーだけが表示されて操作もままならない。
“召喚術式の封印”。
サマナー対策としてはテンプレの極みだが、これほど強力かつ広範囲に効くものは初めてだ。
「いずれにしろ、出て来てくれて助かった」
勝手に出てきてくれなかったらチヨメちゃんの召喚は間に合わなかった。なので有能なチヨメちゃんの頭を撫でる。
「ふぇ!? お、お館様! 今はそのような場合ではないかと!」
「あ。ごめん……」
あたふたしながらもしっかりとした声音で叱責されて、反射的に撫で撫でをしていた自分に気付いて反省する。
最近。ウシワカのせいで仲魔の頭を撫でる癖がついていて自分でもヤバイと感じた。
さて、と気を取り直して仲魔へ指示を出そうと辺りを見回すと。リンがなんとも言えない顔でこちらを見ていた。
「……なんだ?」
「いえ……他所の事情に口を出す気はないのだけど。流石にちょっと自重した方がいいわよ?」
マジなトーンで叱られた。
……うん、正論だ。
その後すぐに、食堂内にいた隊員たちがバタバタと動き出し。入り口から見える廊下を慌ただしく駆け抜けていく人々が出始めた。
更には外から爆発音やら発砲音やらが絶えず響き渡り、いよいよヤバい雰囲気が漂う。
その間、俺たちは各々に装備の確認と、戦闘準備を整える。
ちょうど準備を終えたところで細川の代理である男性が声をかけてきた。
「ヒデオ様、細川秘書官からです」
そう言って差し出されたスマホを受け取り耳に当てる。
「ヒデオです」
『ああ、ご無事でしたか。何よりです』
平時と変わらない声音で語る細川の声を聞き、彼も伊達にあの大臣の秘書をやってないなと思った。
「これは何事です?」
『簡潔に述べて、敵襲です。敵は“上空”を高速で移動後、何らかの手段で基地の結界を無効化。内部への侵入に際して、大型輸送機を誘導、現在は輸送機より現れた増援を交えた混戦状態です』
なんだそれは。
「敵の詳細は?」
『不明です、が、どうやら機械化された熟練兵のようですね。可変飛行機能を有した個体は私も初めて見ましたよ』
は? 可変??
さも当たり前のように語ってくれるが、どうにも言っている意味が分からない。そもそも機械化された熟練兵とは??
サイボーグみたいな奴なら何度か見たことはあるが。
可変、というのは見たことがないから想像もできない。
『機械兵士が計七体、いずれも高位悪魔に匹敵する戦闘能力を有しておりこちらも苦戦しておりますが。他に関してはさして気にするほどではないかと。全て
機械兵士とやらはこの目で見ないと理解が及ばないが、悪魔堕ちが群れで襲ってきているのは分かった。
「それで、俺はどうしたら?」
まさかこの状況でトンズラこくわけにもいくまい。出来るかどうかはともかく、防衛大臣旗下の基地を見捨てたとなれば協会にも迷惑をかける可能性がある。
『話が早くて助かります。
率直に、この場にて緊急依頼を発行します。
内容は“敵勢力の撃退”。
成功報酬はそちらのレートに合わせます、加えて敵主力
如何です?』
シンプルisベスト。わかりやすくて何よりだ。
「承った」
『感謝します。それでは早速、隊員たちの援護をお願いします。細かい指示は出しません。
それだけ告げると通信はプツリと切れた。
ご自由に、と来たか。まあ、任せてくれるのは嬉しい限りだが。こうも放任されると勘繰ってしまう。下衆の勘繰りという奴だ。
まあ、実際は他勢力所属の俺をこき使って下手に協会との関係を拗らせたくないといったところだろう。
「おえ゛ぇぇ……」
壁に手をかけながら俯くオサキ、その背中を優しくさすりながら声をかける。
「大丈夫か? 無理そうならどこかで……」
「だ、大丈夫じゃ……それに、この状況で安全な場所もあるまい」
ちらり、とオサキが目を向ける先、数十m先では隊員と敵勢力と思しき軍服姿の男が銃撃戦を繰り広げていた。
他にも至る所から戦闘音が響いており、確かにオサキの言う通りだと思った。
ふとリンを見れば、愛銃の安全装置を外したり腰の日本刀の位置を変えたりして臨戦態勢に入っていた。
「リンはどうする?」
「こっちもスマホに連絡が入ってたわ。とりあえずは“可変飛行機械”とやらを潰すわ」
勇ましい……いや、頼もしいな。
ならこっちはとりあえず、敵主力とやらを確認しに行くか。
行けそうならば積極的に撃破する。
俺は仲魔たちを連れて建物の外へと駆けた。
基地内は思っていたよりも混沌とした状況だった。
至る所で敵味方が入り乱れて正しく混戦状態にあり、戦況としてはこちらがやや押され気味に思われた。
原因はおそらく、COMP封印だろう。
COMP封印による被害は単なる戦力低下に収まらない。
COMPが恒常的に行使している“悪魔との意思疎通機能”、これも停止されたとなれば
……まあ、俺は“奥山”の生まれだから意思疎通に問題ないし日頃から“触れ合い”を重視してきたので反逆も無いだろうがな。
ともかく、最優先は術式の破壊、ないし封印を行なっている事物の破壊か。
「っ、くっ!」
そんなことを考えていると、物陰から軍服を纏った敵と思しき人型が飛び出してきた。その手に小銃が握られているのを確認してすぐ、踏み込みからの居合いにて胴体を両断する。
幸い、この個体自体は大した戦闘能力を持っておらず、俺の動きにもついて来れずにあっさりとくず折れる。
……と。
「なっ!?」
両断された個体は、うねうねと“黒いナニカ”を溢しながら分かれた半身を繋ごうと蠢いている。
率直に、キモい。
「なんなんだコイツ……」
不死性を有するとなれば屍鬼・悪霊系列の個体なのか? ただの悪魔堕ちという話では無かったか?
まあ、見逃す必要性も皆無なので静かに神代文字を刻んで破魔系を発動する。
「ギギ、ギギャァァァ!!」
敵は呆気なく消滅した。
「破魔系が弱点なのか……」
元人間にしては珍しい……或いはあの“黒いの”が本体か?
よく分からんが弱点が分かったのは僥倖だ。
早速、手持ちの破魔系アイテムを手元に集める。
お約束の施餓鬼米、ハマストーンなど。
「……先ずは味方の援護をして行こうか」
ふと見渡したところで、予想以上に味方が壊滅状態であったために破魔系アイテムを携えながら遊撃戦へと移行した。
「シュートッ!!」
凛とした声が響く共に、彼女が手にした“近未来的デザイン”の銃が光線を放つ。
文字通りの“光速”で直進する光は避けられるものではなく。
標的とされた“突撃兵”はなす術なくその身を貫かれ、
そして、数秒と保たずして消炭となった。
「あら、案外あっけないのね」
手の中でクルクルと“プラズマガン”を玩びながらほくそ笑む。
平素と異なる格好。
赤色に黒いラインが走った戦闘服のようなスーツ。腰に巻いた金のベルトに差さる二本の打刀、右側には“柄だけ”の剣のようなモノが固定されている。
その下、太腿に提げられたホルスターへとプラズマガンを仕舞いながら彼女・“リン”は周囲を見渡した。
相変わらず基地内の隊員たちは苦戦を強いられ戦況としては押され気味なことは一目瞭然。
そのあまりの不甲斐なさに無意識のうちに溜息が出た。
「……まあ、私も召喚できない以上は人のこと言えないけど――」
――自嘲し始めた彼女へと、人の入り乱れる戦場を潜り抜け高速で迫る影が一つ。
槍持ち、小銃を抱え、背部に備えられたジェットパックより炎を上げながら突進するのは基地へと最初に攻撃を仕掛けた機械化兵士の一体。
黒塗りの機体を戦場に踊らせる“
彼は接敵と同時に手にした槍を突き出した。
マッハで計測されるべき速度で突き出された槍の穂先を、しかしリンはベルト右側から引き抜いた“柄だけの剣”を構えることで対処する。
抜き放ち、構えと共に“ブォン”と音を立てて現れる刀身は“光”によって形作られる。
即ち、プラズマソードと呼ばれる最新兵器の一つであった。
光刃へと槍の穂先が接触し激しい火花が飛び散る。
片やオーバーテクノロジーによって製造されし超常の刃、片や
接触による火花は特異な魔力同士の衝突の具現であった。
「あら、獲物の方から来てくれるなんてね」
ギリギリと互いの得物で競り合いながら、リンは好戦的な笑みで舌舐めずりした。
対し、ドライツェーンは“ノイズ混じりの声”で嘲笑を返した。
『ヌッフッヒ〜! 一人で私と戦う気か小娘? その蛮勇だけは褒めてやるぞ、小娘!』
「蛮勇かどうか……その身で確かめてみなさい!」
光刃の向きを僅かに逸らし、槍を受け流す。勢いのままに重心が逸れたことでドライツェーンはバランスを崩し、その隙を突いてすかさずプラズマガンを撃ち込んだ。
『ぬおっ!?』
光線は黒い装甲、その脇腹へと直撃する。
科学でも魔術でもない、“未知のオーバーテクノロジー”という別種の“超常技術”で以って作られたこの銃の威力は絶大だ。人間はもとより、並みの悪魔程度ならば容易く溶解させる。
一説には“宇宙由来の技術”ともされ、リンと対峙した者の多くはコレと光刃の前になす術なく敗れ去った。
――しかし。
「っ! 嘘、表面だけ!?」
――この機械化兵士もまた“超常の技術”によって形作られたオーバーテクノロジーの具現。加えて“聖槍の加護”を得ているが故に並外れた耐久性を獲得していた。
そして、予想以上の堅牢ぶりに激しく動揺した隙を見逃さず、ドライツェーンもまた槍による薙ぎ払いでリンの肢体を打つ。
「あぐっ!?」
槍の一撃をモロに受けた彼女は大きく宙を舞い、やがて建物の壁面へと激突して地に伏せた。
彼女の纏う“スーツ”は曲がりなりにも“戦闘用の防具”、更にはリン専用へとフルカスタマイズされた一級品でもあった。にも関わらず“あの槍”の一撃は少なくないダメージを与えてきた。
物理ダメージだけではない、まるで
『まるで生娘のような慌てぶりだな。
戦場で女に戻るとは情けない!』
奇妙なダメージによって上手く動かない身体で、ヨロヨロと立ち上がったリンへと、ドライツェーンは槍を掲げながら悠然と歩み寄った。
「い、言ってくれるじゃない……!」
ダメージは大きい、だが致命的ではない。ならば問題ない、とリンは痛みを堪えて地に二本足をついて立つ。
伊達に世界中を巡って悪魔どもと戦ってきたわけではない。
彼女もまたレイラン同様に、年齢にそぐわない程には“高い実力を備えたサマナー”であった。
そして――
「……召喚術は使えないとなると、仲魔との連携は無理。かと言って私単体で遣り合うには
なら、仕方ないわね」
不適な笑みを浮かべたリンに、ドライツェーンの歩みも自然と止まり警戒を高める。
油断なくその場で槍を構えた彼を見て、リンはゆっくりと目を閉じて
――出番よ。
短い呼び掛け、それは彼女の内側に広がる“心”という水面に僅かな波紋を生み出す。
それに反応して精神の根底から“浮かび上がるもう一つの意識”があった。
『な、なんだ?』
目を閉じてすぐ、リンの全身が淡い輝きと“電撃”を迸らせて変化した。
赤を基調とし黒のアクセントを取り入れたスーツは、そっくりそのまま“反転”し。
明るい金髪は“赤のメッシュ”が入った黒へと変色する。
バチバチと青白い雷が全身を巡って、やがて霧散する。
その頃には彼女の姿はすっかり変貌していた。
無論、その身に纏う“雰囲気”さえも。
「……」
やがて、ゆっくりと開かれた“黒き”双眸で、冷ややかにドライツェーンを見つめる。
先ほどまでの明るく活発な目線ではない、どこまでも“冷血”“冷徹”に見える、率直に底冷えするような冷たさを持っていた。
――リンにとっての切り札の一つ。
即ち、太母より与えられた“大地母神の神核”の発露である。
もう一人のリン、
「アベンジ」
【あとがき】
次話も今週中に更新します。
【おまけ】
【ソウル・コントラクト・ソサエティ】
主にダークサマナーを扱う傭兵斡旋組織。取引の際に必ず“魂”を要求するのが特徴。通称SCS。
運営はグレゴリーを名乗る金髪の男が行っているが、組織の母体にあたる“とある悪魔集団”との連携や独自の伝手を頼って応援を頼むことも多い。
過去に平崎市、天海市で大規模な活動が確認されている。
※尚、本作にはファントム・ソサエティは存在しない。
真面目に外伝考えてます。どれがいいですか?※三章の後を予定
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イバラギン×綱の末裔
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チャラ男RP金髪男×ゴールデン
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二代目会長×頼光
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小次郎×双剣の堕天使
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とりあえず本編、ガンガン行こうぜ!