英傑召喚師   作:蒼天伍号

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最近やっと黄鹿の鷲獅子戦終わった。こっから二部もあるとか怠くてハゲそう…
大人しくエガちゃんルート周回してればよかった。

あと、今日でお休みが終わりますよ(白目




御神楽

――遠い記憶が蘇る。

 

 

あれは俺が“地底”にて彷徨い続けていた頃のこと。

 

兄に裏切られ、最愛の人と離別させられ、挙句に地の底の“異界”に置き去りにされた不運、無念。それら全てへの怒り、恨み辛み。

あらゆる感情が渦巻き、やがては“枯れる”までひたすらに異郷を歩き続けていた。

 

――やがて、地上での記憶が“薄れた”頃に、俺は彼女に出会った。

 

『もし。貴方様は地上からやって来た御方ですか?』

 

地底の六十六国を巡った最後の国、“維縵(ゆいまん)国”の王女。維縵王の娘、即ち維縵姫。

後代にて仙境とされた維縵国に住む“人ならぬ”存在。

 

長い放浪に疲れ果てた俺は彼女の献身的な支えを受けて徐々に回復し、片時も離れず親身になってくれた彼女に惹かれて婚姻した。

 

 

 

――それより十三年の月日が流れ(体感では()()()()()()())、ふと見かけた絵草紙を目にした時。

俺はようやく地上のことを“思い出し”、王や彼女へ必死になって懇願して地上へ帰還する許しを得た。

 

 

そこからは数多語られる伝承の通りだ。

 

王や姫の助けを借り、過酷な道のりを経て地上に戻った俺は己が身が蛇へと変じていることを知り、権現に助けを請うて無事に人の姿に戻る。我が最愛の妻・春日姫とも再会し、隣国の大明神の仲介によって兄たちとも和解した俺は諏訪の社にて“諏訪大明神”となり、下社に春日姫を祀った。

 

その後、維縵国よりこっそり追ってきた維縵姫に驚く一幕もあったが。慈悲深く心優しい春日姫は受け入れてくれた。

そうして我らは諏訪の地にて神となり長い年月を神として過ごしたのだ。

 

 

 

――その最中、()()()()()()()()()()

愛人……今では側室とも言うべき立場で俺を支えてくれた維縵姫との子ども。その一人が故郷に帰ったのだ。

もはや神となった俺には上手く認識できず、()()()()()は無念ながら記憶に無い。

しかし、確かに彼女との子どもが地底の故郷へと帰り、その地で余生を過ごしたと聞き及んだ。

 

――そして、その者が、()()()()()()()()()()()と出会ったという伝承を聞いた。

 

確か、()()()()()鹿()を退治したとかしないとか。その過程で地底に落ちたとかその後に落ちたとか、はたまた大鹿などとは戦わず、ただ単に人穴に落下したとも。

定かなことは分からないが、俺と似た体験をした者がいたというのは知っている。

その者が遠方にて()()を興したというのも。

 

――獣と言えば、伊吹山の神は()()()()()と相見えた際に大猪の姿をとったとされるが、果たして。

兼家が出会ったソレは何者であったのだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲賀望月に生まれた娘、呪を受け継いだ娘はその生を鎮魂に捧げる。

祖たる甲賀三郎兼家が受けた伊吹大明神の呪い、その怒りを鎮めるべく祈りを捧げる毎日。

常日頃より己が身を蝕む呪を少しでも緩和すべく巫女たちは研鑽し研究し、“巫術”を進化させてきた。

 

それは長い年月を経た私の代において既に“大儀式”の類へと進歩していた。

即ちは“蛇神に特化した鎮魂の儀礼”である。

 

――残念ながら、“血に焼き付いた”呪いはどう足掻いても鎮魂には至らず。呪いを除くには至らなかったが。

“別の蛇神”であれば、そうはいかない。

 

 

 

 

『……かつて、我が故国を訪れた“あの人”は蛇となり龍神へと変じた。仙境にして魔境たる地底の国に永く滞在すればそうなることは知っていたはずなのに、私は――』

 

――千代女の脳裏に響く声は、小さく呟くようにそう述べた。

 

『……私の不徳です、私の罪です。だから“娘”は国へと帰り、()()()()()()()()()()。きっと私への罰だったのでしょう、ただ救いであったのは彼女が無事に彼と結ばれたこと』

 

――過去を思い返すように彼女は語り続ける。

 

『――ごめんなさい、貴女には関係のない話でした。

さて、では“彼”を鎮めるための手順、その“根拠”をお教えします』

 

――巫術の準備を進めるチヨメへと、一転して凛とした声音に戻った彼女は告げる。

 

『地底に落ちた彼が蛇へと変じた、それは即ち“地底こそが蛇神の由来”であることを指します。

世界、日本においても八頭龍や他の蛇神が多く伝承されてきたのは知っての通り。

 

では、それらはどこから来たのか?

その答え()()()が地底です』

 

――彼女が語るのは単なる経歴ではない、()()()()()()()辿()()()()だ。

 

『蛇は地を這うモノ……無論、龍ともなれば空を飛びますが。その根源にはやはり“地を這う蛇”がある。西洋の竜もまた、かつては地を這うモノでありましたから。

これ即ちは()()()()()()()()()ということ』

 

「大元……?」

 

――ふと、彼女の語りにチヨメは生前の記憶が僅かに脳裏を過った。

 

聞いたことがあった、自らの祖・三郎はもとより。

他の蛇神、()()()()()さえも()()とする古き大地の精がいるという話を。

当時、歩き巫女より報告を聞いたチヨメは「俗説」として相手にしなかったが。

“彼女”の語りを聞いて、ようやく理解する。

 

――古き時代、()()()()()()()()()()()に設置された世界の“要”、大地の要が存在しているという話。

 

部下より聞き及んだその名は――

 

 

 

()()()……!」

 

『はい。世界の“均衡”を守る龍脈の主、その身で世界を支える()()()()()。あらゆる蛇神を生み出した()()()()()()()()です』

 

「尤も、真実は定かでなく。これもまた魔術的こじ付けの一つですが」と付け加えてから彼女はさらに言葉を紡ぐ。

 

『同じであるなら、問題なく通用します。

伊吹大明神の呪いから逃れるために研究されてきた蛇神に特化した巫術、鎮魂の儀。世界でも類を見ない絶大な効果を発揮することでしょう。

……あなた方が培ってきた巫術は“本物”です、彼女らの紡いだ想いは本物です。決して()()()()()()()()のです』

 

「っ!」

 

優しく諭すように“声”は告げた。

まるで、チヨメの想いを見透かしているかのように。

 

『その巫術、いずれは()()()()()()()()()()()()()()()

……ですが、まだ、貴女には荷が重い。

 

だから今回は特別に()()()()()()()()

 

力強く言い切ったその言葉を聞いて、ふとチヨメは思い出す。素朴な疑問を。

 

「貴女は、いったい……?」

 

その声、言葉からして“決して敵ではない”ということは承知している。耳で聞く言葉でなく、心に直接語りかける声は、声の主人の心境をつぶさに伝えてくるからだ。

だからこその問い、恩人に対する礼儀。

 

その問いに、“彼女”は少し沈黙してから答える。

 

『私は――

 

 

 

 

 

 

――地底の血族、後世においては()()()と語られる古い神霊……まあ、要するに“おばあちゃん”みたいなものです』

 

――まるでにっこり笑うような、弾む声で彼女は告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『安心して。その巫術は()()()()()()()()。だから、貴女は貴女の全力で“彼”を鎮めることだけを考えて。私が合わせます』

 

声に従い、チヨメは小さく頷き。そして進めていた巫術、鎮魂の儀式の準備を終える。

 

――荘厳なまでに煌びやかで豪奢な神楽殿が彼女の足元に広がっている。これは巫術を用いたいわゆる“魔術”によって造られた舞台。

 

尤も、これが()()()()()()()()以上はその顕現に維縵姫の多大な助力があってのことだが。顕現させる神楽殿の“イメージ”はチヨメが思い描いたモノである。

それは生前に数度行った()()()()()()

大蛇の呪が特に“酷い”時、こうして舞を行って鎮魂を成したのだ。

 

故に、この後の手順は全て知っている。身体が、魂が覚えている。姫の声に従うならば自分はただ舞いのことだけを考えていれば良い。

ただ、鎮めることだけを考えて彼女は心を落ち着ける。

 

「いざ――」

 

――チヨメは、つつ、と足を差し出し儀仗刀を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャンシャン、と鈴の音が聞こえて来る。

 

「……あ?」

 

サブロウとの激戦の最中、小太刀で斬られ、魔法で吹き飛ばされたことで地面に落着していたヒデオはその音を聞いて、自然と音の鳴る方へと意識を向けていた。

 

――そんな自分のお気楽具合に気づいて、慌ててサブロウへと意識を戻してみれば。

 

「……?」

 

サブロウもまた、鈴の音に意識を向けていた。

まるで、()()()()()()()音の方向へと顔を向けている。

 

――今ならば、奇襲を行うことも容易だろう。

しかし。

 

どういうわけか()()()()()()()()()()()()()()()()

いや、そもそもの()()()()()()()()()()

 

「精神干渉? いや、俺には()()()()はずだが……」

 

真っ先に思い浮かんだ精神系のバッドステータス、だが、他ならぬヒデオ自身が“精神耐性”に自信を持っているためにその予想は即座に否定される。

で、あれば、これは――

 

 

 

「……チヨメちゃん?」

 

――あらゆる推測を繰り返しながら視線を向けた先。鈴の音が響く方へと目を向けて視認するのは、仲魔の姿だ。

 

だが、()()()()()

いつもの忍び装束ではなく、召喚当初の痴女スタイルでもなく。

もっと清らかで厳かな、()()()()()()()()に身を包んでいる。

 

いつもの暗い雰囲気を払拭するかのような()()()()()を纏った彼女が――

 

「舞っている……」

 

静かに、されど力強く、彼女は踊っていた。

否、これは“舞”だ。

 

かつて、デビルサマナーとしての仕事で訪れた地方の神社で見かけた舞いに似ている。

これは“神に捧げる舞い”、即ち“神楽舞”。

 

「そういや、彼女は大蛇の巫女だと言っていたな」

 

――広く伝わるメジャーなあの神楽舞ではない。

地方で時折見かけるような、“呪術的系譜”を持つ“神秘”を纏った舞。

“ただ一つ”に特化した、魔法にも等しい舞。

つまり、儀式魔術。

 

 

「……」

 

――彼女がこれを披露する相手、魔術を掛ける相手を思い出して再度目線を向ければ。

 

「あ、ああ……」

 

サブロウは、静かに佇み、“感嘆”の声を発していた。

 

「なるほど、()()()()()()()か」

 

そこでようやくこの舞の“主旨”を理解する。

 

大蛇の巫女たるチヨメが舞うこの神楽舞は、大蛇の呪を鎮めるために甲賀望月が代々受け継いできた巫術だ。

魔力・霊力を用いて舞うこの巫術で、コウガサブロウを鎮めようという魂胆だろう。

 

現に、奴にはバッチリ効いている。

 

「ついでに俺の戦意まで奪われてるけど……」

 

それほど“強力な術”ということだろう。

さて、そうなると俺はどうしたものか。

 

俺にかけられた戦意喪失については、簡単な“まじない”を掛ければすぐにでも遮断できるくらいには弱々しい効力だ。

ならばさっさと掛けた上でサブロウを斬るべきだが――

 

「舞でどこまで()()()()()気なのか」

 

そこが問題だ。

一般に、儀式魔術とは複雑な手順、調整、操作によって成される大規模な魔術である。必然、これを少しでも“乱す”ようなことがあれば魔術は無効化されるし、最悪の場合“跳ね返り”もあり得る。

 

結論として、俺は静かに事態を守ることになる。

 

「……まあ、こうして見る分には悪くない」

 

それならそれで。俺も大人しくチヨメちゃんの舞を見学することにした。蛇神とは縁もゆかりもない俺でさえ思わず見入ってしまうような美しい舞だ、決して損にはならないだろう。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

結果として。

 

サブロウは呆気ないほどにあっさりと降伏した。

しばらく舞を眺めた後、唐突に膝から崩れ落ちて項垂れた彼は。即座に小太刀を“消滅”させて降伏を宣言した。

 

「……悪いが、拘束はさせてもらうぞ」

 

正直、意味不明なほどの心変わりに疑い百%の俺は、自分の知る中でも最高の拘束魔術、つまり涅槃台に使ったあの“菊理姫”の緊縛魔術を行使した。

 

「構わん、道理だ」

 

サブロウは短くそう言うと大人しくお縄についた。

注連縄風の緊縛魔術でぐるぐる巻きにした彼を引っ立てて早速尋問を開始する。

 

――というのも、彼自身が「伝えたいことがある」と申し出たからに他ならない。

 

未だ降伏を信じていない俺だが、拘束の上でならという条件でこれを承諾した。

理由は簡単、だってまだ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 

彼を召喚した輩はもとより、これまでの経緯や大國大臣を何度も襲撃した動機についても全く分かっていない。

そんなところで被疑者本人が話す、というのだから受け入れるのは当然だった。

 

 

お縄についた状態で膝をつく彼を前に数分ほど。

体幹で長く感じられた沈黙を経て、やがてサブロウは口を開いた。

 

 

「此度の襲撃……率直に、俺の“間違い”だった」

 

「間違い?」

 

その発言に思わず反応してしまう。

間違い? 間違いと言ったか?

その間違いでいったい()()()()()()()()()()

 

悪魔に堕した神々と違って、人の命は()()()()()()()

仮に戻ったしてもそれは()()()()()()()()()

だから人の命は代えがないと思うし、思うからこそ力を持つ俺らのような者が守らねばならない。

――まあ、俺自身、これまでや今でも()()()()()()()()()()()()を持っているためにあまり強く言える立場ではないが。

 

だから、それ以上の言葉を俺は飲み込んだ。

 

 

「ああ、間違いだ。俺は()()()()()()()()()()()()

 

「誤って……とは、どのような?」

 

俺とは違い冷静な態度でサブロウに問い掛けるチヨメちゃん。さすが、伊達に巫女頭やってたわけじゃないらしい。

こういう尋問には慣れているのだろう。

 

対しサブロウも、先ほどまでの“狂乱”が嘘のように冷静な態度で応えている。

 

「……その前に、俺の持つ情報全てをそちらに明け渡したい。良いだろうか?」

 

まるで別人のように大人しくなったサブロウは、丁寧な声でそう問いかけてきた。

無論、こちらもそのつもりだったので静かに首肯する。

 

――そこから語られたのは概ね予想通り、所々“胸糞悪い”内容だった。

 

 

 

 

 

はじめに、このコウガサブロウは“タマガミ元防衛大臣”が密かに復活させた“必殺の霊的国防兵器”の一柱で間違いない。

経緯は不明ながら、前大戦時に失われたはずの霊的国防兵器の技術を蘇らせた彼はそれを用いてコウガサブロウを召喚した。

ここまでは細川氏たちの予想通りだ。

 

 

――だが、その手段が予想の斜め上をいっていた。

 

 

まず、彼ら霊的国防兵器には“依代”と呼ばれる“特殊な召喚具”が存在する。

その詳細は不明ながら、いずれも召喚悪魔に対応した、所縁のある品、つまりは“遺物”を用いているらしい。

 

そして、依代を触媒として、素体となるもう一つの触媒。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

素体となった人間は自我やら魂やらも全て()()()()()()、単なる“肉”として器の機能を果たす。

そうして召喚されたのが彼ら霊的国防兵器。

 

――素体となる人間はいずれも死刑囚であったというが、そういう問題ではない。そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という時点で論外だ。

 

そんな経緯で召喚されたのだ、真実を知った段階でサブロウは激昂し、タマガミへと反旗を翻した。

――戦闘の最中にも護国護国とうるさいくらいに口にしていたのを思い出す限りは、その信念は本物なのだろう。

 

事実、コウガサブロウも()()()触媒にして自身の首輪ともなる依代を奪ってタマガミの手を逃れたという。

そして、霊的国防兵器の研究のため非人道的実験を繰り返す施設を手当たり次第に破壊して回っていたらしい。

 

ところが――

 

 

 

「――それから数日後のことだ。

俺の前に、()が現れた」

 

「奴?」

 

途端にサブロウの声が低くなる。それはまるで“怒りを堪えるような”、或いは悔しさを滲ませるような声だった。

 

「ああ。奴は俺に“奇怪な術”を仕掛け、俺の頭をぐちゃぐちゃにしやがった」

 

「洗脳、ということか?」

 

俺の問いにサブロウが頷いた。

――驚いた。このコウガサブロウへと、高位悪魔たる彼へと洗脳が“掛けられる相手”がいたとは。余程術に長けた人間、いや、()()()()()()()()()

 

「奴に認識をいじられた俺は()()()()()()()()()()。誰が敵で誰が違うのか、そもそも()()()()()()()()()()()()()()()

……今も、俺は誰を斬ったのかすら思い出せない。

 

初めは! 確かにタマガミの手下だったんだ。確かに奴の手先を始末して、施設を破壊していた……その、はずなんだ」

 

途中から錯乱するような、或いは“懇願”するような様子で叫んでやがて消え入るような声で口を閉ざしていくサブロウ。

 

そんな彼を見て、ようやく俺は“黒幕”の存在を信じ始めていた。

 

「……お前の話は分かった。とりあえず、()()()()

 

「っ、ほ、本当か!?」

 

「お館様っ!?」

 

俺の言葉にサブロウは歓喜に満ちた声を上げ、チヨメちゃんは動揺した声を上げた。

まあ確かに。こんな話一つで信じるのはバカらしいが、現にサブロウは大人しくしているし、一応辻褄は合う。

何より。

 

コウガサブロウほどプライドが高そうな悪魔が、こんな与太話をせっせと考えるとは思えない。

それよりもさっさと斬りかかるか、潔く散ることを選ぶ類の性格だ。

これまで相手にしてきた神々もそういうプライド高い奴多かったし。

……まあ、()()みたいな性根の腐った奴もいるにはいるが。そういうのは神話の段階からその兆候があるし何より分かりやすい。

 

その点で言えばコウガサブロウは逸話の段階から“騙される側”である。

 

 

「悪いなチヨメちゃん、でも俺は――」

 

「ああいえ、お館様。拙者は反対しているわけではなく寧ろ逆。どのようにお館様を説得しようかと悩んでいた次第にて」

 

てっきりチヨメちゃんは「お館様チョロ過ぎ」と思っているのかと推測していたからの発言だったが。バッサリと否定された。

 

しかし、忍びとして、巫女頭という管理職を経験した者として、そういうのにはシビアで高い能力を持っていると思っていたのだが。

意外な話だ。

 

「てっきり反対すると思ったよ」

 

「それについては、少々、心当たりがあるというか、“証人”……とも違う根拠があると言いますか。

ううむ……説明が難しいでござるがとにかく拙者はサブロウ擁護派にて」

 

「お、おう」

 

急に説明が面倒くさくなったのかざっくりした回答を寄越すチヨメさん。急に俗っぽい単語を発するから驚いた。

……いや全く理由は理解できんのだがな?

 

まあ、俺もとりあえずはサブロウを生かしておくことには賛成だ。

大まかな事情は聞けたが細かい部分についてはまだ分からないことが多過ぎる。

 

なので詳しい話は司令部にでも連行してから――

 

 

 

 

 

 

 

「いけませんねぇ……必殺の霊的国防兵器ともあろう御方が、こうもあっさり捕まって。挙句、敵方に情報を渡そうなどと……。

貴方には矜持というものが無いのですか?」

 

唐突に、辺りへ声が響いた。

見れば、基地の宙空、俺たちの近くで()()()()が浮かんでいる。

 

「誰だ?」

 

未だ抜剣状態にあるヒノカグツチを向けながら問いかける。

誰、というかまあこの状況で現れ、言動も加味すれば十中八九敵であるのは確かだろうが。

 

対して“金髪の男”は優雅に一礼してから応える。

 

「これはこれは。お初にお目にかかります。奧山秀雄殿」

 

「っ!!」

 

知らない相手から俺の名前が飛び出て、思わずびくりと反応する。

同時に、俺の名前を知っている敵ということは“鉤十字ども”に与する相手であると推測する。

 

しかし――

 

「……なんだ、()()()()()()()()()?」

 

それは言わずもがな。()()()()()()()()()のことである。

宙にふわふわと浮いている金髪の男は、黒いタキシードをシワ一つなく見事に着こなし優雅な笑みを浮かべている。

 

――だが、そこからは()()()()()()()()()()()()

 

俺は武人ではないから“気配”という概念に詳しいわけではないが、魔力はもとより。霊力やそもそもの()すらまるで感じられない。

そこに()()()()かのような空白があった。

 

 

男は俺の動揺を他所に、笑みで“固定”された口を開く。

 

「先ずは自己紹介を。

 

(わたくし)SCS(ソウル・コントラクト・ソサエティ)にて代表を務めさせていただいております。

 

()()()()()と申します。

以後、お見知り置きを」

 

――その言葉の後にようやく気づく。

 

この男の笑みが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 




【あとがき】
本作でのチヨメちゃんの経歴は後でまとめて掲載します。
あと、『アンメアと義賊風青年』の話を外伝でやりたいなと最近思ってます()




追記:【おまけ】


[『必殺の霊的国防兵器』計画における最終的な経過について]
――前世界大戦における旧帝国陸軍秘密機関が主導した霊的存在に対する国防計画は、度重なるトラブルと敗戦によって計画関係者諸共記録から消失。
その詳しい経緯は――

《中略》

――このように、大戦末期の機関関係者は半数以下にまで落ち込んだことで計画遂行は事実上不可能となった。
また、実戦配備されていた数体の“霊的国防兵器”が、連合側及び“天使勢”が召喚した■■級の大天使■■■■エル&■■■エルによって破壊、ないしは消滅させられるのと同時に最後のメンバーが自決。機関としての機能も停止した。

尚、■■■■エルと■■■エルに関しては、天使勢による本土侵攻の報を受けた十四代目葛葉ライドウによって太平洋上の異界内にて討たれている。
同時期に瀬戸内海を侵攻していた大天使■■エル率いる一万二千の破壊の天使たちも、■■市内に形成された異界型結界及び城塞型結界に封じられ実に■■時間にわたって足止めを受けた。その隙にコウリュウを駆って救援に来たライドウの手によって司令塔が討たれたことで軍勢も壊滅した。
なお、足止めを行ったのは――

《中略》

――以下に、最終的な霊的国防兵器実験の結果を記載。

その壱・龍神コウガサブロウ:実戦配備。のちに何者かによって帝都内にて破壊。

その弐・英傑テンカイ:実戦配備。のちに帝都内にて結界維持を行なっていた隙を突かれる形で何者かによって破壊。

その参・英傑カテゴリ:失敗。召喚拒否。

その肆・天津神オモイカネ:実戦配備。太平洋上にて破壊。

その伍・英傑ヤマトタケル:実戦配備。最も戦闘記録が残っておりその戦果も最多であるが、連戦によって疲弊・負傷した状態で■■■■エルらと戦闘を行い破壊された。

その陸・邪神ヤソマガツヒ:実戦配備。主に特殊任務を課されていたとされるが詳細不明。太平洋上にて破壊。

その漆・天津神タケミカヅチ:実戦配備。太平洋上異界内にてライドウを庇い破壊。

その捌・不明:失敗。召喚拒否。

その玖・不明:中止。召喚術式不適合、その他複数の不具合。



――旧帝国における霊的事象記録の調査報告書
――細川■■
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