英傑召喚師   作:蒼天伍号

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速すぎるかな、と思いましたが。続きは次章に含めても問題ないと判断してエピローグとします。



エピローグ

『どうして……どうしてそんなことを言うのですか!?』

 

地底の国。地底の“異界”に属する維縵国の王城にて“私”は叫んだ。

寝室のベッドに腰掛けた彼は焦燥した顔で私に振り返る。

 

『俺は忘れていたんだ……地上に残してきた最愛の妻のこと、俺を穴に落とした兄たちのことを』

 

その言葉を聞いて、私は青ざめた。

どうして、どうして。地底にいる限り、この異界にいる限りは記憶を取り戻すはずはないのに。

 

そこでふと、彼が手にしている絵巻を見つけた。

 

……ああ、ソレが。地上から流れ着いた“ただの絵巻”で、貴方は記憶を取り戻したのね。

 

通常、地底深くの異界たるこの国に漂流物が来ることはない。

しかし、“地上よりの行商人”や漂流者の持ち物、そういった物が国内に持ち込まれることはあった。

アレもおそらくそういう類だろう。

 

なんたる偶然……いや、或いは。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう思い至った私は、急ぎ地上への帰還準備を始める彼に言葉をかけることも出来ず。

帰還に際して挨拶に出向いた彼を無視した。

 

……単純に合わせる顔が無かった。

そして、“妻に会う”という決意に満ちた彼の顔を見ることが何より辛かったのだ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

――しばし、かつての罪を思い返して、すぐに“今助けるべき裔の子”に意識を戻す。

 

「ぐ、う、ぅう……!」

 

今は黒大蛇の動きを一秒でも長く止めるべく力を尽くす彼女。

サブロウに有効な巫術を主軸に、自らが疎む“呪い”すら動員して彼女は全力で戦っている。

それが“愛”によるものか、はたまた別の想いによるものか……

 

私には分からないが、とても“美しい”想いであるのは確かだ。

 

私の裔、後代にて“呪い”を受けた不運なる身の上に生まれた彼女が。こうも美しい想いを抱けるような女性に育ってくれた。

それが素直に嬉しい。

 

或いは彼女も、“変えがたい愛”を得たことで希望を持つことができたのかも。

 

『……私が首を突っ込む話ではありませんね』

 

「? 御先祖さま?」

 

思わず口に出してしまった一言にチヨメが反応する。

 

『いえ、なんでもありませんよ。それより、今は鎮魂に集中を』

 

「は、はい!」

 

チヨメの拘束は“巫術と呪いの融合”だ。

蛇神特化の鎮魂の術に加えて、自らを蝕む“伊吹大明神の呪詛”を行使している。

並みの霊力、精神では耐えられまい。

 

なので私が力を貸す。

神霊にして巫術にも精通する私ならば、チヨメが受ける負荷を大幅に軽減できた。

神霊たる私には呪いは効かず、巫術もまた“人のモノより高度”だ。

 

――だが、所詮、チヨメとサブロウの縁から無理やり現界した()()に過ぎない私の行使できる力には限度がある。

なので、術の主体はあくまでチヨメに任せるしかない。

 

『……それにしても』

 

私は黒大蛇へと変じたコウガサブロウを見つめた。

邪悪な悪魔に唆され、挙句に見るも無残な姿に成り果てて。こうして今を生きる人々に害を成している。

とても痛ましい姿だ。

 

なればこそ……私が終わらせるべきだ。

 

 

 

 

やがて、チヨメの拘束から無理やり飛び出した一本の首が彼女の主を狙って暴れ回る。

チヨメも必死に拘束を強めようとしているが、限界だ。

彼女の力量ではこれ以上の術は行使できない。

 

 

――力を使うなら今、ということね。

 

『チヨメ。貴女は強い子よ、貴女ならいつか呪いにも打ち勝てる……寧ろ、従わせてしまえるかもね』

 

「御先祖さま? いったい、何を?」

 

キョトンとする彼女に微笑み(たぶん見えてはいないが)続ける。

 

『どうか、忘れないで。貴女を“支える想い”を。それがなんであれ力になるなら大切にするの、いいわね?』

 

「は、はい……?」

 

ふと、黒大蛇の方へ目を向ければちょうど大口を開けた大蛇とあの男性が激突しようとしている所だった。

 

仮にも神霊に連なる私の思考は瞬時に状況を把握する。

あのままぶつかってもあの男性なら問題ない。しかし、黒大蛇は仕留めきれず戦いは泥沼化するだろう。

 

 

私は一目散に飛び出した。

 

目指すのは黒大蛇……の中にいる“彼”だ。

思念体たる我が身はあらゆる障害を素通りして最速で彼の元まで駆けることができる。

同時に、黒々とした邪悪な気の中にある彼の思念もまた見つけることができた。

 

『サブロウさま!!』

 

叫びながら一直線、彼の思念を抱きすくめた。

数多の祟神に入り込まれ、“黒く禍々しい気”に侵された彼の思念はもはや風前の灯だった。

 

そんな彼に、私は()()()()()()()()

 

『どうか、どうか今一度、気張ってくださりませ。貴方が、貴方の罪を意識しているならば。私たちの裔を認識しているならば。

何卒……目を覚ましなさい!!』

 

『っ!!』

 

叱責に近い私の声に、ようやく彼は意識を取り戻した。

そのことに安堵しそうになるが、今は火急の時。

私は心を鬼にしてサブロウさまの思念を使()()()黒大蛇の身体へと干渉した。

 

「っ!?」

 

神殺しの剣を構えた彼を呑み込もうとした瞬間。黒大蛇は“自らの意思とは別に”口を閉じた。

 

『ああ、よかった……間に合った』

 

そこでやっと気を抜いた私は、迫りくる“焔の斬撃”に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

基地外周部、多重結界の外に位置する異界内にて一人の男が立っていた。

癖っ毛の黒髪の下に“糸のように細められた目”。

裾と袖の長い、黒い民族衣装のようなものを纏い、首元には複数のネックレスがかけられ先端には“何かの骨”がぶら下がる。

 

男は軽薄な薄ら笑いを浮かべて手の中にある“ナニカ”を弄んだ。

 

「土着神の大御所、諏訪大明神の“肉片”。確かに頂きました」

 

彼が手にするのは()()()()()()()

黒大蛇へと変じたコウガサブロウが、ヒデオたちとの戦闘で溢した文字通りの肉の一片だ。

 

「出来れば“キレイな状態”で確保したかったのですが……()()()()の悪癖には呆れてものも言えません」

 

言わずもがな、サブロウを反転させた男のことである。

彼とは仕事上、何度か手を組んだが。本能にまで染み付いた“悪辣さ”には流石のこの男も辟易していた。

 

やがて、肉片を“呪符”の中へ丁寧に包み懐にしまった彼はくるりと反転して帰路に着く、と。

 

 

「待ちなさい」

 

その最中に向けてジャカッと銃口が向けられた。

振り向き視認するのは“ぴっちりとしたスーツ”を纏うツインテールの少女。

艶やかな金髪を持つ少女、()()であった。

 

彼女はプラズマガンを真っ直ぐ男へ向けている。

しかし、度重なる戦闘の疲弊からその息は荒く、纏った赤い戦闘服も激しく損傷していた。

 

それを見て男も“余裕”を感じて笑みを浮かべる。

 

「これはリン嬢、久方ぶりですな。最後に会ったのは――」

 

「五年前よ、あんたが起こした()()()()()()で」

 

遮るように答えたリンの言葉に、男は思い出したように手を打った。

 

「ああ、そうでした。あの時は()()()共々、よくも邪魔をしてくれましたね。

それにしても……まさか、自分を触媒にして()()()を呼ぶとは思わなかった」

 

脳裏に浮かぶのは五年前、長年の大願成就がため訪れた“南極”での出来事。

極寒の極限地帯に秘された“星見台”を巡って、彼とリンは激しく争った。星見台もリンを味方と認めて協力したことで、男は敗北。周到に準備を重ねた計画を台無しにされていた。

 

「……おかげで“再生”に五年も費やしてしまった。目まぐるしく移り変わる現在の世界情勢においては痛打と言わざるを得まい」

 

僅かに眉根を寄せて目頭を押さえる。

 

「余計な時間を使うつもりはないの。いいからさっさと降参してくれない?」

 

余裕ある笑みを作る彼女だが、実のところ形勢は不利だ。

それを分かっているからこそ男は動じない。

 

「御冗談を。そちらこそ、大人しく()()()()に下った方が良いのでは?」

 

「……」

 

押し黙るリンに、畳み掛けるように言葉を続ける。

 

「リン嬢、貴女は()()()()()()だ。我が同志の誰しもが願ってやまない“太母の恩寵”を一身に受け、己が力の如く振るう貴女には嫉妬と羨望を感じずにいられない。

苦節“千四百年”、修行に明け暮れた私ですら及ばない、自然との完全なる調和。鬼道師(シャーマン)の最終目標へ、生まれながらにして到達している貴女こそ、真っ先に教団の“悲願”に賛同すべきだというのに――」

 

「ごちゃごちゃと――」

 

早口でいて流れるように自然と耳に入ってくる語り口は詐欺師そのものだ。人心のあれこれを熟知した口調。

 

それに苛立ったリンが口を挟んだ直後。

四方から魔法が迫った。

 

「なっ……!」

 

衝撃波を濃縮した塊、燃え盛る大火球、冷気を放つ大きな氷塊、電撃を球状に圧縮した光球。主要四属性、どれも上位クラスの魔力。

そんなものを同時に四つも操るのは十分脅威だが、なにより()()()()()()()が速すぎる。

ほんの僅か、男の口調に苛立ったが故に生じた僅かな隙に発動しているのだ。

 

そんな推論はともかく。リンは即座に対応する。

四方から迫る魔法はどれも“単体用”、ならば()()こそが正解だ。

 

ふわり、と宙へ飛び上がったとほぼ同時。四つの魔法は互いに衝突して相殺された。

後方に着地した彼女はすぐに顔を上げて“敵”を探す。

 

「……逃げられた」

 

先ほどまで男がいた場所にはもう誰もおらず。周囲へ目を向けてみても、変わらない異界の風景が広がるばかり。

念のため、スーツに搭載された簡易式の探知機能を起動するも、やはり男の行方は掴めなかった。

 

「相変わらず逃げ足だけは速いのね、()()()()

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

渾身の力を込めたヒノカグツチの斬撃により黒大蛇は滅びた。

真っ二つとなった長大な身体は延焼によって余すところなく燃え上がり、灰と化した。

跡には()()()()()()()()

 

「ふぅ……」

 

魔剣を杖代わりに肘を乗せ、一息つく。

COMPをチラ見してもはや基地内に敵性悪魔が存在しないことを確認してから、懐より煙草を取り出した。

 

 

「おいコラ……ワシのことは無視か」

 

火をつけたところでオサキが歩み寄ってきた。

額から生々しい出血の跡が下方に伸びているが、もう血は止まっているらしい。

 

「最初見た時は焦ったが……よくよく考えれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と理解したからな。そういう奴だろお前」

 

吸い込んだ煙を吐き出して答える。

 

「まあ、そうじゃが……ちょっとは心配せんか

 

なんとも言えない、といった表情でなにやらぶつぶつと呟くオサキ。

 

「なにより、“信じてたからな”。俺の仲魔を」

 

「むぅ……」

 

廃寺の時以来の“すっきりとした気分”で俺は戦えていた。……あれからそれほど時間は経っていないというのに、再び忘れかけていた俺の不甲斐なさには辟易するばかりだが。

今度からは、もう間違えない。

 

仲魔とは、守るだけの対象ではなく。共に戦ってこそ、ということを。

 

 

「……ただ、まあ、一応。これ食っとけよ」

 

胸ポケットから取り出したる“魔石”を差し出す。

するとオサキは少し驚きながらも素直に受け取り口内に放り込んだ。

 

「なんじゃ、いつの間に手に入れてたんじゃ?」

 

モゴモゴと口を動かしながら問い掛ける。

可愛い。

可愛いついでに全身の傷も幾分か薄くなる。

 

「サブロウの前に兵隊と戦ってたろ? あいつらからドロップした」

 

「あ、なるほどのぅ」

 

その後も、モゴモゴするオサキを眺めてほっこりする。

と。

 

 

 

「お館様」

 

いつの間にやら傍で膝をついていたチヨメちゃんが声をかけてきた。

しかし、身に纏っているのはいつもの忍び衣装ではなく。

スケスケどスケベな巫女衣装。

普段とは一転、派手なデザインのために改めて見入ってしまう。

 

「……お館様?」

 

声もなくジッと見つめる俺を訝しむように再度、声がかけられる。

 

「ん、いやなんでもないよ。

それより、チヨメちゃんもお疲れ様」

 

「はい、お館様も」

 

にっこりと笑みを浮かべて返すチヨメちゃん。

……これで人妻未亡人だと言うのだから恐ろしい、もはや反則では? 具体的に言えば可愛すぎるのでは?

 

可愛いのでこちらも堪らず頭を撫でる。

 

「お、お館様……」

 

ちょっと困ったような焦ったような顔で抗議する彼女。

 

「いやぁ、今回はチヨメちゃんのおかげで勝てたようなもんだからね。撫で撫では普段の三倍は硬い」

 

「拙者は童ではござらぬのですが……まあ、お館様が望まれるなら」

 

満更でもない顔で述べるチヨメ氏。

今更だけど、あざといなこの忍者。

さすが忍者、あざとい。

 

 

「……」

 

しばらく撫でて、ふと。隣のオサキがなんとも言えない顔でこっちを見つめているのに気付く。

ははぁ、アレだな? お前も撫で撫でされたいんだな?

 

「可愛い奴め」

 

そう言ってもう片方の手でオサキの頭を撫でる。

ちなみに彼女の頭を撫でるには少々コツがある。

彼女の特徴にしてチャームポイントである狐耳を傷つけないよう、頭頂部から前頭部にかけて優しくスライドするのだ。

とはいえ時折、耳を優しく揉むと表情が蕩けるのでそちらもオススメである。

 

「ちょ、コラッ! ワシまで撫でんでいいというに!」

 

やめよやめよ、と手を払い除けようともがく。が、その手には不自然なほど力がこもっていない。

 

「照れ屋さんめ〜、このこの〜」

 

薄い桃色の頭髪を撫でつけながら折を見て狐耳を優しく掴んだ。

 

「やめよやめよ〜……あふん!?」

 

――が、掴んだ瞬間にびっくりするほどの艶声が飛び出した。俺が思わず手を止め、チヨメちゃんすら凝視してくるほどに艶かしい声だ。

 

数秒ほど、俺たち三人の間に気まずい沈黙が流れる。

 

「さ、さぁて! 戦いも終えたことだし、早速大國に報酬貰いに行かないとな!」

 

俺は気まずい空気を払拭するべくわざと大きく明るい声を出した。

 

「そ、そうでござるな! 兵は拙速を尊ぶと申しますし!」

 

チヨメちゃんも俺に合わせて元気な声で応える。

でも、そのことわざの使い方はちょっと間違ってると思うよ。

 

「そ、そうじゃな〜……」

 

一方のオサキは、狐色の耳まで真っ赤にしながら小さく呟いた。

その様に俺はなんとも申し訳ない気持ちになるが、今更蒸し返しても気まずいだけなので、心の中で謝るに留める。

ほんと、ごめん。

 

 

 

だが。

 

「っ、いてて!」

 

少し歩き出したところで、手の甲に鋭い痛みを感じた。慌てて目を向けると。

 

「……」

 

目を釣り上げ、怒りに満ちた顔で俺の手をつねるオサキがいた。

……お、思ったより怒ってらっしゃる。

 

「嫁入り前の娘に、あのような恥をかかせるとは……お主、どうなるか分かっておろうな?」

 

ただならぬ覇気を滲ませながらオサキが告げる。

 

「……いや、嫁入り前もなにも。貴女、もうお婆ちゃn」

 

咄嗟に思ったことを口走った直後、ブチっという音をたてて手の甲の皮が引きちぎられた。

 

「〜〜っ!?」

 

チヨメちゃんの手前、必死に声を押し殺す。

戦闘時の傷に比べれば大したことはないが、平時においてはこういう痛みはそれ以上に敏感に感じ取ってしまうもの。

 

……ただ、まあ、俺の失言もかなり酷かったと今更気付いたので抗議はしない。

 

 

「お、オサキさん? さすがに主の皮を剥ぐのは如何なものかと」

 

「なんじゃ、手の甲だけでは物足りぬか?」

 

にっこり笑顔で彼女は言う。無論、喜びの感情は一ミリも無い。笑顔の裏からかつてない憤怒の念が滲み出ている。

 

「な、なんでもないで〜す……いや、ほんとごめんなさい」

 

「ふん……」

 

心からの謝罪だったのだが、彼女の怒りを収めるには足らず。不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。

 

 

――そんな様子を、いつのまにか傍でチヨメちゃんが眺めていた。

微笑ましそうな、まるで見守るような温かい目で。

 

「チヨメちゃん?」

 

思わず声をかける。

 

「いえ……なんとなく“微笑ましい”と思っただけにござる」

 

「そ、そうか」

 

そう真っ正面から言われるとこちらも小っ恥ずかしくなってしまうのだが。

……しかし、こうも素直な言葉を聞かせてくれるなど。召喚直後からは考えられない変化だ。少しずつでも、彼女と仲良くなれたのだろうかと内心嬉しく思った。

 

まあ、焦ることはない。焦る必要もない。

 

これからも彼女が許す限りは共に戦っていくのだし、イヌガミの言う通り“時に任せる”のも一手だろう。

 

 

 

 

「主殿ーーー!!」

 

ひと段落したところで、遠方から聞き慣れた声が迫ってきた。言わずと知れた暴走忠犬、ウシワカである。

 

ドドド、と煙を上げながら駆け寄ってくる彼女は咄嗟に身構えそうになる速度。

 

そうしてこちらに辿り着くなり急ブレーキをかけて、無事にコンクリートを粉砕した。

おいおい、人様の土地をあまり壊してくれるな。

そう苦言を呈そうとして、間髪入れずにウシワカはサッと頭を下げてきた。

 

一瞬、「謝罪かな?」と思うも。すぐにその意図を察した。

察して、素直に撫で撫でした。

 

「よしよし、ウシワカも、今回はよく戦ってくれたな。偉いぞ〜」

 

「むふー! ウシワカは主殿の仲魔ですので、当然です!」

 

口ではそう言いつつ、もはや隠す気もないほどに嬉しそうな声を出すウシワカ。

お前のそういう素直なところ、俺は好きだぞ。

 

「こやつめ〜」

 

「むふー!! もっと! もっと撫でてくだされ!」

 

調子に乗ってさらに激しく撫でてみると、ウシワカもハイなテンションでさらにおねだりしてきた。

なのでこちらも負けじと撫でまくる。

対してウシワカもさらにねだる。

 

 

 

……そうこうしているうちに、気づけば両手でウシワカの頭部をもみくちゃにするほど撫でている自分がいた。

 

「主殿〜♪」

 

ウシワカは上機嫌で笑っている。

こ、こやつめ……可愛すぎる。

こちらも撫でる手が一向に止まらんぞ!

 

 

「お館様……」

 

チヨメちゃんの声でハッと我に返る。

 

「す、すまんチヨメちゃん。ウシワカのおねだり攻撃は思いの外強力でな」

 

「むふふ、まあ、今のところはこの辺で許してあげましょう! 続きは帰ってからですね!」

 

なぜか偉そうなウシワカは腰に手を当ててそう告げた。帰ってからも撫でるのは決定事項らしい。

まあ、嫌ではないが。

 

「いや、その……お館様。オサキ殿、もう随分前に先に行ってしまわれましたが」

 

「え!?」

 

気まずそうに告げる彼女の言葉に驚愕する。

確かに、周りにはすでにオサキの姿はなく――

 

「い、急いで追うぞ! いくら対悪魔基地とはいえ、あいつ一人でぷらぷらするのは危ないからな」

 

一瞬で気持ちを切り替えて二人に告げる。

今のオサキは廃寺の時のような女神モードではない、加えて夕凪から遠く離れたこの地ではバックアップもない。正真正銘の雑魚なのだ。

仮に野良悪魔にでも襲われたら、と考えると肝が冷える。

万が一にも無いとは思うが、基地の人間に野良悪魔と勘違いされて攻撃される可能性だってある。

 

なので急ぎ走り出したのだが――

 

「ふふっ」

 

「な、なにがおかしいんだ?」

 

共に駆け出したチヨメちゃんが笑いをこぼした。

 

「申し訳ござらぬ……しかし、お館様は本当に仲魔を大事に思っていらっしゃるのだな、と」

 

「っ! ま、まぁな」

 

相変わらずどストレートな言葉を投げてくるチヨメちゃんに、再び羞恥を感じる。

というか、そこまで率直になられると恥ずかしいってもんじゃないんだが。

素直になり過ぎである。

 

このクノイチ……召喚直後のオサキとのやり取りからなんとなく分かっていたが、根はかなりズケズケ言うタイプと見た。

 

「チヨメちゃん……恐ろしい子」

 

「え!? な、何故でござる!?」

 

まるで心当たりがないとばかりに狼狽えるチヨメちゃん。

 

冷静に考えると、そのござる口調もかなりあざといなと思った。

 

 





【あとがき】
これまでの皆様の反応を見て、「男英霊も行けるな」と判断したのでどっかで男キャラ出します。
一人はすでに出番が確定してるのですが、スペック的に過剰戦力になりそうなので何処で出そうか迷ってます…

ちなみに出す際は一章くらい使うのでfgoみたいに0.5章扱いでやりたいと思ってます。
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