ちなみに身長は最低値だ、当たり前だよなぁ?
卜部正孝。
現サマナー協会会長であり、創設者たる“吉祥寺の少年”に続く二代目の会長だ。
首都圏、関西、九州にそれぞれ設置されている本部全てを統括する立場にあり実質的にサマナー協会の最高権力者たる男。
そんな彼は、自身のサマナーとしての能力も当然ながらずば抜けている。
苗字の時点でお察しの通り、彼は頼光四天王の一角・卜部季武の末裔にあたる。
頼光の時代
そのため、魔性への対処においてかの一族は隔絶した技法を確立しており、一説には“頼光に対魔の技術を教授した”ともされている。尤もこれは俗説で、しかもサマナー界隈にしか流れていない噂話に過ぎないが。
いずれにしろ、歴史という点ではまず間違いなく会長は現在の協会で最古であろう。
そんな彼本人は、もちろん卜部家の現当主だ。
……本来なら、彼の伯父が当主の座を継ぐはずであったのだが。伯父は本家を出奔、サマナー界隈を渡り歩いた末に
残された彼の妹、会長の母に相当する女性は身体が弱くサマナーとしての資質にも恵まれなかったため、会長に継承権が回ってきたというわけだ。
会長は幼少より高いサマナー能力を発揮しており、この決定に誰一人口を挟む者はいなかった。会長も親族からの期待に応えるべく鍛錬に勤しみ、“世紀末”の段階では既に中堅に食い込む実力を得ていたという。
――そんな時起こったのが、“世紀末神魔騒乱”である。
自衛隊幹部たる『ゴトウ一等陸佐』のクーデター計画に始まり、米国大使と天使の繋がりとその暗躍、それらに連鎖するように次々と動き始めた悪魔たちが起こした一連の騒動のことだ。
これら全てを鎮圧ないしは“殲滅”したのがかの有名な“現代の英雄”。
サマナー協会初代会長たる
世紀末の東京、吉祥寺に突如として現れ、当時暗躍した全ての悪魔とその協力者を悉く討ち果たしたサマナー界の大英雄だ。
――無論のこと、数多の悪魔が蠢く世紀末において彼一人では対処しきれなかったことだろう。
だからこそ、彼を支えた者たちも当然いた。
その一人が現会長、卜部正孝。
当時、齢十と半分ほどだった彼は、この騒乱で戦い続けることで急激に成長を遂げたという。
その結果が、初代会長からその地位を託されるという形で現れているのは一重に彼の人徳にもよるが、実力の証明という点でこれ以上ないのも確かだ。
俺は、会長とは“初代会長”を通じて知り合った。
当時は『奥山』を出て間もない頃だったので、俺も世間知らずな上に常識知らずだったわけで。
加えて、奥山脱走の際の“トラウマ”から人間不信に陥っていたために偉そうな彼にはついつい噛み付いてしまった。
今思えば「なんて無謀なことを……」と顔を覆いたくなる非行だが、過ぎてしまったことは仕方ない。
……ともかく、彼に噛み付いた小生意気なクソガキたる俺は、生真面目な彼によって徹底的に矯正されまともな社会性というのを身につけることができた。
その点については感謝している。
している、のだが……
「こうして会うのは五年振りか? 息災なようで何よりだが」
両手を後ろで組み、キチッとした佇まいで目の前に立つ会長。
「へ、へぇ……お、おかげさまで」
それだけで萎縮して冷や汗が出てくる。
五年も間を空けたせいで余計に怖く感じている部分もある。
「……そう畏る必要もない、楽にしろ、楽に」
キョドる俺に溜め息混じりにそう告げてくる。
「い、いやぁ……俺もいい歳ですし、礼儀はちゃんとしないとって」
「五年も連絡を寄越さなかったのに、今更礼儀もクソもあるまい」
「ごもっともです……」
だよねぇ、絶対そう言われると思った。
「……まあいい。ならば先に彼女らの要件を済ませてしまうとしよう」
終始挙動不審な俺に呆れた様子の会長は、そう言ってレイランたちの方に向き直った。一方俺は、ようやく彼の視線から逃れられたことで内心ホッと息をついた。
――その後、宣言通り会長はレイランやリンと、何やら小難しい話し合いを始めてしまった。
俺もしばらくはその様子を見ていたのだが、手持ち無沙汰となり会長室を物色し始めたウシワカを宥めるべく、チヨメちゃんも巻き込んで“しりとり”をやった。
え、意外と図太いことしてるって?
人間ね、限界を超えた恐怖を感じると一周回って大胆になるんだよ。
現実逃避ともいう。
そうしてしばらく。
「――ではそのように報告させていただきます。本日は貴重なご意見を頂きまして、ありがとうございます」
仕事モードのレイランが綺麗なお辞儀をする。
「気にするな、私も葛葉とは今後も良き仲を続けていきたいからな」
対する会長の表情はとても柔らかい。声も俺に対するものより数段優しげだ。
「私も同意見です。まして“ライドウ”の下には
何やら言い掛けたレイランの言葉に被せるように会長は告げる。
「
「……。了解しました、ではこれで」
会長の発言に、何やら言いたげな顔をしたレイランだったが。それ以上その話題を続けることなく、綺麗な一礼をして会長室を去っていった。
「……なんだったんだ?」
奇妙なやり取りに思わず呟く。
レイランとの会話では終始優しげな雰囲気だった会長が、あの一瞬だけは“俺に対する時のような威圧感”を放っていた。
レイランも、どこか不満げな様子だったし。
だが、こうもあからさまな“藪蛇”に首を突っ込むほど俺は愚かではないので早々に忘れることにした。
「待たせたな。では、今度はお前の話を聞くとしよう」
レイランが去り、リンへの要件も終わったことで遂に会長は俺に真っ直ぐな視線を向けてきた。
「……ええ。確か、先日の大蛇討伐の件でしたよね」
俺も流石に、しばらく待機している間に平静を取り戻しておりしっかりとその目を見返す。
「ああ、それだ。先ずは壬生の子らから聞いた件について聞いていきたい」
会長の問いに、俺は包み隠さず都内浄化作戦の詳細を話して聞かせた。
最初は問題なく作戦を続けていたこと、途中で敵に捕まった鈴女たちを助けるために異界に向かい、ダークサマナー豚皮豚ノ介を討伐したこと。その帰り道に、例のコウガサブロウと遭遇したことを。
話を終えて、その間黙って聞いていた会長が答える。
「ふむ、先ほど彼女らに聞いた内容と概ね相違ないな。これならば彼女らの昇格の件も滞りなく進むだろう」
それを聞いて、ああ、なるほどと理解する。
当初、大蛇討伐の件で話を聞きたいと言っていたのに、なぜそこから聞きたがるのか? と疑問に思っていたが。
鈴女たちの昇格に関する資料作りのためだったのか。
……たかが昇格で大袈裟というか疑り深い気もするが。
「すまんな、私としては“実力と人格”を最優先で昇格の判断基準にしたいところなのだが。これでも協会は組織、未だ歳若い彼女らを不安視する声もあるのだ。理解してくれ」
少し疲れたように告げる彼に、俺も同情する。
「……大変ですね、組織の長ってのは」
ましてサマナーの組織、という性質上“種々累々”の輩が所属しているのだから、それを纏める立場の苦労は推して知るべしだ。
「そうだな。しかしそれが私の役目だ、今更弱音は吐かんよ」
フッと微笑を浮かべた彼はすぐに真剣な顔に戻って話を続ける。
「ではそろそろ本題に移ろう。お前が討伐したコウガサブロウに関連した騒動、その際に
薄々気付いていたが、やはり。彼が聞きたいのはコウガサブロウのことではない。あの騒動の中で遭遇した“連中”についてだ。
俺も、奴らについては聞きたいことが山ほどある。
「ええ、何なりと、聞いてください」
「まずは、“大臣旗下の基地”を襲った一団について。お前が見て聞いて、気づいたことを聞かせてくれ」
――基地を襲った連中といえば、“鉤十字”をシンボルとして“軍隊”のような出で立ちの一団だ。
鉤十字というキーワードで分かる通り、奴らは“旧ドイツ”に関連した組織であるのは想像に容易い。
しかしながら、パワーアップしたウシワカと拮抗するほどの力をもったあの“機械兵士たち”については謎が多い。
奴らが行使した“アンチ召喚術結界”や、『ロンギヌス・ディテリオレイト』とやらについても。
それら、俺が知る全てを語って聞かせる。
「――ふむ、なるほど」
「私も、あいつらについては聞いておきたかったのよね。海外を渡っている間に、あいつらと思しき組織のことは小耳に挟んでいたし」
リンも続けて語る。
……というかお前、あいつらのこと知ってたのか。初耳だぞ。
「ちょっと本気出さないと危なかった相手だもの、知ってるなら教えてほしいわ会長さん」
リンの問いにウラベさんは少し瞑目してから答えた。
「お前たちの話を聞いて確信した。基地を襲った一団はおそらく……
それって……
「あのオカルト界隈で有名な、旧ドイツの生き残りってやつですか?」
語るまでもない。ラストバタリオンとは、オカルトマニアの間で昔から噂されている都市伝説の一つだ。
曰く、かの総統が演説で口にした謎の一団、とのことだが。
「実在したのですか?」
所詮はただの都市伝説だったはずだ。
「無論、お前の言う通り。本来ならばその名称はオカルトの一つに過ぎないものだった。……しかし、“二十一世紀”の訪れと共に突如として奴らは現れたのだ」
――会長曰く、奴らは今世紀になって初めて活動を始めたという。世界各地に点在する“聖遺物”、もしくは“神秘に関する遺物”を狙って度々襲撃を仕掛けてくる謎の一団。それが世界における彼らへの認識らしい。
その目的は今のところ不明ながら、標的が洒落にならない上に彼らの拠点が“一切不明”なことで各国は対応に頭を悩ませているらしい。
「お前たちの時も奴らは
そうだ。後から細川に聞いた話では、都内上空に突然反応が出現したと言っていた。そこから“戦闘機形態”に変形して超高速飛行で基地に襲撃をかけるという、SFみたいなことしてきたわけだ。
「反応消失地点についてもバラバラだ。もちろん、その後の足取りも掴みようがない」
だからこそ“厄介な連中”ということか。
と。
そこでふと気がついた。
「……そういえば、あいつらの目的。今回は聖遺物じゃなくて“ヤバそうなガラス片”だったな。いや、厳密には持ってったのあいつらじゃなくて
その一言にウラベさんはピクリ、と反応した。
「実を言うと、私が一番聞きたかったのは
突然、鋭い眼光で語る彼。
「グレゴリー、とかいう奴ですか? ええ、と。確か、コウガサブロウを唆して、ついでにラストバタリオンを呼んだとか言ってたような……あ、あと、
そこまで言って、自分でも気がついた。
ソウルコントラクトソサエティという名前が持つ意味を。
一方ウラベさんは険しい顔を作った。
「ソウル・コントラクト・ソサエティ、通称SCS。“ダークサマナー専門の傭兵斡旋組織”であり、その母体にあたるのは堕天使の集団たる『
……そして、奴らこそ
「……」
そう、奴らは、SCSないしグリゴリは会長の身内の仇だった。
なんで今まで忘れていたのか? いや、SCSという名前が問題だった。俺が聞いていたのはグリゴリの方なのだから。
――SCSという組織がいつからあったのかは定かではない。
しかし、その目的は往々にして母体たるグリゴリの目的そのものであり、即ちは“上質な
彼らは集めたソウルを『
確かなのは、あいつらが人間の魂を標的として活動する危険なテロリスト達ということ。
魂を集めるためならば如何なる非道も辞さないのは勿論、その土地への悪影響や世界秩序すら眼中にない連中だ。
過去、平崎市と天海市で大規模な活動が確認されその対処に『葛葉』が駆り出されたことからも危険性が伺える。
尤も、平崎市の活動では『キョウジ』によって組織の実質的な指導者であった魔王デミウルゴスが討伐され。天海市では、葛葉の支援を受けた『ハッカーの青年』が幹部たるアザゼル、シェムハザ、サタナエルを討伐したことで暫く活動は沈静化していたはずだが。
「――デミウルゴスらの後釜に収まったのがそのグレゴリーって奴なんですね?」
「ああ、そうだ。アザゼルらが担当していたSCSの運営に始まり、グリゴリ所属の各堕天使たちへの指示や運用も任されているらしい。
……ついでに、奴自身も
俺が持つ“高い耐性”を素通り同然に貫通してきたことからもその異常性がわかる。
俺はすぐにそのことを彼に伝えた。
「精神干渉……おそらく、こちらでも同様のものと思しき報告を複数受けている。曰く「一番の欲求以外に考えられなくなった」らしい。
彼らは一様に
「ええ、その通りです」
思い出しただけでも怖気が走る。まるで自分が自分でなくなるような、そんな気持ち悪い感覚であった。
……いや、
「――とはいえ、現状ではこちらもそれ以上の情報を持っていない。奴自身については何らかの形で接触する以外にデータを更新する手立てはないだろうな」
そこで一拍置いて続ける。
「なので、その関係者の方の話をしたいと思う」
「関係者?」
……とはどういう意味なのか。疑問符を浮かべる俺に彼は話を続ける。
「先日、レイランから“涅槃台”に関する報告を受けた。その内容については事前にお前と話し合ったとのことだが、間違い無いな?」
それはおそらく、チヨメちゃんを召喚する前に話し合った件についてだ。
「ええ」
「その中で話題に上がっていた“ダークサマナーの斡旋者”とやら。こいつはおそらくグレゴリーだ」
「っ、マジですか……」
いや、普通に考えればダークサマナー専門の斡旋者という時点で奴以外に思い付かないのは確かだ。
無論、他にも同じようなビジネスを展開する輩は多くいるが。直近の事件や騒動を鑑みればその可能性があるのも事実。
「まさかとは思っていたのだがな、レイランが回収したCOMPのログを調べていたところ。斡旋者の側から“魂”を要求する記録が見つかった。となれば、グレゴリーないしはSCS案件と見て間違いない」
ウラベさんはさらにこう続けた。
「そして、これは私の私的な推察なのだが。
「それは……」
すぐには否定できない内容だ。
鈴女たちの事件の後、奴は基地に現れた。コウガサブロウが暴走したという時期から考えても奴の活動期間内にあるのは確か。
だが……
「――ですが、それは
鈴女らを唆しても奴には一銭の得にもならない、逆に自らの手掛かりを残すという点では悪手とも言える。
「いや、奴は
しかしウラベさんは絶対的な自信を持ってそう言いのけた。
「奴は過去にも
……そういう奴なのだ、グレゴリーという
「……」
何というか、言葉を失う。
まさか、本当に
「率直に、
大衆の思い描く悪魔そのものだ。具体例としては『ファウスト伝説』に出てくるメフィストフェレス。そんなメフィストにだって魂という目的があった。
グレゴリーにはそれすら無い、ということか。
「まさに“悪意の化身”ですね。まったく、傍迷惑な奴だ」
「そうだな、その傍迷惑で我々も過去相当な痛手を受けている」
「……となると、妙ではありますね。そんな性格で組織のトップが務まるのか」
私的な欲望で厄介な事件を起こすような奴をトップに据えるなど、本気ならばグリゴリも落ちたものだ、と思う。
「無論、SCSに限らずグリゴリからも離反者が出ていると聞く。ただ、堕天使の大半は“そういうのばかり”だからな。アザゼルやシェムハザが貴重な人材だったのだろう。あれでも著名な魔王たちだからな」
確かに。アザゼルやシェムハザは、多くの文献でグリゴリのリーダー格として記されている。シェムハザに至っては明確にグリゴリという集団の筆頭だと記されたものもある。アザゼルだって古い文献から登場する古参の悪魔の一体。
ともに堕天使の中では頂点に位置する悪魔たちだ。
それらを早々に討ち果たせたのは僥倖だと言っていいだろう。
「――では話を戻そう。
問題はグレゴリーだけではないのだ。奴が連絡を取った相手、涅槃台の他に、“師”とされているテンメイなる人物。彼らが属する“集団”も不穏な動きを見せている」
「集団?」
それは初耳だ。涅槃台についてはレイランとの情報交換で、奴とテンメイなる人物のことしか話していない。
「ああ、涅槃台とテンメイ……そして先日の
「ウスイが?」
廃寺の調査と言えば、つい先日、オサキを探しに行った先で聞いたばかりの話だ。
まさかあの後に涅槃台の仲間と遭遇していたとは。
「そういえば、調査の前にウスイと会ったらしいな」
「ええ、仲魔を探しに行った先で偶然にも。また一段と“デキる男”になってましたね」
いや本当に。見るからにエリート営業マンみたいな雰囲気が溢れ出していた。さりげなく“すごい悪魔”を従えているのもポイント高い。
「――まあ、ともかく。その調査の際、廃寺で怪しげな動きを見せる男と出会ったらしいのだ。
そして“一戦交え”て、取り逃したらしい」
「ウスイが取り逃すなんて……その天魔とやらは相当なやり手ということか」
何度も言うが、ウスイはサマナー協会においては非常に高い戦闘能力を有している。ともすればウラベさんの次くらいに強いサマナーだ。
加えて生真面目、冷静、判断力にも優れた優秀な人材。
その彼をして取り逃すとなれば、相手も相当に場慣れした手合いということだ。
「その時……いや、一戦交える前に。こっそりとそいつがどこかに連絡する様子を伺っていたらしい。
そこで涅槃台らの集団と繋がっていることが判明した」
それと同時に名前も分かった、と彼は言う。
「
尤も、組織と言っても確認されているのは先の三名のみなのだが。涅槃台の件や、他に疑わしい案件も含めれば少なくない“人員”を保有し、相当活発な動きを見せている集団であるのは間違いない」
「天魔衆……」
天魔、と言えば真っ先に思い浮かぶのはかの有名な『第六天魔王』だろう。
しかし、天魔という単語自体が複数の意味、曖昧模糊な引用をされてきた関係から広義にはソレ以外も該当し得る。
サマナー界隈においては、“魔性に堕ちても天に在りし古き神”が天魔のカテゴリを与えられてきた。のちにこのカテゴリは破壊神や鬼神へと細分化されたが、未だに天魔以外のカテゴリに該当しない悪魔は天魔に分類されている。
また、天狗を天魔と呼称する文献も存在し、サマナー界隈と密接な関係にある祓魔・降魔、すなわち退魔を生業としてきた裏の人間たちの間では“天狗の最上位、天狗の域を逸脱した魔性”或いは“魔性に寄り過ぎた天狗”を天魔と呼称していたりする。
まあ、要するに。
天魔という単語だけでは推察の仕様がないということ。
しかし。
「……涅槃台が“破戒僧”を自称していたことを考慮すれば、この場合の天魔とはつまり“天狗に関係するモノ”であるのは間違いないでしょう。
少なくとも“仏道”に関連するのは確かだ。
更には涅槃台が執着していた“力”……これらをまとめると、奴らの言う天魔とは“天狗”、或いはその上という意味での天魔でしょう」
これまでの情報を鑑みればこの解が妥当なところ。そう思い口にしてみたのだが……
「ふむ、私も同じ意見だ」
ウラベさんもしっかりと頷きを返してくれた。どうやら正解だったらしいことに内心ホッとする。
「まあ、ウスイから“天狗の半面を被り黒い翼を生やしていた”と聞いていたからな。まず天狗以外に考えられまい」
「えぇ……それ早く言ってくださいよ」
そんなの天狗じゃん。天狗しかないじゃん。
真面目に考察してみた俺が馬鹿みたいじゃん……。
徒労感からげんなりする俺へと、不意に微笑を向ける彼にビクリとした。
「腕は鈍ったが、頭の方は健在なようで安心した」
「そいつはどうも……」
まあ、記憶喪失になったわけでもなし。腕はともかく、これまで蓄えた知識が消えるなんてことは早々無いと思うが。
……いや、そうでもないか。人によっては“トラウマ”から悪魔に関連する知識を無意識のうちに忘却してしまうこともあり得る。
俺はそもそも“彼女を忘れられない”からこそサマナーを続けているわけで。彼女に繋がる悪魔への知識を手放す可能性は一ミリも無いのだが。
「俺だってサマナーの立場に
「ならばいい。
……“大切な存在”を失う痛みは、私も理解しているつもりだからな。少し心配になっただけだ。気にするな」
「……」
なんてことないように流すウラベさんに、俺は内心複雑な気持ちになった。
こと彼に対しては「分かったような口をきくな」とは口が裂けても言えないからだ(……そもそも言うつもりもないが)。
彼も、
俺が“こうなる”よりも少し前、十年以上も前の話。
――彼は最愛の妻を悪魔に殺されていた。
【あとがき】
……まあそんな感じでSCSは殆どファントムです。
あと、ウラベ会長は伯父さんのことをとても尊敬していたりします(どうでもいい設定
……仁王2で女頼光さん出るってマ?
(ネタバレが怖くて調べていない人