英傑召喚師   作:蒼天伍号

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人修羅強すぎ問題





怨霊戦

ヒデオたちが怨霊群体と遭遇し、遠野アイとクダが談笑しながら帰路を進んでいた頃。

同市に“もう一人のサマナー”が訪れていた。

 

白い貫頭衣のような衣服の上から白いマントを羽織り、真っ黒な頭髪を持った青年。

見るからに日本人と分かる容姿は柔和な印象を与える所謂“優男風”。

 

彼はスマホの画面を見ながら僅かに溜め息を吐いた。

 

「今しがた任務を終えたばかりだというのに……」

 

彼の言う通りつい先刻、“上層部から命じられた悪魔討伐”をこなしてきたところだった。

だが、見つめるスマホ画面には“悪魔反応を示すアイコン”が地図上に示されている。

それも並みの悪魔よりも一際大きな反応だ。

これを放置すれば、街区に少なくない被害が出るだろう。

 

そう考えたならば後の行動は決まっていた。

 

「……よし」

 

呟き自らを鼓舞した彼は迷わず反応があった地点へと足を進める。

その腰には鞘に収まった両刃剣、もう片方には“拳銃”のホルスターがチラつく。

 

……ところで。彼の任務は先程すでに()()()()()()。つまり、彼が今から向かう悪魔反応は彼にとっては本来ならば()()()である。上司からもそんな命令は下されていない。

それでも、彼は迷わずに向かう。

“悪魔が人を襲うならば”。

“自らがそれを止めねばならない”と強く己に誓っているがために。

 

――迷いなく、恐怖もなく。堂々と進む彼のマントには()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「ホホホホホ、ホォォォォォ!!!!」

 

中年男性の顔が鳴き声を上げた直後。

怨霊群体の肉体から強力な呪詛の波が放たれた。

 

広範囲呪殺魔法(マハムド)だ、躱せ!!」

 

言いつつ俺もすぐにその場を離れる。

怨霊の正面にあたる空間には濃密な呪詛が満ちて下のアスファルトすら視認できない有様だ。

だが――

 

 

「遅いんだよなぁ!」

 

飛び退いてすぐに愛銃を取り出す、と同時に込められていた通常弾を吐き出させ破魔弾を装填した。

あれだけデカい図体だ、狙いをつける必要もない。

ゆっくりと蠢くばかりの群体へと躊躇なく発砲した。

 

 

「ホホ……ホゴォォォォォ!!!?」

 

子どもに似た肉塊が蠢く躯体へと直撃した弾丸は即座に破魔系魔法を発動。霊系悪魔に総じて効果を発揮する破魔系魔法、その例に漏れず群体は苦悶の動きを見せていた。

ただ、まあ。あれだけで殺せるほどに容易くはないようだ。

 

「そいつも承知済みだ」

 

俺は一人ではない。

俺の発砲に続くようにしてイヌガミのアギ系魔法が敵へと殺到する。

未だ破魔弾の痛みに呻いていた怨霊は続け様に降り注ぐ炎の群れを受けて“混乱”状態に陥った。

そこへ、ダメ押しとばかりにウシワカが愛刀を手に駆ける。そして炎に焼かれる群体へと無数の斬撃を放った。

 

「ホゲェェェェェ!!!!」

 

間抜けな断末魔を上げながら崩れ落ちる怨霊は、そのまま消滅……することはなかった。

 

「ホホ……ホホホホォォォ!!」

 

グチャグチャに崩れた群体は、頂点にある“あの顔”を紅い水溜りに突っ込んで、それを()()()()()

すると、俺たちの攻撃で負った傷がみるみるうちに修復されていく。

 

そんな光景を見せられては邪魔しないわけにいかない。

 

「させるかよ」

 

破魔弾のままの愛銃を連射、水溜りを啜るのに夢中な鈍重極まる群体は無防備な躯体へモロに喰らう。

 

「ホゴッ!? ホゴゴゴゴッ!!」

 

炸裂する破魔系魔法に体を痙攣させる怨霊。

……なんというか、久方ぶりに“弱い奴”と戦った気がする。厳密にはチヨメちゃんの能力測定で弱めの悪魔を数体ほど仕留めたがあれはチヨメちゃんに任せっきりだったために、やはり俺自身が仲魔と連携して相手した弱い悪魔は久方ぶりだ。

 

とにかく、弱いならばさっさと片付けてしまおう。そう考えたところで――

 

 

「ホホォ!」

 

――群体の背部から()()()()()

 

「は?」

 

呆気にとられる俺、対し翼を広げた群体は間髪入れずしてその翼面から()()()()()()()()()

ただの怨霊ではない、濃密な霊力、呪詛が詰め込まれた霊体をまるで爆弾のようにこちらへ飛ばしてきたのだ。

 

「くそっ!」

 

慌てて銃撃するが数が多過ぎてとても対処できない。

そこへイヌガミがアギを連発して加勢するが、それでも足りない。

霊体群はそのまま俺たちのもとへ突っ込んで――

 

「お任せを!」

 

迫り来る霊体群の面前を神速のウシワカが駆け抜けた。

その直後、俺らの撃ち漏らした霊体は全てバラバラに切り刻まれて消滅した。

 

「す、すげぇなお前」

 

素直な感想が口から出た。いや、普通にすごい。

斬撃も見えない速度で数十を超える霊体爆弾を誘爆させずに斬り伏せて見せたのだ。

改めてウシワカの優秀さを実感する。

 

「えへへ……これが終わったらぜひ“なでなで”を!」

 

もはや隠す気もない欲求そのままを口にする彼女。

……冷静に考えると“なでなで”とか、知らない人が聞いたら“俺の正気”が疑われかねない表現だな。外では自重するように伝えた方がいいなこれ。

 

とかなんとか、気が抜けた一瞬の隙に怨霊群体は翼を大きくはためかせ空へと飛び上がる。

 

「あ、ちょ、待てコラっ!」

 

デカい図体の割に嘘のような速度で飛び上がりそのまま飛び去っていく怨霊群体。その背は一秒足らずで、既に視界に小さく映るのみ。

恐ろしい逃げ足の速さだ。

 

「クッソ! あのグロ悪魔め……」

 

俺はイヌガミを呼び戻しつつウシワカに声をかける。

 

「追うぞ、あんなグロテスクで知能の低い怨霊をほっとくわけにはいかない」

 

「承知! あ、なんなら私が先行して仕掛けましょうか?」

 

あっけらかんと言い放つウシワカだが、確かに。

彼女の足ならばあの飛行速度にも余裕で追いつける。

 

だが、サマナーから離れた仲魔はMAG供給が一時的に断たれる。今は別行動のためのMAG補給アイテムの類は持ってきていない。

つまりはウシワカは自前のMAGだけでアレを足止めする必要があった。

 

そんな事情もあって数秒悩んだ俺だが、ウシワカの実力ならば任せられると判断。首肯した。

 

「! お任せくだされ主殿、必ずや彼奴の素っ首、献上いたしてご覧にいれます!」

 

自分の意見が聞き入れられた嬉しさからか、はたまた信頼を向けられたが故か。いずれにしろウシワカはキラキラした瞳と笑みを浮かべた。

クッソ、こいつほんと可愛いな。

あと、あんなギョロ目の首はいらない。

 

お任せをー、と言いながら駆け出した背に「首はいらないよー」と叫びながらもたぶん聞いていないんだろうなぁ、とゲンナリする。

 

「まあ……魔術師あたりには売れるかな?」

 

あまり所持したくない見た目の首だが金になるならば我慢しようと思った。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「――それでな? その時“辺獄さん”が言ったんだ!」

 

「うんうん」

 

ヒデオさんのロリコン癖が暴露されてからしばらく。帰り道を歩く私たちは“漫画談義”に花を咲かせていた。

……と言っても、途中から熱心に語り始めたクダちゃんの話を私が聞いている形ではあるが。興奮した様子でフンスフンス! と鼻息荒く身振り手振りを交えて話す彼女は率直に微笑ましい。

今の姿が所謂“化けた”状態なのは承知しているが、やはり視覚情報としてダイレクトに“可愛さ”を見せつけられると頬を緩めざるを得ない。

クダちゃんかわいい。

 

ヒデオさんの好みであるという“ツンツンクーデレ青髪美少女”とやら、存外、私にも響くものがある。クダちゃんが言うにはヒデオさんのために用意した姿らしいが。

ごめんなさい、先に私が堪能しておきますね……

 

 

――それからも熱心に語るクダちゃんだったが、ふと。明後日の方向を向いて沈黙した。

 

「クダちゃん?」

 

先ほどまでの紅潮した興奮顔とは打って変わり、神妙な面持ちで一点を見つめる彼女。

やがて冷静な声音で呟く。

 

「来る……」

 

「? 何が?」

 

何のことか分からず首を傾げる私を、クダちゃんは突然抱えて大きくジャンプした。

 

「のわぁぁぁ!? ク、クク、クダちゃん?!」

 

「喋るな! 舌を噛むぞ!」

 

ちっちゃい見た目からは想像もつかない怪力で軽々私を抱えて宙を舞う。

眼下には遥か遠くコンクリートの舗装が見えて一瞬気を失いそうになった。

そうして慌てて視線を逸らしたところで、“ソレ”を目視した。

 

「なに、あれ……」

 

グチャグチャと音を立てて蠢く肉塊、子どもにも見える“部位”を無数に混ぜ合わせたような外見の“異形”が、大きな翼を広げて先ほどまで私たちのいた場所に突っ込んできた。

 

轟音を響かせながら舗装を粉砕して着地した肉塊は、緩慢な動きで“顔”に見える部位をこちらに向けた。

肉を継ぎ接ぎしたような長い首の先にある男の顔が、飛び出た両目をギョロギョロと動かしてやがてこちらを捉える。

 

「ホホッ……ホォォォォォォ!!」

 

気味の悪い鳴き声をあげた顔は、翼を仕舞い肉塊同然の身体をゆっくりと振り向かせ……こちらに触手を伸ばしてきた。

 

「ちぃ!」

 

空中に飛び上がった状態の私たちには普通、回避手段などないはずだが。クダちゃんはふわり、と空を飛ぶような動きで触手を避けた。

……そして、紙一重で避けたおかげで触手の詳細な“姿”を目にする。

 

苦悶の表情を浮かべた子供の顔が無数に張り付いた悍しい触手の姿を。

 

「うっ……」

 

反射的に胃の中身を吐き出しそうになった口を慌てて抑える。

喉元まで迫り上がったソレをなんとか呑み込み口内に滲み出た酸っぱい味に眉を顰めた。

 

その間にクダちゃんは空を飛んで肉塊から離れた位置へと着地。私を抱えたままに肉塊の方に注意を向けていた。

 

「ふむ……敵襲についてはある程度予想・対策していたとはいえ。まさか涅槃台ではなくこのような“怨霊”が襲ってくるとはな」

 

「お、怨霊?」

 

こんな状況でえらく冷静なクダちゃんの呟きに思わず反応する。

 

「うむ、アレは怨霊。死人の怨み辛みが悪魔に変じた悪魔だ。

……それにしては“複数”の念が感じ取れることに疑問を覚えるが」

 

冷静に分析するクダちゃんだが、私は怨霊という単語だけで怯えてしまう。

恨み辛みが悪魔に変じた、と説明されても幽霊は幽霊だし怖いものは怖い。理屈とかどうでもいい。

なによりあの見た目だ、正直直視するのも辛い。

 

怯える私を見てクダちゃんはこちらに笑みを向ける。

 

「案ずるな、もとより“涅槃台への対策”を用意していたのだ。あれくらいの怨霊なら容易にお前を守り切れる。

だから安心して身を任せておけ」

 

ちっこい美少女なのに妙に頼り甲斐のある凛々しい表情。ちょっとドキッとしてしまった。

 

 

「ホホォ、ホホォ!」

 

「さて……では、やるとするか――!」

 

己を鼓舞するようにそう告げてクダちゃんが走り出そうとしたその時――。

今度は横から眩いばかりの白い閃光が乱入してきた。

 

 

 

 

 

 

「ホホォ!?」

 

閃光に見えたのは厳密には“剣閃”であった。

両刃剣が怨霊の胴体に鋭い一撃を放ったのだ。

それを為したのは一人の青年だった。

 

真っ白い衣服に真っ白いマントを羽織り、細身の両刃剣を携えた黒髪の青年。

彼は、剣撃に呻く怨霊へさらなる追撃を放つ。

 

「ハァッ!」

 

掛け声と同時、素早く放たれた十字の斬撃は怨霊の大きな身体をざっくりと切り裂いて鮮血を舞い散らす。

 

「ホゲッ、ゲェェェ!?」

 

慌てるようにザザッと後退りした怨霊へ、青年は続けて掌を向ける。

 

「“主よ”」

 

短いつぶやきの直後、そこに魔法陣のようなものが展開され中から光球が飛び出す。

弾丸のような速さで怨霊に直撃した光球は、怨霊を囲むようにして何らかの文字がずらりと展開され、内部に光を発生させた。

光の柱のようなソレの中で怨霊は耳障りな悲鳴をあげる。

 

――だが、それも巨体を振り回すことで破壊された。

 

「ちっ!」

 

そしてすぐさま自らの周りに“黒紫の霧”を発生させ、それを避けるようにして青年も後退する。

必然、怨霊から距離を取っていた私たちの近くに着地したことで、ようやくクダちゃんは声をかけた。

 

「その格好……お前――」

 

「突然の横やり失礼。

私は()()()()()()()佐藤良夫(さとうよしお)

故あって、助太刀します」

 

 

 

 




【あとがき】
だいぶ遅れた上に短くて申し訳ない……これも真Ⅴって奴の(ry





(今更だが)阿国さん来ましたね。龍馬だけなら難なくガチャ禁出来るだろうとたかを括っていた私の耳に襲い掛かるすみっぺボイス。
汚いな、さすがDW汚い。

そしてなぎこさん幕間で存在が確認された保昌殿ェ……そうだよね、なぎこさんの過去話突っ込むなら保昌ニキ居ないとダメだもんね……。
でも逸話に乏しい上にキャラ立ちもしてないから参戦は絶望的なんだ(泣)
でもでも保昌殿は道長四天王の一人だから頼光と同格というか当時の政治的には上の立場だから!(暴論
同僚には平清盛を輩出した伊勢平氏の祖になった維衡殿もいるし!!
頼光や田村麻呂とも同格みたいに語られたりしたし!!
……え? その割には伝説で頼光のお供みたいな形でしか登場しないって?
せやな。

月下弄笛は牛若丸ではなく藤原保昌が元だという豆柴知識で締めにしたいと思います、マル
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