英傑召喚師   作:蒼天伍号

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前話よりも前の時系列になります。
分かりづらくてすまねぇ……




……ソウルハッカーズ2(ボソッ




ヨシオというメシアン

遠野さんの自宅についた俺たちは、とりあえずリビングに集まっていた。

と言っても、全員入れるスペースは無いためにヨシオのヴァーチャー、俺のクダを除いてCOMPに仕舞っている。

 

リビングには相変わらずジャックリパーどもがワラワラと思い思いに寛いでいて、戦闘で疲弊した俺としては少し苛つく光景でもあった。

 

「はい、どうぞ」

 

「これは、どうもすみません」

 

差し出されたマグカップを受け取りつつ軽く会釈。カップから匂い立つ香りからして中身は紅茶と見た。

そうして香りを嗅いでからゆっくりと一口。

うむ、紅茶の良し悪しは全く分からんが、素人舌にも美味と感じられる一杯だ。

……それはそうと。

心なしか、遠野さんの対応が柔らかくなった気がする。カップを渡す際も和やかな笑みで声も優しかったし。

 

「? どうしました?」

 

「いえ……」

 

思わずジッと見つめてしまっていた。慌てて視線を逸らし平静を装う。JDといえどまだ“子ども”だ、これ以上怖がらせるのも忍びない。

 

「コイツ、ママのこと好きなんだぜ、きっと」

「むっつりサマナーめ!」

 

と、ジャックリパーたちが俺の方を指差して口々にそんなことを宣い始めた。

 

「えぇ!?」

 

真に受けたらしい遠野さんは驚愕の表情ののちに少し警戒したような目を向けてきた。

……そりゃいくらなんでも()()()過ぎないだろうか? どう考えても俺はそんな素振りは見せていなかったはずだぞ?

いや、あの遠野夫妻のことだから存外、箱入り娘の可能性はあるが。

 

「これ、そうからかうものではないぞ、ジャックリパーども」

 

ぺし、とジャックリパーの一匹の頭を軽く叩いたクダ(人間態)はやれやれと言った顔で遠野さんの膝の上に座った。

 

「おい待て」

 

「ん? なんだ?」

 

不思議そうに小首を傾げるクダ。さも俺がおかしいみたいな反応やめろ。

 

「なんでしれっと遠野さんの膝の上に乗ってんだ、仮にも依頼主だぞ。あんまり失礼なことするな」

 

「おかしなことを言う。我……私はこの者と“これ”が許されるまでの信頼関係を築いていただけのこと。お前が口を出すことではない」

 

「なんだと?」

 

この短時間でそんなに仲良くなったってのか……?

それじゃあ、しばらく警戒されてた俺はなんだ?

 

「あ、私も別に気にしないので……大丈夫ですよ」

 

遠野さんも特に不快と思っていない様子。

まあ、本人がいいならいいけどさ……。

 

「というかお前は少し“堅すぎる”と思うぞ」

 

まさかのクダからそんな苦言が飛び出した。

一人称が“我”のやつにそんなこと言われるとは。

 

「サマナーとは“霊的案件の解決者”、更には個人店ともなれば依頼主との円滑なコミュニケーションも必要なのではないか?」

 

続けてあまりにも“正論”過ぎるお言葉が飛んできた。

くっそ、ぐうの音も出ない。

 

「んなこと言われてもなぁ……俺なりに最低限の“マナー”を守って行動してるつもりなんだよ」

 

「ふむ……人間社会とはかくも“ややこしい”のか。わかった、今回は私の浅慮だったようだ、謝る」

 

と、俺の言い訳がましい言葉を聞いたクダは予想に反して謝辞を示しペコリと頭を下げた。

 

「い、いや、そんな頭下げるほどのことじゃないけど……どうしたんだお前?」

 

これまでのクダと言えば、仲魔としての契約以上のことには一切気にしない、不干渉、が常だったはずだ。

ここまで“俗世”や“俺”に関心を持つなど……“違和感”がすごい。

 

「…………いや、別にどうもしないぞ。私もそろそろ人間社会を学んでおいた方がいいと思ったからな。それだけだ」

 

こちらをジッと見つめてから、目を逸らしてそんなことを宣った。

明らかに“嘘”をついている、或いは“言外の事情”が関係しているのは確かだ。

 

一瞬、問い詰めようとしたが、あのクダが隠したいことともなると。俺がズカズカと踏み込んでいい話ではない気がしてやめた。

 

「そうか」

 

「うむ」

 

互いに“気づかないフリ”をして会話を終わらせる。

それからしばらく、少し気まずい沈黙が続いた。

 

 

ちなみに、ヨシオは今、()()()()()()()()()()

あの怨霊との戦いで血塗れになってしまった彼は、遠野さんの好意で衣服の洗濯と入浴を勧められたのだ。

 

当然、俺は「得体の知れない男にそんなことしない方がいい」とやんわり注意したのだが、彼女は窮地を救ってくれた彼に深い恩義を感じているようで押し切られてしまった。

だが、着替えまで貸すことはない、と俺は近くの店で適当な服を見繕って再び遠野さん宅に戻っていた。

俺はてっきり、“模範的なヒーロー”たるヨシオに惚の字なのかと思っていたのだが――

 

「……」

 

ここまで話していて分かった。

彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()

一般的に考えれば“非常識”だが、先述の“箱入り娘”という推測が正しければさもありなん。

思えば、ジャックリパーを引き取ると言い出したあたりからその片鱗のようなものを感じていたが。

彼女は、生粋の()()()()だ。

 

無論、本人に自覚は無いのだろうが。誰かの窮地を見れば()()()()()()()()()類の人間なのだろうと俺は確信していた。

根拠はこれまでのサマナー経験からの“勘”である。

それは時に“愚か”と謗られる性質なのだろう、しかし俺はそういう人間がなによりも眩しくて()()()()

俺の“善意”は、“彼女”の損失と共に消え失せたのだから。

 

 

 

――などと。

無駄な考えを巡らせているうちに、ヨシオは風呂から上がって俺の買ってきたTシャツ短パンに身を包んでリビングにやってきた。

ヴァーチャーと共に“脱衣場”から出てきたところに思うところが無いわけではないが、そこは今は置いておこう。

リア充◯ね

 

「いやぁ、助かりました。あのまま帰れば確実に“天使さま”にお叱りを受けていましたからね」

 

爽やかな笑みで語る彼からはほんのりと女性モノのシャンプーの匂いがする。

遠野さん、後で風呂場に消毒液撒いといた方がいいですよ、メシアン菌がこびり付いてるでしょうからね!!!!

……などとは、口にしない。思っていても言わない。俺は大人だ。

 

「それはよかった、服もあとは乾かすだけですので」

 

「重ね重ねありがとうございます」

 

「いえいえ、命の恩人ですから。このくらい当然ですよ」

 

お互いに眩しい笑みで語り合う二人。

くそ、なんだこの正視に耐えない“キラキラ”具合は!

どちらも“裏が見えない”という点で共通した眩しさを放っている。

やめろ、自分の“汚れ具合”を思い知らされてなんだか苦しいから!

 

「? ヒデオさん?」

 

不思議そうにこちらを見るヨシオ。

お前に名前で呼ばれる筋合いはないのだが……苗字も呼んで欲しくは無いので黙っておく。

 

「なんでもないですよ。服、綺麗になってよかったですね」

 

「は、はい…………え、と。怒ってます?」

 

困った顔でそう言う彼。

はて、俺の顔は至って普通の笑顔でポーカーフェイスなんだが?

 

「怒ってないですよ」

 

だから笑顔でそう答えた。

 

「そ、そうですか……」

 

しかしヨシオは気まずそうに顔を背けた。おい、なんだよ、こっち見ろコラ。

内心、悪態ついていたところ。唐突に視界が真っ白に染まった。

 

「うわっ!?」

 

「デビルサマナー、これ以上、ヨシオをいじめるつもりなら私も黙っていませんよ」

 

その声で、視界に広がる白がヴァーチャーの翼なのだと理解した。

声の方に目を向けてみれば、そこには少しむすっとした女天使の顔。

その顔がなんだか()()()()()()()()思わず顔を背ける。

 

「……チッ、はいはい、天使さまの言うとおりに」

 

別に、“彼女”に似ていたわけではない。だが、雰囲気というか、()()()()()()()()()()みたいなのを感じてしまってなんとなく見ていられなかった。

なんでよりにもよって“女性型の天使”を従えているんだか。ヴァーチャーならば、あのクリスタルボ◯イみたいな半透明のタイプだって居ただろうに。

 

「ま、まあまあヴァーチャー。彼は別に僕に害意があるわけではないだろうし」

 

苦笑気味に天使を宥めるヨシオ。

いや? 俺はバリバリ悪意ありきで発言してましたが?

 

「もうよさぬか主、遠野嬢も困っておるぞ」

 

ヴァーチャーにガンつけていたところ、クダからお叱りを受けた。

見れば遠野さんも少し困ったような笑みでこちらを見ていた。

おおう……せっかく警戒解いてくれそうだったのに。我ながら大人げない言動をしてしまっていた。

 

「……すいません遠野さん、ご自宅をお騒がせしまして」

 

「いえ……ですが、今のはヒデオさんが悪いと思いますよ?」

 

ゔ。わかってる、分かってるんだよそんなことは……。

だが、メシアンも天使も未だに“冷静には見られない”のだ。

 

「遠野嬢、私からも言っておくからここは許してやってくれないか? 此奴にも考えというか……まあ、色々あるんだ」

 

と、意外にもクダからフォローが入った。

 

「別に怒ってはいないけど……クダちゃんがそういうなら」

 

遠野さんもやわらかい声で応えた。

……どうやらクダが言っていた信頼云々はあながち過言でもなかったらしい。

というか、サマナーよりも依頼主と仲良くなってる仲魔とはいったい?

それよりも、仲魔にコミュニケーションで劣っている俺とは……

 

 

 

 

 

 

 

そうして、ヨシオの服が乾くまでの間、彼女らは雑談に興じていた。ヨシオとヴァーチャーの両名と、遠野さん、彼女の上に座るクダ、戯れるジャックリパーたち。

それらを横目に俺は一人で紅茶を啜っていた。

やはりどうにも天使やメシアンと楽しく話すことなど出来そうにないからだ。俺にとって奴ら、特に天使は()()()()()()()である。

たとえそれがどんな種類の天使だろうと、彼女以外ならば全て等しく敵である。

無論、敵対関係に無い限りは攻撃したりはしないが。積極的に関わりたくもない。

 

だからこうして一人でいじけている。別に“ぼっち”は悲しいことじゃ無いからね。

うん。

 

 

「……主よ」

 

そんな俺のもとへクダがやってきた。

 

「なんだよ、お前もあっちで楽しんでくればいいだろ」

 

だがどうにも“情け”をかけられている気分で、少しムッとしてしまう。

我ながらみみっちい男である。

そんな俺に苦笑した彼女は、一転して神妙な面持ちで口を開いた。

 

「苦しいか?」

 

「は?」

 

突然、何を言っているんだこいつは。

しかしクダは依然として真剣な顔で繰り返す。

 

「今、苦しいかと聞いている」

 

「別に……」

 

何が、とは言わない。きっとコイツ、()()()()()()()()()()()。だから一丁前にこんな顔してやがるんだ。

 

「もう一度聞くぞ、苦しいか?」

 

「うっ…………まあ、そんなこともなくはない、かな」

 

なぜか押しが強い彼女に負けて、ボソリと答える。すると彼女は花開くように満面の笑みになった。

その顔がどうも“可愛く”て、これが変化の結果だという事実を必死に思い返すことで平静を保つ。

そんな俺に、彼女は今度は少し困ったように眉を八の字にし、もじもじし始めた。

 

「な、なら……特別に撫でさせてやってもよいぞ?」

 

そして、そんなことを言った。ほんのりと頬を朱に染めた上で。

 

「は?」

 

もしや頭でも打ったのか、と一瞬訝しげな顔をしてしまうが。冷静に考えて、これは彼女なりの“善意”なのだと気付いた。

だって、これまで撫でさせる、なんてことは一度も要求してこなかったのだから。

 

「よ、よいな? そっち、行くぞ?」

 

おっかなびっくりな様子でのそのそと俺の膝の上に潜り込んで丸まる彼女。

そういえば、昔は時折、嫌がる彼女(獣形態)を無理やり膝に乗せて撫でていたこともあったか、と思い出した。

 

「……ど、どうした? 撫でてよいのだぞ?」

 

上目遣いで紅潮した頬を覗かせる彼女は、どうにもかつて無い“破壊力”を持っていた。

なので、誘惑に負けてその顎の下をコショコショする。

 

「ん……」

 

人間態故に妙に色っぽい声を上げた彼女だが、すぐに心地よさそうに頬を緩ませる。

 

「……合ってるのか、これ? 今までは獣姿だったからよかったが」

 

「合ってるぞ、気にせず続けろ。特別に、許す」

 

許す、とか言いつつ完全にだらんとしているクダ。

むぅ……変化の術、恐ろしい破壊力だ。

というか、青髪少女を膝の上で撫で回す姿は率直に言って事案ではないだろうか?

大丈夫?

今の俺、側から見て相当ヤバくない?

 

「何も気にするな……今は心の赴くままに撫でよ」

 

むにゃむにゃしながらそんなことを言う。

くっそ、可愛いなコイツ……!

俺も気にせず撫で回すことを堪能しようと思った。

 

 

 

 

 

 

俺が我を忘れてクダを撫で回してどれだけの時間が経ったか。

不意に声が掛けられた。

 

「ヒデオさん、ヒデオさん」

 

「んえ?」

 

声の主は遠野さん、俺は撫で撫でに夢中になりすぎていて変な声で返してしまう。

 

「ヨシオさん、服も乾いたのでもう帰るそうですよ。一応、お伝えしようとおもいまして」

 

「あ、はい。え、と、その……すいません」

 

一転して現実に引き戻されたことで、我ながら恥ずかしい姿を晒していたと自覚して顔が熱くなる。

 

「いえ、ふふ、微笑ましかったですよ」

 

「う……」

 

その生暖かい視線をやめろ、JD。

ふと、膝のクダを見ると――

 

「むにゃ……」

 

気持ち良さそうな顔で熟睡しておられた。これも獣姿なら見慣れていたはずなのだが、こうして人間の姿でやられると……なんというか、ヤバい。

ヤバいくらいに可愛い。

獣姿とは別ベクトルの可愛さだ。

 

「なるほど、俺の士気向上は確かに出来ているな」

 

クダの分析力もなかなかのものだと思った。

 

 

 

 

 

 

純白の制服に身を包んだヨシオはヴァーチャーを傍らに置き玄関先に立っていた。

 

「この度は大変お世話になりました、この御恩、決して忘れません」

 

「そんな大袈裟ですよ……」

 

「いえ、見ず知らずの僕にお風呂を貸してくださるだけでなく洗濯まで……僕からも何かお返しできればいいのですが」

 

悔しそうに語る彼は本気でそう思っているのだろう。そういうところ、()()()()()()。メシアンじゃなければ、な。

 

「本当に気にしないでください、単なる私のお節介ですし――」

 

そう言いかけたところで、唐突に彼女の腕にジャックリパーが抱きついた。

 

「メシアンの(あん)ちゃん! またな!」

 

そのままそんなことを言った、そして続くように他のジャックリパーたちも口々に別れを告げる。

その顔は皆穏やかだ。

 

……なんだろう、俺の時とえらく対応が違うじゃないか、えぇ?

 

「はは、遠野さん、一般の方がこんな数のジャックリパーに懐かれているなんて。なかなか見ないですよ」

 

「懐かれているというかなんというか……単に匿ってるだけなんですけどね」

 

たはは、と言わんばかりに苦笑する彼女の言葉に、しかしヨシオが神妙な顔つきに変わった。

 

「匿った? ……別れ際にすいませんが、詳しく聞かせてくれませんか?」

 

続けてそう問いかけてきた。おや、雲行きが怪しいぞ……?

まあ、ヨシオの人柄はこれまでの交流でわかっていたので話しても問題ないとは思う。遠野さんも隠す理由がないしな。

案の定、遠野さんはジャックリパーとの経緯を詳しく語って聞かせた。

 

それを受けたヨシオは、なんとも予想外の回答を返す。

 

「……引き取り先、僕が紹介できるかもしれません」

 

「はい?」

 

遠野さんを差し置いて、俺は思わず声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

『ジャックブラザーズの森』。

そう呼ばれるコミュニティな存在するらしい。

 

ヨシオ曰く、そこには()()()()()()()()()、彼らは弱い自分達を守るために団結してコミュニティを結成。各地で困っているジャック系悪魔たちを勧誘して自らの“森”に住まわせているのだとか。

つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()ということ。

そこにはランタンやフロストの他にも、ジャックリパーが住んでいるという。

 

「愛好会とは違うのか?」

 

「ええ、彼らは悪魔だけの集団です」

 

むう、悪魔の組織というのは別段珍しくはないが……弱小悪魔に分類されるジャックたちが組織を作っていたとは驚きだ。

というか、なんでそんなことお前が知ってるのかと。

 

「……以前、命を狙われていたジャックフロストたちに手を貸したことがありまして。そのまま仲間たちを助けていくうちにどんどん話がおかしな方向に進んでしまい……森ができました」

 

「は?」

 

与太話と疑うばかりの説明に再び声が出る。

……ていうか、お前が作ってんじゃねぇか!!

 

「まあ、そんな経緯もありまして。時折、困っているジャックたちに移住先として紹介してるんですよ」

 

「仮にもメシアンがそんなことして大丈夫なのか?」

 

俺の言葉にヨシオは「うっ」と苦い顔をした。

 

「まあ……よくは無いですね。ですので教会には()()()です」

 

そう彼は言い切った。メシアンとは思えない発言に俺も開いた口が塞がらない。

と、同時に“こいつは信頼できる”かもとも思った。

 

「彼らの善良さは僕が保証します。ですから、どうでしょう? なんなら僕が森までご案内しますよ」

 

ヨシオの誘いに、遠野さんは少し悩んだが。

 

「分かりました。ご案内お願いします」

 

真剣な顔でそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

……なにやら当人らの間で解決してしまった様子だが。そうなると俺の受けた依頼は()()ということになる。

そのことに内心、落ち込んだ。

まあ、引き取り先として連絡した相手が軒並みダメだったのは確かだし。他に手段があったわけでは無いので仕方ない話ではある。

 

それはそれとして。

これまでサマナーとしての仕事では九割近い達成率を誇っていた身としては落ち込まざるを得ない。

 

「残念だったな、主」

 

少し悲しげな顔で告げるクダ。獣姿では分からなかったが、いつもこんなにも表情を見せていたのかと気づく。

 

「まあしょうがないさ、何より解決できたなら良いことだろ?」

 

「そうだが……むう、もう一回撫でるか?」

 

どうも俺が落ち込んでいることを察していたのか、心配そうに頭を差し出す彼女。

 

「いや、続きは家帰ってからにするよ。今やったらまた夢中になっちゃうからな」

 

「ほほう……お前も私への撫で撫でが気に入ったか。ふむ、そうなるとイヌガミと取り合いになってしまうな」

 

いやー困ったなー(棒)と声を出す彼女だが、その顔はご機嫌だった。

 

 

「……さて、そういうことなら俺はさっさとお暇させてもらうか」

 

「む、付いて行かないのか? いつものお前なら『責任がある』とか言って最後まで面倒見ているのに」

 

まあ、そうなんだが。

どうにも彼女からあんまり好かれていない様子なので、俺がついて行っても変に気を遣わせてしまうだけだろうとの判断だ。

ヨシオなら……きっと、ちゃんと案内してくれるだろう。

アイツはメシアンだが、“悪い奴じゃない”。

俺でもそう思うくらいにアイツは良いやつだった。

それはそれとして、メシアンであるアイツは“嫌い”だが。

 

そうして遠野さんに依頼の破棄と別れを告げようとした時。

俺のスマホが着信音を発した。

 

「なんだこんな時に……」

 

面倒ながら画面を確認すれば知らない番号。

これがプライベートスマホなら無視していたところだが、これは仕事用。仕事用スマホには()()()()()()でしか連絡して来れないので必然、これは仕事の電話ということになる。

なのでノータイムで出た。

 

「もしもし?」

 

『ああ、やっと繋がった! 私です、()()()()です!

時間がないので端的に。

 

今すぐ、仕事の依頼をさせていただきます』

 

 

 

 





【あとがき】
ジャックブラザーズの森はかなり前から設定してたんです、でも出すタイミング逃してズルズルと……嘘じゃないです! ほんとです!!

文中でクダちゃんがちょっと間を空けた訳は、飯綱法使った時に同調率が壊滅的になっていたことを地味に気にしてるからです。
使った回でも説明しましたが、本作の飯綱法は術者とのシンクロ率=絆的な信頼関係的なアレ、が重要になるんですが。現在、彼らはかつてないほどにシンクロ率が悪くて、クダも使った時に初めてそれに気付いてかなり落ち込んでいたりするのです。
……本編で説明するべきだったな、これ。







……ソティスの声したアイオーン(ボソッ
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