英傑召喚師   作:蒼天伍号

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徴姉妹!!

徴弐の声から無双の王元姫みを感じて、無意識のうちにガチャを回していた(約束された敗北






狂気との邂逅

――絶望が見える。

 

俺の腕の中で“最愛の彼女”が冷たくなっていく。

 

――この光景を目にしてすぐに理解した。これは夢なのだと。

 

そんな理性に反して、夢の中の俺は泣き叫び喚いている。

どうあれ“その命”は救えないというのに。

 

やがて、牛神が俺を殴りつけ無理やり彼女から引き離す。

その間も必死に手を伸ばし慟哭を上げながら、ようやく理解する。

彼女は死に、俺は遺された……と。

 

理解して真っ先に視線を移すのは、“憎き怨敵”。

純白の翼で夜空に整然と居並ぶ異郷の魔性ども。

傲慢なる支配者の走狗たる“天使ども”。

 

『許さない』

 

その感情が一秒ごとに高まり、己が身を内側から焼き焦がす。

 

やがて、怒りが憎悪を超えて“理性”を破壊した時――

 

 

――俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ふと、目が覚めて辺りをチラリと見やる。

そこは夜の静けさに包まれた、静粛な礼拝堂だった。

 

今いる場所を認識して思い出す、俺は今、見張りをウシワカに任せて仮眠を取っていたのだと。

どうやら夢を見るまでに熟睡してしまったらしい。

 

「……」

 

頭に手をやり眉を顰める。

“いつものこと”とはいえ、やはり“酷い夢”なのは間違いない。

“ひーちゃんの夢”もそうだが、こちらの夢もまたあの日より数えきれないくらいに見てきた。

 

「くそったれが……」

 

誰にともなく悪態をつく。それは彼女を殺した御使いどもに向けられたものではあるが、“俺自身”に向けられたものでもある。

幾度となく大切なものを()()()()()()不甲斐ない負け犬への罵倒。

今度こそは、と意気込み呆気なく奪われる愚か者への“怒り”だ。

 

 

しばらく、沈んだ気持ちを落ち着けようと瞑目して。やがて、椅子から腰を上げる。

 

「よし」

 

声を上げ己を鼓舞する。無論、“何もよろしくない”。だが、こうでもしないと俺は立ち上がることすらできない。

 

各種装備の点検を手早く済ませた俺は、見張りを交代するためウシワカの下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局のところ、襲撃は無かった。

ジャンヌから事前に“敵は夜に力を増す”という情報を得ていたために、交代で見張りを立てて警戒していたのだが。

 

 

昨夜、対抗策を話し合った時に彼女から与えられた情報は、敵悪魔ジャック・ザ・リッパーの詳細だ。

 

現在、ジャンヌを狙っているジャックは、サマナー界隈で知られているジャックリパーとは似て非なる存在だと言う。

少なくとも、その姿はジャンヌが()()()()()()()()にあるサーヴァント・アサシン、ジャック・ザ・リッパーという個体に酷似しているらしい。

似ているならば同様の能力を有しているかもしれない、という推測の元、考えうる敵能力を羅列する。

 

一、『霧夜の殺人』。

これは、“夜の間は無条件で先手を取れる”という変わったスキルで昼の場合も幸運次第では先手を取れるという反則に近い能力。

 

二、『情報抹消』。

自らと相対した敵に対して、戦闘終了後に“姿、能力、名前”といった情報を記憶から消す。という恐ろしいスキル。

これがために、通常ならば襲われた相手は生き延びたとしても何の情報も得られずに常に初見の対処を迫られるというかなり厄介な能力だ。

……ただし、これは“事前に敵の正体とスキルを知って”いれば無効化することが可能なのだという。

よって、ジャンヌはスキルを無効化し敵の正体と情報をこうして俺たちに与えることができた。

 

また、ジャックリパーたちがスキルを無効化した件についてジャンヌに問うてみたところ。

『……元が同じ存在から別れたモノとして、同様の能力を潜在的に持っているか、なんらかの要因でスキルが発動しないのかもしれない』

という回答を得た。

確かに、ジャックリパーはジャック・ザ・リッパーの逸話から生まれた悪魔である。それならば諸々の疑念はあれ一応の納得はできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜を越え、朝日を迎えた俺たちはもう一度話し合った。

敵の襲撃は高確率で夜間に行われることは事前の話し合いで合意していたため、昼間の今、更なる助っ人を連れてくるために俺は一度帰宅することにした。

助っ人とはもちろん、家に置いてきた仲魔たちである。

 

敵戦力を涅槃台とジャックに限定したとして、ジャックを天敵たるジャンヌに任せても涅槃台がいる。あいつは既に“二度も復活”しており、前回は“以前より強くなっていた”ことを考えれば。今回もまた“強くなっている”と想定した方がいい。

そうなると俺とウシワカ、クダでは少々不安なので今度こそは確実に仕留めるためにチヨメちゃんと“オサキ”を呼ぶことにした。

 

……正直、COMPを使えば一秒足らずで召喚できるわけだが。帰宅ついでに色々とアイテムなども持っていこうと考えた次第だ。

アイテムをケチったがために酷い目に遭うというパターンが、最近やけに多い気がするから念のため。

 

 

そんなこんなで電車に揺られること三十分余り、見慣れた田舎町に到着。駅からバスでゆったりと自宅へと向かった。

 

そうして正門前に立ったところで――

 

「――――」

 

――()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、全てが()()する。

 

 

――侵入者ガイル

 

 

俺ト彼女ノ聖域ニ

 

 

 

誰カガ、イル

 

 

 

 

「――――」

 

――彼は、すたすたと歩みを再開する。目指す方向に迷いはなく、ナニカを確信したように一点に向けて足を運ぶ。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「んおー? なんじゃ、チヨメか? ……まったく、急にいなくなるから心配――」

 

玄関を開ける音、続けて廊下を歩む足音に気づいたオサキは、呑気な声を出しながら音源へと向かい――

 

――息を呑んだ。

 

 

「――――」

 

廊下を歩いていたのはチヨメではなく、自らの主たるサマナーだった。

……しかし、身に纏う空気、顔、何より“眼”を見て、彼女は()()が自らの主と認識することができなかった。

 

 

怨念、妄念、執念。欲望、願望、羨望。

あらゆる念を混ぜて煮詰めた上で()()()にしたようなドス黒いナニカを色濃く纏ったヒトガタ。

黒いモヤのように視覚化された強力な念の内側、瞳の奥にはさらに深い“闇”を宿し……

 

……ともかく、尋常ではない雰囲気を纏った上でブツブツと独り言を呟き続ける“奧山秀雄”の姿が、そこにはあった。

仮にも神として信仰された彼女だからこそ()()()()()()()()()()()()()その“念”を前にして。

彼女は……

 

 

「…………」

 

 

……何も、できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らの“大切な仲魔”が怯えていることなど“全く気づかず”に、彼は迷いなく歩みを続ける。

 

―― 地下室ヘノ認識阻害及ビ、対盗賊結界ハ破ラレテイル

 

 

ダガ真神ノ反応ハ、アル

 

 

即チハ――

 

 

「敗れた、か」

 

 

ドウデモイイ、ソンナコトハ

 

 

大事ナノハ

 

 

「――()()、だけだ」

 

 

 

――その後の彼の動きは“普通では無かった”。

 

仮にも“霊力減退”の病に冒された身でありながら、()()()()()()()()()()()()()()()()()で地下室に突入し。

瞬時に捕捉した()()()へと“カーソル”を合わせた彼は、弾かれたように対象へと飛び掛かった。

 

そして――

 

 

「おい」

 

侵入者の背後に音もなく着地した彼は、素早く抜刀し刃を喉元に添えて。

 

「ここで。何をしている?」

 

その顔を横から覗き見た。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お……た……さ、ま」

 

ドコカ、見覚エガアル

 

記憶ヨリモ、引キ攣ッテイルガ

 

「――――」

 

コレ、ハ――

 

 

 

 

――ナンダ?

 

 

――最早、自らの仲魔すら()()()()()()ほどに重篤な()()()()を発露した彼には迷いがなかった。

 

……常日頃より、“このような妄念”を内側に隠し続けて抑え続けていた彼が“こうなる”のは時間の問題だった。

いつ狂ってもおかしくない“狂気”を抱えながら彼は、平然とヒトの生活に溶け込んでいた。

彼にとって、“彼女を失った”という事実はもはや余人には理解できない領域にまで極められ、高められ、その精神を侵食していた。

 

故に。

 

“まあ、俺たちの空間に踏み入ったのだからどうあれ死ね”というごく単純な思考回路で躊躇なく刃が引かれる――

 

 

 

――その刹那。

 

 

 

「喝ッ!!!!」

 

轟音が如き怒声が辺りに響き渡った。

それは彼の鼓膜を引き裂かんばかりに響かせノータイムで脳を揺さぶるような感覚を与えた。

視界が明滅するような音の暴力を受けて、一瞬、彼の認識が“正常”に寄る。

その(まなこ)にて改めて侵入者の顔を認識した彼は――

 

「――――あれ? チヨメちゃん?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

凶刃から間一髪のところで逃れたチヨメがまず初めに感じたのは、()()()()()()()()()()()()

 

「…………」

 

濃密な“憎悪”と、それに裏打ちされたかつてないほど強力な“殺気”を受けて、彼女の全身には脂汗が結露のようにまとわりついていた。

ぐっしょりと濡れた衣服を気にする余裕もなく、彼女は“未だに狂気を放ち続けるソレ”を目で追う。

 

「――、――――」

 

目の前には、“いつもの”声音で、“いつもの”態度で、マカミに話しかける彼の姿がある。

それがなによりも()()

 

――つい先程、自分が感じた憎悪・殺気は紛れもなく()()だった。まるで“怨敵”に相対するかの如き激情を秘めた、それでいて底冷えする声は脳裏に焼き付いて離れない。

 

それなのに――

 

 

「いやぁ、ごめんねチヨメちゃん。()()()()()()()()()()()()()()()

 

彼はあくまで()()()()()()()()()()()()()()()()()

それも()()()()()()

 

本心から()()()()()()として振る舞う彼の姿はまさしく――

 

 

「――でも、()()()()()()()はみんなには内緒だよ?」

 

 

――()()そのものだった。

 

 

 

 

 

 

「――……っは……あ、あはは。そ、そうでござったか。いやぁ拙者も焦ったでござるよぉ」

 

()()()()()()()()()鹿()()()()()()()()()()()()()()

言えば本当に()()()()()()()()()()()。そんな狂気。

 

だからこそ、残った活力を全力で使ってこちらも平然と応対する。

 

「いやほんとごめん! お詫びに今度服でも買いに行こっか」

 

快活に笑う彼の顔から思わず目を逸らしそうになる。だって、その瞳の奥にはまだ()()()が残っていたから。

 

「そ、そうでござる、ね……」

 

ここでもう彼女の精神は限界だった。

一見していつも通りな彼だが、その眼は未だに()()()()()()()()()()()()()()と理解したのだ。

静かに、一片の緩みもなくまるで獲物を捉えた猛獣のような視線が向けられている。

少しでも“彼にとっての不利益”を見せたならば即座に首を刎ね飛ばす、そんな気迫すら感じられる。

 

それは地下室を抜けて、階段を登った先でも続いていた。

 

「……って、こんなのんびりしてる場合じゃなかった! 急いで持ってくもの纏めないと」

 

そんなことを言いつつ、チヨメへの警戒が一向に収まらない。

或いは――

 

 

――隙を見せた瞬間に始末するかのような。

 

 

 

 

「あ、主……」

 

そんな陰鬱とした予測を立て始めたチヨメの鬱屈とした感情を洗い流すような声が聞こえた。

 

彼の凶刃からチヨメを救ってから、()()()沈黙を続けているマカミと、あの“狂気に塗れた主”に挟まれた状態から。新たに空気を変えるような存在が現れたことに内心感謝した。

 

彼もまたオサキを目にして――

 

「……オサキ」

 

少し、“まとも”に戻った。

後悔、或いは“罪悪感”のようなものを表情に出しながら彼はすぐに先ほどまでの“明るさ”を見せて声をかけた。

 

「追加の仕事が入ってな、色々とアイテムを回収するついでにお前たちにも加勢に来てもらおうと思ったんだ」

 

「ぁ……そ、そうか。うむ、わかった」

 

会話はそこで終わった。

表情を見ればわかる。彼女も、あの“恐ろしい彼”を見たのだろう。だからこそあんなにも動揺し憔悴している。

対して、“お館様”もまた“複雑な感情”を込めた顔で足速に二階に向かう。

 

 

お館様が去って、改めて三人になったところで、ようやくマカミは口を開いた。

 

()()()()()()。今はまだ、な」

 

そう短く告げて再び彼は沈黙した。

チヨメからしてみれば「おい」と言いたい言葉。

 

「……マカミ殿、先程は、“救え”と」

 

話が違う、そう言い掛けた彼女の言葉を遮るように彼は再び口を開く。

 

()()()()()()()。とてもではないが、今はまだ()()()()()()()()()()

 

再び、短く告げてすぐに黙る彼。

その態度はチヨメをして“不自然”に感じるもので――

 

――ふと。“オサキ”に視線を移したことでなんとなくその“意味”を理解した。

 

「……」

 

小さく震え、声を押し殺しながら彼女は()()()()()

それが果たしてどのような思い、感情によるものかはチヨメには知る由もない。

しかし、なんとなく。

マカミは()()()()()()()()()()()()ということだけは理解できた。

 

 

だから、彼女も黙る。

そうして数分ほど経ったところで、相変わらず“変な明るさ”を持った主が戻ってきて。

そのまま出発する流れとなった。

 

この時には流石に“警戒”は解けており、ようやく重圧から解放されたチヨメは少し涙ぐんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ようやく理想の職場に就けた、と内心、密かに喜んでいた彼女はこの時ようやく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということに気が付いた。

 

 

 

信玄公とはまた別ベクトルの“恐怖”を抱えながら彼女は電車に揺られる。

 

そうして思う。

 

 

『果たして自分は、この先もここでやっていけるのか?』

と。

 

 

 




【あとがき】
どうやってチヨメちゃんをいじめるべきか悩んだ結果がコレ。
ようやく蛇のストレスから解放されたと思ったこの様だよ!
チヨメちゃんの明日はどっちだ!!

あ、あと今日でちょうど三年目になるこのSS (自分で言っていくスタイル

今年はより濃い味にすべく頑張ります。



今イベ、ケルピーの次はルサールカが来ると思う(願望
そしてグラはイフリータちゃんの改変と見た!!(願望
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