「ヨシオさん!」
叫ぶ、視線の先では私を庇った青年が血飛沫を上げてゆっくりと倒れる。
「逃げてください! そしてヒデオさんに連絡を!! 彼ならばきっと助けてくれます!」
ヨシオの返事を受けて歩み寄ろうとした足を止める。一瞬、迷いを感じながらも即座に反転してその場から逃げた。
「ガァァァァァァアアァ!!!!」
背後では“あの怪物”が雄叫びを上げながら激しい戦闘音を響かせている。
私は罪悪感と恐怖で涙を垂れ流しながら無我夢中で走った。
――前日。
私、遠野アイは佐藤良夫さんの案内で無事に“ジャックブラザーズの森”へとジャックリパーたちを届けることができた。
油凪市の北西、山の麓にあたる森林地帯にソレはあった。
鬱蒼とした木々を抜けた先、まるで“別世界”に来たようにガラリと雰囲気を変えた森が目に入る。
日本の植物とは思えない奇妙な形の木々に囲まれて、ポッカリと空いた空間にはもう見慣れた“異形”がいた。
「ジャックブラザーズの森にようこそだホー」
辿り着いて早々に異形……いや、悪魔。悪魔の一種だと言うジャックフロストなる雪だるまに話しかけられた。
青い帽子を被った……やっぱり雪だるまとしか言いようがない姿の彼はジッとこちらを見ている。
「あ、ありがとう。え、と、私は貴方の仲間達を連れてきたの」
「仲間ホー?」
首を傾げる雪だるまくん。
私はヒデオさんに預かったスマホを、これまた教わった通りに操作してジャックリパーたちを召喚する。
十体近い骸骨キッドたちが一斉に召喚され、フロストくんもギョッとしている。
……が、恐ろしい速さで打ち解けて、数分後には他の悪魔たちと一緒に歌に合わせて踊っていた。
「適応力が高過ぎる……」
凄まじい速さでジャックフロストたちと仲良くなる彼らと比べて、高校でも大学でもついぞ幼馴染以外に友達を持つことの出来なかった私の適応能力の低さときたら……
――その後、ヨシオさんから聞いた話によれば、ジャック系の悪魔たちは不思議とシンパシーが通じやすい傾向にあるらしく。ジャックリパーたちがまるで旧知の仲であるかのようにすんなり仲良くなったのもそういう事情だとか。
とりあえず、私はホッとした。
――ジャックたちを無事に届けたことで一安心した私は、ヨシオさんや他のジャック悪魔たちに別れを告げて帰宅しようとした。
しかし。
「新しい仲間たちの歓迎会を開くホー! お姉さんも是非参加して行ってほしいホー!」
と、いう感じでフロストくんから熱心な招待を受けた。
ふとヨシオさんを見れば、すでに席に着いて飲み食いを始めていた。
……後から聞いた話では、割と頻繁に宴会に招かれるらしく、もはや常連と言っても過言ではないらしい。
当然、そんなこと知らない私は大いに困惑し、あれよあれよという間に宴会に参加させられていた。
「うぅ……気持ち悪い」
何時間騒いだのだろうか? 飲まされ食わされ、人間界の暮らしに興味津々な一部悪魔たちに話をせがまれたり。時間の感覚すら分からなくなるくらいに騒ぎ倒した私は、フラフラとした足取りで宿として提供された小屋へと向かう。
……あと、この気持ち悪さと“ふわふわした感覚”は絶対に宴会で飲まされた“ふしぎなおみず”とかいう飲み物のせいだ。
見たことない奇抜な色と不思議な香りに騙されて飲んでしまったが、アレは酒だ。
しかし、これまた不思議なことに一度飲んだら止まらなくて……
「うぷっ」
思い出したら吐き気が増した。
だめだ、今はとにかくベッドに向かわなければ。
ぐらつく視界と千鳥足でなんとか辿り着いたのは、この森に相応しく奇妙な形の小屋だった。
キノコみたい、というかファンタジーの世界に出てくるような不思議な形状だ。色も極彩色で酔った目には少々毒。
なるべくドアだけを見るようにしてなんとか家に突入。一目散にベッドへと飛び込んだ私は息つく暇もなく眠りに落ちた。
「……っ!!!!」
目が覚めるのと“焦る”のはほぼ同時だった。
ガバッと起き上がり枕元のスマホを手に取る。
「……」
時刻は午後五時三十五分。
ごじ、さんじゅうごふん……。
「……講義、もう終わってる」
寝過ごすとかいう次元じゃない寝坊に、一瞬思考停止した。
が、すぐに事態を把握してがくりと項垂れる。
今まで無遅刻無欠席を続けてきた身としては普通に落ち込んだ。
しばらく、そのまま項垂れていた私だが。こうしていても仕方ない。
どんよりとした気分のままに、今日すっぽかした講義の担当教授たちへと謝罪のメールを送信、次いで謝罪の電話をかけ始めた。
一応、優等生で通ってるからね。こういう小まめな工作が重要なのよ……。
「終わった〜……」
ボフッと、キノコを模したテーブルに突っ伏す。
大半の教授は私の普段の生活態度や成績などを鑑みて寛大な処置を約束してくれたが。一人、厄介なことで有名な教授には延々とネチネチネチネチ、嫌味を言われ続けた。
「私が悪いから返す言葉も無いんだけどさぁ……」
気分がいいものではない。
なんだか釈然としないものを感じてうーうー唸っていると。
『アイさん、起きてますか?』
数回のノックの後、ドア越しにヨシオさんの声が聞こえてきた。
慌てて身なりを整えて応える。
「は、はい! どうぞ!」
別に我が家では無いのに、焦って声が裏返る。
地味に恥ずかしい。
やがてゆっくりと開かれたドアの向こうから昨夜と同じ礼服のような格好のヨシオさんが現れた。
「ぐっすり眠れたようでなによりです」
相変わらずの爽やかスマイルで、開口一番にそんなことを言われた。
意外とちゃっかりしている。
「いやほんと、教授たちへのお詫びの連絡で昨日以上に疲れたんですけど……」
「ははは、まあいいんじゃないですか? 一日くらい」
「笑い事じゃないですよぉ……これでも優等生で通ってるんですから」
「優等生は心霊スポットに不法侵入しないと思いますが」
「ゔ」
昨日、談笑してる中でヨシオさんには今回の事件の大まかな事情は説明してある。だからこそ彼も廃病院の件を知っているわけだが。
ぐうの音も出ない正論でズバッとされるとは思わなかった。
「はは、少しいじわる過ぎましたね。……コーヒーをもらってきました、飲みます?」
そこでようやく、両手に携えたマグカップに触れる。
私はキノコテーブルに備えられたもう一つの椅子を促しながらマグカップを受け取った。
互い一口、コーヒーを啜ったところでヨシオさんが口を開く。
「……さて、ここで一つ真面目な話、というかよくない知らせがあります」
しっかりと不安な前置きをして続ける。
「現在、この街に“ジャックたちを襲った連中”が来ているみたいなんです。僕も遠目から“解析”を試みたのですが……どうやらサマナーの方は
彼らの反応が無くなるまでの間、森に留まってくれませんか?」
ヨシオさんの語る内容は、所々理解の及ばないところがあったが、どうにも“ヤバい連中が来ている”ということは理解した。
それに、彼らを襲った連中ともなればたぶん“悪い奴ら”なのだろう。
「彼らの狙いが“ジャックたち”というならば、今出て行って“結界の場所”を晒すのは得策ではない。それに、出てきたところを襲われないとも限らない。
今は、隠れて待つべきと判断しました」
「私には、サマナーとか悪魔とか、まだよく分からないです。なのでヨシオさんの判断に任せます!」
清々しいまでのぶん投げ、しかし素人の判断で二人とも危険になるよりかは専門家である彼に任せた方がいいのは確かだ。
ヨシオさんは特に気負うこともなく笑顔で「ありがとうございます」と返した。
「じゃあ、とりあえず。このコーヒーが無くなるまでの間、少しお話でもしましょうか」
そう言った彼は、もう自宅で見せたような人好きのする爽やかな笑みに戻っていた。
――油凪市街区、某所。
駅構内に設置された居酒屋。小洒落たバーを自称する店内の一角に一人の男がいた。
黒のタキシードを纏い、金の癖っ毛を揺らす彼こそは“グレゴリー”。いつもの“笑み”を浮かべたままに赤々としたワインの注がれたグラスを傾ける。
そんな彼以外には
「……そろそろですか」
徐に腕時計を確認したグレゴリーは呟く。その直後、入り口のドアが開かれ一人の男性が入店した。
きちんと整えられた銀髪、透き通るような白肌。金色に光る瞳はシャープなメガネで覆われていた。
男は店内を見渡し、カウンター席のグレゴリーを見つけるとその隣へと腰掛けた。
男が来るなりグレゴリーは口を開く。
「首尾はどうです?」
「予定通りだ。ターゲットは“森”に留まり、“破戒僧”は今夜中に勝負を仕掛ける。あとは“雷雹”に任せておけばいい」
男は淡々とした口調で答える。
対しグレゴリーは静かに笑いを漏らした。
「雷雹……くく、よもやあの程度の甘言で動いてくれるとは」
「おかしなことはあるまい、我らにとっては“仇の娘”なのだから。お前も、その点においては彼に倣った方が身のためだぞ」
相変わらず他者を嘲るグレゴリーへ、男から苦言が呈される。
「確かに。実権があるとはいえ、クセの強い彼らを纏めるにはそういうのも必要ですね。
……まあ、そういうのは“彼”の方が得意でしょうが」
「“奴”はまだ動けん。他ならぬお前が一番分かっているはずだが?」
男の真面目くさった言葉に肩をすくめる。
「分かっていますよ、あくまで彼は保険。私が“健在”である限り万事は我が手にて成すべきでしょう」
そこでふと、もう一度腕時計を確認したグレゴリーはマスターに声を掛けてもう一杯、酒を頼んだ。同じ赤ワインだ。
運ばれたグラスを男の前に置いた彼は自らのグラスを差し出した。
「……一応、“護衛”の最中なのだがな」
「問題ないでしょう、なにせ我らは共に“堕天”した身。堕落こそ我らの本懐なれば」
「それはお前だけだろうに」
短く溜息を吐いた男は大人しくグラスを持ちグレゴリーのそれに軽く当てた。
――同時刻、夜の静けさに沈む油凪市住宅街。中でも奥地にある“森林地区”に一体の悪魔が“舞い降りた”。
岩とも見紛う巨躯を持ち四方にピンと伸びた黒髪を有する男。黒いスーツを纏った姿からは一見して“その道”の輩にも思える。
しかしその背に生えた立派な“黒翼”を見れば、彼がただの人間ではないことは明らかである。
「アザゼル、シェムハザ……我らが同胞を討ち果たしし憎き人の子。その裔であれば手向けとして申し分はない」
厳かな声音で呟く男こそはグレゴリーが派遣した堕天使。
先に語られしグリゴリの首領たちと同じ立場にある元天使。
男は優れた感知能力により既にジャックブラザーズの森の“入り口”を探し当てており、そこから現れる者を狙うのに適した狙撃ポイントとして今の場所に降り立っていた。
とはいえ――
「奴らを討つほどの手練れの子、初撃で仕留められるはずもなし」
だからこれは挨拶、或いは宣戦布告。
そう考えながら男は振りかぶった手の内に“雷”を装填する。槍の形に整えられた雷撃の塊。
「だがもし、この程度で死ぬようであれば。
その時は大人しく“親”の方を仕留めに行くとしよう」
男は僅かに口角を上げた。それは仇を討つことへの喜び、だけではなく。強者との戦いへの期待も含まれていた。
かつては
男はグリゴリの中でも一際“人間臭い”性格をしていた。
――直後、森の入り口から現れた二人の人影を確認した彼は容赦なく雷槍を投擲した。
数十分前。
森の宿にて歓談に興じていた遠野アイと佐藤良夫は、良夫の不意な離席にて雰囲気を変える。
「……どうやら“奴ら”は去ったようです。そろそろ行きましょうか」
良夫の判断は一概に否定できるものではなかった。
彼は、昼過ぎに油凪市の外へと離脱する涅槃台たちの反応を捕捉しており、それから半日近くも戻ってこないのを確認したからこそこの提案をした。
――尤も、それこそが涅槃台の策であるのだが。
涅槃台たちは現在、油凪の隅にて気配を押し殺して潜んでいる。懸念されたジャックの補給に関しても昨夜のうちに十分に“蓄え”ており準備も万全。
加えて、ヒデオたちとヨシオたちを確実に分断するために“あの化け物”を向かわせており会敵時の布石も万端。
唯一、狂いがあるとすれば同時期に“グリゴリ”もまたヨシオたち、厳密には遠野アイの抹殺を狙って刺客を放っていたことだが。
こちらもまた、各個撃破という兵法の基本を順守するならば僥倖と言えた。
思わぬ加勢、というやつである。
そんなこととはつゆ知らず、ヨシオは万が一の戦闘に備えた準備を行い、アイもまた森のジャックブラザーズへと個々に別れの挨拶に回っていた。
それらを終えていざ森を出ようと入り口に向かったところ。別れを惜しんだジャックたちがわらわらと集まってきた。
「もう帰っちゃうホー?」
「寂しいホー……」
口々にそう語るジャックたちに苦笑しつつ、アイもまた彼らとの別れに袖を引かれていた。
というのも、普段の彼女は大学と家の行き来、たまの息抜きも休日の“危険な遊び”くらいであり有り体に行って“日常に疲れていた”。
それに比べて、森で過ごした時間はそれなりに心休まるひと時だった。総じて無垢にして活動的なジャックたちの言動に振り回される一面もありつつ、気を張る必要がないという点において彼女の疲労を癒やすには十分な状況だった。
だが、彼女はサマナーではなく、バスターでもなく。
神秘に触れ合う“義務”を持たない一般人。光の下で表社会を生きる定めにある一般人だ。
さすがに大学生というお年頃ゆえにそこらへんの“立場”というのを十分に理解していた彼女は別れを告げる。
そこへひょいとヨシオがフォローに入った。
「暇な時があれば私が森までの送迎を承りましょう。なに、気が向いたらで構いませんから」
「いえそんな……ヨシオさんもお忙しいでしょうし」
謙虚になるアイにヨシオは笑いかける。
「案外暇してますので大丈夫です。仕事と言っても定期的に本部から与えられる任務と、たまに発生する悪い悪魔を退治するくらいなので。合間にジャックたちと戯れるくらいの時間はあります」
「では……その時は遠慮なく」
ヨシオの好意を素直に受け取るアイと、それを見て喜ぶジャックたち。森はこのように終始穏やかな気風に包まれておりアイも早々にこの場所を気に入っていた。
「お嬢ちゃん、本当にありがとうな!」
「いつでも遊びに来てくれよな!」
「ママーーー!!!!」
ジャックリパーたちもアイの再訪を期待してさわやかな別れを告げる。
……一部、母性に飢えた個体が号泣している様をアイは見なかったことにした。
こうして散々に別れを済ませた彼女たちはようやく森を後にした。
「……本当に、あそこは“異界”なのですね」
現実世界に戻って開口一番、アイは感慨深そうに述べた。
森は自然豊かな清らかな空気と穏やかな雰囲気が満ちていた。比べて現実世界は排気ガスに汚された大気と、人々の強い思念が乱れる混然とした雰囲気が漂う。
だが、嫌悪感が湧くだけではなく懐かしさを感じるのも事実。結局のところ一般人たるアイにとっては現実世界の空気のほうがなんとなく落ち着くのだった。
叙情的になるアイとは対照的に、ヨシオは万が一の襲撃を警戒して気を張っていた。
「奴らもまた“現世の理”を乱すほど愚かではない。なので駅近くまで来れば安全――」
そう言いかけて、遠距離からの濃密な殺気に気付いた。
「遠野さん!!」
「え、きゃあ!?」
突然、アイを抱えて横に飛ぶヨシオ。直後、彼らのいた辺りに轟音と共に“雷”が落ちた。
その衝撃は凄まじく、着弾地点のコンクリートは軒並み吹き飛び地面を大きく抉り取りながら周囲の木々や人工物を粉砕してみせた。
「え、え……!?」
いきなりの出来事に混乱するアイを他所に、ヨシオは雷が“射出”されたものと即座に判断。飛来したと思しき方向に視線を向けた。
「……聞いていたよりも勘がいいなメシアン。これは思わぬ強敵よ」
ヨシオの視線にわざと入るように、ゆっくりと空から降りてくる人影。黒翼を羽ばたかせて舞い降りるのは堕天使たる巨躯の男。
「その翼……もしや堕天使か?」
冷静に問い掛けながら即座に仲魔を召喚する。
それを意に介すことなく男は応える。
「左様、貴様ら神の犬が誅するべき叛逆の天使である」
男は再び手の内に雷槍を装填しながら続けて語る。
「だが、今の我が欲するのは“仇の子”たるその娘のみである。大人しく引き渡せば見逃してやろう」
男の提案にヨシオは間髪入れず応える。
「それはできない。そういう事情なら寧ろ絶対に退けなくなった」
屹然とした態度に男は口角を上げる。
「まあそうなるな……では貴様から仕留めてやろう」
言うが早いか、男は流れるような俊敏さで手に持つ雷槍をヨシオへと振るう。
そこへ、パワーが横やりを入れた。
「ほう、ただの
ギチギチとパワーの槍が雷槍を受け止める様を見て男は笑みを浮かべる。
しかしパワーもまたギリギリのところで防いでいるに過ぎず、早々にこの堕天使の力が自分を超えていることを悟った。
故にこそ、その旨を念話にてサマナーに伝える。
「っ!!」
これを受けてヨシオもヴァーチャーに援護を頼みつつ自ら剣を振るった。
対し堕天使はもう片方の手に雷槍を装填することでこれに対応する。
数度、刃を交えて遅れた飛来するコウハ系の魔法を避けるべく後退する。
そこからすかさず二本の雷槍を投擲した。
「っ!!!!」
パワーとヨシオはそれぞれに防御の構えを取り、ヴァーチャーはそんな二人へと急いでラクカジャを掛けた。
避ける暇もなく、二人は雷槍の爆撃に呑まれる。
「ぐ、うぅぅ!!」
いくら肉体強度を上げたとはいえ、かの堕天使の雷槍の威力は凄まじく。ヨシオは気を保つのに精一杯だった。
やがて、爆発によって生じた白煙より姿を見せたヨシオとパワーは共に負傷しながらも立っていた。
「ほう、耐えるか。これはますます興が乗る」
ヨシオの方は所々肌を焦がしているものの致命というほどではなく、しかしパワーの方は瀕死に近い重傷を負っていた。
そこへすかさずヴァーチャーによる治療魔法が飛ぶ。
「感謝します」
全快したパワーは同僚に礼を告げつつ敵への注意を逸らさなかった。
ヨシオもヴァーチャーの援護で傷を癒しつつ冷静に敵を注視する。
並みのサマナーや悪魔ならば炭化しているであろう一撃を前に即座に立て直した彼らを見て堕天使は彼らこそ此度の戦いの好敵手であると確信した。
「見事、この
「!! バルディエル!」
あっさりと告げられた敵の真名にヨシオは僅かに怖気立つ。
それは彼でも知っている著名な堕天使の名だからだ。
彼の呟きに応え、堕天使も改めて名乗りを上げた。
「我こそは堕天使バルディエル。雷雹を司りし、グリゴリが首領の一柱である。
我が古巣たる天の下僕よ。天海市に散った同胞、アザゼル、シェムハザの仇を討つ前に貴様を血祭りに上げてやろう!」
この場にグレゴリーがいたならば思わず頭を抱えるであろう宣言をして、彼・バルディエルは雷槍と氷槍を手にしヨシオへと襲いかかった。
【あとがき】
最後に出た堕天使はバラキエルと同じ存在と設定してます。
なぜかと言うと、バラキエル名義だと大天使の方と被るからです。
強さ的にはアザゼルたちほどではないけど幹部級、な感じでふわっと考えてます。