英傑召喚師   作:蒼天伍号

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……っぱEDFは楽しいなぁ()





襲撃・二

解体怨霊(ジャック・ザ・リッパー)!!」

 

濃霧に包まれた聖堂内に声が響く。

サーヴァント・アサシン、ジャック・ザ・リッパーが有する宝具に()()した攻撃スキルは、元となった宝具と同じ条件下にて真価を発揮する。

すなわち“夜”と“霧”。

 

連続殺人鬼たるジャック・ザ・リッパーの伝承をなぞる形で行われるこの攻撃は、物理攻撃ではなく呪殺攻撃。

故にこそジャンヌは焦った。

本来であれば条件が揃った時点で即座に全員を霧から叩き出すか、あるいはジャックの詠唱をなんとしても阻止すべきだった。

この宝具は、詠唱からの真名解放によって即座に発動する呪詛なのだから。

 

次いでジャンヌは、()()()()()()()()()()()()()()()ことに驚いた。

 

 

 

 


 

 

 

「ぐあぁぁぁ!!!?」

 

痛い。腹が裂けたような……否、実際に腹部がザックリと切り裂かれその傷口から臓物が溢れ出している。

ジャックによる呪文のような声を聞いた直後、()の腹部がひとりでに切り開かれ中から内臓が飛び出した。

 

そうして訳も分からないままに、痛みに悶えている。

 

 

 

 

「……っと、まあ。()()()()()()()()()には多少耐性がある」

 

俺が身に宿す“神格”の特性ゆえか、元々“腹”に関するダメージにも強い。じゃなきゃ“腹に魔剣を押し込める”なんて封印はできないからな。

 

「ぐぉ……キツいのは、変わんないがな」

 

ボトボトと床に落ち、散乱した臓物を見ながら苦笑。

次いで、手を合わせて“詠唱”する。

 

「火の神の骸が成したる山神、山奥の神秘司りし神、孕み(さか)りし多産の神――」

 

これは奥山で教わる祝詞の中でも特に基本となる言葉。

この言葉よりのちに、各々“命じる”内容を付け加えて使用する。

 

「――“裔”たる我が身、我が腹に宿りて、神威を顕し給え」

 

祝詞を唱えて直後、散らばった臓物が消え、引き裂かれた腹部が眩い光を放ち傷の代わりに“暗闇”に包まれた。

これは“山奥の神秘”の顕現。かつて人が恐れ敬った山、とりわけ山奥というのは獣と自然に溢れ人間にとっては脅威に満ちた過酷な場所であり転じて“山の神の住処”、ひいては聖域とされ侵入を禁ずる教えも生まれた。

つまり山神信仰において山奥というのは不可侵の領域、“人には未知の場所”でありその認識が“暗闇”という形でこうして現れる。

 

この暗闇は“解析”と“侵入”に対して強い耐性を持ち、不可侵の神域という概念から干渉そのものを強く拒絶する。

そして、干渉に対しては“神罰を以って報復する”。

 

単なる山神ではない、山奥の神秘のみに特化した“奥山津見(オクヤマツミ)”のみが有する特殊な権能である。

加えて、奥山津見の()()である『奥山』の人間。即ち俺だからこそ使える異能である。

 

 

「……さて、とりあえずはどうにかなったが」

 

腹にオクヤマツミを顕現させた今は先ほどのダメージは“無かったこと”にされている。代わりに先述の“暗闇”が腹に置かれているために“同じ攻撃に対してはカウンターが発動する”。

奥山の裔たる俺に、よりにもよって腹を狙うとは愚策だったな。

加えて、仮にも神たるオクヤマツミが顕現したことで先ほどのスリップダメージみたいなのも無効化されている。

 

冷静になった今はあのダメージが“霧”によるものと理解できた。

 

「化学由来の毒霧か……それを“神秘”の側で具現化させているのは皮肉なのかなんなのか」

 

ともかく、視界は奪われたままなのでCOMPによるサーチで周囲の状況を探る。

しかしこれは急がねばなるまい。

さっきの攻撃がジャンヌから聞いていた“呪殺攻撃”だとすれば他の連中も標的になり得る。

霧と夜、という条件を満たすことで対象を解体する呪殺攻撃。だが俺が聞いた情報ではもう一つ条件があったはずだ。

 

女性への特攻効果。

条件を満たさなくても発動自体は可能らしいがその場合はダメージが著しく軽減される。代わりに三つの条件を一つ満たすたびに威力が強化される。

だが、“サーヴァント”であるジャックの宝具では全ての条件を満たしてようやく効果的な威力を出せる程度の代物と聞いていた。

ジャンヌと俺の見立てでは、俺くらいのサマナーならば耐えられるという結論だったが。

 

「これは予想以上の威力だな……」

 

ぶっちゃけオクヤマツミを顕現させなければ死んでいた。ムドどころではない、間違いなくムドオン級の威力。

しかし、どうにも即死ではなかったようで腹わたぶち撒けた後でも対処ができた。

……とまあ、考えるのはこのくらいにして。

 

「仲魔の回収はCOMPでできるとして、問題はジャンヌたちか」

 

言うなり問答無用でCOMPを操作して仲魔たちを収納する。これで仲魔たちは一安心、俺がやられなければ。

そして、仲魔が消えたことで当然、涅槃台とジャックは俺に向かってくる。

そこで“ヒートライザ”を使う。

 

廃寺の頃と違って、多少は霊力も戻ってきたし“戦闘の感覚”も徐々にだが取り戻しつつある今、詠唱もなく即座に発動できる。

 

発動したところでちょうど涅槃台が現れた。

厳密には、濃霧の中から錫杖だけが突如として突き出された。

 

ヒートライザで強化された俺はその一撃をなんとか刀で防ぐ。しかし相変わらず“一発強化”では足りないらしい。

 

「愚策ですな、仲魔を全て戻すとは」

 

ギリギリと錫杖を押し付けながら語る涅槃台。

無論、応える必要はないので無視する。

代わりに“もう一発ヒートライザを掛ける”。

 

「ヒートライザ……!!」

 

声に応じてCOMPが自動的に魔法を発動する。二段階強化が掛かったことで僅かに身体が軋んだ。だが、前のように死に体になることはない。

 

「……フ」

 

そんな俺の成長を嘲笑うように鼻で笑う涅槃台。むかつくが、それよりも今は全集中しなければ即・死。気を抜けばすぐに死ぬほどの力が杖の先から伝わってくる。

 

案の定、くいっと杖を動かして刀を払い除け再び突きを放ってきた。これを身体を逸らして回避する。次いでお返しの斬撃を放つ。

 

「っ、やりますね!」

 

だが、寸でのところで防がれた。そう簡単には倒せないよな、そりゃ。

――更にはジャックの攻撃も加わる。

 

「おかしいなぁ! おかしいよぉ!! なんで死なないの!?」

 

両手に持った短剣を振り回しながら喚いている。だが、ただ振り回しているわけではないらしく的確にこちらの急所を狙った一撃だ。

 

「これ、は……まずいな!」

 

涅槃台とジャック、同時に相手をするのは流石に無茶があった。しかしジャックの呪殺攻撃を考えるとおいそれと仲魔は呼べない。

どうしたものか。

 

……などと悩む俺の脳内に声が届く。仲魔からの念話だ。

相手はオサキ、チヨメちゃん、牛若。

三名は一つの提案をしてきた。

危険なのは変わらないが、まあ他に手もない。

 

仕方ないか。

……仕方ないが、召喚する隙がない。

 

と、困ったところで運良く好機が訪れた。

 

 

 

 

「ああもう!! めんどくさいよ!」

 

飛び回りながらナイフを振り回していたジャックは突然そう叫び、距離を取ってそのまま霧に紛れた。

来るか、あの攻撃が。

 

「此よりは地獄――」

 

来た、あの詠唱だ。このまま呪殺攻撃が飛んでくればオクヤマツミの神罰がジャックの身を焼くだろう。

俺は不自然にならないようにジャックを無視して涅槃台への対処に注力する。

 

しかし。

 

 

「っ、待てジャック!! 宝具は……っ!!」

 

涅槃台は慌てて静止の声を上げた。まさか、オクヤマツミの権能に気付いているのか?

かの神の力は『奥山』の者しか知らないはずだが。

古事記にも載ってない。

 

 

……結局、涅槃台の静止は届かずジャックはあの呪いを発動した。

 

 

解体怨霊(ジャック・ザ・リッパー)!!」

 

一瞬、呪詛が禍々しいオーラを以って可視化され俺へと一斉に襲い掛かる……が。

 

「っ、ああぁァァァアアァ!!!?」

 

直後にはジャックの身体はまるで雷に打たれたような光を放ち悲鳴を上げた。

これは奥山津見の神罰だ。奴のスキルに反応してカウンターの“破魔系魔法”が放たれたのだ。

先の様子を見る限り奴は破魔系に弱い、ならばこれは致命傷だろう。

 

これを好機と見た俺は奴へトドメを刺すべく駆け出そうとして――

 

 

――身体が動かないことに気付いた。

 

「っ、な、なんだ!?」

 

慌てて自分の身体を見回してみれば、腹部を除いた全身に無数の切り傷が生じているのに気付いた。

殆どは浅い傷だが幾つかは行動に支障が出るほどに深い。

俺は駆け出そうとした勢いのままに前のめりに倒れた。

 

訳も分からず必死に起きあがろうとする俺を見下ろすようにして、ジャックが現れた。

見上げたその身体には()()()()()

 

「ど、どうゆう……!」

 

そう言ってすぐに思い至る。このジャックが()()()()であることに。

つまりアイツは、自らを構成する霊体の一つを身代わりにして神罰を回避したのだ。

そして、俺の奥山津見に守られた腹部以外を呪詛で傷付けた。

 

……そもそも、ジャック・ザ・リッパーの宝具は()()()()()()()()()()()()()()()()()。これも事前にジャンヌから聞いていたはずなんだが、初撃が腹部を狙ったものだったので無意識のうちに勘違いしていた。

 

 

「自分の同胞を、捨て石にしたのか……?」

 

俺の問いにクスクスと笑ったジャックはナイフを振り上げながら口を開く。

 

「何言ってるの? ()()()()()()()()だよ?

一人も二人もない、みんなで“ジャック・ザ・リッパー”なんだよ」

 

なるほど、そういう“在り方”か。それほどまでの“執念”であれば怨霊群体などというイレギュラーもあり得るか。

 

納得した俺へとジャックは無造作にナイフを振り下ろす。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として破壊音が鳴り響き、衝撃波で霧を吹き飛ばしながらコンクリート片が飛んでくる。

 

「ホホホホホォォォォォォ!!!!」

 

続けて聞き覚えのある鳴き声と共に“怪物”が聖堂内に乗り込んできた。

 

「こいつは……!!」

 

「ちっ、この役立たずが……!」

 

舌打ちと共にジャックが後退し、代わりに周囲へと崩壊した聖堂の破片が降り注ぐ。

俺もすぐに退避しなければ危ないが、未だジャックに付けられた傷のせいで身体が上手く動かない。

 

「く、くそっ……!」

 

「ヒデオさん!!」

 

プルプル震えながらなんとか立ち上がった俺に、これまた聞き覚えのある声がかけられた。

 

「遠野さん!? なんでここに……!」

 

心配そうな顔で駆け寄ってきたのは遠野アイだった。彼女はすでにヨシオに任せて無事にジャックの森に辿り着いていたはず。今頃は帰宅していると思っていたが。

 

彼女は有無を言わさず俺の肩を担いでこの場から連れ出そうとする。しかし、体格差があり過ぎる上に見た目通り非力だった彼女ではあまり支えになっていない。

 

「俺はいい、君は早くここを離れろ」

 

別に親切心からの言葉ではない、単にここでこうしていても役に立たないし俺が自分で歩いた方がマシ。それどころか彼女まで無駄に危険に晒されるからだ。

 

「置いてくわけには行かないでしょう!? ふ、ぬ、ぬ……!」

 

女の子が出しちゃいけない声と共に俺を引きずる彼女。このお人好しが……。

とはいえ、彼女には色々と聞きたいこともある。なんとか二人でここから離脱せねば。

 

 

……と、そんなこんなしているうちに聖堂はついに崩落を迎え無数のコンクリート片が頭上より降り注ぐ。

 

「きゃあ!?」

 

悲鳴と同時、目を閉じた彼女を咄嗟に抱き寄せて覆い被さる。一般人の彼女は言うまでもなく即死だろうが、デビルサマナーとして鍛えられた俺ならば大きめのコンクリート片くらいは耐えられる……かもしれない。

 

 

「主の御業をここに!」

 

だがその心配は杞憂となる、ジャンヌが颯爽と俺らの前に現れてあの旗槍をかざして“結界”を張ったからだ。

聖女ジャンヌの張った結界は強力で、コンクリート片程度は容易く弾いてしまった。

 

崩落がひと段落したところでこちらに振り返る。

 

「今のうちに撤退します!!」

 

言いながら彼女は俺たち二人を米俵のように担ぎ上げてその場から全速力で退避した。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ、コウガオン!!」

 

左手を向けて短く唱える、直後には掌から破魔系魔法が飛び出し一直線にバルディエルへと向かう。

 

「ぬるいわっ!」

 

破魔系上位の魔法に対して、氷結属性の槍と電撃属性の槍を交差させ犠牲にすることで相殺する。

そしてすぐさま代わりの槍を二振りとも生成してヨシオに飛びかかる。

 

振り下ろされる魔力製の属性槍二本を、両刃剣で辛うじて防ぐ。

徐々に押し込んでいくバルディエルの背後より破魔系魔法を装填した槍を構え、天使パワーが迫る。

天使ヴァーチャーは両名に補助魔法を掛けつつ火炎系中級魔法(アギラオ)を撃つ。

 

バルディエルは雷槍でアギラオを薙ぎ払うも、パワーからの攻撃は直前に気付き慌てて雷槍で迎え撃つ。

力が分散した隙を突いたヨシオは、氷槍を弾きバルディエルの無防備な肢体に袈裟斬りを放つ。

 

「ぐぁ!?」

 

続けてパワーも雷槍を押し退けコウガを装填した刺突を放つ。

胸部に強烈な一撃を受けたバルディエルはたまらず後退した。

 

「やるではないか、メシアン……!!」

 

新たな雷槍と氷槍を携え、未だ戦意衰えぬ様子で交戦的な笑みを向ける。

 

ヴァーチャー、パワーが翼を羽ばたかせヨシオのもとに集う。

ヨシオは銃の再装填をしてから改めて両刃剣を構えた。

 

「それなりに戦いには慣れてる。堕天使相手であればなおさら負けられない」

 

そう言うヨシオの目には戦意や使命感だけではない、純粋な“殺意”が滲み出ていた。

 





【あとがき】
エリセが水着を……ッ!!!!
うちに来てくれたのもエリセ一人……ッ!!!!
エリセたんハァハァ(゚´Д`゚)

ふーやーさんの貯蓄もないしガレスちゃんは来ない(血便



【おまけ】

[ソウル・コントラクト・ソサエティ及びグリゴリの動向について・3]

――過日より、人間社会の裏側にて暗躍していたかの組織は世紀末神魔騒乱においても活発な活動を行なっていた。

世紀末にもっとも活発に動いていた悪魔組織ガイア教と同盟を結び、彼らが支援するゴトウ一等陸佐に多大なる支援を行う。これには、ガイア教の有力なスポンサーであるルシファー旗下の悪魔軍との協調及び、悪魔勢力の団結によるヘブライ勢力への牽制の意味合いがあった。
そして、遠からず始まる“ハルマゲドン”に向けた根回しも含んでおり、現行社会崩壊後にグリゴリが優位な立場を確保するための布石でもあった。
更には、保険として『D.C計画《プロジェクト・ディーシー》』を発動。これは、神話時代の希少種である人と悪魔の――

《中略》

――しかし、肝心のゴトウが“現代の英雄”によって討たれたことで計画は頓挫。水面下で動いていた他の有力悪魔も続け様に討伐されたことで同組織は早々にこの一件から手を引くことで“現代の英雄”からの追求を逃れた。

その後、平崎市にてSCSでも非常に強力なダークサマナー、シド・デイビスを使って古代王朝の古き姫を用いた“呪術式”を完成させるため暗躍するものの。葛葉より派遣された葛葉キョウジによってこの計画も潰され、さらには貴重な実力者であるシド・デイビスの離反を招くという散々な結果となる。

それから幾ばくも経たないうちに、天海市にて組織の大幹部アザゼル、シェムハザが活動を活発化。兼ねてより同盟関係にあった門倉と共同で『マニトゥ計画』を発動。ネットを通じて人間のソウルの収集を目論む。
だが、この計画も葛葉の支援を受けた“デビルサマナーの少年”によって未然に防がれ、同地にて活動していたアザゼル、シェムハザの両名をも討たれたことでついに同組織は沈黙。司令塔の悉くが討たれたことで統率を失った組織は、組織として活動が難しくなり各々の考えで独自の活動を開始。組織は事実上の崩壊となった。

《中略》

――しかし、組織崩壊直後。突如としてグリゴリのメンバーだった■■■■■がリーダーの地位を継ぐことを宣言。突然の宣言に元幹部たちも素直に認めることは無かったが、同じくグリゴリメンバーたる■■■■■らを味方につけたことで事態は急変。次々とグリゴリメンバーを味方に引き入れたことで無事にグリゴリのトップ及びSCSの管理責任者の地位を手に入れた。
以後は、組織崩壊で頓挫していた『D.C計画』の再開、天海市の一件で得られたデータを用いた『■■・■■■■』の製造。未だ人間社会で暗躍する悪魔関連組織との積極的な連携などでかつての勢いを取り戻しつつある。

また、古より暗躍が疑われていた山伏集団とも取引を繰り返しており、二十世紀末に繋がっていたガイア教とも大派閥アスラおう派の一派たる大霊母派のオオウベを通じて再び同盟関係となった。

■■■■■自身もグレゴリーを名乗って積極的に各地で暗躍していることから、現在最も警戒すべき悪魔と断ずるべきである。

今後も情報が集まり次第、都度報告を行う。




――――サマナー協会副会長・碓氷■■
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