英傑召喚師   作:蒼天伍号

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サンゴちゃん!! うおぉぉぉぉおぉおおおぉぉぉ!!
サンゴちゃん、サンゴちゃんうおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!



霧の街・一

――ぼくたち(ぼく)にとって人生とは“痛み”だった。

 

 

生まれてからずっと疎まれ、虐げられて生きた。

おとうさん(ぱぱ)はずっと怒っていた、おかあさん(まま)はずっと嫌そうな顔で見ていた。

 

“ぱちんこ”でまけたというりゆうで■られた。

うるさいというりゆうで■られた。

 

けい■でまけたというりゆうで■られた。

うっとうしいというりゆうで■られた。

 

■■がほかの■のひとといっしょにいた、というりゆうで■■■■。

■■■■■■■をこぼしたという■■■■、■■■■をかけられた。

 

■う■え■のみんなとはなしてはじめてしった。

■■のかぞくはもっと■■しいと。

 

だから■■はおもった。ぱぱとままがよろこぶことをすればきっと■■にもやさしくしてくれると。

だからいうことはちゃんときいた、いたいのもがまんした、ご■■もがまんした、■■■え■のみんなとあいたいのもがまんした。

……■■■はがまんできなくて■られたけど、いたいのはがまんできた。

 

しんじてた、きっと、きっといつか、■■も■■も■■を◻︎してくれると。

 

だからだいじょうぶ。もうなんにちも■■■を■べてないけどがまんできる。■■はいいこになるんだ、そうして■■と■■にほめてもらうんだ。

だから……ねちゃだめだよ…………ねむく、ても……めを……あけ――

 

 

 

 

 

 

――わたしたち(わたし)の人生は“冷たかった”。

 

わるいこな■■■は、おそとではんせいしていた。ふゆのおそとはとてもさむくて、こんくりーとはとてもつめたい。

……べらんだのむこうがわでは、よそのこが■■■さんと■■■さんにはさまれてにこにこしている。そのまえにはろうそくをたてたおっきなけーき!

いいなぁ……そうだ、ことしのぷれぜんとはけーきにしよう。けーきってたべたことないけど、みんなのはなしではとてもおいしいときいた。

■■■さんならきっとかなえてくれる、ことしこそはきっとかなえてくれる。

 

……なんだかねむくなってきた。それになんだかさむくなくなってきた。こんくりーともつめたくない。

これならよくねむれそう――

 

 

 

 

 

 

 

――■■■■(■■)の■■は“■■■■”だった。

 

いつもおこっていた■■■さんは、かえってこない。もうなんにちもおうちにひとりぼっち。

おなかすいたなぁ……でも、■■はこの■からでられないから■■■をさがしにいくことも■■■■――

 

 

 

――■■■■■(■■■)の■■は■■■かった。

 

 

――■■■■(■■)の■■は――

 

――■■■■■(■■■)――

 

――――

 

――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくたちは■されなかった

 

 

■がほしかっただけなのに、ただ■からの■を欲しただけなのに。

この世界はぼくたちを“拒絶”した。

 

罪を犯した子も、なんの罪も犯していない子も。無作為に虐げられ死に絶えていった。

 

 

だから『復讐』する。

ぼくたちを拒絶したこの世界に復讐する。

おまえたちが“痛み”を、『死』を与えるというなら、ぼくたちもおまえたちに返そう。

 

痛みを、死を。

 

おまえたちが“ぼくたち”を()()()のだ。

 

悲哀の果ての、貧しさゆえの“■■■■”ではなく。

 

私欲による暴力、“戯れ”による鏖殺。

理性による生贄ではなく、感情による殺人。

 

そこに道理はなく、ただ悪意だけがある。

あまつさえ、殺めた“罪悪感”すら抱かない。

 

 

人は知性的だと? 文明を築き上げた高度な生命体だと?

笑えない冗談だ。

 

人とは理性の皮を被っただけのただのケモノだ。

たまたま神々が去ったあとの世界を手に入れた畜生の一種にすぎない。

 

だからぼくたちも“獣”としておまえたちを喰らい尽くそう。

ただひたすらに殺して喰らう。

そこに()()()()()、あるのは敵意と殺意のみ。

肉の一片、骨の一欠片、魂すら逃さぬ。全て鏖殺して喰らい尽くしてくれる。

 

 

おまえたちは自ら育てた“悪意”によって滅びるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

――始まりは“濃霧”だった。

 

 

 

この日も、欲望渦巻く歓楽街はいつもと変わらず賑やかだった。

酔っ払いも客引きも、不良もやくざも。いつもと変わらない一日を過ごしていた。

真っ黒な“後ろ盾”を有した夜の店は、酔っ払いを慣れた手つきで店内に誘い込み、元気を持て余した若者は酒と暴力に溺れる。

闇に生きる犯罪者たちは、街の光から外れた哀れな獲物を捕らえて貪り尽くす。

家なき老人は若者のストレスの吐け口とされ、人混みを外れたうら若き乙女は、獣欲に塗れたケダモノの餌食となる。

 

罪と欲に塗れたこの街は、無垢な殺人鬼にとっては最高の舞台。

悪意に反応する“復讐鬼”の昂りはすでに最高潮だ。

だからこそご馳走を最高の状態で味わうために時を待つ。

 

――幼子の放った霧はゆっくりと街を包み込んだ。

 

 

 

最初に気づいたのはひとりの客引き。

いつの間にか視界を埋めていた霧に戸惑い、そして異臭に気づいた時には()()()()

 

「ごぼっ!?」

 

突如、大量の血を吐き出して倒れた客引きは次いで目と鼻からも血を垂れ流して痙攣した。

だがそれも数分、すぐに動かなくなる。

 

周囲の人々は何が起こったのか分からず数秒の沈黙ののち、スマホを取り出した。

口々に「うわっ」とか「なんだこれ」とか言いつつシャッター音を響かせる。

ただの道ゆく人々は一瞬にして野次馬へと変わり、それから数分後にようやく“霧”に気づいた。

 

「なにこれ、煙――」

 

言い終える前に彼女は血を噴き出して倒れた。

 

「きゃあぁぁぁぁ!?」

 

突然倒れた友人に、連れの女が悲鳴をあげた。

 

そこからはお約束な展開だ。

甲高い悲鳴は大衆をパニックに陥れ、その場の誰もが逃げ始めた。人を掻き分け誰もが我先にと逃げ出せば当然、転倒する者も現れる。

――だが、この霧の中では誰もが平等だ。

 

「がはっ!?」

「ごぷっ!」

 

逃げ出した人も、倒れた人も。

後から屋外に出てきた誰かも、悲鳴を聞きつけてやってきた誰かも。

 

霧に包まれた誰も彼もが、幼き死神によって“痛み”と“死”を賜った。

 

涅槃台の命で“抑えていた力”を解放した彼らの霧は、教会で使った時の比ではない。

 

霊力に乏しい一般現代人では、触れた途端に強烈な呪いに蝕まれ一瞬のうちに死に至る。

ただ死ぬのではない、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

幼子は嬉しそうな笑みではしゃぎながら街に降り立ち、倒れ伏した人々を片っ端から“喰らう”。

胸を切り裂き、腹を掻っ捌いて臓腑を貪り食う。

もちろん、分裂した全ての個体が各々に喰らっている。

 

 

目を弓なりにして大きく開けた口から伸ばされた舌へと、街灯を照り返す新鮮な臓物を落としゆっくり口に含む。

苦味と酸味は“罪”と“悪意”という極上のスパイスで至高の旨味へと至る。

 

待ち望んだご馳走をじっくりと味わって飲み下した彼らは蕩けた笑みを浮かべた。

一見して無垢な笑みと見紛うそれはしかし、妖艶さと怖気を走らせる悍ましいほど深い笑み。

 

この“食事”は、舌を喜ばせ腹を満たすと同時に“復讐心”を満たす美味。

しかして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

麻薬にも似た多幸感に魅入られた彼らは貪るように、我先にと臓腑に喰らい付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、ヒデオさん!!」

 

突然、ジャンヌが大声を上げた。

未だのんびりと次の戦闘に備えて準備をしていた俺は、彼女の声にビクッとして。

すぐに、市街地の方から漂う()()()()()に気づいた。

 

目を向ければ駅周辺は濃い霧に覆われ、耳を澄ませれば悲鳴や怒号と共に破壊音らしきものも聞こえてくる。

街で何か起きているのは明らかだった。

 

「奴らだ! 行くぞ!!」

 

ブラックマリアや仲魔たちに声をかけつつ、遠野さんに向き直る。

 

「あなたはここでヨシオを待ってください。合流後はこの一件が片付くまであいつに護衛してもらうように」

 

そう言い残して、クダに「彼女の護衛を頼む」と指示しすぐに街へと駆け出す。

 

「え、ちょ……ヒデオさん!?」

 

背後から遠野さんの困惑した声が聞こえてくるが、まさか彼女を連れてくわけにもいかない。

ジャンヌやブラックマリアのかなり焦った様子を見るに、街の方も相当ヤバいことになっていると思われるので急ぐべきだろう。

 

俺も気を引き締めて街へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街に近づくごとに嫌な気配が大きくなる。そして、それが“霧から放たれている”ことに気づいた。

近くまで来たあたりでCOMPでサーチをかけてみたのだが――

 

「……こいつはヤベェな」

 

霧から濃密な呪殺反応が出ている。それも突っ込めば即死するレベルの呪詛だ。

無論、装備には呪殺耐性を高める効果があるものを選んでいるが解析結果を見るに焼け石に水。

霧に入れば一分と保たない。

 

「私が全員に結界を張ります、それで呪いは無効化できるでしょう」

 

ブラックマリアは両の掌から淡い光を放ち、次の瞬間には全身を包み込むような感覚があった。

 

「ありがたいが……」

 

そんなことをして、彼女自身は大丈夫なのか?

そんな気持ちを込めて目をやると。

 

「ご心配なく。これでも地母神の端くれ、この程度は朝飯前です」

 

力強い笑みで返された。まあ、確かに。地母神が、自分のホームグラウンドにいるのだ。桁外れの力を行使できても不思議ではない。

 

だが、今の彼女はブラックマリアだ。夕凪神としての現界でない以上は絶好調とまではいかないはず。

一応、COMPのアナライズで体調を診ておくか。

 

ブラックマリアの結界に包まれた俺たちは霧が満ちる街中へと突入した。

 

 

 

 

 

「……ひでぇ有り様だな」

 

街に入ってすぐ、俺たちは仰向けに倒れた死体を見つけた。一つではない、視界に入る限りではそこら中に死体が転がっている。

誰も彼もが血塗れで力無く横たわっている。

異様なのは、それら全てが()()()()()()()()()()()()だ。厳密には胸部を含む“前面”が掻っ捌かれているが。

 

手口からしてジャックの仕業と見て間違いないだろう。

 

「随分と大それたことをしてくれる……」

 

ここまで大規模な惨劇を起こしたとなれば十中八九“教会”の介入を招く。加えて、國家機関も黙ってはいないだろう。

油凪は田舎ではあるが、田舎の中でも比較的重要視される地域だ。一般のマスコミに知られればもはや目も当てられない事態となる。

……などと頭を悩ませている横でジャンヌが口を開いた。

 

「なんということを……」

 

言葉にすればそれだけだが、その声にはこのような惨状に対する“無念”と“怒り”……義憤にも似た感情が篭っていた。

 

「油凪もまた“私の子ら”、到底許せる所業ではありません」

 

次いでブラックマリアもこの殺戮に対する怒りを込めた声を上げた。

 

両名の反応を見て俺は少し罪悪感を感じる。

この惨状を見ても俺はあくまで()()()()()()()を嘆いただけ。本来ならこの二人のような反応こそ“正常”だというのに。

 

……ただ、まあ、事実として。

この事件が片付いたら絶対に協会の方からお小言が飛んでくる。一応は俺のテリトリー内での事件になるからだ。

今はそれだけが憂鬱である。

 

 

 

 

――それから。しばらくの間、街中を見て回って判明したのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだった。

 

人の気配、というか音も何もない。

辺りは静まり返り、ただ夜の街並みだけが霧の中に朧げに浮かぶのみだった。

 

霧の影響でCOMPのサーチ機能も上手く働かない。

 

全て終わった後でジャックたちも逃げたあと……なんてことはないだろう。現に今も霧が続いているのだから。

つまり、奴らはどこかに身を潜めている……あるいは、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

――そこまで考えたところで、近場の雑居ビルから女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

俺らは目配せをしてすぐに声の聞こえた雑居ビルへと突入した。

 

 

 

 

 

音の聞こえた位置、三階窓際の一室へと迷いなくたどり着きその扉を蹴破った俺たちはようやく敵と邂逅した。

 

 

「あっちゃー……流石に気付かれちゃったかー」

 

黒く淀んだ瞳、座った目、口角を上げ薄く開かれた口から這い出た舌が血塗れのナイフを(ねぶ)っている。

殺人鬼の悪魔、ジャック・ザ・リッパーと目される存在がそこにいた。

その下には胸部から腹部を掻っ捌かれて横たわる金髪の男の死体がある。その顔は恐怖か“苦痛”を示すように歪んでおりあらゆる穴から血を垂れ流している。

その傍らにはパンクファッションの若い女性が尻餅をついた姿勢でガタガタと震えながらジャックを見ている。

 

おそらく、彼女が悲鳴の主だろう。

 

よく見れば部屋には複数の死体が転がっており、内装からしてバーか何かだろう。マスターと思しき男性も全身から血を垂れ流して死んでいた。

 

……しかし、涅槃台の姿が見当たらない。

別行動か、どこかに潜んでいるのか。

まあ、いずれにしてもこの場における最優先事項は変わらない。

 

俺はすぐさま銃を抜いてジャックに発砲した。

 

「わっとと!」

 

それを()()()で避けたジャックは、流れるように素早く窓際に移動し、そのまま窓を突き破って逃走した。

 

「追います!!」

 

ジャンヌがすぐさま後を追って駆け出す。当然のようにウシワカも追跡に飛び出す。

俺も続こうとして、ブラックマリアが先程の女性に治療を施しているのに気づいた。

厳密には軽い傷の治療と、霧に抵抗できるだけの簡易な結界を張っている。

 

ブラックマリアは怯えた表情で震える女性の頭を撫でながら優しく囁く。

 

「もう大丈夫、私たちが守るから安心して」

 

その声には不思議な魅力があった。

権能なのか、地母神としての性質なのか。少なくともスキル化されるほどの力ではないが、聞くだけで心が落ち着くような、そんな声。

女性も声を聞いた瞬間に震えが止まり、安堵したような表情でブラックマリアを見つめる。

 

そこで彼女が俺にくるりと向き直った。

 

「ヒデオさん、この女性を保護できないでしょうか?」

 

そして突然そんなことを言ってきた。

まてまて、いきなり何を言ってる?

ジャックと涅槃台が潜むこの街で一般人を連れて行けるわけないだろう。そんな“枷”があってはこちらが死にかねない。

涅槃台を二度殺した俺だが、別に()()()()()()()()()()()。むしろ強い方だろう。最初に感じた“キョウジやライドウの管轄”という評価は間違いではない。

 

「それは難しい、ジャックも恐ろしいが何より涅槃台がいる可能性がある以上は少しの“油断”も命取りになる。

……とりあえず霧を防げる結界があるならここに置いていくべきだ」

 

それが最善だ。

なによりこれだけ虐殺が行われてしまっては後の祭り。今更、()()()()()()()()()()()

残酷だが彼女にはここでどうか狙われないように、とお祈りしてもらう他にない。

……と、考えていたのだが。

 

「そう、ですか……」

 

ブラックマリアはひどく悲しそうな顔でそう呟いて、俯いた。その顔は今にも泣き出しそうなほど悲壮に歪んでいる。

な、なんて顔しやがる……

 

「……まあ、何人かでも助けられれば。協会からもお情けをいただけるかもしれん」

 

「っ、では……!」

 

「連れて行こう、助けられるなら……助けた方がいい」

 

そう言った直後、ブラックマリアは花開くような笑顔を見せて俺をしばし見つめていた。

 

「ありがとうございます」

 

感謝の言葉と共にニコニコとしながら俺を見る。

ええい、なんだその温かい目は!

 

むず痒さを感じながらも俺はパンクファッションの女性、勝手に“パン子”と心の中で名付けた女性を連れて雑居ビルを後にした。

 

 

 

 

 

 

COMPの反応を頼りにジャンヌたちと合流した俺は、彼女からジャックを取り逃したことを聞いた。どうやら逃げ一択での全力闘争に加えて霧を利用されたことで見失ったとか。

……ウシワカから逃げ切ったのは少し驚いたが。

 

そこで先程、雑居ビルで遭遇した際に弱々しい反応だったことが気になり、COMPが自動で記録した反応を確認してみると。

 

「……こいつは厄介だな」

 

データには“少し強い亡霊”程度の弱々しい霊力が記録されている。

厄介なのは、こいつが“霧に紛れていること”だ。

現在、街に滞留する霧には微弱ながらジャミングのような機能があり、ジャンヌや俺、仲魔たちくらいの霊力があれば問題なくサーチで拾えるが。雑多な霊や木っ端悪魔などは霧に埋もれてしまう。

つまり、ジャックは身を隠すためにこれだけの“弱体化”を自ら行ったとみられる。

 

そして――

 

「弱体化とはつまり、()()したってことだ」

 

教会での戦闘ですでに分裂能力があることは知っていた。

奥山津見の神罰を躱したあの時だ。

 

俺の推察にジャンヌも首肯する。

 

「……そして、分裂した目的は――」

 

パン子を助けた時にそれも分かった。

 

奴ら、この街を“食べ尽くす”つもりだ。

一人も逃さず、余すことなく、それも“こちらの目を欺きながら”。

そう考えると、なるほどと思う。

俺らが異変に気付いて駆けつけるまでの短時間に、どうやってここまでの大虐殺を行えたのか。

 

分裂して一気に殺したのだ、この強化された霧も使えば難しくない。

そして、それらを()()()()()()()()

捕食したとなれば――

 

「一刻も早くジャックたちを“殲滅”しなきゃならんな。“合体”されたらそれこそ終わりだ」

 

いつもは人で賑わう駅前をほぼ無人にするほどの人数を食らったなら、とんでもない量のMAG……つまり力を得たと考えるべきだ。

今は細かく分裂しているために個々の力は先程COMPで記録した程度だろうが、なにも馬鹿正直にそのままでいるはずがない。

手早く捕食を済ませたなら即座に合体しようとしているはずだ。ジャンヌから聞いたサーヴァントとしてのジャックはそれほどに頭が切れると聞いている。

 

「そうとなれば今すぐ動きましょう」

 

「ああ、この際、なりふり構っていられん。ここからは手分けして奴らを追う」

 

俺は即座に仲魔たちへ指示を出す。

まず単体として絶大な戦闘能力を持つウシワカは単騎、単独行動に長ける千代女ちゃんも同様に。イヌガミとオサキはコンビで行動してもらう。

 

「私たちも二手に分かれます」

 

ジャンヌの言葉にブラックマリアも頷く。

そうしていざ行動開始……と思ったところでオサキが声を上げた。

 

「お、おい! まさかお主も一人で行くつもりか?」

 

「ああ、さっきのジャックのデータを見るに奴らは相当な数に分裂している。なるだけ手分けして――」

 

言いかけて、オサキが腰にドロップキックをかましてきた……が、流石にさっきくらったばかりなのでひらりと躱す。

 

「なんと!」

 

対象を失ったオサキは慌てて体勢を整えて着地した。

 

「そう何度もくらうか!」

 

「っ、バカモンが! さっきの説教をまるで聞いておらんかったようじゃの! 第一、貴様一人で自分の身を守れるのか!? ここには涅槃台もおるんじゃぞ!?」

 

う、たしかに。涅槃台とジャックを同時に相手するのは……いや、今の涅槃台なら単独でも十分脅威だ。

しかし、俺だけオサキやイヌガミと行動していては手分けの意味が。

 

「そういうことなら、オサキは私が連れて行きましょう」

 

口論になりかけたところでブラックマリアが割って入った。

 

「は!? 母う……貴女に口を出される謂れは――」

 

食ってかかろうとしたオサキの口を手で塞ぎ、空いた手でがっちりと捕まえたブラックマリアはこちらに向き直る。

……随分と慣れた動きだ、オサキも抵抗する間も無く捕獲されてしまった。

 

「そちらはイヌガミ殿とヒデオさんでジャックを探してください。さ、行きますよ、オサキ」

 

「もががっ!?」

 

暴れるオサキをスルーして、パン子を伴いながらふわふわと宙に浮いて去っていくブラックマリア。

その光景にしばし呆気に取られていたジャンヌもすぐに別方向へと駆けていった。

ちなみにウシワカも千代女ちゃんも既に捜索に出発している。

 

俺は残されたイヌガミと顔を見合わせ――

 

「……とりあえず、行くか」

 

「……ウム」

 

ひとまずジャックの捜索へと出発した。

 

 





【あとがき】
アーマード・コアの新作が出る(真)
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