英傑召喚師   作:蒼天伍号

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クロ、結婚しよう(n回目






電霊再臨

「主の光を」

 

オルタと旗槍を打ち合うジャンヌは、左手を向け破魔系魔法を放つ。

それは咄嗟に発動したとは思えないほどの威力を持ってオルタへと直撃した。

 

「がっ!?」

 

浄化ではなく、攻撃を意図して発動される破魔系魔法。俗にコウハ系と呼ばれる魔法だ。

威力にして上級破魔魔法(コウガオン)に匹敵する。

 

「……正直なところ、初戦においてはかなり動揺しました。私にとっては()()()()()()()()()存在が突然、現れたものですから」

 

事実、ジャンヌはオルタに対してなんら効果的な手段を取ることもできずに、オルタが得手とする“正面からの火力勝負”に自然と乗せられていた。

だが、再戦ともなれば落ち着いて対処できる。

 

「この……!」

 

オリジナルの努めて冷静な態度にイラついたオルタは、自身の異能であり手足が如く操ることができる“地獄の業火”を放った。

オルタを中心に周囲数十mを焼き払う形で業火が噴き出る。その火力、並みの悪魔であれば気付く間もなく焼滅せしめるほどだ。

 

しかし。

 

 

「……」

 

旗槍を立て発動させた破魔属性の炎、ジャンヌを守るようにその周囲へ発生した浄化の炎が竜巻となり業火と衝突。近くの雑居ビルを軒並み薙ぎ倒すほどの衝撃を撒き散らしながらも業火を相殺した。

固有スキル『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』を発動させるまでもなく。

強力な神の加護を受けた彼女には、“魔”を滅するには十分すぎる力が備わっている。

たとえ、相手が自らの“別側面”であろうと。それが魔であるならば問答無用で撃滅せしめる戦闘力。オリジナルのジャンヌ・ダルクは()()の英雄の中でも極めて強力な存在である。

 

 

「なんなのよ……それ……」

 

――オルタにとって、オリジナルの無法とも言える強さは屈辱だった。

ジャンヌ・ダルクとは、少なくとも“サーヴァント”として現界するジャンヌ・ダルクは“防御に特化した英霊”であるはずだ。

それが、攻勢においても強力であるなど無法が過ぎる。

なにより、守りを全て攻めに反転させたはずの自分の立場がない。

復讐の魔女は、自らを焼いた炎を地獄の業火として振るい世界に仇なす……その()()()()すら奪おうというのか?

 

「それじゃあ……私は……私は、なんのために――」

 

得物を持つ手が震える、オリジナルへの恐怖ではない。

自らの存在意義を見失いつつあることへの恐怖だ。

 

 

――このジャンヌ・オルタは、異世界にて顕現した個体とは違った。

目の前に焼くべき“祖国”もなく、彼女を唆す“創造主”もなく。ゆえにこそ彼女はこれまで、自分の存在について自問自答を繰り返していた。

当初は、己がジャンヌ・ダルクのオルタであると信じて疑わなかった。だが、それならばなぜ“悲劇の記憶しかないのか”。

それ以前の、村娘としての記憶が微塵も存在しないのか?

 

そのことに気づいてからは早かった。

 

記憶だけではなく、多くの面において自分は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

だから、今の彼女は内心では気づいているのだ。

 

己が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ゆえにこそ、それを裏付けるようなオリジナルとの圧倒的な戦力差に狼狽えた。

曰く、『自分は偽物だから勝てない』と。

 

狼狽した彼女は隙だらけだった。

 

 

 

 

 

「……貴女が何者であるのか、明確な答えは掴めていませんが。

彼らの仲魔であるというなら容赦はしません」

 

ジャンヌは旗槍へと魔力を込める。活性化した彼女の魔力は全身から“聖なる輝光”を発し、それらの終着点たる旗槍はより煌々と光り輝く。

それを地面に突き立て呟く。

 

「――主の御業を、ここに」

 

直後、オルタの頭上から無数の光の矢が降り注いだ。

それらは落着するとともに眩い光の柱となり闇を照らす。全てが強力な破魔属性を伴い、魔性はもとより霊的な存在全てを消し去っていく。

オルタの周囲で燃え盛る業火もまた光に呑まれ消えていく、光の周囲にある霊的存在、現象もまた須らく消滅する。

 

オルタ自身も無数の光にその身を貫かれながらも、“意地”によって耐えていた。……その意地の意味もわからぬままに。

 

やがて、オルタ目掛けて特大の光が落ちた時、突如として地面が陥没した。それらは周囲の建物を巻き込みながら拡大する。

 

「っ!!」

 

ジャンヌは崩落する地面から咄嗟に飛び退き事なきを得るが。オルタがいた位置を中心とした辺り一帯、半径にしておよそ百mほどが陥没し大穴を作り出した。

 

 

「……」

 

崩落が治まった頃、ジャンヌは恐る恐る、ふちより穴を覗き込む。

夜闇のせいか底も見えない。

 

「え、えーと…………私、こんなに力込めてないはずなんですが」

 

『ジ、ジャンヌさま……』

 

弱々しく弁明するジャンヌへと、依代たるレティシアは心底怯えた声を上げた。

 

「ち、違います!! 私も、まさかこんなことになるなんて思わなかったんです! 本当です!!」

 

――その後、黒いジャンヌも殺す気はなかった、彼女には聞かねばならぬこともあった、などと必死に弁解するジャンヌだったが、レティシアはしばらくの間、ジャンヌに怯えきっていた。

 

彼女の預かり知らぬことではあるが、この地域は前時代の無茶な埋め立てで地盤が緩く、ジャンヌとオルタのような激しい戦闘にはもとより耐えきれる場所ではなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狐火・夜参り(よまいり)!!」

 

青髪クーデレ美少女モードのクダが宙を舞いながら高らかに叫ぶ。

その周囲には青い火の玉が幾つも浮かび上がり、次の瞬間には夜の闇へと溶け込んでいく。

 

「ホホホォォォ!!」

 

対する“怨霊群体”もまた鳴き声を上げながらその巨体で突撃する。

だが、クダに直撃する直前に横合いから突然青い火の玉が現れ首元へと連続で着弾した。

 

「ホゴォォォ!?」

 

衝撃で横向きのまま地面に墜落する。その首元では未だに青い炎がメラメラと燃え盛っている。

 

「おまけだ!」

 

両手を向けたクダは、もがく怨霊群体の顔面へと青い火球を連続で発射する。それらは先ほどの火の玉と同じく着弾地点にて激しく燃え盛った。

 

一連の流れを後方で見守っていた遠野アイは思わず声を上げた。

 

「クダちゃん、すごい……!」

 

その近くへと着陸しながら、もがく怨霊群体からは注意を逸らさない。

 

「ふん……私はアイツに造られた管狐だからな。こんな姑息な技ばかり身につけてしまったのだ」

 

口では軽口を叩きながら、素直な賞賛を受けて満更でもない彼女はその尻尾を激しく振っていた。

その姿にアイもほっこりする。

 

「……何かにつけてヒデオさんの話するよね」

 

「なっ……別に、そんなことはないぞ」

 

一瞬の動揺ののちポーカーフェイスを決めるクダだが、忙しなく動く耳と尻尾がその心情を如実に語っていた。

 

「……しかし」

 

このままではジリ貧であるとクダは歯噛みする。

彼女単体では怨霊群体を撃滅するほどの力は無く、気を抜けばアイの身も危ういほどの逼迫した状況に。

 

 

 

――数分前、待機していた彼女らの前に怨霊群体が突如として飛来。護衛たるクダは全力をもって交戦していた。

だが、先述の通り彼女にあの悪魔は荷が重くかといって逃走の隙も未だ見つけられずいた。

 

「……というか、前より強くなってないか?」

 

以前、遭遇した時よりも怨霊群体の霊力が増している。動きもどこか俊敏だし、何より――

 

「くっ!」

 

唐突に振るわれた尻尾の一撃を、青い炎で生成した壁で受け止める。

 

「パワーも、上がっているっ……!」

 

青い炎を操って尻尾を受け流したクダは荒く息をつく。

 

「ハァ……ハァ……!」

 

「クダちゃん……!!」

 

やがて膝をついたクダへと、アイが駆け寄る。

 

「ば、馬鹿者! お前が出てきたら護衛の意味が――」

 

忠告するときには、アイの背後へとあの怨霊群体が襲いかかっていた。

 

「くそっ!!」

 

咄嗟にアイを庇うように前に出るクダ、しかしその矮躯では到底守り切れない。

万事休すか、と思われたその刹那。

 

 

「ゴアァァァァァァァァ!!!?」

 

怨霊群体の身を眩い光を放つ“雷撃”が襲った。

余波だけで辺りの草木が焼け焦げるほどの出力、当然、怨霊群体はのたうちまわり攻撃を中断せざるを得なかった。

 

「な、なにが……」

 

困惑するクダの耳に、今度は()()()()()()が届いた。

 

 

 

 

「あーあ、まったく……まだ出てくる気はなかったってのに」

 

その声は間違いなく()()()()のもの、しかし口調がまるで異なる。どこか粗野な、或いは活発な印象を受ける声。

 

驚きアイへと視線を移せば、そこには“姿を変えた”彼女がいた。

 

銀色に輝く髪、金色に光る瞳、青紫色の唇を不愉快そうに歪めている。

 

「だ、誰だ、お前は?」

 

警戒しながら問いかける。

“女”は、少し逡巡してから答える。

 

「私は()()()()。この子……というかこの子の両親にちょっと縁があってね。まあ、そもそも私が“また”現界する羽目になるとは思ってもみなかったんだけど。

私が現界したってことは()()()()()()なんでしょうね、面倒なことに」

 

気怠そうに語る事情はクダにはよく分からなかったが、先に確認しなければならないことがある。

 

「お前は、遠野アイの味方か?」

 

「当たり前でしょ。この子の両親には随分と世話になったんだから、恩を返せる機会があるなら是非にも」

 

強気な印象を受ける彼女だが、少なくとも“嫌な感じはしない”。

ならば、この場で助力を乞うべきだろう、いや、それしか選択肢がないとクダは考えた。

 

「ならば力を貸してくれ。私は主よりこの娘の護衛を――」

 

クダの真剣な様子に、ひらひらと手を振って答える。

 

「あーそこらへんは知ってる。この子の中からずっと見てたから。あと、私は力を貸すために表に出てきたのよ、貴女はそこで大人しくしてなさい」

 

言うなり、ネミッサは両手を怨霊群体へと向けた。応じて全身から電撃が迸る。

 

「この子に随分とご執心みたいねぇ……アンタ、ちょっとしつこいわよ?」

 

好戦的な笑みで語りながら両手より電撃を放った。狙いは無論、怨霊群体である。

まるでビームのような規模の特大電撃は間違いなく広範囲上級電撃魔法(マハジオダイン)である。

マハジオダインは進路上の全てを消し炭にしながら怨霊群体に迫る。

 

「ホゴッ!?」

 

着弾する直前、頭部を除いた怨霊たちは即座に合体を解いて一目散に逃走した。予想だにしない怨霊たちの行動に“頭部”は動揺し、“彼”単体では動くことすらままならない事実に気づいた。

 

「ホッ――」

 

だが、対策を考える間もなく頭部はマハジオダインの直撃を受けた。

 

「ホゴゴゴゴゴゴゴボォォォォ!!?」

 

夜空を照らしだすほどの閃光、有り余る電撃は周囲を見境なく焼き焦がしていく。

バチバチと明滅する光にクダが思わず目を閉じる。

 

やがて、オーバーキル気味の電撃を受け続けた頭部は――

 

「ゴベッ!!!!」

 

盛大に破裂四散した。

 

 

 






【あとがき】
うちにもSイシュが来ました。相変わらずの大爆死連発でしたが……

来ました。
というか来るまで回しました(そして財布は死んだ



某グラサン「もう どこにも遊びに行けないねぇ」
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