仮面ライダー777(ゼータ)   作:辻くろひ

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第四章

 シアは晶に言われてウェイクに連絡を取った。

「例の犯人を目撃した子がいたの。犯人を捜す協力をして」

「俺は何をすればいい?」

 ウェイクの返答が協力的で、シアは内心ホッとした。

「軍内部が怪しいことに変わりはないと思う。また私とアキラが目撃した子を連れてそっちに行くから、隊員たちに集合をかけてほしい」

 

 そして晶とシアはレイを連れて軍の基地へ赴いた。

 レイは晶が肩車し、周りからレイの顔が見えないようにローブを纏って顔をフードで隠した。

 万が一犯人もレイの顔を知っていると危ないので、こうしている。

 晶はいつでも変身できるようにあらかじめゼータのベルトを巻いておいた。

 

 三人が着くと、基地内の体育館ホールに案内された。

 隊員たちが雨天でも修練できるように建てられた施設だ。

 やがてアナウンスがかかり、軍に所属している人間がぞろぞろとホールに集合した。

 壇上にウェイクが立ち、説明が行われた。

「この中に、人間のふりをしたオルフェノクが紛れている可能性がある」

 隊長がそれを言うかよ、という声が微かに聞こえた。

「そいつは先日、一民間人を殺した。俺の母親だ」

 ウェイクがそれを言うと隊員たちはしんと静まり返った。

「よし、始めろ」

 合図を受けて、レイを肩車している晶がローブを脱いだ。

 端から順番に隊員たちの顔を確かめていく。

 だが、オルフェノクは見つからなかった。

 集った全員の隊員たちの顔を確認したが、レイは首を横に振るばかりだった。

 ――軍の人間の犯行じゃないのか……? ――

 晶は首を傾げた。

「おい、これで全員か?」

 ウェイクが隊員たちに尋ねる。

「あれ、そういえばジャンの奴がいませーん」

 隊員のうちの一人が答えた。

「ジャンはどこに行った?」ウェイクが再び尋ねる。

 誰一人として、ジャンという男の動向を知る者はいないようだ。

 晶は嫌な胸騒ぎを感じていた。

 その時だった。

 声が、聞こえたのだ。

 ――ミテラさんの知り合いなんだが、サラに声をかけさせてくれないか。

 同時に、舌が唾液をすする不快な音――。

 スピティに何者かが来訪している。

 ――こいつがジャンか? ――

 自分に何故、本来聞こえるはずのない程離れた距離での声や音が聞こえるのか。幻聴?

 晶はそんな疑念を今は振り払い、叫んだ。

「サラが、スピティのみんなが危ない!」

 シアは驚いた様子ながらも晶の言葉を通訳し、ウェイクに伝えた。

「アキラ、表に出ろ。他の奴らはマシンを用意しろ!」

 ウェイクはチッと舌打ちをしながらも晶を連れて施設の外に出た。

 出口を出ると、軽自動車サイズはある銀色のマシンが二台、宙に浮いて待機していた。

 プロトスライガーだ。

 オルフェノクが使っていたものを軍が回収したものだった。

「乗れ!」

 乗れ、といきなり言われても、晶にはこの世界のマシンの動かし方など知らなかった。

 だがとりあえず座席シートに座ってみると、不思議なことに晶の知っているバイクのそれに似ていた。

 晶は高校を卒業後、かっこいいからという理由だけでバイクの免許を取っていた。

 幸いなことにそのおかげで操縦はなんとか出来そうだ。

 二人はアクセルを回し、マシンを発進させた。

 疾走する二台のプロトスライガー。

 すると二人がスピティに向かう道中、思わぬ妨害に遭った。

 同型のマシンが更にもう一台、天空城の方角から飛来し、ミサイルを放ってきた。

 最悪のタイミングで、天空城からもオルフェノクが襲来してきたのである。

 二人はミサイルを回避するが、地面に着弾して生じた爆風を受けた。

 それでも二人はプロトスライガーを止めない。

「ここは俺に任せて、ウェイクは先に行け!」

 通訳してくれるシアはレイと一緒に置いてきたままだったが、この状況的に通じると信じて、晶は叫んだ。

「任せる!」

 ウェイクは晶の意思を受け、先を急いだ。

 

「変身!」

『COMPLETE』

 晶はプロトスライガーを操縦しながらゼータに変身した。

 その隙をついて、接近してきたオルフェノクがゼータに飛びかかり、両者はマシンから転げ落ちた。

 ゼータは咄嗟に受け身をとる。

 オルフェノクはズシンと着地した。

 相手はゴリラの特質を持つコングオルフェノクだった。

 コングオルフェノクは剛拳を自らの胸に連続で叩きつけ、ゼータを威嚇した。

「かかってこいよ、ゴリラ野郎!」

 ゼータの挑発に乗り、コングオルフェノクが接近してくる。

 闘いの火蓋は切って落とされた。

 

「サラにおきゃくさんなの……」

 スピティではインターホンにラピスが応対し、ラズリがサラを部屋まで呼びに行っていた。

 ――面倒くさいな――

「誰、客って」

 サラは自室の扉を開け、ラズリに顔を見せた。

「わかんないけど、顔を見ればわかるって言ってたの」

 ラズリは答えると、サラの手を引っ張りながらずりずりと連れて行った。

 

「ここは、あいことばを知ってる人じゃないと開けちゃダメって、言われてるの」

 ラピスはインターホンの前で少し怯えながらも答えた。

「そうだった、そうだったねぇ。合言葉なら知ってるよ。『空には光、大地に水を』だろぅ?」

「……せいかいなの。今開けますなの」

 ラピスは怖がりながら開錠ボタンに指をかけた――。

「で、誰なのよ、客って」

 一歩遅く、ラズリに連れられてサラがその場に現れた。

 ――ラピスはボタンを押した。

 開いた扉の向こうからやって来たのは――

「誰、おじさん」

 見た感じ、三十代前半といったところの男がそこに立っていた。

「サラのお知り合いじゃないの?」

 ラピスは首を傾げた。

「おじさん、だれなの?」

 ラズリは声を震わせていた。

「キミ達は、孤児院(ここ)に引き取られながらも家族と共にいるよねぇ」

 男が一歩、部屋の中へと足を踏み込む。

「そんなの他の子たちにしてみれば不公平だよねぇ」

 中にいた他の子供たちもこちらを不思議そうに見つめていた。

「だからおじさんが、平等にしてあげようと思ってねぇ」

 男の肌に、不気味な模様が浮かび上がる。

 男はカメレオンオルフェノクに変身した。

 子供たちは一斉に悲鳴を上げた。

 カメレオンオルフェノクが長い舌を出しサラに襲い掛かろうとした、その瞬間だった。

 スピティに入ってきたもう一人の若い男が、カメレオンオルフェノクの背中に飛び蹴りを喰らわせた。

 間一髪のところで伸びていた舌はサラへは触れずに、カメレオンオルフェノクは床に転がった。

「お兄……ちゃん」

 サラは驚いたように声を上げた。

 若い男というのはウェイクだった。

 ウェイクはサラには何も言わずに、カメレオンオルフェノクの方を向き問いかけた。

「お前、ジャンなのか」

 するとカメレオンオルフェノクの影に青白く人間の裸体が映りだした。

「あれれ、なんでバレちゃってるんですかねぇ」

 その返答は肯定を意味するものだった。

「おふくろを……ミテラを()ったのもお前か」

 ウェイクは続けて問う。

「へへへ、そうだと言ったらぁ? 隊長ぅ」

 カメレオンオルフェノクはウェイクに殴り掛かった。

 その拳を右手で受け止め、ウェイクは怒りの表情を(あらわ)にした。

 そしてその表情に重なるかのように黒い影の筋が走る。

 ウェイクはシャークオルフェノクに変身した。

 シャークオルフェノクは裏拳を繰り出し、カメレオンオルフェノクを部屋の外に叩き出した。

 再びカメレオンオルフェノクが地に転がると、シャークオルフェノクは相手の胸ぐらを掴み上げ、殴りの連撃を喰らわせる。

 そうして地上への通路を進み、やがてカメレオンオルフェノクの身体を外まで押しやった。

「何故おふくろを殺した?」

「いてて、もしかしてお怒りなんですか? 隊長ぅ。あの女は確か、オルフェノクになってしまったアンタを拒絶した人間のはずだ。だから自分の家から追い出したんでしょ? 妹のあの子も一緒にねぇ」

「お前には関係のないことだ」

「俺だってオルフェノクに襲われて、オルフェノクになっちまった内の一人だ!」

 カメレオンオルフェノクは感情的に大声を上げた。

「だから殺したのか?」

 シャークオルフェノクが再び問いかける。

「へへへ、本当だったら今頃アンタが疑われていたはずだ。なんで俺だってバレたのか不思議だけどよぉ。俺はただ隊長の座からアンタを引きずり下してやりたかっただけなのさ。だけどね、人間を殺していく度、段々と心が満たされていくのを知ったんですよぉ」

「やはり、隊の人間を殺していたのもお前か」

「隊長も気の向くままにオルフェノクの力を使いましょうよぉ。解放された気分になれますよぉ」

 シャークオルフェノクはその言葉に耳を貸さず、カメレオンオルフェノクを再び殴りつけた。

「黙ってやられてばかりだと、思うなよぉ!」

 カメレオンオルフェノクは叫ぶと、姿を跡形もなく消した。

 周囲の光を歪ませ、自身の姿が相手の網膜に映らないようにしたのだ。

 次の瞬間、今度はシャークオルフェノクの身体が地に転がった。

 予想だにしない方向から殴られたのだ。

「へへへ、反撃開始ぃ」

 カメレオンオルフェノクの声が響いた。

 

 ゼータはコングオルフェノクを相手に苦戦を強いられていた。

 次から次へと降りかかる剛腕を(かわ)しはするが、中々敵の隙が見つからなかった。

 このままでは埒が明かない――。

 ゼータは連撃を回避し、コングオルフェノクの腹に膝蹴りを入れた。

 だがコングオルフェノクは首を少し傾げた後、アッパーカットでゼータを返り討ちにした。

「――かはっ」

 ゼータの身体は容易く吹き飛んだ。

 それを見てコングオルフェノクは興奮を隠せないかのように自身の胸を連打する。

 強い――。

 考えろ、何か手はあるはずだ。

 ベルトからゼータフォンを取り外し、銃形態にしてコードを入力する。

 106 ENTER

『BURST MODE』

 ――打撃が効かないならば、銃撃に切り替えるまでだ――

 コングオルフェノクが突進してくる。

 ゼータは照準を構え、トリガーを引いた。

 光線銃――フォンブラスターから放たれた青いビームが、コングオルフェノクの頭部に連続ヒットする。

 コングオルフェノクは頭から血が噴き出すかのように青い炎を上げた。

「ウオオオォォォォ!」

 すると慌てて頭を掻き毟り、炎を消した。

 ――頭が弱点か! ――

 怯みながらも接近してくるコングオルフェノクに対し、ゼータは頭部目掛けて回し蹴りを喰らわせる。

 拳で受け止められるが、動きが止まったのを見逃さず、フォンブラスターで追い討ちをかける。

 銃撃を嫌がるようにコングオルフェノクは自分の方から距離をとった。

 その隙を見てゼータは、左腰にマウントされているゼータショットを取り出し、ミッションメモリーを挿す。

『READY』

 そしてパンチングユニットと化したそれをすかさず右手に装着する。

 ゼータの動きを見てまずいと思ったのか、コングオルフェノクは再び接近し殴り掛かってきた。

 ダメージを受けた影響からか大振りになったその攻撃を掻い潜り、ゼータはエンターキーを押す。

『EXCEED CHARGE』

 その電子音声が処刑宣告とも取れることをコングオルフェノクは知らない――。

 相手のラリアットを躱すと同時に、ゼータは心臓が位置する箇所目掛け必殺パンチ――グランインパクトを放った。

Hate your fate.(己が運命を憎め)

 Ζの刻印が現れ、コングオルフェノクは青い炎と共に灰となり消滅した。

 ――スピティへ急がないと……! ――

 辺りを見回すが、プロトスライガーは無い。

 コングオルフェノクとの交戦中にマシンから降ろされてしまったことをゼータは思い出した。

 仕方がないのでそのまま走って急行する。

 

 カメレオンオルフェノクの攻撃は、シャークオルフェノクの予測のつかない方向から襲い掛かった。

 姿が()えないため、闇雲に反撃をしても全て躱された。

「隊長を殺せば、俺が地上の支配者だぁ!」

 喜びの声を上げると、カメレオンオルフェノクは舌を伸ばし、シャークオルフェノクの首に巻き付けた。

 絞まりながらじりじりと体力を奪われていく――。

 シャークオルフェノクにはもう反撃をする体力も残されていない――、そう思えた。

 だが気が付いた時にはカメレオンオルフェノクは激痛に喘いでいた。

 シャークオルフェノクの腕からヒレ状の刃が突き出し、首を絞めている舌を切り落としたのだ。

 次は腹部に痛みが走った。

「どうした? 痛みのせいか、姿が視えているぞ」

 シャークオルフェノクがカメレオンオルフェノクの腹を蹴り上げたのだ。

「図に乗るなよぉ!」

 カメレオンオルフェノクは怒号を上げ、再び姿を消す。

 だが――

 シャークオルフェノクの手からナイフが出現し、カメレオンオルフェノクの身体を切り刻んだ。

「――っ!? 何故だっ! 何故視える!?」

 痛みに耐えかね叫ぶカメレオンオルフェノクに、シャークオルフェノクは答えた。

「お前の舌の切り口からかな、灰が零れているぜ」

 そしてトドメの一撃――。

 カメレオンオルフェノクが最後に見たものは、青い炎が噴き出す自身の身体だった。

 やがて転がっているその首も、身体と共に灰になり消滅した。

 シャークオルフェノクは変身を解き、人間の姿に戻った。

「おふくろ……敵はとった」

 ウェイクは一人空を見上げ呟いた。

 その様子を、スピティの入り口の陰からサラが見ていた。

 ゼータに変身した晶がスピティに着いたのは、ちょうどその時だった。

「ウェイク、オルフェノクは?」

 言ってもゼータ――晶の言葉は、翻訳機を着けているシアがいなければ伝わらない。

 ゼータはウェイクの足元に積もった灰を見て察すると、変身を解いた。

 ――終わったんだな――

 ウェイクは何も言わず、プロトスライガーに乗ると、その場を去った。

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