騎士と狩人と不思議な旅   作:moti-

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はいいろ少女と郷愁の紅玉 - 1

 少年は旅に出た。

 

 先に護衛として同行した行商人への付き添いとして旅に出た。この間の村への移動と同じメンバーだ。

 

「元気ですか」

 

「うん」

 

「どこに向かっているか、わかりますか」

 

「うん。バルバレ」

 

「そうですね。このあと、砂上船に乗り換えます」

 

「知ってる」

 

「フランさんは、バルバレに行ったことがありますか?」

 

「ないよ」

 

「意外です」

 

「そう。少年は?」

 

「僕もありません」

 

「知りたいこと、わかるといいね」

 

「そうですね。フランさんは、旅の間になにかやりたいことはありますか?」

 

「私は……。タンジアに行きたい」

 

「故郷だからですか」

 

「うん。お母さんに会いたい」

 

「どういう方です?」

 

「優しい。喧嘩して、それっきり」

 

「それは……なんというか」

 

「私のせい」

 

「仲直りできるといいですね」

 

「うん。そうだ、もし会えたら、みんなで一緒に御飯を食べたい。お母さん、よくパエリアを作ってくれた。すごくおいしいんだ」

 

「僕たちがいていいんですか?」

 

「うん」

 

 フランは言った。

 

「みんなで食べたほうがいいもん」

 

 

 

 程なくして、砂上船乗り場についた。竜車で運んできた荷を積み、乗り込む。

 

 同業者に声をかける雇い主を見ながら、少年は座り込んで出港を待つ。思えば、そこそこの長旅だった。草原から砂漠の端へと、いくつもの村を経由して向かってきたのだ。

 

 その間、宝玉の正体を知る人はいなかった。謎は増すばかりだ。

 

 少年と違い、フランはふらりとどこかに向かっていった。甲板に出て風でも浴びているのかもしれない。と、考えて自分もそうするべきかと考えた。ゴーグルを持っていないから、目が痛いかもしれないが。

 

「──こんにちは」

 

「こんにちは」

 

 と、そこで声を掛けてくる姿があった。チェーンシリーズの女性である。頭装備は、室内ということで脱いでいるようだ。見るに、ハンターとしてはまだ歴が浅いのだろう。それは少年が言えたことではないのだが。

 

 なんせ、少年はレザーシリーズにハンターナイフなのだから。だが少年はハンターであるが、積極的に狩りに出るタイプではない。そもそも、祖父は「装備に頼るな」という方針で少年に色々仕込んだのだ。

 

 だから、彼はあまり装備を変えるつもりはなかった。今のところは必要十分だ。

 

「ハンターさんですよね?」

 

「はい。あなたもそうでしょう」

 

「はい! といっても、最近なったばかりですけど……」

 

「そうですか。あなたは、どうしてバルバレに?」

 

「えーと……うちの団の人が、ちょっと入用みたいで」

 

「団に入ってるんですね」

 

「ええ。みんないい人なんですよ! ……と、それで、最低限の人数でこっちに向かうことになったんです」

 

「何人で?」

 

「四人です。これ以上は大所帯になっちゃうんで」

 

「そうですか」

 

 少し遠くで、何やら話しているのが彼女の団員だろう。断片的に聞こえる情報から察するに、どうやらなんのアイテムを仕入れるかの話らしい。少年のようなマイペースなハンターではなく、しっかりと狩猟に赴くハンターからすると、アイテムと情報は大切だ。

 

 雰囲気は良いように見える。中々愉快な団に入ったものだ。それは運か、それとも人柄ゆえか。

 

 どちらにせよ、少年とは違い、良好な人間関係が築けているようだ。

 

「あ、自己紹介忘れてました」

 

「そうですね。でも別にいいでしょう」

 

「え?」

 

「人は流れていくものですから。また出会える保証もありません。だったら、思い出だけ残しておくのもいいじゃありませんか」

 

「そういうものですか?」

 

「僕にとっては。それに、僕は旅をしています。また会える確率も低いので」

 

「そうですか? ……じゃあ、こうしましょう。次もしあったら、そのときは自己紹介を」

 

「しない関係っていうのも、素敵なものだと思うんですがね」

 

「でも、したほうがなんか、こう……すっきりするじゃないですか?」

 

「そういうものですか?」

 

「私にとっては」

 

 と、笑って彼女は言った。ひょっとして、少年のマネだろうか。肩をすくめる。

 

 けれど、その返しもおもしろい。フランとの不思議な間の心地よさとはまた違う、知らない人との会話の楽しさ。そういうものを感じる。

 

「そうだ」

 

「?」

 

「あなたは、これを知ってますか」

 

 少年は、ポーチから宝玉を取り出した。強い存在感のそれは、適当にポーチに手を入れても必ず探り当てることができる。

 

「わぁ……綺麗ですね」

 

「わかりません?」

 

「はい。……ああ、だからあなたはバルバレに?」

 

「成り行きもありますけどね」

 

「見つかるといいですね」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 彼女が去ってのち、フランがふらりと戻ってきた。そして少年のとなりに座り、無言で時間が過ぎる。

 

 バルバレへは、まだまだ時間がある。簡単につくほど、大砂漠は狭くない。その間、どうやって時間を潰したものかと考える。

 

「少年」

 

「はい」

 

「外、すごいよ」

 

「そうですか。なら僕も見てきます」

 

「私も行く」

 

「さっきまで見てたんじゃないんですか?」

 

「うん。でも、ひとりとふたりじゃ、ちがうから」

 

「そうですか。なら行きましょう」

 

 そして、甲板に出た。行き来が気楽にできるつくりになっていて、ちらりと人の姿が見える。

 

 少年は、船に乗ったことがない。砂の上を奔る船があるというのも新鮮だ。地平線の向こうには、まだなにもない。

 

「綺麗ですね」

 

「ええ」

 

「船は初めてです」

 

「私は違う」

 

「孤島地方から来てますしね」

 

「飛行船には乗った?」

 

「乗ってないです。そんなゼニーもありません」

 

「そう。今度、乗れたらいいね」

 

「そうですね。それを望みます」

 

「少年は、旅が終わったらどうする?」

 

「気が早いですね」

 

「考えておかないとだから」

 

「そうですか。僕は、旅が終わったらまた旅をします」

 

「その旅が終わったら?」

 

「また旅をします」

 

「ずっと旅をするんだ」

 

「旅も、人生も、変わらないので。旅をして……適当に、いろんなところに首を突っ込みます」

 

 出発前は、不思議な旅になる気がした。出発してから、不思議な旅になった。人と話すことも少なかった少年だが、この旅ではそこそこの人と話している気がする。砂漠などを抜きにし、舌の乾きが早い程度には。

 

「フランさんは、この旅が終わったらどうするんですか?」

 

「終わるの?」

 

「旅ですから」

 

「なら、次の旅についていく」

 

「もったいないですよ」

 

「友達だから。騎士は友達をひとりにしないの」

 

「そういうものですか」

 

「私はそう思う」

 

「なら、僕がひとりじゃなかったらどうしますか」

 

「そのときもついていく」

 

「ひとりじゃありませんよ?」

 

「友達だから」

 

「では、そのつもりで。その旅が終われば?」

 

「次の旅についていく」

 

「長くなると思いますよ?」

 

「旅って、そういうものだから」

 

「そうですね」

 

 甲板を歩いていると、柱の影で踊っている女性を見つけた。

 

「はじめまして」

 

「あ、はじめまして~」

 

「踊っていたんですか」

 

「はい。故郷の、伝統的な舞なんですよ」

 

「それはそれは。素敵ですね」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

「あなたは、どうしてバルバレに?」

 

「どうして……ですか?」

 

 と、少年の問いに、女性は困りげに眉を落として。

 

「同郷のものを探しているのですよ」

 

「だから、舞を?」

 

「はい」

 

「何故同郷のものを?」

 

「知りたいんです、みんながどうしているのか。私はまだ、なにも見つけていませんから」

 

「……どういうこと?」

 

「……黒の凶気って知ってますか?」

 

 と、彼女は言った。

 

 少年もフランも、首を横にふる。初耳だ。

 

「生き物を凶暴にする災厄です。それで、私の故郷はなくなりました」

 

「……すみません」

 

「いえ。もう受け止めたことなので。……私は、かろうじて生き残りました。ハンターさんが逃してくれたので。でも、それ以来、私は何をしていいものかわからなくなりました」

 

 少年は知らない。両親は健在だ。身近でそのようなことが起きたことがない。だから、彼女がどういう思いなのかも、推することしかできない。だから一言、「そうですか」と言った。

 

「……話したのは初めてです。すみません、聞いて楽しいことじゃないのに……」

 

「いえ、こちらのほうこそ、すみません」

 

「話して気が晴れるなら、背負わず話してほしい。全部、私に言っていい」

 

「……フランさん」

 

「私は、騎士だから。騎士じゃないけど。騎士だから」

 

「それだとよくわかりませんよ」

 

 少年は言った。そう言っても、経緯を知らないとわからないだろう。初対面の人に言ってわかるようなことではない。

 

「いえ。でも、これは私の事情ですから」

 

「……そう? なら、わかった」

 

「すみません、せっかく、そういってくれたのに」

 

「じゃあ、こうしよう。バルバレについたら、私たちもあなたの手伝いをする」

 

「え……そんな、悪いですよ」

 

「いいの。こっちの目的も、たぶんすぐに終わる。そうしたらそのあとはしばらく暇があるから」

 

 いいよね? と、少年を見るフランに、頷きで返す。もともと、少年たちの旅は急ぐ旅ではない。

 

 のんびりと、マイペースに探しものをする旅だ。

 

「……じゃあ、お願いしますね。すみません、初対面の人に、こんな……」

 

「うん。任せて。えーと……」

 

 と、フランはそこで首を傾げた。

 

「自己紹介忘れてたね」

 

「あ、すみません! 私、カルザっていいます」

 

「わかった。私はフラン。こっちの少年が……なんだっけ?」

 

「ユエルです。よろしくお願いします」

 

「はい! フランさんに、ユエルさんですね。私のことは気軽にカルザって呼んでください」

 

「では、カルザさんと」

 

「さんもいりませんよ?」

 

「いえ、最近敬語が癖になっちゃって。普通の話し方を忘れてしまいました。構いませんよね?」

 

「あ、はい。それでいいというのなら……。ところで」

 

 と、カルザは少し好奇の色を覗かせて。

 

「おふたりは、どういうご関係ですか?」

 

 少年とフランは顔を見合わせた。

 

「ただの友達ですよ」、としか少年は言えなかった。




 かきだめありません

 モンハンの世界観を調べてみると、今までなんとなくでしかゲームをやっていないんだなーと実感しました。
 普段しない文体で書いているので、かなり一話を書くのに時間をつかっちゃいました。

 あとあらすじ、なんかユエルくんが分身して片方性転換してたので修正しました。見直したはずなんだけどおかしいですね
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