いよいよウルキオラと白一護の完全決着です。
ではどうぞ。
ーーー
その解号と共に黒い雲が空を覆い尽くし、翠を纏った黒い霊圧の雨が降り注ぐ。それはまるで虚無を象徴するかの様に悲しみに濡れ、泣いている様だった。
そして、空を覆い尽くしていた黒い雲が晴れると同時に現れるその姿。
まず目に付くは黒き翼。それは片翼だけで三mを超える巨大さであり、堕天使の如く美しい。
次に、仮面の名残である兜の欠片が四本角の兜へと変容している。帰刃の影響で元に戻ったと言っても過言では無い。それに応じて仮面紋も大きく変わっていた。
そして服装。通常のものと大きく変わり、下部がスカート状のものに変わっている。
最後は虚としての孔。その位置は変わらないが、そこから一直線に血が流れている様に見える。
『黒翼大魔』
それは、麗しき白の堕天使。
ーーー黒き髑髏の仮面を被りし死神に応えんと、虚夜宮の天蓋の上にてその姿、降臨せんーーー
『ハッ、漸くお出ましかよ』
白き堕天使の降臨に、歪な双角の形をした黒き仮面を被った死神、白一護が鼻で笑いながら迎え入れた。仮面の下は凶悪な笑みに染められ、潜む獣の如き本能が煮えたぎっている事が感じ取れる。
「………」
その凶暴性を目の当たりにしながらも白き堕天使、ウルキオラは翠の双眼で静かに見据えていた。
相対するそれは、まるで『激流』と『静水』
『ウォーミングアップは済ませたんだァ。まだ本気すら出してねぇ俺に、テメェがそうでなきゃあこちとらつまらねぇんだよ』
白一護は仮面の下に凶悪な笑みを浮かべつつ、そう語る。それは虚勢では無く、実際に白一護は完全に力を出し切っていない。寧ろ
しかしウルキオラが帰刃したことにより、その必要性が皆無になった。これで漸く己の
「……そうか」
ウルキオラはそれに静かに返答した。そこに動揺など無い。
完全虚化がこの程度である筈が無い。もしもそうであれば、興醒めにも程があるというもの。『剣虚閃』や『盾虚閃』といった対策も立てていないだろう。
『ケッ、抑揚の無え返事だなァ。まあ、確かにお喋りはここまでだなーーー』
ーーーじゃあさっさと殺り合うか。
その言葉を皮切りに両者からの霊圧解放。それだけで大抵の雑魚を屠れる凶悪かつ冷酷な霊圧。
空の上に海が有るかの様な重圧と深き深淵の闇の如き重圧。死と死がぶつかりせめぎ合うそれは世界の終焉を告げている様にしか感じ取れない。
白一護は自然体のまま構えない。黒い天月も下げている状態であり、次の動作が窺えない。
対してウルキオラは右手に霊力と霊圧で光の槍『フルゴール』を形成する。ウルキオラもまた、自然体。
両者が大きく一歩を踏み出す。その足音は終焉をカウントダウンする音。
一歩、二歩、三歩、四歩、五歩と歩きーーー
ーーー五歩目で両者の姿が掻き消えた。
刹那、両者の居た柱が粉々に砕け散る。だがそれだけで無く、辺りに有った柱まで粉々に砕け散って行く。それに加え、刹那の応酬故に依然として両者の姿が視認出来ない。
だが、それであっても互いによる刹那の応酬は止まらない。どちらか片方が武器を振るえば大地が大きく裂け、凄まじい揺れが起きる。互いの武器がぶつかり合えば暴風が吹き荒れ、空間を歪める。
常識を遥かに超えた次元の戦闘に箱庭の有数の実力者、白夜叉がそれを目撃すれば
ーーー二桁以上の魔王同士の戦いを見ている様だとーーー
『ヒャッハアアアアアァァァ!!』
「………」
刹那の応酬の中、白一護は本能のまま戦う事に喜びを感じ奇声を上げる。それでもウルキオラは一言も発さずに戦闘継続だけに集中する。
しかし、刹那の応酬は永遠に続く訳では無い。
状況に僅かな動きが有った。そう、ほんの僅か。
そのほんの僅かだが、押していたのだ。
ウルキオラ・シファーが。
此度の大幅強化、敗北の影響にて彼は大きく成長した。それは帰刃にも然り。
現在のウルキオラの帰刃状態は、以前の刀剣解放・第二階層のスペックを大きく上回っていた。一護の力を得た今、それは以前より比較にならない程に強化されていた。何よりも、敗北の影響で浅知恵などの勝つ為の対策を立てていた事が大きい。そのアドバンテージは直ぐに現れる事になる。
やがて鍔迫り合いによって刹那の応酬が終わり、漸く両者の姿を視認出来る様になった。
だが、刹那の応酬を終えたこの時点でまだ十秒も経っていない。それ程までの超高速戦闘であり、より上位の次元の戦闘へとなっていた。
鍔迫り合いの状態のまま両者は響転を発動し、距離を取る。
その距離を取った一瞬でウルキオラは指先に、白一護は仮面の双角に、両者は虚閃を撃つ準備を既に終えていた。
ーーー【
ーーー『
同時に放たれる巨大な閃光。紅を纏った白き閃光と翠を纏う黒き閃光が衝突し、お互いを喰い尽くさんと拮抗する。以前は紅白の閃光が勝利し、翠を纏う黒き閃光を呑み込んでいた。
だが、今回は違った。
勝る筈で有った紅白の閃光は相手の閃光を呑み込めないでいた。逆に翠を纏う黒き閃光が紅白の閃光を呑み込まんとしていたのだ。
そして僅かに紅白を呑み込んだ翠を纏う黒き閃光は火柱と化し、辺りを火の海へと変貌させる。
そこから白一護が現れ、響転で距離を取り様子を見ていた。そのまま膠着状態が続くかに思われた。
ーーー『
火の海から突如として飛び出して来た斬魄刀程の霊力の剣。その色は『黒虚閃』と同じ翠と纏う黒。それが第三宇宙速度で白一護へと迫り来る。対して白一護は何を思ったのか、左の掌を黒き剣へと
ーーーそして起こる。剣先の形をした黒き火柱が辺りを呑み込み喰い尽くす。
その範囲、威力共に『
「………」
ウルキオラは黒き火柱より離れた空中へ響転で移動してその姿を窺っていた。当然ながら、これで仕留めたとは微塵も思ってはいない。だが、以前の『
徐々に黒き火柱が晴れて行き、様子を窺う事が出来る様になる。そこに姿が露わになった白一護の様子を確認したウルキオラは僅かに眉を顰めた。
白一護が翳した左手の皮膚が僅かに焦げている以外、ほぼ無傷であった。
やはり規格外は規格外か。攻撃性能の高さもそうだが、以前の戦いで『雷霆の槍』を素手で握り潰した事だけは有る。その防御性能も尋常では無い。
やはり『
ウルキオラはそう判断し、己の体内にて幾つもの霊力の塊を作り出すべく収束し始める。この虚閃は発動までに多少の時間を要する為、その間は攻撃を凌ぐ防戦一方になる。
『クハッ! 帰刃でこの程度かァ!? 温いなァ!!』
当然白一護がそのチャンスを逃す筈も無く、響転にてウルキオラへと肉薄し、再び武器同士の鍔迫り合いとなる。そして互いが響転を使う刹那の応酬へと再び発展する。
姿が視認出来ない超高速戦闘は先程よりも過激さを増していた。
白一護がたった一振りで幾つもの【一閃月牙】を作り出し、ウルキオラへと襲い掛かる。それをウルキオラは三mと巨大な黒き翼を羽ばたかせる事で掻き消して行く。
一方でウルキオラは白一護が動くであろうポイントを先読みし、響転で死角から『フルゴール』を振るう事で防戦でありながら押される気配を感じさせない。
『今と言いさっきと言い相変わらずチマチマした攻撃だなァ!!!』
その戦法が気に入らないのか、白一護は凶暴な笑みでその攻撃を巧みに躱して行く。獣の様な動きでありながら無駄の無いその動きは何処か美しさすら感じさせられる程だ。
『オラァァッ!!!』
「………」
白一護の怒号と共に黒き天月が振り下ろされ、ウルキオラごと『フルゴール』を吹き飛ばす。これによって距離が空き、二度目の刹那の応酬は終わりを告げる。
『ーーーーー』
そして続け様に白一護が虚閃を撃つ準備を終え、ウルキオラに向かって放たれる。丁度動きを止めたウルキオラがその閃光を認識した時には既に目の前にまで迫っていた。
ウルキオラはそのまま紅白の閃光に呑まれて行った。
以前の戦いの時は止めとして放たれ、内臓を全て消し飛ばされて重傷を負った。それが原因となりウルキオラの霊力は底を尽き、消滅していったのだ。
ウルキオラに多大な打撃を与えた虚閃が再び直撃してしまう事になった今、どれ程の傷を負うのかは分からない。
そして紅白の閃光が徐々に消え、ウルキオラの姿が露わになって行きーーー
「………」
ーーーその場には
黒き翼を用いた防御。
『……無傷だァ?』
その結果に白一護は仮面の下の凶暴な笑みを崩し、訝しむ様な表情へと変わる。星を砕く威力を持った閃光が無傷で防がれたのだ。これで表情を崩さないのであれば、それは異常だ。
そこでウルキオラが静かに言葉を発する。
「……この戦いの結末は既に貴様も悟っている筈だ。
貴様の虚閃を俺が無傷で防ぐ事も、貴様にとっては予想の範囲内だろう」
『……』
ウルキオラの言葉に、白一護は何も言わない。否、言う必要が無い。
彼は本能で戦いながらも、相手が己よりも上回っている事など既に悟っているのだから。
例え白一護が天月でウルキオラを直接切り裂こうとしても、それは僅かに斬った程度でしかならないだろう。それ程までにウルキオラの全体的性能は上昇していた。
だが、やはり完全虚化は本当に規格外であった。『雷霆の槍』を上回る威力を持った『剣黒虚閃』を僅かに皮膚を焦がすだけで凌ぎ切ったのだ。冷静であったとはいえ、思わず眉を顰めてしまう程のものであった。
「……だが、やはり貴様は紛れもない強者だ。この俺ですら一度は敗北したのだ。強者と認めない道理が無い」
『……ケッ、ご丁寧なお世辞をどーも』
ウルキオラは嘘偽り無く白一護を称賛する。ウルキオラを超えた強者であったからこその敬意でもある。白一護は半ばやけ気味に応えていたが。
「そして、強者である貴様に勝つ為に生み出した虚閃の一つを、敬意を持って貴様に撃たなければなるまい」
『ハッ、そうかよ。なら見せて貰おうじゃねえか』
ウルキオラの勝利宣言とも取れるその台詞に、白一護は嘲笑しながらその場を動かない。受け止める気である。
その様子を見たウルキオラは、指先を白一護へと向け、莫大な霊力を収束させーーー
ーーーウルキオラの周りに
ウルキオラが『
それ故に、絶大な威力を誇る。
嘗て、尸魂界に八代目『剣八』を襲名した死神がいた。そして、護廷十三隊の十一番隊隊長の座についていた。
彼は鬼道に長けた貴族の出身であり、鬼道を主とした戦闘を得意とし九十番台の鬼道すらも使い熟す腕前であった。
その彼が編み出した技が『九十番台の鬼道の数十〜数百発同時発動』である。
義骸を操り一斉発動することによって可能となるその技は余りにも悍ましく、彼にしか扱えないものであった。
ウルキオラはそれを知ってか知らずか、完全虚化に通用する為の虚閃は『一撃必殺』ではなく『一撃必殺の一斉掃射』しか無いと、考え抜いた末に出した結論だった。
そして今、
ーーー『
白一護へと一斉掃射された数百もの『黒虚閃』。 それは絶大な威力という範疇を超えた虚閃であった。
星を砕く一撃が数百という数の暴力で蹂躙して来るのだ。範疇を超えても可笑しくは無い。
『……ケッ、何だよ。結局は数の暴力じゃねえか』
白一護がそう言葉を漏らす。だが、白一護にはそれに対応する手段が何一つとして無かった。
即ち敗北、である。
『まァ良いかァ、こちとら楽しませて貰ったんだァ。認めてやるよォ! 卍解に相応しいヤツとしてなァ!!!』
数の暴力である黒き閃光が白一護へと迫る。その中で、彼はウルキオラを卍解の使用者として認めた。その際に、白一護がその手に持っていた黒い天月をウルキオラへ投擲する。
ウルキオラは此方へ飛んで来た黒い天月を掴み取り、その翠の双眼を持って白一護へ向き合った。
『また機会が有ったら殺り合おうぜェ! ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!』
数の暴力に呑み込まれる寸前、白一護がウルキオラにそう言い放ち、奇声を上げる。それは断末魔などでは無く、獣の本能のまま愉しんだ彼の満足感によるものであった。
ーーーそして、
「………」
ウルキオラは静かにその最後を見届け、投げ渡されたその黒い天月を手に翠の双眼で映し出すのであったーーー
ウルキオラの開発した新たな虚閃
『剣黒虚閃(グラディウス・セロ・オスキュラス)』
『剣虚閃』と同じ扱いだが、剣の色は翠を纏った黒となっており、威力と攻撃範囲が二回りほど上昇している。
『多重虚閃(マルチプル・セロ)』
完全虚化を打ち破る方法を考え抜いた末に『一撃必殺の一斉掃射』という結論を出したウルキオラが開発した恐らくこの作品中最強の虚閃。
虚閃を数十〜数百発同時に撃つコンセプトで開発され、内側で一度に数十〜数百発分もの虚閃を撃てる霊力・霊圧を作り出し、全方位もしくは一方向へ一斉掃射する。これは虚閃だけに限らず、『王虚の閃光』や過去に開発した虚閃であっても可能。
但し、一度に全体の約二分の一の霊力を消費する為、効率は非常に悪い。
帰刃状態だと『黒虚閃』を一斉掃射する凶悪なものへと変わる。
とゆー事で完全決着ですハイ。
まあいささか急展開だったのかも知れません(汗
因みに『多重虚閃(マルチプル・セロ)』の元となったのはこの話でも出て来ていた八代目『剣八』痣城剣八の義骸を用いての『九十番台の鬼道の数十〜数百発同時発動』です。
小説版に登場するキャラクターなのですが、とんでもないチート死神です(白目
ブラック・ブレットとのクロスについてはプロットを作成している途中です。それに応じて小説全巻買いました。あと漫画も。
とはいってもまだ一話目の一文字すら書いていないんですけどね(汗
ブラブレとのクロスは本当に(予定は未定を却下して)やるつもりなので、投稿する時まで待っていてくれれば幸いです。
では、次回にて。