第4十刃が異世界に来るそうですよ?   作:安全第一

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およそ二ヶ月半ぶりの更新……
今まで待っていて下さった読者様方、申し訳ないです……m(_ _)m


14.吸血鬼

「ゲームが延期?」

 

 その報を聞いたのは、ウルキオラが卍解を習得し“ノーネーム”本拠へ帰って来た次の日の事だった。

 どうやら黒ウサギが申請に行った先で知ったらしい。このまま中止の線もあるらしく、彼女は泣きそうな顔をしていた。それを証拠にウサ耳が萎れてしまっている。

 十六夜は面白くないとばかりにソファーに寝そべった。その場に居合わせていたウルキオラは特に何も思ってはいない。ゲームに参加するとはいえ、そこまで重要視していなかった。

 

「なんてつまらない事をしてくれるんだ。白夜叉に言ってどうにかならないのか?」

「どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手が付いてしまったそうですから」

 

 それを聞き、十六夜の表情は不快なものに変わる。別に人の売り買いに対する不満では無く、ゲームの景品として出されたものを大金で買ったからと言って取り下げるのはホストとしてベストではないからだ。十六夜は盛大な舌打ちまでした。

 

「チッ、所詮は売買組織ってことかよ。エンターテイナーとしちゃ五流もいいところだ。“サウザンドアイズ”は巨大なコミュニティじゃなかったのか? プライドはねぇのかよ」

「仕方がないですよ。“サウザンドアイズ”は群体コミュニティです。白夜叉様のように直轄の幹部が半分、傘下のコミュニティが半分です。今回の主催は“サウザンドアイズ”の傘下コミュニティの幹部、“ペルセウス”。双女神の看板に傷が付く事も気にならないほどのお金やギフトを得れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう」

 

 曰く、ゲームの景品となっている仲間を所有しているのは“ペルセウス”というコミュニティらしい。達観した物言いの黒ウサギだが、恐らく十六夜の何倍も悔しさを感じている。

 だが幾ら理不尽だと喚いても仲間は戻らない。この世界は箱庭であり、ギフトゲームは絶対の法律だからだ。日本の様に裁判所に直訴など出来るはずも無ければ、第三者が高が“ノーネーム”の為に動く事も無い。仲間を取り戻したければ箱庭の法律であるギフトゲームでしか方法は無いのだ。今回は純粋に運が無かったのだと諦めるしかない。

 

「ま、次を期待するか。ところでその仲間ってのはどんな奴なんだ?」

「そうですね………一言でいえば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいに肌触りが良くて、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのですよ!」

「へえ、よく分からんが見応えはありそうだな」

 

 嘗て同じコミュニティに属していた仲間をそう誇らしげに語る黒ウサギ。余程彼女の憧れとして存在していたのだろう。誇らしげに語る黒ウサギは嬉しそうな表情でもあった。十六夜もその仲間に興味を抱いた様だ。

 その二人の会話の中で、ウルキオラはもう一人誰かが居る事に気が付いていた。なのだが、霊圧としてはそこまで大きくないものだった。

 

「黒ウサギより先輩で三年前のコミュニティだった時もとても可愛がってくれました。せめてギフトゲーム前にでも一度お話したかったのですけれど……」

「その必要は無い」

「……え?」

 

 若干後悔した表情で言う黒ウサギをウルキオラがそう言った。彼の言葉に黒ウサギの頭の上には疑問符が浮かび上がっていたが、それは直ぐに解消される。

 

「ふふ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」

 

 突如として女性の声が黒ウサギのウサミミに聴こえて来る。女性というよりも幼い少女の様な声だったが、黒ウサギはその声の主が誰なのか直ぐに解った。

 窓の外を見ると、コンコンと叩く硝子の向こうでにこやかに金髪の少女が浮いていた。その事に黒ウサギは飛び上がって驚き、急いで窓に駆け寄った。

 

「レ、レティシア様!」

「様はよせ。今の私は他人に所有される身分。“箱庭の貴族”ともあろう者が、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」

 

 黒ウサギが窓の錠を開ける。その開いた窓からレティシアと呼ばれた金髪の少女は苦笑しつつ談話室に入った。

 その姿は、美麗な金の髪を特注のリボンで結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿させるロングスカートを着ていた。しかし体型が小さいその身体は黒ウサギの先輩と呼ぶには些か幼く見えた。

 

「いきなりとはいえ、こんな場所からの入室で済まない。ジンに見つからずに黒ウサギと会いたかったんだ」

「そ、そうでしたか。あ、直ぐにお茶を淹れるので少々お待ち下さい!」

 

 久方ぶりに仲間と会えたのが嬉しかったのか、黒ウサギは小躍りするようなステップで茶室に向かって行った。

  そしてレティシアは十六夜とウルキオラの存在に気付く。ウルキオラは此方に見向きもしていないが、十六夜は自分に奇妙な視線を向けており、レティシアは小首を傾げる。

 

「どうした? 私の顔に何か付いているか?」

「いいや別に。前評判通りの美人……いや、美少女だと思ってな。目の保養に観賞してた」

 

 そんな台詞とは裏腹に真剣に回答する十六夜が可笑しかったのか、レティシアは心底楽しそうな笑い声で返した。そして口元を押さえながら笑いを噛み殺し、上品に装って席に着いた。

 

「ふふ、成る程。君が十六夜か。白夜叉の話通りに歯に衣着せぬ男だな。それと隣の者は……」

「ああ、俺の隣に居るのはウルキオラだ。俺を含めて、ノーネームに新しく入った四人の中で最も強いぜ?」

「ほう、君が白夜叉の言っていたウルキオラ・シファーか。元・魔王の白夜叉にただ一人決闘を申し込み互角以上の戦いを繰り広げたと聞いているよ」

「……そうか」

 

 レティシアが微笑を浮かべ、ウルキオラを見る。そしてウルキオラのその病的にまで白い肌を見て興味を抱いた。

 

(凄いな。私の肌もそれなりに白いのだが、彼はそれ以上だな。白色とは正に彼の為にあるようだ……)

 

 箱庭を長い間生きて来たが、ここまで白色の肌を持った者は見た事が無かった。出来ればもっと近くで観賞していたい程にそれは美しかった。

 

「どうした? ウルキオラに見惚れたのか?」

「む、しまった私としたことが……。 いやなに、彼の肌の白さは今迄見た事が無くてな。つい凝視してしまった」

「皆さーん、紅茶を淹れる準備が終わりました〜」

 

 どうやら自分は長いこと見続けていたらしい。我に返り、ウルキオラから視線を外した。そこに紅茶のティーセットを持って黒ウサギが戻り、一つずつ紅茶を淹れ始める。

 

「まあ、俺もあんなに白い肌をしたヤツを見た事が無いからな。観賞したくなるのも無理は無いだろ」

「しかし観賞するなら黒ウサギも負けてないと思うぞ。あれは私やウルキオラとは違う方向性で見る価値が有ると思うが」

「いやいや、あれは愛玩動物なんだから観賞するより弄ってナンボだろ。主にメイド服を着せるとか」

「確かに、それは否定しない。メイド姿も普通に似合うだろうな」

「否定してください! それとメイド服も着ませんっ!」

 

 そんな会話に紅茶を淹れながら黒ウサギが口を尖らせて怒る。しかも怒りながら正確に紅茶を淹れているという器用さを発揮している辺り、普通にメイドも似合いそうである。

 

「全くもう……。そ、それでですがレティシア様、どのようなご用件ですか?」

 

 紅茶を淹れ終え話題を戻す。自身でも言っていたが、レティシアは他人に所有される身分。その彼女が此処に来たという事は、恐らく自分の意志で此処に来たという意味だ。それに主の命も無く来ているのだから、それ相応のリスクを負っている筈だ。

 そして会いに来たのがリーダーのジンではなく黒ウサギ。何かしらジンに聞かれては拙い話なのだろう。レティシアは苦笑して首を振った。

 

「用件というほどのものじゃないさ。新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか、それを見に来たんだ。ジンに会いたくないというのは合わせる顔が無いからだよ。お前達の仲間を傷付ける結果になってしまったからな」

 

 ウルキオラも昨夜知った事だが、ガルドとのギフトゲームにて、耀が負傷している。幸いにも命に別状はないものの、今もベッドの上だ。とはいえ、あと一日経てば全快という所まで来ているので問題無いだろう。

 そして一通り話を聞く限り、レティシアはどうやら吸血鬼の純血らしい。この箱庭では吸血鬼は“箱庭の騎士”と称されている様で、あまり数はいないそうだ。

 

「吸血鬼? ああ成る程、だから美人設定なのか」

「は?」

「え?」

「……」

「いや、独り言だ。続けてくれ」

 

 話を聞いている途中でこんな会話もあったとか。

 

 

 

「実は黒ウサギ達が“ノーネーム”としてコミュニティの再建を掲げたと聞いた時、私は憤っていたんだ。それがどれだけ愚かな真似で、どれだけ茨の道かお前が分かっていないとは思えなかったからな」

「……レティシア様」

「コミュニティを解散するよう説得する為、漸くお前達と接触するチャンスを得た時、看過出来ぬ話を耳にした。神格級のギフト保持者や、星霊級並みに強大な力を持った者が黒ウサギ達の同志としてコミュニティに参加したとな」

 

 黒ウサギの視線が十六夜とウルキオラに移る。恐らく白夜叉にでも聞いたのだろう。

 実を言うと、四桁に本拠を持つ“階層支配者”の白夜叉が最下層である七桁の外門に足を運んでいた理由は、秘密裏にレティシアを此処まで連れてくる為だったりする。

 

「そこで私は一つ試してみたくなった。その新人達がコミュニティを救えるだけの力を秘めているのかどうかを」

「結果は?」

 

 黒ウサギが真剣な眼差しで問う。しかしレティシアは苦笑しつつ首を振った。

 

「生憎だが、ガルド程度では当て馬にもならなかったよ。ゲームに参加した彼女達はまだまだ青い果実で判断に困る。唯一分かっているのはウルキオラが白夜叉並みの実力者という事だけだ。それだけでも安心しているのだが、さて。私はお前達に何と声を掛ければ良いのか……」

 

 またもや苦笑するレティシア。彼女の胸に去来しているのは黒ウサギ達に対しての心配や申し訳なさ、そして後悔でもあり様々な感情が渦巻いていた。

 それをウルキオラは興味深そうに見ていた。

 

(……奴隷の身になっても尚、嘗ての仲間を気に掛ける。此れもまた、『心』有るが故のものなのか───……)

 

 ウルキオラが嘗ていた組織である十刃では、仲間などという言葉は無い。全てが仮初めの仲間であり、唯一仲間という傾向が有ったのは第1十刃であるスタークとその従属官のリリネットぐらいだ。あれは仲間というより家族の様なものだったが、それはウルキオラには解らないものだ。

 ウルキオラが自らの思考に入っている間にも話は続く。

 

「違うね。アンタは言葉を掛けたくて此処に足を運んだんじゃない。黒ウサギや俺達が今後、自立した組織としてやっていける姿を見て、安心したかっただけだろ?」

「……ああ、そうかもしれないな」

 

 レティシアは十六夜の言葉に首肯する。しかしガルドを仕向けたものの、彼女の目的は果たされずに終わった。飛鳥や耀は十六夜ほど力が有る訳では無いが、ずば抜けた才能が有る。だが彼女達の才能はまだ原石のまま。それでは及第点とは行かず、今後のコミュニティを任せるには至らない。しかしコミュニティを解体して新しく作らせようと諭す段階は既に過ぎてしまったのだ。“フォレス・ガロ”を打倒した時点でもう手遅れなのだから。何もかも中途半端となってしまった彼女の目的は最早行き先が分からない途切れたレールだ。

 自嘲が今だに拭えないレティシア。そこに十六夜が軽薄な声で提案をする。

 

「だがその不安、払う方法が一つだけ有るぜ」

「何?」

「ああ、実に簡単な話だ。アンタは新しく立ち上げた新生“ノーネーム”が魔王を相手に戦えるか不安で仕方ない。それならその身で、その力で試せば良い。───どうだい、元・魔王様?」

 

 そう提案し、十六夜は立ち上がる。レティシアはその言葉の意味を理解すると一瞬唖然となるが、直ぐにそれは笑い声へと変わった。

 

「ふふ……そうか、成る程。それは思いつかなんだ。実に分かりやすい。下手な策を弄さず、初めからそうしていればよかったなぁ」

「だろ?」

「ちょ、ちょっと御二人様?」

 

 黒ウサギの制止も聞かず、十六夜と同様にレティシアも立ち上がる。そしてそのまま笑みを交わした二人は窓から中庭へと飛び出してしまった。

 

「あーもう! 一体何なのですか!」

 

 黒ウサギも二人の後を追う形で中庭へと飛び出す。

 

「……単純な奴らだ」

 

 丁度自らの思考から離れたウルキオラはそれを見て溜息を吐いた。勿論ウルキオラも窓から出て後を追ったが、飛び出す事はせず普通に歩きながらゆっくりと後を追った。

 

 

 ウルキオラが中庭へ着く頃には、十六夜とレティシアが対峙する形で向かい合っていた。

 近くに居た黒ウサギの話によると、これから力試しをする様だ。ルールはシンプルで、双方が共に一撃ずつ撃ち合い、そしてそれを受け合うらしい。要するに最後まで地に足を着けて立っていた者の勝ちという訳だ。

 

「だ、大丈夫なんでしょうか……」

「………」

 

 黒ウサギが心配するのも仕方が無いだろう。なんせ黒ウサギの先輩であるレティシアは魔王との戦いで勝利した経験の有る実力者だ。この箱庭に召喚されたばかりの十六夜では勝つ見込みは薄いだろう。

 だが、ウルキオラはレティシアの力の雰囲気に違和感を感じていた。黒ウサギが語るレティシアは元・魔王という事もあって神格持ちなのは明白だ。しかし当の本人からはその様な神性を感じ取れなかったのだ。隠している可能性も有るだろうが、探査回路(ペスキス)を使っても感じられなかったのでそれは低いとウルキオラは踏んでいた。

 

 お互いに身構える二人。黒い翼を展開したレティシアが制空権を支配する。そしてレティシアがギフトカードを取り出し、そこから長柄の武具、つまりランスが現れた。

 

(……矢張りそうか)

 

 その時点でウルキオラがレティシアから感じていた違和感は明らかになった。

 

 ランスから特別何かを感じさせるものが無かったからだ。

 

(……奴隷の身に成り下がっている奴の事だ。恐らく此処に来る際に何かを犠牲にしている筈だ。だとすれば奴の保有しているギフトの大半が失われている可能性も無くはないか)

 

 先程も述べていた様に、レティシアは此処に来る際に何かしらリスクを負っている。それが此れだ。

 実際に神格を失っているレティシアが十六夜を倒す事は無い。何故なら十六夜はその身で神格持ちを倒したからだ。

 当然、吸血鬼という種族だから並外れた膂力を持っている。それも“箱庭の騎士”と謳われたレティシアは並みの吸血鬼よりもずっと強い。投擲用とはいえ、何のギフトも付加されていないランスをただ投げ放っただけで空気中に視認出来る程の巨大な波紋が広がるぐらいには。

 

「ふっ───! ハァア!!!」

 

 怒号と共に放たれた流星の如き一撃が十六夜に迫る。

 だが目の前にいる少年、逆廻十六夜には程度が知れるものだった。

 

「ハッ───しゃらくせえ!」

 

 ───殴りつけた(・・・・・)、唯それだけだった。

 

「「───なっ……!?」」

「……ほう」

 

 素っ頓狂な声を上げる黒ウサギとレティシア。ウルキオラだけは関心していた。まさか殴って迎撃するとは思わなかったのだ。

 それも十六夜の一撃は山河を砕く威力。当然ながら唯のランスが耐えられる筈も無くひしゃげて鉄塊と化していた。加えて第三宇宙速度で散弾銃の様に凶器となってレティシアに迫るのだからたまったものでは無い。

 

(ま、拙い……!)

 

 散弾銃と化したそれを回避しようとするレティシア。だが身体が思考に追いつかない。

 

(こ……これ程とはな……)

 

 目の前で体験した十六夜の才能は噂通り、いや噂以上だった。実際に対峙したレティシアだから解った。新しく加入した十六夜達ならば、新生ノーネームを任せられると。同時に安堵した彼女は血みどろとなって落ちる覚悟を決めた。しかしそれを許さない者が居た。

 

「レティシア様ッ!」

 

 限々(ぎりぎり)まで迫った鉄塊を黒ウサギが一瞬でレティシアに肉薄するとそれをすべて叩き落し、レティシアを抱きかかえる。

 

「く、黒ウサギ! 何をする!」

 

 レティシアが声を上げる。だが黒ウサギがレティシアを抱きかかえる事に対してでは無く、別の事に対してだった。

 黒ウサギが手に持っているのはレティシアのギフトカード。そこに浮かんでいる文字を見つめる黒ウサギは悲しげな表情を浮かべた。

 

「ギフトネーム・“純潔の吸血鬼(ロード・オブ・ヴァンパイア)”………やっぱり、ギフトネームが変わっている。鬼種は残っているものの、神格が残っていない」

「っ……!」

 

 その事実に顔を背けるレティシア。成る程な、と十六夜はそう言いながら呆れた様に肩を竦める。

 

「どうりで手応えが無かった筈だぜ。あの滝に居た白ヘビの方がもう少し派手だったからな。そういや元・魔王様のギフトって吸血鬼のギフトしか残されてねえの?」

「……はい。先程の様に武具は多少残しているものの、レティシア様自身に宿る恩恵は……」

 

 黒ウサギが弱々しい声で十六夜の質問に答える。レティシアが此処に来たリスクがそれ程までに大きかったとは思わなかった彼女は少しショックを受けていた。

 十六夜はウルキオラの方に視線を移し、問い掛ける。

 

「まあウルキオラは初めから気付いてたんだろ?」

「……当然だ。最初の気配で既に察していた」

 

 そう答えたウルキオラは何故か屋敷とは別の方向へと歩き始めた。

 

「おい、どうした?」

「……お前は気付いていないのか?」

「は?」

 

 十六夜が訝しげに言った瞬間、ウルキオラは空の方向へ指を向ける。

 

 

 

 ───そして莫大な霊力の収束が始まった。

 

 

 

「ウ、ウルキオラさん!?」

「……何をしようとしてんだ?」

「……な、何だあれは……!」

 

 ウルキオラを除いた三人が彼の突然の行動に驚きを隠せなかった。但しレティシアだけは違った。

 魔王と戦いを経験したからこそ解る。ウルキオラが放つ力の雰囲気は間違いなく星霊級のものだ。そこにレティシアは驚いたのだ。

 

(この力の奔流……! まるであのアジ=ダカーハがそこに居るかの様だ……!)

 

 嘗て対峙した最強の魔王を思い出す。それ程までにウルキオラの力は強大なものだった。

 

「! あれは!」

 

 黒ウサギが声を上げる。三人が空の方向へ顔を向けると遠方から褐色の光が射し込んだ。レティシアはハッとして叫ぶ。

 

「あの光は……ゴーゴンの威光!? もう見つかったのか!」

 

 射し込んだ褐色の光はそのまま四人を襲おうと迫り来る。レティシアはせめて三人だけは、と自らを盾にしようと駆け出そうとした。

 

 

 だがそれよりも先に───

 

 

虚閃(セロ)

 

 

 ───翠が褐色を呑み込んだ。

 

 

 それは呆気なかった。拮抗すら無く翠が一面を覆い、余波が地を震わせる。

 

 そして翠の閃光が徐々に小さくなり、消えて行く。そこにはゴーゴンの威光など後欠片も無く消滅していた。

 

「馬鹿な……、ゴーゴンの威光は石化の類だぞ……。なのにそれを無効化して更に消し飛ばしただと……!」

 

 レティシアは目の前の現実に戦慄した。あのゴーゴンのギフトをいとも容易く打ち消すなど安易では無い。

 彼女は此方に向いているウルキオラの背を見る。一瞬だけ、その姿が最強の魔王と重なった。

 

(……下手をするとその魔王すらも超えかねないな、彼は)

 

 レティシアの額から冷や汗が一筋だけ流れる。それにレティシアが気付く事は無かった。

 

「………」

 

 レティシアを戦慄させた張本人であるウルキオラは先程ゴーゴンの威光が発せられた場所の地を見ていた。

 そこには兵士の風貌をした者達が虫の息の状態で倒れ伏していた。

 

「おい、こりゃあ何だ?」

「……恐らくあの吸血鬼を所有している者の差し金だ」

「……いつから気付いてたんだ?」

「……貴様と吸血鬼が力比べを始めた頃からだ」

「……!」

 

 既にあの時から此処に侵入していたとは思わなかった十六夜は驚愕する。だが兵士が此処にいつ侵入したかという事では無く、ウルキオラがその時点で既に気付いていたという事実に。

 

「……この塵共が持つギフトは姿を消す類のものだ。特殊な技術でも無い限り、此方が気付く事は困難だろう」

「……そうかよ」

 

 またウルキオラにしてやられたと感じ、内心で痛烈な舌打ちを打つ十六夜。人並み以上の五感を持った十六夜ですら気付かなかったのだ。流石に屈辱感などは無いが、多少なりとも悔しく思っていた。

 

(クソッ、こいつを超えると言う目標を立てておきながらいきなりこれかよ。こりゃあ想像以上に険しい道のりになりそうだぜ……)

 

 だが幾ら悔しく思っても仕方が無い。今は目の前に倒れ伏している兵士達をどうするか考えるのだった。

 

 

 




オリジナルの話を作るのってこんなに難しかっただろうか?
ブラブレでウルキオラのイニシエーターの話にここまで行き詰まるとは……(汗
4000文字ぐらい書いてボツにしたネタが既にニ、三個。
唯一完成している話でさえ15000文字以上という過去最長の話。
大丈夫なんだろうか私……(気絶寸前
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