第4十刃が異世界に来るそうですよ?   作:安全第一

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更新が遅れて申し訳ありません。
大学の合宿の最中でしたので、これからも不定期更新となります。
こんな駄作者ですが、お許し下さい。


7.決闘後

「い、幾ら何でもやり過ぎなのですよおぉーーーッ!!!」

 

 黒ウサギが叫び、彼女の持つハリセンがウルキオラの頭を捉えようとした。

 

「煩い」

 

 サクッ、という軽い音と共に彼の斬魄刀の刃先がハリセンに突き刺さる。そしてそれを横に斬る事でハリセンを真一文字に斬り裂いた。

 

 ハリセン一号が犠牲になった瞬間である。

 

「く、黒ウサギのハリセンが……」

 

 自身のツッコミが迎撃されハリセンが犠牲になった事実に両手と両膝を地に付けて落ち込む黒ウサギ。そして見事なまでにツッコミ迎撃スキルを発揮したウルキオラはそれを冷たい目で見据えていた。

 

「な、だから言ったろ? ウルキオラに対して考え無しでツッコミを入れるなって」

「……はい」

 

 黒ウサギの落ち込む姿をニヤニヤと笑みを浮かべながら十六夜が言う。その言葉に全く反論出来ない黒ウサギは唯々肯定するしか無かったのであった。

 

「まあ、黒ウサギの気持ちは分からなくはないな。何せさっきの一撃でゲーム盤が崩壊したんだからな。正直死ぬかと思ったぜ」

「ええ、十六夜君の言う通りよ」

「うん」

 

 その十六夜のフォローに便乗する飛鳥と耀。表情に出さずとも、その声音は少々不機嫌な感情が込められていた。

 

 

 

 ウルキオラと白夜叉が放った閃光は(まさ)しく星を砕く一撃。その閃光がお互いに衝突した時の余波にゲーム盤自体が耐えられる筈もなく、空間に次々と亀裂が入り崩壊した。ゲーム盤が崩壊した事により決闘は強制中断、結果的に引き分けという形に終わった。

 ウルキオラはその事に関して不満を漏らす事は無かった。決闘に関してはウルキオラが終始圧倒していた事は誰から見ても揺らぐ事は無い。それに彼は勝敗に囚われる様な戦闘狂(バトルジャンキー)では無いのは間違い無いし、彼が勝敗として捉えていたのは黒崎一護との戦いだけだ。

 それよりも彼の頭の中に浮かんだ疑問はこの斬魄刀“天月”と“月牙天衝”だ。

 何故この技が撃てるのかは一切不明だ。だがウルキオラにはその証拠を掴む手掛かりを知っていた。

 

 斬魄刀が始解や卍解を解放する為には己の精神世界に入り、自身の斬魄刀との対話をする必要がある。卍解は兎も角、始解はその対話によって“名”を聞き出す事は必要不可欠だ。しかし、ウルキオラの斬魄刀は既に始解に目覚めており、彼自身も斬魄刀の“名”を知っている。

 思考すればする程、益々謎が浮かんでしまう現状にウルキオラは内心で舌打ちをしていた。だがそれを解決する方法が有るだけまだマシな部類だと思い、思考を打ち切った。

 

 今は目の前の問題に視点を移さねばならない、と。

 

「して、私とおんしの決闘は中断となった訳だが……その力の出処を是非とも知りたいものだの」

「黒ウサギも同じでごさいます!」

「ああ、あれ程とんでもねえ力が何処から来ているのかは俺も知りたいな」

「あら、それは私も同じよ」

「うんうん」

 

「………」

 再び白夜叉の私室に戻った部屋で、ウルキオラは一対五の状態で問い詰められていた。その鬱陶しい五人の視線にウルキオラは不快な表情を作り、訊き返す。

 

「……何故知る必要が有る?」

「ふふ、あの決闘の時におんしは十刃やら虚夜宮(ラス・ノーチェス)やらと不思議な単語を言っておっただろう? それが気になっただけだの」

「まあ、俺はウルキオラが何らかの組織に所属していた事は予想していた。その組織の事を是非とも教えて貰いたいな」

 

 迂闊だ、とウルキオラは内心で舌打ちを打つ。十六夜は兎も角、白夜叉との決闘で余計な事を口から零すべきでは無かったと思っていた。それもこの様な面倒臭い事になるなら尚更だ。

 

「断る」

「それは何故?」

「態々教える必要が無い。例え貴様らが知ったとして得な事など一つも無い」

 

 ウルキオラはそれを断固として断った。理由を聞かれても以上の理由から話そうとしない。

 そしてそれを見ていた飛鳥は我慢がならず、思わず立ち上がりウルキオラに命令した。

 

「〜〜〜もう! 焦れったいわね! つべこべ言わずに教えなさい(・・・・・・・・・・・・・)!」

 

 飛鳥から発せられた言霊はウルキオラに響き、その固い口を開かせて喋らせる。

 

 筈だった。

 

「……所詮はその程度の力だ。俺には通じん」

「!? そんな!」

 

 ウルキオラの口から喋らせるつもりであったソレは彼に対して全く通用しなかった。初めて自身の力が通じなかった事に飛鳥は驚愕する。

 第一、ウルキオラは星霊に匹敵する力を有しているのだから、通じない事は必然である。

 

「……私の力が通じなかったのは貴方が初めてよ」

「……見た所、その力はお前の霊格に比例している。お前より格下の相手ならば幾らでも通じるが、格上の場合それは意味を成さない。精々、相手を見誤らない事だ」

「………」

 

 ウルキオラの忠告に冷水を浴びせられた様な感覚を得た飛鳥は黙り込み無言で座る。

 それを見たウルキオラは視線を白夜叉に向ける。その目には呆れていると言う感情が籠っていた。

 

「……癪な話だが、有る程度の範囲ならば教えてやる」

 

 ウルキオラは諦めたかのような声で了承する。正直、この情報から自身に不利益を齎す事はしたくない。だが、此方側が妥協しなければこの五人は永遠にしつこく聞いて来るだろう。常に付き纏われるよりも有る程度の餌を与えて離れさせる事の方がメリットが有る。これがウルキオラの妥協案であった。

 

「お、話してくれるのか?」

「……話すよりも、此方の方が手っ取り早い」

 

 すると、ウルキオラは自らの左目に手を掛け、如何にも抉り出そうとする仕草を取った。その突然の行為に、問題児達はギョッとする。

 

「ちょ、ちょっと何をするつもりなの!?」

「……嫌ならば見るな」

「取り敢えずお嬢様と春日部は見ない方が良いな。黒ウサギも目を閉じとけ」

「は、はい」

 

 そう言いながらウルキオラのその行為は止まらない。空気を読んだ十六夜は、両端の飛鳥と耀の目を塞ぐ。一応、黒ウサギにも注意しておく。白夜叉は「私は問題無いぞ」と言い平然としていた。

 そして、左目を抉り出したウルキオラはその眼球を握り潰した。

 

「“共眼界(ソリタ・ヴィスタ)”」

 

 ウルキオラがそう呟くと、目の前に映像が現れる。その映像には仮面が特徴の怪物が映っていた。その怪物に飛鳥が訝しげに問う。

 

「この怪物は何?」

「……こいつは(ホロウ)(プラス)であった魂魄が堕ちた姿だ」

「魂魄と言う事は悪霊の様なもの?」

「大まかに言えばそうだ。そして、こいつらは餌として人間の魂魄を喰らう」

「なっ……!?」

 

 映像と共にウルキオラが簡単な説明をする。しかし、主食として人間の魂魄を喰らうという事実に驚きを隠せない問題児達。だがウルキオラは更に説明して行く。

 魂魄は基本的に外部からの影響が無い限り、数ヶ月、数年の時を経て胸に孔が開き霊子が霧散し再構成の後に虚へと堕ちる。

 記憶や知能は残り、他者との会話も可能ではあるが心を失っている為、捕食や戦闘時のみ残っている知能を駆使しているだけに過ぎない。当然、例外は存在するが虚の大半は皆が同じなのである。

 

 ウルキオラの簡単な説明が終わり、虚の姿を映している映像が切り替わる。次に映った映像は特徴である仮面は付けているものの、普通の虚とは一際違う姿の虚が映し出された。

 

「……さっきのと雰囲気が違う」

「……魂魄を捕食する欲が強い虚は同じ虚の魂魄を欲し共食いを行う。そして最終的に生き残った虚は“大虚(メノスグランデ)”となる」

「この虚ってのは共食いまでするのか。まあ同じものを喰っていたら飽きるのが普通だしな。ある程度はこういうのも予想出来た」

 

 大虚には3階級が存在する。大型のギリアン、中型のアジューカス、小型のヴァストローデである。

 ギリアンは大虚の中で最下層。数も多く姿も全て同じである。記憶は失い、知能も獣並みである。動きは緩慢で簡単に的になり易いものだが、その力は普通の虚と比べ物にならない。

 アジューカスはギリアンの中で特に強い力を有し、明確な自我を持つ変異種で仮面も異なる。そのギリアンが共食いを続けた結果、アジューカスへと進化する。

 数もギリアンと比べて少なく、その戦闘力はギリアンよりも非常に高いが、その霊力を保つ為に同じアジューカスを喰らわなければならない。それを怠ると再びギリアンへと退化してしまい、確固たる自我を失ってしまうデリケートな存在である。

 ヴァストローデは人間程度の小型の存在。数は極めて少なく、数体しか存在していない。そしてその戦闘力はアジューカスを大きく上回り、護廷十三隊隊長格の死神をも凌ぐ程に強大である。

 

「じゃあウルキオラさんはこの中では最上級のヴァストローデという事でございますか?」

「無論だ」

「つまりその大虚ってのは生存競争を生き抜いた成れの果てと言う事だな」

「……強ち間違いでは無い」

 

 十六夜の皮肉にウルキオラは軽く受け答える。ウルキオラ自身、生き残る為には手段を選ばない事であると自覚しているからだろう。

 そして更に映像が切り替わり、虚とは一線を画するその姿が映し出される。個人としての確固たる姿を得ているそれは存在感が圧倒的に違う。

 

「そして、俺の様に虚の仮面を外し死神の力を手に入れた虚が“破面(アランカル)”だ」

「ほほう、種としての限界と次元を超える事で死神の力を手に入れ、その先の領域に踏み入った者達と言う事だの。どうりでおんしが神格を得ている訳だ」

 

 破面は死神の力を手に入れた一団。破面の特徴は割れた仮面とウルキオラの様に白い死覇装を身に纏っており、自らの真の力と能力を刀状に封印した“斬魄刀”を腰に携えている。その戦闘力は大虚の比では無い。だが、強大な力と引き換えに虚時に保有していた“超速再生能力”を失うデメリットも存在している。

 

「へえ、超速再生能力なんて便利なものを失ってまで力を手に入れるのかよ。破面ってのは利己主義な奴ばかりなんだな」

「……そうでもしなければ生存競争で生き残る事など出来ん」

「そう言えば、破面になったらその超速再生能力を失うのよね? ならウルキオラさんはいつの間に白夜叉との決闘の時の傷が治っているのかしら?」

 

 飛鳥が言うそれは確かに気になる。白夜叉は再生のギフトを所持していた為、決闘後は服も傷も全て治している。だが破面であるウルキオラは再生の能力など無い筈だ。しかしウルキオラには傷が一つも見当たらず、死覇装も全て元通りである。

 するとウルキオラが見せている映像がうっすらと消え、完全に見えなくなった所で、抉り出した筈の左目が一瞬で再生した。その現象に皆が目を見開いて驚愕する。

 

「……強大な力と引き換えに超速再生能力を失う破面達の中で、唯一俺だけが脳と臓器以外の全ての体構造を超速再生出来る」

「なっ……!?」

「おいおい、星霊と同格の力を持ちながら一瞬で再生する能力まで持ってるとは、もう反則級だなこりゃ。ヤハハ」

 

 正直な所、此方側の世界の情報は兎も角、個人の情報は漏らしたく無いのがウルキオラの本音だ。しかし超速再生能力は直ぐに明らかにされるだろうと予想していた為、これは余り痛手となるものでは無かった。

 皆が驚愕している中、十六夜は愉快に笑い面白いと言わんばかりの目で見ていた。その額には冷や汗がうっすらと流れている。もしも敵に回せば生きて帰れるかどうかすら分からない。

 

「なあウルキオラ。お前の世界で所属していた組織ってのは決闘の最中でお前が言っていた十刃ってヤツか? エスパーダはスペイン語で“剣”という意味だが」

「……良いだろう。少しだけ教えてやる」

 

 そう言いながらウルキオラは語りだす。十刃はウルキオラの主である藍染惣右介が選抜した上位十名の事を指し、彼等は破面の中でも隔絶とした強さを持つ。特に、第4十刃以上からは余りの強さ故に藍染達の本拠地である虚夜宮(ラス・ノーチェス)の天蓋の下での帰刃を禁じられている程だ。

 そして十刃までとは行かないものの、数字持ち(ヌメロス)や十刃から落ちた元十刃、十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)など、確かな実力を持っている破面達が山ほどいる。

 

「それはとんでもねえ話だな。お前と同格の存在が十人もいるのかよ。それに帰刃っていうのも気になるな」

「言っただろう、有る程度の範囲だけだと。これ以上は教えん」

「ハッ、随分とケチなんだな」

「お前は自分の切り札を態々曝す程、莫迦では無いと踏んでいるんだが」

「……チッ」

(コイツ、俺が持つ切り札の存在に気付いてやがる)

 

 ウルキオラの言葉に十六夜は舌打ちして黙る。実際に隠している切り札が有ると言えば有る。それを隠し事と言えば可愛いものだが、十六夜の切り札はそんな可愛いらしさは欠片も無い。何せ星を砕く一撃なのだからそう易々(やすやす)と見せる訳にはいかないのだ。ウルキオラの放った“王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)”も星を砕く一撃と同然だった。しかし、ウルキオラはそれを隠す素振りを見せずに放ったのであれば、それは切り札とは言わない。精々奥の手の一つと言う所か。ならばウルキオラの切り札とは何なのか、それが十六夜には分からなかった。聞き出そうにもこの状態なのだから最早意味は無い。

 そこで、十六夜はある事を質問した。

 

「ならウルキオラ。その十刃の中でお前の強さの順位はどれ位なんだ? 流石に最下位は有り得ないし、実力からして第1十刃ぐらいだと思うんだが」

「確かに、私もそれは気になる所だの」

 

 ウルキオラの十刃内の強さの順位。これは一番聞きたい質問だ。それにウルキオラが話しても問題の無い情報だ。そこからウルキオラ自身の情報を探る事は出来ない。だがどうしても黒ウサギや白夜叉、問題児達は知りたかった。そしてウルキオラもその様子に感づいていた。

 

「……面倒だが、(つい)でに教えてやろう」

 

 億劫そうに答え、胸元の死覇装を開く。そして、彼等は今日一番と言える驚愕を味わう事になる。

 開かれた胸元には虚の特徴である孔が首元に存在し、それよりも目を奪われたのが左胸の刻印。

 

 

 

 

 

 

 

 

『4』

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……!?」

「まさか……」

「有り得ないのですよ……!?」

「は……?」

「……4……だと……!?」

 

 その事実に全員が其々の驚愕の色を表す。あの無類の強さを発揮したウルキオラが一番上では無いという事実に。

 

「そうだーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー十刃での強さの序列は、四番目だ」

 

 

 




……4……だと……!?
これ出してみたかった(笑





安全第一のどーでもいい妄想

この小説で癒し(ロリ)がいないと思うのは私だけ?
出来ればオリキャラとして登場させたいなー、と思います。
勿論、『原作沿い、原作を崩壊させない』をモットーで。

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