「ステータスオープン」
2030年の日本。
世界に少し遅れて、日本にもステータスチェックアプリが流行りだした。
使い方は簡単で、スマートフォンのアプリ『ステータスチェック』を起動して、「ステータスオープン」と利用者の音声を認識すると、アプリが解析した利用者のステータスが表示される。
公式HPに提示されてある一例を見てみよう。
捨致巣 知恵区(すていたす ちえく)
年齢23 ♂
状態異常 なし
体力 50
筋力 50
持久力 50
頑丈 50
健康 50
記憶力 50
思考力 50
調整力 50
協調性 50
判断力 50
統率力 50
容姿 50
このような感じだ。
当初は高いステータスが表示させた人々が、SNSで「#こんな結果出た」等と自慢する為に使われていた。
しかし、ステータスが明らかになるなら、それを公開することを求めるものも現れる。
一部上場企業は早い段階から、このステータスチェックアプリの結果を履歴書に含めて提示するように、入社を希望する人々に求めた。
それが一般化してくると、今度は中小企業にもその流れが普及してきた。
だが、一人一人のステータスをチェックするのは手間だという需要から、大勢のステータス情報を纏めて一覧で見られるという形態が現れた。
入社や転職を希望する人々は、取り敢えず全員『ステータスコレクター』という、ステータス情報を送る。
そして企業達は、ステータスコレクター社が纏めた大量のステータスの中から、『思考力60以上、記憶力60以上、協調性60以上の中に限定して、該当者を総合値が高い順に並べる』という風に、人員をリストアップして、スカウトをかける。
この流れは一般化して、遂には大学入学者選抜大学入試センター試験と同時に、全国高校生統一ステータスチェックが行われる事になった。
このデータもステータスコレクター社に送られる。
これにより、企業は青田買いが可能になった。
ステータスが有望な学生は、大学一年生の頃から内定が来ることも少なくなくなった。
これを「格差だ!!」「差別だ!!」と言う者も少なくはなかったが、そう主張する者達は、そろってステータスが平均より低い者ばかりであった。
ステータスの数値が低い者は、そのステータスを上げなければ望む仕事に就く事も、昇進する事も出来ない。
ステータスが低い者とステータスが高い者に明確な待遇の差が出る。
これを差別だと彼らは主張したのだ。
だが、時の総理も「統計的差別は悪い差別では無い」と言い放ち、それでも支持率は低下しなかった事が、国民の総意を示していた。
また、地域別にステータスに偏りがある事も問題に上げる者もいた。
具体的には都市圏は記憶力・思考力の数値が高いという結果が示されてしまうのは、地方に対する差別だと言う者もいた。
果たして何処からが差別なのか?
統計で明らかとなり、利益に直結する事実を活用することは差別なのか?
確かに『侮辱罪』とは、『事実を示した事で名誉を毀損した罪』と言い換えられるが、事実が有益、または不利益を回避する情報であることに変わりはない。
しかして法的には罪となる。
それでも、今日も多くの若者はスマートフォンに向けて言うのだ。
「ステータスオープン」と。