激闘を終えたカズキはレオンを医務室に連れ寮へと戻っていた。
「いやー、これで人数は揃ったね」
「でも、明日の試合には出れそうにありませんね」
「意識はあっても重症だもんねー、すごいすごい」
「食べて寝れば動けるとか言ってたから大丈夫だろ?」
「そんな簡単に治ったら苦労しませんわ」
「そういえばカズキは平気なの?」
レオンは満身創痍なのに対してカズキはなにもしてないようにケロッとしている。
「平気平気、鍛えが違うのさ」
「わーすごーい」
「てかさ、こんな重傷者がでるんだったら普通は試合の間隔開けない?」
全チームが万全の状態で戦うならわかるが、試合過程によって負傷し欠場する生徒も同然出る。それなのに翌日には試合とか鬼畜過ぎる。
「確かに、普通ならそうしますわね」
「互いに万全の状態で戦うもんだもんね」
「馬鹿者、その時の状況に応じて戦う事も必要なんだ」
「まぁそうだけどね」
「過酷なトーナメントに勝ち抜けば上級生ともまともに戦えるだろうと私は見越してこうしたんだ」
「ほんとかよー、本当は合間合間に授業するのがめんどくさいからまとめてやろうとしてるんじゃないの?」
「あー、そうかもね」
「これは先生の陰謀なのですわ」
「それに弱いチームには更に不利だよね」
「確かにそうだな」
「ねー」
「……あれ、なんか会話人数多くない?」
「確かに一人多い気がしますわ」
「一人二役?」
「んな高度な」
「……貴様ら、言いたい放題だな?えぇ?」
カズキの隣に座っていたレイカが静かに怒りを震わせている。
「おっとレイカ先生、いつの間に?」
「さっきからいただろ」
「まぁまぁそう怒らずに」
「わたくし夕御飯の準備をしないと」
「私も手伝うよー」
逃げるようにキッチンへ向かうノアとリューク。
ノアはともかく、リュークは手伝いなんて……結構しているからなんとも言えない。くそ。
「あ、お前らズルいぞ」
だが、ここで一対一になるのは不味い気がする。いつもはジェルマンがいるからそっちに攻撃がいくのだが今はいない。
「そう構えるな。悪いと思うなら晩酌くらい付き合え」
「いいんすか?俺結構酒豪ですよ」
「ガキが、いきがるなよ」
十数分後
「みなさん、夕御飯できましたよ」
「今日は唐揚げだよー」
キッチンから夕御飯を持って出るとリビングではテーブルには空になった酒缶やおつまみが散乱しており、ビンを持って直で飲んでいる二人の姿がいる。
「カズキ、お前なかなかいける口だな」
「はっははは、当然ですよ。そういう先生こそ、神や鬼みたいな飲みっぷりですね」
「そうだろ、伊達に何年も飲んではいないからな」
「飲み過ぎないほうがいいですよ」
「ガキが何言う、お前こそ飲み過ぎるなよ」
「完全に出来上がってますね」
「そだねー」
「おぉ、リア。三年ぶりだな」
気づいたカズキはノアの手を取り隣に座らせる。
「見ないうちに立派になってよ、少しでかくなったんじゃねぇのか?」
「えっ、あっ、カズキさん?」
「はっはっはっ、先生紹介しますわ俺の妹のミアですよ」
「妹って。そいつはノアだろ?」
「ノア?ノア……ノアノア……あーノアだ、わりーわりー。いやー似すぎて間違えちまったよあははは」
ノアの顔をまじまじと見つめ人違いと気づくと笑いながら背中を叩き謝る。
「もう、やめてください」
「金髪とか緑の瞳とか似てたからさ、つい」
「珍しい組み合わせじゃありませんわ」
「セクハラおやじー」
「ぐうの音もでない」
「おっ、唐揚げか。いいつまみだな」
「んー、しっかりした味付けで酒が進む」
「ジューシーだな。これ作ったノアさん料理の腕凄いな」
「おいしいねー」
「夕御飯をお酒のつまみにしないでほしいですわ」
「堅いこというなよな、おいしいぞ」
「リゾットもおいしいよ」
「なにー、米はやっぱ白米だろ!そんな粥はよくないぞ!」
「でもおいしいでしょ?」
「うんおいしい」
「はぁ、もうどうでもいいですわ」
人数は少ないがとても騒がしい食事に頭を悩ますノアであった。
翌朝
「Bクラス相手ですわ、どう戦うのか」
リビングで朝食を取りながら言うノア。
昨日は誰かが酔って作戦会議なんてする暇はなかったので今こうして考えている。
この試合に勝てば学園公式戦の出場権は手にはいる。だが相手はB五人のBクラスの神威使いに対してこちらは三人でそのうち二人は神威使いとして半端、圧倒的不利の状況だ。
「……しょうがない。あの戦法を使うか」
「あの戦法?」
「そういやノアさんと俺は足手まといだったんだよな」
「ノア(自称)とカズキ(通称)だから微妙」
パンを食べながら言うリューク。カズキに対して辛口過ぎる評価をしているのはきっと気のせい。
「ひどくない!?そんな足手まといだった?」
「全部カズキのせい」
「ひでぇ。鬼!魔王!」
「残念だけどどっちもだよ」
「くっそーー、全ての元凶はここにいたか」
「くだらない会話はよして、本題に戻ってください」
話が脱線してきたのをノアが戻す。
「それで、どんな作戦なんですの?」
「そんな難しくはないさ」
カズキがなに食わぬ顔で淡々と言う作戦にノアは絶句しリュークは笑っている。
「カズキらしいね」
「だろー!俺とノアさんがちと体を張るから汚名返上もできて一石二鳥よ!」
「……体を張るのはあなたでしょう」
「だが出来るのはノアさんだけだ、互いにできることを全力でしようぜ」
試合場
「よし、行ってくるからよろしく」
ブザーが鳴るとカズキは相手陣中へ真っ直ぐ走る。
(本当に大丈夫なのかしら、この作戦)
試合中にカズキが出した作戦に不安になるノア。
「ノアの実力を見越しての作戦だよ。気合いいれなさい」
そんなノアの胸部を軽く叩き、活をいれるリューク。
「リュークさん……わたくしが心配してるのはカズキさんですよ」
「あー、カズキの事?あれなら大丈夫だよ」
「どこらからそんな根拠があるのです」
「んー、私と同じ匂いがするから、かな?」
「リュークさんと同じ匂い?」
「あんまり気にしないで」
リュークの言葉に疑問を抱くノア。
一方で
「おい、来たぞ」
「バカめ、俺達はセルトとは違って全員が接近戦闘者だ」
「全員で向かえうて、ノアの弓にも気を付けろ」
たった一人で走ってきたカズキに対して五人全員が一斉にかかる。
「はぁ!」
それでもカズキは退かず真正面から挑むも分が悪いのか徐々に後ろに押される。
「どうしたFクラス、そんなものか!」
「我ら相手に手も足も出ないか」
剣先から放たれる火の球や、氷の刃など当たればほぼ即死の攻撃、だがそれを前にしてもカズキは
(属性能力(アトリファクタス)は火が二人、風一人、氷二人か……ありきたりだな)
焦る事もなく冷静に分析をしながら戦っていた。
一人の剣先がカズキの腕を掠める。
「いけるぞ」
「このまま一気にしとめてやる」
五人の猛攻に胴、足と体中刻まれてていく。
「とどめだ」
仕留めにかかろうとしたとき、一矢が前方から飛んでくる。
矢は無数の氷の破片となり降り注ぐ。その密集した氷の刃は敵だけでなくカズキごと貫く。
「なっ、味方ごと撃ち抜くとは」
「く、狂ってやがる」
氷の刃が体に突き刺さり二名はは辛うじて生きているも、他は急所を貫き即死している。
「この程度、俺の火で溶かしてやる」
凍りつく箇所に剣を当て火で溶かし始める。
「はっ!?」
カズキが刀を振るい動けなくなった生徒を斬る。
「ばか、な」
それには戸惑いをかくせないまま光の粒子となり消える。
「終わったな」
「……よく生きてますね」
カズキの体には斬り傷だけでなく、ノアが放った氷の矢が大量に刺さっている。
「わざと攻撃を受けカズキだけに集中させノアの所へ誘導。うまいじゃない」
「当然だろ」
「結局、わたくしはあまり役に立ってないのでは」
「そうか?四人倒しただろ?」
「うんうんカズキより多いよ!」
「ですが、わたくしはカズキさんごと射っただけで」
「いやいや。みろよ俺の受けた傷、全部致命傷を避けている、いやーさすが」
「それは偶然で」
「その証拠に、俺の近くにいたやつは致命傷を負ってなかっただろ?」
「ですが」
「そもそも俺ごと倒すのがこの作戦のコンセプトなんだから気にするな」
「そーそー、迷わずぶっ殺せばよかったのに」
「お前それは酷いな、ちょっとくらいノアさんの思いやり見習え」
「コンセプトはどこにいったの?」
「うっ。さぁ終わったから出るぞ。反省会は寮でするぞ」
分が悪くなったので無理やり会話を変え逃げるように試合場を後にする。
「あっ、逃げた」
最後のリュークの言葉がだめ押しの一撃となり心をえぐるのであった。
ともかく公式戦の出場権は得られた。これでやられた仲間に顔向けができるというもの。
だが、まだ終わった訳ではない。剣舞祭を優勝するまで気を引き締めなければならない。
Fクラス 教室
「なーんで授業があるんだよ」
ジェルマンが机をバンバン叩きながら文句をたれている。
「仕方ないでしょ、試合数がなくなるんだから時間ができるんですから」
その子供じみた態度に呆れるノア。
最初は多かった試合も気付けは一日に数試合と数は減ったので授業を再開したのである。
「なにも病人を引っ張り出さなくてもよぉ」
さっきまで医療室で試合を観戦してたジェルマンやレオンまでも授業を受けている。ルリーはまだ体調が優れておらずまだ退院はできないそうで、カズキは元気だが、昨日と今日で重症を負ってるので体に支障はないか見てもらっているので二人は授業に参加していない。
「治癒力が高いのも考えものだね」
「そうだな」
「安心しろ、まだ試合があるお前らの事を考えて勉学にしてやったぞ」
「ありがた迷惑なんだよ!」
「そう悲観するな、今日は少し変わった事を勉強するぞ」
「変わった事?」
「そうだ、お前ら今日はなんの日か知ってるか?」
「知らねぇよ」
「今月って祝日ないよな」
「まさか、先生の誕生日!?」
「なんで私の誕生日になるんだよ」
「なーんだ、違うのか」
「今日はロウラクシア連国の建国記念だ」
「ロウラクシアって、元レオルド帝国の?」
ロウラクシア連国。それは四年前に起きた革命によりレオルド帝国が滅び新たに出来た新国。
それは全世界に知れ渡った出来事であり、アニマニヤやルーンブラッドでも知られている。
「まぁあんな政治をしてたからな、起きて当然だろ」
王が若くして死に、後をついだ息子による悪政に国が腐敗したのが原因となり起こった革命、周りの国もこうなる事は見えていた。
「ありゃ凄いよな、あのレオルド帝国が負けるとはな」
兵士の練度の高さと人数、有力な神威使いと兵器による高い軍事力とドルツェルブに次ぐ先進国、そして広大な土地を持つ強国として知られているレオルド帝国。
「よくドルツェルブとドンパチやってたけどこっちが劣勢だったからな」
「えぇ、とても革命軍だけで勝てるとは思えませんわ」
「その通りだ。革命の成功の大半はヒノモトによるものだ」
「ヒノモト、あの七人か」
ヒノモト 海を越え遥か東に位置する秘島のことだ、独自の文化を持ち大国とは関係をもっておらず詳細はほとんど不明、その為に幻の島とも言われている。
「話は有名ですわね、たった七人が加担しただけで革命を成功させてしまうのですから」
突如現れた七人の異民族。その一人が革命軍の知り合いで利害の一致のもとに手を組み帝国を滅ぼしたと言われている。
教科書にはその記録は曖昧だが記してある。
「んにしても画家ってのは変な風に書くよな」
その中に国を斬る少年の絵がある。なんともあり得ない絵に革命と七人の強さを模したものと言われている。
その大袈裟過ぎる絵を見ながら不思議そうに言うジェルマン。
「ヒノモトか……」
「どうしたのですか」
何やら難しい顔をしているレオンにノアが声をかける。
「なんでもない」
だが、そう言ったきり再び黙る。
「本当に革命の半分もの功績したのかよ」
「いや、帝国を滅ぼす実力はあると思った方がいい」
ジェルマンの疑問をレイカ先生が即答する。
「たった七人でか?」
「あぁ」
「随分と肩を持つじゃねぇか。らしくないな」
「……いるんだよ。私の知り合いがその中に」
ふと呟くように言うレイカ先生、その表情はどこか寂しげがあった。
「知り合い?」
「お前達には関係ない話だ。さて、なぜ今日この話をしたかわかるか」
「わからん!」
「ロウラクシア連国は混乱期で剣舞祭にはまだ出場してなかったが今年で多分出ると思われる。その対策勉強だ」
「おいおいまだ出場が決まった訳じゃねぇのに気がはやすぎんだろ」
「そうですわ」
「何をいう、お前らは絶対に出場して優勝するんだろ?なら早めに対策しておいて損はない」
「あぁその通りだ」
剣舞祭の優勝に対して人一倍執着しているレオンが力強く頷く。
「だがまぁ、剣舞祭出場どころか学園代表にもなれなかったら覚悟しろよな」
生徒を睨むレイカ先生。覚悟するのは恐らく死だろうと察する。
「それでどのような人が出るの?」
「そうだな、主だったやつらは戦死しているしな」
「だからこそ。新手の神威使いが出てくる」
新国なら神の加護を受けたいもの、その為にあえて出場せず力を溜めていたと考えたレイカ先生による授業。
「どんなやつがくるか用心に越した事はない。だが、情報がほとんどないからまずはレオルド帝国の武術を教えてやる」
「知ってるのかよ」
「当たり前だ、私はレオルド帝国の軍と何度か交流している」
「世界レベルになると交流のレベルも違うのですわね」
「こちらが有利になる。いいことだ」
「まずは剣術からいく。軍人はザックス流を基礎に叩きこまれて……」
レイカ先生の長い長い授業にうたた寝しながらもなんとかやり遂げるのであった。
そして寮へと戻るとリビングではルリーとカズキがボードゲームで遊んでサボっていた。
もはや叱る言葉も出ない。
本人達は授業がないと思ってここで暇を潰していたので悪気はなかったのだがレイカ先生にきっちり説教を受けたのであった。
つづく