「これが俺達そろっての初陣だ。絶対に勝つぞ」
「あったりまえだ。ぶっ殺してやる」
「あぁ、屈辱の借りは返さないとな」
「アルバートン家と仲間を愚弄した者には報いを。ですわ」
「私も、がんばります」
「じゃあ行こうか」
試合場
ビーーッと大歓声を消すように試合開始のブザーが鳴る。
「相手はFクラスだ。楽しもうぜ」
「あぁ、そうだな」
余裕ぶっているアンガロ達にカズキとジェルマン、レオンが向かってくる。
「正面から攻めてきたか。生意気な」
「揺さぶったかいがあったな」
「配置につけ、じっくり捻り潰して格の違いをわからせてやる」
リゼの指示のもと、神威武装(ミスフォルツァ)を展開し行動に移す。
「総力戦でBクラスに勝てる訳ないのに、何か策があるのか?」
「さぁな、あったとしてもこの実力差の前じゃ無駄だろうけどな」
「ノアとルリーの後方攻撃に気を付けろ」
「あの三人を倒せば勝ったも同然だ」
「おいアンガロ、俺はあの生意気野郎をぶっ殺す。お前はあの獣人をやれ」
「オーケー、お前らはカズキをやれ」
「任せろ」
「死ねオラァ!」
ジェルマンがバトルトンファーを振り落とす。地面に触れると爆発が起こり周りは黒煙に包まれる。
「ちっ、目眩ましか」
リゼは双剣を振り回し風を放ち煙を消すと、瞬時にジェルマンの姿を捉え双剣を振るう。
「お前の目眩ましなど、俺の属性能力(アトリファクタス)の風には効かない」
「大口を叩くだけはあるな、Bクラスさんよ」
バトルトンファーで受け止めると、すかさず片方に持つバトルトンファーを振るう。
「っと、あぶねえな」
かわしたと同時に短剣を振るい腕に傷をつける。
「切り落としたと思ったがいい動きするな。だが、神威使いは自身の能力をあげる。約四倍に上げた俺の動きについてこれるかな」
「上等だ。常人の四倍ごとき、恐れるに足りんぞオラァ」
「吠えるだけ吠えてろ負け犬ゥ」
手に持つ武器は二つ、リーチはジェルマンの方が有利だが、大きい分大振りになってしまう。それに対してリゼはリーチが短いが一撃が速く隙がない。とにかく間合いを取り攻撃し続ける、もし相手に間合いを取られたら一気に攻められる。
「どうしたどうした。動きが遅いぜ」
「ちっ、落ちこぼれ風情が……風の刃(ヴァンス)」
距離を空けると、風を纏った双剣を振り回し風の刃を放つ。
咄嗟に後ろへ飛び、バトルトンファーの持ち方を変え顔を守るように両手でガードするも全身に切り傷を受ける。
「ぐぁ、いってぇぇ」
「致命傷にはならなかったか。まぁいい、次でしとめる」
不適に笑うと、再び双剣を振るい風の刃を放つ。
「ほらほらほらほらどうしたどうしたぁーーっ。狂人の実力はこんなものか?」
高速で飛んでくる風の刃は正面からかわすのが難しいので、横へ走り円を描くように徐々に間合いを積めるジェルマン。
「うるせぇんだよ、人面もやしが」
距離を詰め攻撃するも簡単にかわされ、再び遠距離から攻撃される。
ただ突っ込むだけじゃ、あいつは倒せない。
本当は鉄球を顔面に叩き込んでやりたいが、その気持ちをも一旦抑える。まずは相手を無力化することだ。
「爆破衝撃(バーストショック)」
鉄球を地面に叩き付け爆発を起こす。爆発から生み出された爆風は凄まじく、リゼだけでなく周囲にある障害物も簡単に吹き飛ばした。
ジェルマンが周りを一掃している頃、レオンはアンガロと既に戦っていた。
アンガロの獲物は柄の長い炎を纏った金槌。繰り出される一撃は重たく見た目通りのパワーファイターぶりだ。
「逃げてないで戦ったらどうだ、獣人」
アンガロとかいう男も無茶を言う。炎がある以上受け止める選択肢は消えたから避けるしかないというのに。
「ちっ、ちょこまかと」
攻撃が当たらない事による苛立ちから集中力が切れ攻撃が大振りになる。そのできた隙をついて、攻撃をかわした瞬間背後につき、胴に両手を回す。
「なっ」
「自分の体から炎はだせないんだな」
振りほどくなら体から炎を出せばいのだが、それをしない。どうやらミスフォルツァからしか出せないようだ。
「くそ、放せ」
「断る」
そのまま後ろに反り投げる。
「……消えないな、もう一発いくか」
地面が陥没する威力だったが、白目を向いて気絶しているだけだ。どうやら身体能力は打たれ強さもあがっているらしい。じゃなきゃ即死……なはず。
考察をしてる暇はないと、体勢を変えトドメの一撃をくらわそうとする時一本の矢がレオンに向かって飛んいた。
その存在に気づきその場を離れようとするが、腿に刺さる。もし気づかずに攻撃を加えていれば心臓を射ぬかれていただろう。
「ぐっ、つうぅぅ」
急いで矢を抜くが、傷口周辺には焼けるような痛みが残る。それでも戦うに支障はでない範囲だ。
立ち上がり放たれた軌道を見るが誰もいない、場所を移動したようだ。ノアには劣るが命中率はたいしたものだ、できれば始末しておきたいが、仕方ない。
「まずは、この男を」
アンガロの方を見るが、姿を消していた。
さっきまで気絶していたのに、まさか逃げられるとは思ってなかった。だが、どうやって逃げたか、自力か他者か。手負いからして動くのは無理だから恐らく後者だろう、だとすれば他と合流される前に叩いておかないと。
辺りを見回し探索しようとするが、進行方向に無数の矢が刺さる。
「そう簡単にはいかない、か」
どうやら、さっきの弓使いはここでレオンを仕留めるつもりだ。
「おもしろい」
再び矢が飛んでくる。今度は一定方向出はなく、頭上から降り注ぐように飛んでくる。まるで雨のようだ。
近くにあった障害物を頭上に持ち上げ盾にし回避する。
反撃に転じたいが、真上から攻撃されたら軌道が読めない。相手の位置がわからなければ防戦どころか戦いにすらならない。
とにかく移動して見つけないと、あとの事を考えて出来ればここで倒しておきたい。
走りながら周囲を見る。高台には人影がない、だとすればどうやって場所を特定している。
レオンは常に動き場所を変えているから、高い所から見渡さないと的確に狙えないはず。
だが、今まさに上から矢が降っている、確実に狙っている。
なにか、手がかりがあれば……。
「レオンさん、しゃがんでください」
横からノアの声がする、素直に従いしゃがむ。
頭すれすれに氷の矢が通る、そして。
「ぎゃぁぁ」
放った方から別の女の悲鳴が聞こえる。見てみると氷付けになった生徒がいる。
「なるほど、俺を追跡しながら攻撃しいたのか」
見つからないように障害物を利用して隠れて、常に追跡しながら攻撃していた。それなら高い場所に留まる必要もない。なにより、特に遠方に気を配っていたレオンには見つけにくかった。
「どうやら隠密行動に長けてたようですが、一人に気を取られすぎで第三者からバレバレでしたわ」
「こんな近くにいたとはな、驚きだ」
本来、あの距離なら隠密動作でも消えない微かな音で気づくはずなのだが誰かがうるさいので、自慢の聴力を生かしきれなかった。というより、居ないと判断してしまった自分が情けない。
「どうしたのです?しかめっ面なんかしまして」
「なんでもない」
個の反省などしている暇などない。すぐさま加勢しに向かう。
「火の球(ファイヤーボール)」
「ぐわぁぁっ」
カズキと競り合っていた相手にファイヤーボールが当たり燃え上がる。
「ルリーさんナイス!」
後方にいるルリーの方を向いて親指を立てる。
「まだ来ますよ」
「おっと、危ない」
背後から縦に振ってくる剣を刀で受け止めると、蹴りを入れ怯ませるとファイヤーボールでトドメをさす。
「よおし、ナイス連携攻撃」
「次行きましょう次!」
加勢に向かうも、カズキとルリーが既に二人倒している。このまま誰も負けなければ完全勝利になる。
「死ねオラァ!」
「バカな、Fクラスになぜこんな力が」
「考えるのは後でいい。アンガロ、一気に押しきるぞ」
「かかってこいオラァッ!!テメェらなんぞ俺一人で充分じゃボケゴラァッ!!」
アンガロとリゼを相手にジェルマン一人で押している。
「ありえませんわ。Bクラス相手にあそこまで戦えるなんて」
Aクラスも侮れないほどの実力を持つリゼとアンガロが相手だから驚きは隠せなかった。
「カズキだって五人同時に相手してたんだ、不思議じゃないだろ?」
「できて当然なりけり」
「質が違いますわ」
「うわ、なんかへこんだわ」
「加勢しましょう」
横から不意打ちをするように参戦する。
「くそ、他は全員やられたのかよ」
「こんなクズ相手に負けるとか、使えねぇゴミ共だ」
Fクラスが全員生き残っているのを見て苛立ちを隠せない二人
「お前らもそのゴミ共の仲間にしてやるから安心して死ねや」
「なめるな、たかがFクラスごときに負ける俺達ではない」
「一撃で気絶したやつがよく言う」
「うっ、あれは演技だ」
「ここで集団リンチしても後味が悪い、同じ人数で相手してやんよ」
「だったら俺に任せてくれ」
「わたくしが御相手いたしますわ」
レオンとノアが前へ出る。
「あ?テメェら、俺の相手がいなくなんだろうが」
そんな二人を獲物を横取りされた猛獣のような目で睨む。ジェルマン自身が出る前提での提案だったのだろう。
「今まで何もしてないんだ、ここで実力を見せてやる」
「わたくしが一番怒っていますの。この手で決着をつけさせてもらいますわ」
「……ふっ、俺がでるのは野暮だな。任せたぜお二人さん」
覚悟を見てか意外にもあっさり引いた。
「なめるな、全員でかかってこい」
「お前ら落ちこぼれごとき、何人集まっても余裕なんだよ」
だが、向こうの二人は納得していない様子だ。
「死ねぇ」
アンガロが金槌を振りかぶりながらカズキに飛びかかる。
しかし、片手で頭を捕まれ持ち上げられる。
「ぐあぁぁあ」
みしゃりみしゃりと頭蓋骨が軋む。激痛から逃げようとカズキの頭に金槌を振り落とすも掴む手は離れなかった。
「悪い事はいわねぇ、素直に戦いな」
グググッと、更に握る力を強める。額が切れ出血する。
「それともここでじっくりと頭潰されたいか?」
「ぐぬああぁぁぁ、戦う、戦う戦う、戦うから手を放せ」
「よろしい。存分に死に合いな」
リゼを無造に投げ捨てレオンとノアの背中を軽く叩く。
「カズキ、頭は大丈夫か?」
炎を纏った一撃をくらってもケロっとしているカズキだが、いくらタフでもさすがに無傷ではないはずだ。
「力入ってなかったから大したことはないさ」
だがカズキは笑いながら言う。
「そうか」
本人がそう言うなら大丈夫なのだとあまり気に止めはしないレオンは目の前の敵に集中する。
「カズキ、何意味を勘違いしてるんだ。バカすぎて頭大丈夫かの間違いだろ」
「なにー、レオンお前ひどいやつだな」
日常的な会話をするジェルマンとカズキ。いくら戦わないとはいえ、目の前に敵がいるのに冗談を言い合う。もはや試合の雰囲気ではない。
「これ以上会話するとこちらも調子が狂いますわ」
「そうだな。はやく始めよう」
その雰囲気に呑まれ戦いに支障を来しそうなのですぐに構え試合モードに切り替え二人に近づく。
「やろぉ、なんて力だ」
「アンガロ、まずはあの二人をやるぞ。その後であいつをやればいい」
「わかってる。いくぞ」
近づくノアとレオンに向かって一斉に攻撃する。
「俺が二人を押さえる、援護を頼む」
「わかりました」
「俺達を一人で押さえるだと?寝言は寝て言え」
「ヴァンス」
「火炎攻撃(ファイヤーアタック)」
金槌を地に打ち付け一直線に放たれる炎に加え双剣から繰り出される風の刃。
レオンの前に岩壁が飛び出しそれらを防ぐ。
「なに!?」
思いもよらない事が起こり驚く二人。
「お前は神威を纏うだけが限界のFランクだろ」
「なぜ、アトリファクタスが使える」
「これは神威の力じゃない、精霊の力だ」
「せ、精霊だと!?」
「そんな話は聞いてないぞ」
「俺は一度手の内を見せたはずだが……知らないバカはいるものだな」
Fランクと傲り、相手を調べる事をせずにいた。だからレオンが精霊を使えた事も知らなかった。
「グラン・ギア、やつらを囲え!」
二人の周囲を岩壁が飛び出し完全に包囲する。
「くそ、こんな岩、砕いてやる」
「はぁぁ」
双剣や金槌を振るが、キーンと甲高い音がするだけで壊すどころこかひびすら入らない。
「くそ、なんて硬さだ」
「おい、くるぞ」
別に出した岩壁に乗ったノアが弓を構えていた。高台から矢を放ち一網打尽にする気だ。
「死を招く吹雪(ヒュラノモース)」
連続で放った無数の矢は空中で砕けると、衝撃で風を起こし氷の刃が激しく乱れ飛びながら降る。
察しの通り容赦のない氷の刃が二人を襲う。
「こんなもの、俺の炎で消してくれるわ」
「手を貸すぜアンガロ」
炎の金槌を振り回しリゼの風で舞い上がらせる。
「炎の竜巻(ファイヤートルネード)」
巻き起こる炎の風は吹雪を消していく。
「甘いですわ。その程度ではわたくしの吹雪は止められません」
「なにをバカなことを、あ、あれ?」
金槌を振り回すアンガロの動きが鈍くなる。
「まさか!?」
アンガロは足元を見ると氷の刃が既に地を凍らせていた。
炎が近くにあるせいで周囲が冷却され始めている事に気づく事が出来なかったのだ。
急激な体温低下にアンガロの動きが鈍くなり、やがて動きを止める。これで火種は完全に消えた。
「さぁ、恐怖で凍えるがいいですわ」
「ばか、な……Fクラス、ごときに、ぃぃ」
「うわああぁぁぁ」
氷の大地から侵食するように足から凍りつく。上からも振ってくる氷の刃をかわす事が出来る訳がなく無残に突き刺さりやがて完全に凍りつく。
「ふん!!」
岩壁を壊し走ってくるレオン。その勢いのまま両手を振るい二人を同時に砕く。
「トドメはこの手でやらないとな」
「ナイスですわ、レオンさん」
岩壁から降りたノアとハイタッチを決め皆の所へ戻る。
「……あれ、そういやリュークはどうした?」
「さぁ?見かけてませんわ」
「あのやろう、サボったな」
「そういえば終了のブザーが鳴りませんね」
リゼとアンガロを倒した全てが終わったと思っていた一同は、自分が倒したやつの人数を数えてみる。
……一人足りない。
「……まさか、まだいるのか!?」
「気を抜くな、どっからしかけ」
ビーーーッ
試合終了のブザーが鳴り響く。
それには、全員が拍子を抜ける。
「あれ、終わった?」
「なんかグダグダだな」
「格好良く決めたのに、しまらない」
「ですわね」
なんか司会の誰だかが騒いでいるが、そんなことを気に止めず試合場を後にするのであった。
つづく