駄作   作:匿名希望ただの人

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大会後のとある一日

 

 

 

決勝は、ジェルマンが怒涛の五人抜きを果たし見事一学年トーナメントを優勝したのであった。最後のわりには呆気ないというか、あまり盛り上がった雰囲気ではなかった。

AクラスがまさかのFクラスに完敗。その見出しの新聞が校内に張り出されると、一気にFクラスの知名度が上がった

当然、優勝に貢献したジェルマンに注目が集まる。

だか

「俺が勝てたのは、ルイスが居なかったからだ」

ミチノのインタビューでジェルマンはそう語っていた。

ジェルマンはルイスに勝てない。否、ルイスがいたらジェルマンはAクラス相手に五人抜きはできなかった。が正しい意味だ。

Aクラスが四連敗した時、あまりにもチームの士気が下がっていたのを見て思わず病室を抜け応援に駆けつけたのだ。

その時の相手が一番強く、倒すのに手強ずったのだ。もし最初からルイスがその場でいたならば結果は逆転していたかもしれない。

やはりチームの要が居ると居ないとでは強さも全く変わる、そう改めて気づかされた。

もっともFクラスにそんな者はまだ居ないのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽照らすグランドではバトルトンファーを振り回すジェルマンとそれをかわすカズキがいた。

授業の組手とは思えないほど、殺伐とした雰囲気。真剣勝負とは違う、殺し合いという表現が近いであろう。

「はぁ!」

そんな戦いは三者から見ればジェルマンが圧倒しているように見えるが、変則的に動くカズキの攻撃に翻弄され防いでいるのだ。

防いだと思った刀は軌道を変え別方向で攻撃してくる、動きに対応仕切れず、いつの間にか喉元に刃先を突きつけられていた。

「一本、俺の勝ちだ」

そう言うと刀を鞘に納める。

「まだだ、もう一回」

「これで十五回目ですわ」

「Aクラスは倒せたのにカズキには勝てないんだな」

既に十五試合連続でカズキと戦っているジェルマン、その全て負けている。

その負けても立ち向かう揺るぎない闘争心は呆れを通り越し過ぎて呆れてしまう。

「うるせえ!すぐにぶっ殺してやるから黙って見てろ!」

「次は俺の番だ、休んでいろ」

構えるジェルマンの肩を掴むレオン。

「はぁ?こいつは俺の獲物だ、すっこんでいろ」

「俺もこいつにやられてるんだ、相手する理由は同じだろ?」

「俺の方が先だ」

「じゃあ後に譲れ」

「ふざけんな」

「ふー、あちーあちー。元気だなあの二人はよ」

言い争っている二人を無視して次の組手相手を探す。

「あ、あの、カズキさん。相手お願いします」

ルリーが声をかけてくる。

「ルリーさん、体調は大丈夫ですか」

なぜ心配をしたのか、それは授業の初めレオンと戦い気絶してしまい休んでいたのだ。その事を考えれば最初に心配の声をかけるのは当然である。

「大丈夫です。私だって強くならなくちゃいけません、だからいつまでも寝ている訳にはいきません」

「じゃあ相手お願いします」

「はい」

神威を練り木製の杖を顕現させる。

「炎の球(フレイム)」

火の球(ファイヤーボール)よりも大きな炎の球を杖先に作り出す。

「おいおい、いきなり中級魔法かよ」

いつもファイヤーボールしか使わないから初級魔法しか使えないと思っていたから驚きだ、そもそもこの歳で中級魔法を使うだけでもたいしたものだというのに。

「強いんですから私も不必要な手加減はしませんよ」

カズキに向けてフレイムを放つ。

「こりゃ俺も頑張らないとな」

魔法使いは魔法を発動させるには魔力を集めたり、詠唱や魔法陣をつくるなどで時間がかかる。その為、隙を作らず攻めるのが一般的である。

カズキもそれに乗っ取りガン攻めに入る。

刀の横降りを後ろへ大きく飛び回避するルリー。

攻められてるのに余裕の表情をしている。

不審に思い、ふと足下を見ると魔方陣が描かれていた。

だが、気づいた時にはもう魔法陣から巨大な氷の刃が突き出る。

「おいおい、レオンの時みたいに優しくしてくれよな」

気づいたので間一髪で氷の刃を真っ二つに切り伏せたのでダメージにはならなかった。

「うそ、これでもひっかからないなんて」

完全な奇襲攻撃だったはずなのに見事に対応したカズキに驚き、行動が遅れる。

その隙に一気に詰め寄り刀を向ける。

「余裕を見せたのが失敗だったな」

「むー、せっかく手の内を明かしたのに負けるなんて」

「なんだ、まだあるのか?」

「さ、さぁ?わ、私、しりません」

視線をずらし口笛をふくルリー。すっごいわかりやすいな。

だが、ノーモーションで魔法陣を展開できる事以外にも何か秘策がある事がわかった。詠唱無しで唱えられるのか、他の種類の魔法か、最高火力の魔法か、あげれば予想は結構出てくる。

次戦う時はそれを考えていかないと足元をすくわれる。もしかしたら俺の想像を越える事をしてくるかもしれない。

普段はおどおどして気の弱い感じだが、魔法の腕は確かなもので、動きもいい。手の内はわからないが、味方と思うと心強い。

「カズキさんも強いですね」

「俺なんかまだまだですよ」

「その割には魔法にも対応できてますし」

「まあなんだ、俺の知り合いに魔法使いがいたんだよ。その時に色々と教わったんだ」

「なるほど。さすがは他民族国家、私以外の魔女も住んでいるのですね」

知り合いはアルガド王国に暮らしてはいないが、他民族国家だから魔女も暮らしている可能性は高いので後者は否定できないな。

下手に話してもややこしくなりそうだし、俺の事を深く聞かれる訳にはいかないのでここまでにしておこう。

「何を話している、どんどん戦え!」

会話をしていると横からレイカ先生がビシビシと鞭を振るっている。あいかわらず脅しが強い。

だが、次の学園公式戦まで一ヶ月も無い。それまでに二、三年にも勝てるように、徹底的に鍛えなければならない。

ただでさえ、神威という大きな差があるのだ。俺達も授業に対する態度が違う。

「うるあ!」

「ふん!」

すぐ隣ではジェルマンとレオンが激しい攻防戦を繰り広げている。互いに怪我をしないように配慮した組手だったのだが、属性能力(アトリファクタス)と精霊を使った手加減無しの真剣勝負へと発展した。当然周りの被害も大きく、平地だったグランドは爆発と地面操作で原型を留めていない。

「貴様ら、殺し合いじゃないんだ配慮せんか!」

「死ねオラァ!」

「おおおおお!」

レイカ先生の声など耳に届くわけもなく、激闘を続ける二人。

「いい加減にせんか!!」

鞭を振るうと、パァンと空を裂くような破裂音と共に二人は倒れる。

「がは」

「ぐお」

「全く、熱が入るのは構わんが周りを考えろ!」

「いってぇなボケコラ」

「先生が授業妨害してどうする」

「続けても構わんが、次の授業までに直しておけよな」

そう言うとしばらくして授業終了の鐘が鳴る。次の授業は山でやるらしい。

てことで

「うおおぉぉっ!!コートローラーだぁぁ!!」

「俺はトンボよぉぉ!!」

それぞれ整地にする器具を持って変わり果てたグランドに戻る。

「グラン・ギア、平地にしろ」

しかしその間にレオンが大地の精霊であるグラン・ギアを使い綺麗に整地していた。

「…………」

元通りになったグランドを見たカズキとジェルマンは静かに器具を置いてあった場所に戻すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから死ぬような授業を終え寮へと帰還したカズキ達。

「鎧水泳は辛かったな」

「それな、俺はもう疲れた」

最後の授業で、激流の川で水泳をしたのだ。それも全身に鎧を身に付けてだ。

ノアが泳げず川に流されるわ、ルリーは鎧の重さで沈むわ、カズキはバタフライで滝を登るわ、レオンは魚を取るわ、リュークはプカプカ浮いてるわ、特に何もなかったジェルマンが真面目に見えるわ、レイカ先生は男子に女子の分の鎧をつけさせるわ。

とにかく、大変だった。

「よし。組手やろうぜ」

「そうだな」

それでも自主練する男子三人。そうと決まればすぐに立ち上がり外へ出る。

「ルールはいつものでいいな」

「まあ妥当だな」

いつものとは、一試合三分でダウンした数で勝敗を決めるというもの、同然だがダウン数が少ない方が勝利である。ダウン数が同じなど決着がつかない場合は審判による判定になる。勝者は残り次の相手と戦う、それを終わりまでやり最後に勝者だった人が勝ちというもの。修行でもあるが一種の遊びでもある。本気の。

「前回もカズキが優勝者だったな」

前回はというかこのルールを始めていらいずっとカズキが優勝者だったりする。(内容では負けている時もあるので無敗という訳ではない)

「まずは俺からだな」

カズキの前に立つレオン。

「拳に纏えグラン・ギア」

地面から紫色のオーラが吹き出すように現れ両手両足にゆっくりと纏う。

手と足だけに纏うのは守りには一切使わず攻撃を受けきるという覚悟と修練の表れである。

「ふん」

ただでさえレオンのパンチは重いのに更にグラン・ギアで硬めるので滅茶苦茶な威力がある。人間の防御力を例え十倍に上げても骨なんか簡単に砕けてしまうだろう。

だが、カズキはあえて受け止める。自身を打たれ強くする為だ。強力な攻撃を受け続け屈強な肉体を手に入れた、その結果、ルイスの神威武装(ミスフォルツァ)を受け止め砕く事ができた。超古典的で原点ともいえる鍛練方法だが効果は述べた通りだ。

「こいカズキ」

レオンも両手を広げる。どうやら避ける気もガードする気もないらしい。

「いくぞ」

胸元に刀手打ちをする。

「うぐおっ」

その威力はレオンの巨体を軽々浮かす。

「相変わらずすげえ威力だ」

ジェルマンも初めて受けた時は踏みとどまる事が出来ず後ろに倒れてしまった。

今では踏みとどまれるが、そのダメージに未だに慣れない。それはレオンも同じである。

(重い一撃だ。これでまだ本気じゃないんだろ)

あの時に戦ったカズキにはまだまだ余力を残していた気がする。そうなればこの程度の攻撃は遊び、ほんのじゃれあいにしか過ぎないものなのだろう。

「打ってこいレオン」

「おおおおお」

激闘を繰り広げる二人の周りに、いつしか人が集まっていた。

「負けんなレオン、いけオラ」

「獣人の意地を見せろ」

野次馬が一方的にレオンを応援する。倒れそうになる度に声援の量が大きくなっていく。

すでに三分は過ぎているが、互いに打ち合い倒れるまで続けるという過激なルールに変わってきていたりするこの頃。

「うおおおおお」

レオンの強靭な脚力によるハイキック、それをまともにを受け止める、足が地面にめり込む程の威力。それでも倒れない。

「どうした、その程度か」

カズキの体は打たれ過ぎて赤を通り越し紫色に変色している、それでもなお倒れる素振りすらしない。それどころかもっと打ってこいと手招きをする。

明らかに受けているダメージ量も、手数も多いのに平然とした顔をしている。その姿に恐怖と共に憧れの念を抱く。

倒れない、それだけでだ。

「ぐっ」

レオンが攻撃しようとするも、足に力が入らずバランスを崩し前のめりに倒れる。

「ッシャアァァッ、まずは一人抜き」

「次は俺の番だな」

上着を脱ぎ捨て、片手に持つバトル・トンファーを回転させながらカズキの前に立つ。

「ふん!!」

そして鉄球を自身にぶつけ、ボゴォンと爆発する。

「なんの真似だ?」

「はっ、ボロボロのテメェに勝っても嬉しくねぇんだよ」

バトル・トンファーを投げ捨て、打撃と爆発で負傷した上半身を見せつけるように胸を張る。

「カッコいいじゃねぇかよ」

「これで俺が勝っても、二番手だからとは言わせねぇ」

自ら己を痛めつけ、口から血を流しながら不気味に笑う姿は正しく狂人。

「手加減はしねぇぜ」

「当たり前だ!」

「ふん」

カズキの刀手打ちを受けるとすぐさま顔面に蹴りを入れる。

「こいオラァ!」

「上等だ、俺についてこれるか」

間髪いれず互いに攻撃し続ける。

「うおおお」

流血をしようとも

「オラァ!」

晴れ上がろうとも

やられたらやり返す、その文字通り打つ手を止める事なく、殴り、蹴り、叩き合う。

「いいぞジェルマン」

「勝てるぞ、いや勝て!」

「五人抜きした実力を見せろ」

「カズキ、テメェも負けんなよ」

「ここまできたんだ、絶対に倒れるな」

どちらも退かないこの勝負、まさしく意地と意地のぶつかり合い。

どちらかの心が折れた時、この勝負の決着がつく。

「何の騒ぎだお前達」

青の髪を揺らしながらやってくるルイス。その凜とした声に野次馬達は一斉にルイスの方へ振り向き、道をあける。

「またお前達か!!」

殴り合う二人を見て頭を抱えながら足早に寄る。

「決闘をするなとあれほど言ったのに」

「決闘じゃないぞルイス。俺達は修行をしているんだ。騒ぎにしてるのはこいつらだ」

ルイスの手を取り止めるレオン。

「お前、その怪我はなんだ」

「痛いから強く引っ張るな」

「手を取っているのは君の方だろ」

「……」

「決闘だろうが修行だろうが騒ぎを起こすなと」

「だから、騒ぎにしてるのはこいつらで」

「騒ぎになっているんだ、その時点で問題行為だ」

ごもっともな意見にレオンは何も言えないが、手は掴んだままだ。

「手を放せ」

ルイスが居るなど知るよしもなく、どんどん内容が過激になる。

そんな中、少女が戦いに終止符を打つかのよつに互いの髪を掴み殴り合う二人に飛び蹴りで吹き飛ばす。

「がはっ」

「ぐはっ」

「夕御飯が出来ましたわ、はやく手洗いうがいをして来てくださいまし」

正体はノアだ。フリルがついた可愛いエプロンを身につけているから調理を終えたばかりなのだろう。

騒ぎを起こしたからか、腰に手を当てて怒っている態度を取っている。

「いってぇなボケコラノアテメェアァン!?」

「なんという速く重たい一撃だ、耐えきれなかったぞ」

うずくまっていた二人が立ち上がり、ノアに詰め寄る。

「夕御飯、抜きにしますわよ」

「よし飯だぞカズキ」

「そうだな、寮へ戻るぞレオン」

その言葉を聞くとすぐに素直になり寮へと急いで戻る。

周りの人々を惹き付ける程の熱く激しい戦いは呆気ない終わり方で幕を閉じたのであった。

 

 

 

つづく

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