二回戦目に戦ったハート達は負けを認め、無事?三回戦へと進んだカズキ達Fクラス。
続いて戦うのは通算三度目の勝負となるルイス率いるAクラスだ。
「またAクラスか」
なんでもルイスが今までよりも遥かに強くなっており、三年生でも相手にならないほどに急成長し、他のメンバーもその勢いに乗り勝ち進んでいるようだ。
「俺はまだ一回も戦ってないから構わん」
一回目はあやふやで二回目はジェルマンが全て戦ったので他の人は実質初対決となる。
「俺にルイスとやらさせろ。いいだろカズキ」
「俺は構わない」
自ら進んで猛者と戦いにいく血気盛んなジェルマン、カズキはルイスに対して興味はほとんどないのであっさりと譲る。
「一対一ではないのですわ。いつも通りのフォーメーションでいきますわ」
今回の試合場は石造りのコロシアムだ。身を隠す所がない真っ向勝負を強いられる。
だからこそ、チームの連携が大切となる。悔しいが連携とならばルイス達の方が上である。
「うるせぇ、横やりするな」
ほらな、さっそく言い合っている。
「カズキ、今度はどうするの?」
ニヤニヤしながらカズキに聞くリューク。こいつは今までの勝負を全てを知っている厄介なやつだ。
「しらん、ジェルマンがやるって言ってるんだ。よっぽとがなけりゃ俺は関わらん」
「なーんだ、つまんないの」
「お前こそどうするんだ?」
「いつも通りよ」
いつも通り。参戦しているのかしてないのか曖昧なやつだな。
「昨日のカズキを見て相手はやる気あるのでしょうか?」
ここでルリーが聞いてくる。
昨日、山を消し飛ばしたカズキ。その強さを見てしまったから少なからず相手にプレッシャーを与えてはいるはずだ。
「あの面々はそんな柔な人達じゃありませんわ」
「あぁ、特にルイスはな」
だが、すぐに否定するノアとジェルマン。それはAクラスの人達と関わりが深いから言える事であり、なんだかんだ認めはいる証拠だ。
「そ、そうですか」
「そろそろ時間になる、会話をやめていくぞ」
時計を見て立ち上がるカズキ。
興味なさそうだが、結局興味があったりするカズキ。
はやく戦いたくてしょうがない。
カズキの言葉を聞いて皆は立ち上がり試合場へと向かう。
カズキが入ってきたとたん、皆の視線がかわる。
今回は何をするのかと期待と恐怖が混ざったものだ。
「けっ、カズキに注目か」
「くだらん事考えてないで試合に集中しな」
「うるせぇよ」
すでにリングにはルイス達が待っている。
「正々堂々勝負しよう」
互いに正面に立つとルイスがカズキに向けて握手の手を差し出す。
「やだね。俺はほどよくやるよ」
皆が握る中、カズキだけが両手を真上に上げ拒否する。
「珍しいな、お前が欠礼するなんて」
「今回だけ特別にね」
だが、見ていた生徒達からブーイングの嵐が響く。
「反感買ったな」
「興味ない」
ルイス達と離れると試合開始のブザーがなる。
瞬間、巨大な雷の刃が飛んでくる。
「いきなりか!?」
ルイスらしくない先手に一瞬戸惑ってしまう。
だが、皆はそれぞれ左右によけかわす。
「なるほど、これで分裂ってわけか」
避けることなく平然と受け止めたカズキは戦況を冷静に分析する。左にレオンとルリー。右にノアとジェルマン。リュークはしらん。左に二人、右にルイス、俺には三人とか。うまく分裂されられたな。
「か、カズキ、お前をここで倒す」
「……手が震えてるぞ」
剣を握る手は震え、逃げ腰の体勢をとっている。
怖いんだろうな、それでも戦うその意気は素晴らしい。是非とも全力を持って潰してさしあげたい。
が、そういう訳にはいかないので結局いつも通り戦ってしまう。
「なんだ、このスピードは!?」
その頃ルイスと戦っているジェルマンとノアは、その急激な強さに驚いている。
雷の如く激しい攻撃にジェルマンは防戦一方を強いられ、ノアは援護射撃しようにも稲妻の如く速いスピードに狙いが定まらない。
「この、くそがああああ」
バトン・トンファーを地面に叩きつけ爆発させ煙幕をつくる。
しかし、ルイスは丸見えといわんばかりに的確に狙ってくる。
ジェルマンの肩に槍を刺し電流を流す。
「ぐぬあああ」
倒れると痺れてるからかその場からピクリとも動かない。
「ジェルマン、あっ!?」
気がつくとノアの目の前にルイスがいる。
(速い、速すぎますわ)
「悪いが、終わるまで横になってろ」
弓を構えるまえに電流を流されジェルマン同様倒れる。
「あと二人」
すぐにルリーとレオンの所へと向かう。
「ぬっ!?」
ルイスの突きをレオンはギリギリでかわす。
「さすがの反応だ、一筋縄ではいかないか」
(なんだ今の速さは!?異常過ぎる)
獣の勘が告げる。こいつはヤバいと
「ここは私がやる。みんかはカズキの所へ」
「わかりました」
そういうと二人はカズキの所へ向かう。
「すまないが、すぐに終わらさせてもらう」
「そう上手くいくかな?」
両手にグラン・ギアを纏い構えるレオン。
「ぐっ」
速い突きを腕で受け止める。グラン・ギアをまとっていたから刺さることはなかったがそれでも痛みは通ってきた。
「はぁ」
反撃しようと拳を振るうが、すでにそこにはルイスがいない。
背後から感じる殺気に気付き、凪ぎ払いをなんとかかわす。
「背後攻撃とは随分立派な騎士道精神を持っているな」
言葉で精神を揺さぶってみる。礼儀を重んじ、堅物な性格をしているルイスにはこの手には弱いはずだ。
「今日だけは全てを捨てて勝利だけのために戦っている。今の私は皆がしっているルイスではない」
違った。今日のルイスは全てにおいていつもと違っていた。
「グラン・ギア!」
足元が一気に下がり、小さな穴の中に二人だけの状態になる。
「これなら速さの意味はない」
かなり深く、そう簡単には上にあがれない。
動きも制限され、逃げるという選択肢はなくなる。
「はぁ!」
ルイスの突きをかわし、槍先が岩壁に突き刺さる。
「荒爪」
振るう爪を横へよけかわすと、指が岩壁にめり込み亀裂が入る。
「なんという力だ」
こんなもを食らったならただではすまない。
掴まれば終わりと思った方がいい、倒すなら一撃ではないと勝ち目はない。
「おおお」
レオンの攻撃は大振りだが、避けれる範囲が限られてくる。
「ふん!」
避けた所に蹴りを入れてくる。
槍をつかって上手く防いだが、それでも受けたダメージは大きい。
かわした後も間髪いれず攻撃をしてくる、なんとかしてこちらのペースに変えなければならない。
槍を地面に突き刺し雷を流すも、岩壁を交互に蹴り上がり上へ逃げる。
そのまま踏みつけるように落下する。
「アクトライザー」
かわすと槍先をレオン向け雷を当てる。
「ぐわあ」
さすがのレオンも全身が焼けるような激痛に片膝をつく。
「とどめだ」
レオンに槍を向け刺そうとするが、両手両足にフック状の岩がひっかかる。
「なに!?」
そのまま岩壁に引き寄せられ、拘束される。
「姑息な手段を使ってすまないな、今度やる時は正々堂々とやろう」
ゆっくりと立ち上がり、ルイスに向けて拳を振り上げる。
もうダメかと思ったその時、キュエエェェェッと奇声を上げながら黄金の鳥がレオンに襲いかかる。
「なっ、なんだこいつは」
突然現れた生物に戸惑うレオン。
「レイ・ホーク」
レイ・ホークはルイスを拘束している岩を嘴で砕き救助する。
「精霊か、いや、違う、こいつは一体」
「いくぞ、レイ・ホーク」
「なっ!?」
ルイスの全身から雷を放つ。穴の中、逃げ場が一切ない。
「ぐわあああああ」
なんも出来ることなく直撃し、そのままダウンする
「よし、次はカズキだけだ」
「いい連携だ、だがまだ動きに錬成がない」
五人相手に難なく戦う、余裕がありすぎて反撃すらしていない。
「なめやがって」
「ちゃんと戦え!」
「どうしようかな、ちゃんと戦っていいレベルなのかな」
軽いステップを踏みながら、顎に手を当てて考える素振りをする。
「っこのおぉぉ!」
「じゃあ反撃するか」
振るう剣を掴むとニッコリ微笑む、そして
パアァン
破裂音と共に頭が吹き飛ぶ。瞬時に光の粒となり消えたが、恐怖を植え付けるには充分過ぎた。
「遊ばないでちゃんと戦うか、久方ぶりに」
瞬間、四人の生徒はその場に倒れうずくまる。
何が起きたか全くわからなかった。一瞬のうちにカズキは何かをしたのだ。
「どうした、手加減パンチだぞ。ダウンにはまだはやいぞ」
「カズキ、貴様ぁ」
そこへルイスが血相をかえてやってくる。
「お?ここに来たってことはジェルマンを倒したのか、さっすがー」
「ジェルマンとのノア、レオンはダウンさせた。あとはお前とルリーとリュークだけだ」
「ダウンて、ちゃんとトドメさしたのか?」
「刺していない、だがもう戦えないはずだ」
「あまちゃんだな、まぁいいや軽く潰してやるよ」
「カズキ、しっかり戦え!」
口笛でも吹きながら特に構えることなく立っているカズキに対して客席からヤジが飛ぶ。
「そう慌てなさるな、徐々にレベルを上げるから待ってろって」
「そんな舐めた戦い方をして、恥ずかしくないのか!」
「しょうがないだろ、同じ土俵じゃないんだから」
「そんなんだからダテを越えられないんだ!」
「うっ、厳しい所を……ってあれ、なぜダテ兄のことを」
声がする客席の方を向く。
知りもしないはずの情報を言ったのだ、どんなやつか気になる。
レイカ先生の隣で立っている青年が声を上げていた、多分そいつだ。
ん?なんか見覚えがある。
「あれ!?もしかしてシバの兄さん」
「兄上!?」
シバ・エミリミルス。ルイスの実の兄にして最後の家族だ。
「久しぶりだな、カズキ」
「お久しぶりですシバの兄さん、どうしてここに?もしかして留年っすか!?」
「バカ言え、ルイスとお前が戦うって言うからレイカに頼んで観戦に来たんだ」
「それは有難いことです」
「俺が見てるんだ、不甲斐ない試合をするな全力でやら」
「……それは、俺にここから出ていけと言ってるんですね」
「それはお前しだいだ」
「まぁ仕方ない、シバの兄さんの頼みだ。全力でやらせてもらおう」
そういうと、カズキの目付きや雰囲気が一瞬にしてかわる。
何度も見たルイスだが、未だになれないあの鋭さはまるで別人だ。
晴天だった空もいつのまにか黒雲へとかわる。
冷たい風が吹き、雷鳴がなる。
今までとは明らかに違う雰囲気に全員が戦慄し背筋が凍る。
刀を抜くと一瞬でアストラルエーテを斬り、ほとんどの者に気づかれることなく現実世界へと戻す。
「ヒノモトサムライに喧嘩売って、ただで済むと思うなよ!!」
雨が激しく降り、暴風が吹き荒れる。
「はやく俺を倒さないと滅ぶぜ、この国がよ」
雷が試合場に落ち、砕ける。それも一発ではない、何度も何度も連続に集中的に落ち続ける。
「雨で植物が朽ち、風で建物が壊れ、雷で国が滅びる。そして生命が死ぬ。お前は俺を倒して英雄になれるかな?」
刀を持ち構えると不適に微笑む。
その姿は災いを運び、絶望を与える魔王そのもの。
「ちょうどいい、お前ら全員まとめて相手にしてやる。かかってこい」
アストラルエーテが解除されたことで、全快しているジェルマンとレオン、ノア。だが、状況がまったく把握できていないので、ルリーから大まかに聞いている。
「なるほど。ついにカズキが全力を出すのか」
「おもしれぇ、全力のあいつを潰せるなら願ったり叶ったりだ」
「仲間どうしで戦うなんてどうかしてますわ」
「いいじゃねぇか、トーナメントなんてくだらねぇものは終いにしてよぉ。全てを賭けた殺し合いをしようぜ」
片手を振るうと突風が起こる。それが観客にいる生徒達を襲い、埃のように吹き飛ぶ。
「うわあああ」
「きゃあああ」
生徒達は悲鳴を上げ逃げ惑う。
「テメェらも座ってねぇでかかってこいよ。一方的に死ぬだけだぞ」
それを見て笑いながら手招きをするが、パニックになっており我が先と避難する。
「ちっ、シケたヤロー共だ。こんなやつらだから国を守れないんだよ」
この状況にがっかりしながら、再びルイスの方を見る。
「帝国滅亡の再来だな、ルイス。また滅ぼしてやるよ、無関係な王国を、今度はお前のせいでな」
「カズキ、貴様……」
「シバの兄さんも止めたければ来てください。全力で殺しますので」
その問いにシバは何も言わずただ見下ろしている。
「さぁ始めようか。死を賭して」
つづく