ドオオオンッ!!
静かな試合場で巨大な何かがぶつかる音だけが響く。
それはミカルドとカズキ、両者の力と力の激しいぶつかりあいだ。
「オオオオオ」
雄叫びを上げ振るう大剣、それを刀で受け止める。
ミカルドの腹部を蹴り距離を空け刀を横へ振るう。
大剣で防ぐも力で押し、大きく後ろへ飛ばされ二本の線をつくる。
「はああ」
続いてセラフも攻撃する。翼を模したガードに両刃の細い剣を振るう。速く細かい攻撃だが、カズキには通用しなかった。
見切られ手首を捕まれると、壁めがけぶん投げられる。
「どうした。神の命を受けし者の実力はその程度なのか?」
「やはり強い。勝つには出し惜しみはいけませんね」
今のままでは、カズキに勝つのは不可能。そう、今のままではだ。
セラフは両手を広げると、ピンク色の炎が身を包み込む。
炎は次第に三対六の白の翼へと変わり、大空へ飛び上がる。
「オオオオオオオオオオ」
闘気や殺気と共にどす黒い紫色のオーラがミカルドから放たれる。外観に変化は無いが、力が増幅しているのは明らかだ。
「神装化か。やっと全力を出したな」
二人の変身を見て笑うカズキ。
これがあいつらの奥の手という訳だな。
「オオオオオ」
先に仕掛けたのはミカルドだ、獲物(カズキ)めがけ駆け出す。
力任せに振り下ろされた大剣を受けとめる。
ガキイィッと鈍い金属音が響く。凄まじい力に押し付けられ片膝をつく。
やはり先程よりも力や速さが上がっている。それも想像以上にだ。
大剣を横へ受け流し、体勢を崩したミカルドの腹部を殴る。
硬い。
カズキは思わず顔を歪める。
「ちっ、誰だよこんな頑丈な鎧造ったバカはよ。死んじまえ」
誰に向けて言ったか分からない愚痴をこぼしながらカズキはミカルドの手を取り引き寄せると、後ろさばきで回転し担ぎ投げる。
「はぁ!」
喉に刀を突き刺そうと構えるも、真横からセラフが低空飛行のまま蹴ってくる。
「ぐっ」
踏みとどまるも、ミカルドとの距離は出来てしまいその隙に立ち上がり構える。
空中から攻撃し尚且つミカルドの動きをカバーするセラフ。一番最初に始末しなければならない。
だが、地上にはミカルドがいる。その力と硬度で単純ながら無茶苦茶なスタイルで攻めてくる。
二人ともそう簡単には崩れてくれるとは思え無い、ここは一旦バカになって開き直ってる………よし、まとめて倒す!
「ウィングフェルド」
上空からセラフは六枚の翼を大きく広げると、無数の炎の羽が降ってくる。
そうは意気込んだが、さてどう倒すか。
降ってくる羽を切り捨て、ミカルドの方へ前進する。
カズキは前のめりにミカルドの懐に飛び込み右斜めに斬り上げる。
大剣を上に振り上げたままそれをかわすことなく受け止める。
「!?」
ミカルドは焦った。無敵の鎧に切り傷ができ、そこから亀裂が入ったのだ。
「その鎧がどれだけ硬くても、このクニキリに斬れないものなど無か」
この傷は鎧の防御力を過信し過ぎ。慢心によるものだ。
「ウゥ…オオオオオッ!!」
カズキか、それとも自身に怒っているのか。怒号を上げる。
体が浮き上がりそうなまでの声量、常人なら耳を塞ぎその場にしゃがみ苦悶の顔をするだろう。
ミカルドは大剣を握りしめ駆け出す。
「オオオオオ」
怒りに身を任せた一撃。
防ぐもその力に圧倒され横へ飛ばされる。
「ウィングフェルド」
すかさずセラフが燃え上がる鋭利な羽を放ってくる。
それらを打ち落とそうと刀を振るう。
一つ斬るたび灼熱の炎を吹き上げなら消える。その為一度に全てを斬ったので辺りは激しい炎に包まれる。
「くっ、そういやこんな技だったな」
炎の海から飛び出しセラフめがけ斬りにかかる。
「いくら飛べるからって、空は私のテリトリーです!」
翼を羽ばたかせる大きく旋回しカズキの背後を取る。
「そこだ!」
気を読み背後に刀を振るうがそこにはセラフはいない。
「こっちです」
カズキが振り向く瞬間急回転しカズキの背後に回り込んだのだ。
セラフは手に持つ剣を背中に差し込む。
腹まで貫通し、刃にはべっとりと血が付いている。
「ルクセント・シュート」
剣を抜くとその場で縦に一回転し、青白く光る脚で真上から蹴り落とす。
「がはっ、うお!?」
勢いよく地面に叩きつけられる。臓器がやられ口から血を吐き、蹴られた箇所が青く燃え焼けどを負っている。それでもミカルドは容赦なく大剣を振ってくる。
すぐさま立ち上がり、それをかわす。
「オオオオオ」
合間なく攻撃してくるミカルド、その一撃一撃が受ける度に重く感じる。
ガキィン。
大剣を振り上げ、カズキの刀を空へ上げる。
ミカルドの威力に耐えきれず思わず刀を放してしまった。不覚なり。
「オオオオオ!」
丸腰になったカズキに対して両手で持った大剣を振り落とす。
この距離、避けるのは不可。大剣の長さ的に後ろは無理、前も無理。たとえ左右に避けれたとしてもセラフがその瞬間を見逃す訳がない。ならば。
迫りくる大剣を両手で挟み止める。そう、真剣白刃取りだ。
「ぐっ」
取ったはいいが、勢いを止めるには不充分で肩に刃が入ってしまう。
「オオオオオ」
そのまま斬ろうと大剣に力を込めるミカルド。
肩に刃が食い込む度に血がブシュッと吹き出す。片膝をついたカズキは苦悶の表情を浮かべながらそれに抗う。
それに対しセラフは上空からウィングフェルドを放ちカズキの背中に突き刺さり燃え上がる。
少しでも力を緩めば肩が斬り落とされる。このまま耐えても炎で焼け死ぬ。まさに絶対絶命のピンチ。
「っああああああ」
そんな中、カズキは大剣を押しかえそうと両手に力を込めながら立ち上がる。
立ち上がるほどに肩に刃が入り更なる激痛が起こる。
それがどうした。
セラフが更にウィングフェルドを放ち、体の炎が激しく燃え上がる。
だからなんだ。
血の流しすぎで意識が失いそうだ。
知ったことか。
抵抗する程体が傷つき痛む。
関係ない!!
どんなに傷つこうとも、痛い目に合おうとも勝てないと悟っても、死ぬと分かっても、目の前の敵を倒す。それがカズキを突き動かす原動力。それだけが全てだ。
いままでそうしてきた、いまもそうだ。これこらもずっとだ。
だから。
この程度。……この程度ォ……。
怒りと破壊衝動による興奮で血流が速くなり体が熱い。怒りにより冷静さを失い理性が飛び本能がとびだしそうだ。
落ち着け俺。静まれ衝動。こいつらに対して冷静さを欠いたらダメだ。
落ち着け…落ち着けぇ。そうだ深呼吸でもし
必死に押し返しながら心で自身を抑えつけている中、肩にグチュと大剣が食い込む。
プチン
その痛みで、カズキの何かがキレた。
「調子に乗ってんじゃねぇぞオラアアア!!」
大剣を押し返しミカルドの顔面を殴り飛ばす。
真上から急降下し、剣を振り下ろしてくるセラフの顔を掴むとそのままミカルドめがけ投げ飛ばす。
「手加減無しだ。ひねり潰してやる!」
顔に紅の隈が浮かび上がる。髪が逆立ち、体から迸る稲妻。赤く荒々しい炎のようなオーラ。
黒雲が光を遮る。雷轟が鳴り響く。風が吹き荒れる。
それらは今のカズキの怒りと破壊衝動を具現化しているように。
つづく