試合場でカズキから放たれる殺意と闘志による重圧感、鬼気迫る表情に押されるミカルド。
足がすくんで一歩も動けない。体が言うことをきかない。
こんなこと初めてだ。今まで多くの猛者と戦い勝利してきた、どんなに傷つこうとも死にかけになろうとも『勝てる訳がない』こんな事を思った事はなかった。
怖い?これが恐怖?そう思ったらやつが恐ろしくてたまらない。
足が震える。それがどうした。私は戦うだけだ。私にはそれしかできない。
「どうした。かかってこいよ」
不敵に嗤うカズキ。
分かっているのだ、ミカルドが今怯えていることに。だから嗤っているのだ。
「オオオオオ」
身に纏う恐怖を振り払うように雄叫びを上げ駆け出す。
手に握る大剣にありったけの神威を込め渾身の力でもってカズキに向けて振るう。
迫りくる巨大な刃にカズキは避けようともせずただ嗤う。
直撃。カズキの首に吸い込まれるように綺麗に入った。
手応えはあった。
だが。
「フッ」
ミカルドの一撃は微塵も効いておらず、嘲笑いながら頭を鷲掴みにし地面に叩きつける。
そのまま走りだし顔を地面に擦り付け、勢いよく壁に叩きつける。
「はあ」
低空飛行してくるセラフ、勢いよく剣を振るうも顔を捕まれミカルドに叩きつける。
「くぅ、いったぁ~」
「まとめて死ね」
振るう拳を二人左右別れてかわし、ミカルドはカズキにむけ大剣を振り落とす。
「オオオ」
横すれすれでかわすと、前のめりになるとミカルドの懐にもぐりこみ雷を纏った拳を鎧の傷部に叩き込む。
「オラオラオラオラ、オラー!」
何度も何度も殴る。殴る。殴る。
抵抗などさせない。反撃など許さない。息をつかせぬほどの猛攻。
剛腕を振るう度に鎧に拳の跡がつき、次第に亀裂がはいり砕ける。
そして最後に渾身の一撃を叩き込むと、体を貫く。
ミカルドの体は電流により焼け焦げ、砕け散った鎧を身につけていた。
「オーガスブラストッ!!」
後ろへ下がり片膝をついたミカルドは拳から放たれた鬼の形をした雷の波動に呑まれ、光の粒となり虚空に消える。
「まずは一人だ。あとは一人だ」
六枚の翼を羽ばたかせ浮遊しているセラフを睨む。
対するセラフは剣を空高く高々に突き上げながら、こちらを見下している。
剣に神威を込める。光輝く青の炎が纏い、巨大な刃とはなる。
「ヘブン・レディアント!」
そう名付けられた巨剣を振り下ろす。
試合会場をまるごと斬ってしまいそうな程の大きさ、近づくたびその迫力は増していく。
カズキはニヤッと笑うと血迷ったのか足に力を込め高く跳躍し自ら近づいたのだ。
迫りくる炎の刃、近づくほどその熱気が上がり触れたら斬られる前に消し炭になってしまいそうだ。
だが、カズキそんなこと知ったことかと言わんばかりにそのまま突っ込み拳を振り上げる。
炎の刃を貫き、セラフの前に現れる。
「くうたあばあれえ~セェラァフゥッ!」
(通じないのは読んでましたよ。これが本命)
無傷のまま現れた殺意増し増しのカズキを見て動じる事なく剣を振るう。
「さぁ勝負です!」
「うおおおおおお」
「ブライトル・ペイン」
カズキの右ストレートを頬をかすりながらもかわすと、光を纏った高速の突きが心臓に突き刺さる。
「やった!?」
勝利を確信し、剣を抜く。
瞬間。
「おしかったな」
フフッと微笑むカズキ。両手を振り落とし、セラフを叩き落とす。
「雷槍滅脚」
空に魔方陣を作り、それを台にし落ちたセラフめがけ全身雷を纏い放つ飛び蹴り。
それは落雷のように一瞬の出来事。気づいた時には試合場全体に放電し砕ける。
「フフフフ……ハーッハッハッハッ」
底の見えない巨大な穴をみながら何がそんなにおかしいのか高らかにそして愉快に楽しく笑うカズキ。
「ごはっ……面白くない」
吐血しながらボソッとそう独り言を言うと静かに試合会場を後にする。
無事試合を終え、寮へと戻るカズキ。
ジェルマン、レオン、ノア、ルリーは激しいダメージのため今医務室にて治療中である。そのため、部屋にはカズキとリュークがいる。
「あ~あーあーああーーーあーーーー」
「うるさいわねバカズキ」
ソファーにだれて声を上げているカズキにリモコンを投げつけるリューク。
「いて!」
見事カズキの顔面にヒット、ソファーから転げ落ち悶える。
「いってーなこのやろ!あとバカズキ言うなし」
「うっさいのよ。全く」
「全くはこっちのセリフだ。試合放棄しやがって」
「試合を放棄してないわよ、見ていただけじゃない」
「みんなやられていったのに、なんてやつだ」
俺の記憶では、セリフと戦ってる時には『やれやれーやっちめー』と声を上げながら応援していたな。すっごいふざけた態度で。
「カズキの力で勝ち上がってきた所もあるじゃない。いい刺激になると思ってね」
「それは、まぁ、ね」
確かにハート戦や今回のミカルド、セリフ戦は明らかにカズキによる勝利だった。カズキの絶対的な力を知り頼りはじめてきたのも少しはあった。
だが、見殺しなんて出来るか普通?
「あんたの力だけで勝ち上がる事をあんたは望んでないでしょ?」
その通りだ。この大会は自身の力で勝ち上がる事が一番大事だ。神々が見るこの大会に他力本願なんてあってはならない。
「その通りだな」
「でも、みんなの負傷具合を見るからに決勝は出れないようだし。派手にやっちゃう?」
「やっちゃう?」
派手に……とは言うが、何度も派手にやっているので今更って感じはするがまあいいか。
「それで、どうするのこの人」
テーブルに置いてあるお茶をすすりながら、二人のやりとりを見ているミチノ。
「なにしに来たんだ?」
律儀にもお茶を出してしまったが、一体何しに来たんだろうか。
「もちろん取材に参っただけですよ」
愚問だったな。なんだろうなと思った俺がバカだった。
「取材は受けないって前から言っただろ。帰りな」
「そんなー、いいじゃないですか」
「情報を流して俺達に何か得する事があるのか」
「それは…その。ない…のかな?」
「……帰りな」
「そんなー、冷たい事言わなくてもいいじゃないですか」
「ええい鬱陶しい。騒ぐなら迷惑行為として風紀委員(ルイス)呼ぶぞ!」
「それは、その、困ります」
「ならば帰れ。おいリューク晩飯何がいい」
「カレーがいいな」
「なに!?香辛料とかあるかな。その前に米あるかなこの国食べる習慣無いし」
「ほとんどの国はパンだもんね。そもそもバウナの料理だしあるわけないでしょ」
「なんでそれをリクエストしたんだよ」
「聞いてきたのはカズキでしょ」
「なんだと!?その通りだけど」
「じゃあつべこべ言わず作ってよね」
「けっ。とんだじゃじゃ馬娘だ、いやじゃじゃ馬女神か」
「なによ」
「なーんでもありませーん」
そう言うとそそくさとキッチンへと向かう。
さて。案の定、米は無い。たがしかし!香辛料はなぜか沢山ある、なぜだろう。まぁいいやそんな事考えても仕方ない。ただ言えるのは、さすがお料理大好きお嬢様と誉めたいところだ。
てことで、さっそく調理にとりかかる。作り方なんざ簡単よ。
とりあえず香辛料を調合してそれっぽく味を整える。
果物や野菜を細かく切ってフライパンで焼いて飴色になったら調合物を入れて焼いて混ぜて水入れて、好きな具材入れてまたそれっぽく味を整えて終わりだよ。
と、雑に説明をするが、この男カズキはやる時はやる男、しっかりと本格的に作っている。
「お待たせカズキ特性スペシャルカオスカレーだよ」
カレーが入った器と大量のパンが入った籠を持ってリビングへ戻るカズキ。
「遅いよ~」
「おぉ、これがかれーという料理ですね」
「待ちくたびれちゃいましたよ隊長」
「はやくはやく、もうお腹ペコペコだよ」
リビングには、リュークだけでなく、ミチノ、セラフ、ハート……と、誰か知らない緑髪の女が仲良く?トランプをやっている。
「それが作ってくれた者に対する態度かよ。あとテメェらは何しに来たんだ」
「何しに来たって、遊びに来たんですよ」
「遊びにってお前な。試合後なんだから来るなよ。ってか試合があってもなくても来るな」
「ひどーい。隊長がそんな悪党千万極悪非道馬鹿阿保のパッパラパーみたいなことを言うなんて酷いです」
必死に訴えるように言うハート。
「酷いのはお前だ!最後の方は俺をバカにしてるだろ」
悪く言う流れなのに馬鹿阿保のパッパラパーは明らかにバカにしてるだろ。
「まあまあ、そんな怒らないで。せっかくの料理が冷めてしまいますよ」
「言っておくが、俺とリュークとミチノさんの分しか無いからな」
「あ、私の分はあるんですね」
「一人だけ食べさせない訳にはいかないからな」
そう言うとカレーをリュークとミチノの前に、パンをテーブルの中心に置く。
最初は常識人だなと思っていたが試合が進むにつれ発想と価値観が狂人だなと思っていたが、最終的には優しい人なんだなと思ったミチノ。
「じゃあ私達の分は?」
「押し掛けてきたんだあるわけないだろ」
「その点は大丈夫ですよ。屋台で沢山買ってきましたから」
袋から包装された食べ物をとりだすセラフ。
そういえばこの大会は祭という扱いだからまだ外では屋台がある。けっこう日にちは経ったがまだまだ賑わってる。
「……で、この方は誰だ」
なんとなく雰囲気が落ち着いたので、今一番の疑問であるこの少女について聞く。
長い緑髪、紫色の瞳に頬に大きめの傷跡があるこの少女。
ここの制服を来ているから生徒なのだろうが、こんなやつは知らんぞ。
「酷いですよ隊長。さっきまで会ってたじゃないですか」
「いや知らんぞ」
「ミカルドですよ。さっきまで戦っていたミカルド」
「ミカルド?はて、俺の記憶では鎧に身を纏っていた奴だったような」
「その鎧を身に纏っていた奴ですよ」
「……へー」
「えええ!?あ、あなたがミカルド先輩なんですか!?」
ここで大声を上げて驚くのはミチノ、すっごい目をかがやかせている。
「しゃ、写真を一枚取ってもいいですか」
「だ、ダメです」
それに対して顔を赤くしモジモジしながら言うミカルド。
試合中では『オオオオ』とドスの効いた声しか叫んでいなかったから、こんな可憐な美声の持ち主とは到底思えない。そもそもこんな美少女とすら想像つかない。
「いいじゃんミカちゃん、これを機会に鎧脱いだら?」
「嫌です。は、恥ずかしいです」
「ミカルドさんは恥ずかしがりやで、いつも鎧を身につけていると。いい記事を書けそうです」
すぐさま手帳を取り出しメモをとっているミチノ。仕事がはやいな。
「ミチノさん。可哀想だから書いてやるなよ」
「えー。それはカズキさんが決める事じゃないですよ」
うわっ、人の知られたくない情報を流すとかそんな奴だったのか。
「安心してください。ちゃんと許可を取ってから書きますから」
「なら良かった。それで、ミカルド先輩はなぜここに?バカ二人に無理矢理連れてこられましたか?」
「バカ二人ってなによバカって!」
「バカだろお前ら」
「バカにバカって言われたくないよーだ」
「カズキさん、先輩に対して失礼ですよ」
「大丈夫だよミチノさん。こいつらにはこれくらいがちょうどいいんだよ」
「あ。その、初めてましてミカルド・バルティングです。よろしくおねがいします先輩」
ハートと言い合ってるとミカルドが突然立ち上がり、カズキに自己紹介をしたと思うと頭が地面につくほどのお辞儀をみせる。
だが、なぜ自己紹介を?それもこんな下手から。それよりも気になることがあった。
「ん?先輩?」
なぜか俺の事を先輩と呼ぶ。ミカルドさんの方が三年で先輩のはずなのに、これは一体……?
「神伐隊第七番隊傘下九十九番小隊隊長をやらせてもらってます」
「……ミチノ。席を外してくれないか?」
神伐隊。その単語を聞いた瞬間全てを理解した。……まぁそんな所だろうとは思っていたがまさかね。
これは公にしていい話ではない。すぐに記者(ミチノ)を除外しておきたい。
「ふえ?なんでですか!」
「ちと危ない話をするんだ。すまないが帰ってくれ」
神伐隊。神に代わって罪を伐する部隊、と言えば格好が付くだろうがようは神のパリシだ。おつかいやら依頼やらをやっていくが、主に悪魔や魔族、裏世界と呼ばれる所に住む罪深き者共を倒す事を本業とし、九十九ある小隊を、一から七までの隊に分け、その部隊をまとめる元老院がトップとする部隊。
先程も述べたように、神に使え危険な戦いを本業としてるので高い戦闘力と知力を要求される超エリート?集団なのだ!
「嫌ですよ。神伐隊の話なんてそうそう聞けませんからね」
「……あれ?神伐隊ってそんな公になってるのか?」
神伐隊の事を知ってるかのように言ってくるミチノ。
ばかな、機密部隊みたいなもんなのになぜ一般人が知ってる
「有名ですよ。ほとんどの隊員達は志願者ですから」
セラフから衝撃的事実を告げられるカズキ。初めて知ったぞ。
「それは初めて知ったな」
「それに、ミチノは私達の事を嗅ぎ回ってましたしね」
「あははは、やっぱりバレてましたか」
「当たり前ですよ。私達じゃなかったら拷問にかけられてましたよ」
「拷問ですか、それは怖いですね」
「次から気を付けてね」
どうやら、ミチノはもともとこの三人の事を追っていたらしい。だから命の危険がある情報か、納得だ。
まあ話を聞く程度ならとカズキを説得しその場にとどまることに成功したミチノ。
「それで、現役の神伐隊様が一般人の俺になんの用だ?」
「は、はい。私、カズキ隊長に憧れてこの世界に入って来たんです」
「……一般人って言ってるんだ、隊長なんてワケわからない事を言うのをやめてくださいよミカルド先輩」
「うっ、うぅ……そうですよね。あの時代に居なかった私なんかが、カズキさんを隊長と言うのはダメですよね。ごめんなさい、二度と言いません」
大粒の涙をこぼしながら許しをこうミカルド。こいつこんなキャラだったのか。
「わかった。わかったから泣くなそれでも天下の九十九番隊隊長か女々しい!」
「隊長。女々しいも何もミカちゃんは女の子だよ」
「…おっと」
「ひっく、ぐすん」
このまま泣かしておくわけにもいかないしな。周りの奴らの視線が死ぬほど痛い、なんとかして慰めなければならない、どうしようか。
「泣くな泣くな。別に嫌ってる訳じゃないから、そう呼んでも構わないから」
「本当ですか、ひっく」
「本当だから、泣くのはやめてくれ」
「ぐすん。わかりました」
なんとか泣き止み?はしたが、これがあの神伐隊の小隊長とは思えないな。
「ったく、これで隊長とは聞いて呆れるぜ。隊長……ん、隊長?……隊長!?」
こいつが隊長。それも九十九番小隊の隊長……ってことは。
セラフとハートの方をチラッと見ると、二人そろってゆっくりと頷いてくる。
「……俺の、後釜?」
恐る恐る聞くと再び頷く。なるほど…そうきたか。
どうりで、俺が造った鎧を身につけていた訳だ。納得。
「カズキさん、後釜ってどういうことですか」
メモ帳を持ったミチノが迫りよってくる。くそ、ちゃんと話を聞いてやがるなこいつ。リュークなんか呑気にカレー食ってるんだぞ、ちゃっかり俺の分まで。
「後釜は後釜だろ」
「なるほど、さっきから隊長って呼ばれてるのはそういう理由だったんですね……って、えええええ!?」
後釜、つまりカズキは神伐隊に所属していたという事。
それは声を上げ驚かずにはいられなかった。
「カズキさんが神伐隊に!?それも、セラフ先輩とハート先輩の上司!?」
「まあ、そうだな」
「こ、こ、これは大スクープです。大・大・大スクープです!!」
「それもあの伝説とまで言われた九十九小番隊の隊長。それがまさかまさかカズキさんだなんて、これは凄い事ですよ凄い事ですよ」
驚愕の事実と秘密に興奮を抑えきれず、大声を上げ跳び跳ねたりとはしゃぐミチノ。
「うるさいぞ貴様ら、静かにせんか!!」
ここで仕事から帰ってきたレイカ先生の登場だ!
いつものように片手に仕事で使う資料を持ってご立腹の様子。プライベートでも仕事をさせるとは学園長もブラックな方だ。さすがテラさんだ。
「むっ、お前はセラフとハート……ミカルドだったかな。なぜここにいる」
三年三人を見て首をかしげるレイカ。
そりゃ一年のFクラスの寮に来ているのだから疑問に思うのも無理はない。
というか、学園七不思議とされてるミカルドの姿を知ってるとは、さすが先生。しっかりと生徒の顔を覚えていらっしゃる。
「カズキさんに会いに来たんですよ」
「カズキにか?あぁ、負かされた相手だもんな」
来た理由が分かって納得する。
だが今日負けた相手の所に今日来るかな普通。
「まさかお前達が負けるとは思わなかったぞ」
学園が誇る最強の一角、それも二人同時に倒してしまったのだ。いくらカズキが異常に強いとはいえ、負けるとは思えなかった。
「負ける気は無かったんですけど、やっぱり強かっただけですね」
「うんうん、一撃で倒されると心が折れそうになるよ」
「わ、私も噂以上の強さでした」
「まだまだ全力出してないんだ、大したことないだろ」
「まあ、それはそうですけど」
「まだまだ弱いなー私」
「知ってるか知らないか知らんが、こいつらは四年前の悪魔襲撃の時に活躍した奴らでな。あの時は助けられたよ」
「そんな事あったっけ?」
「ほら、ダテさんがドーラを倒した」
「あぁ。はいはいありましたねそんなこと」
確か四年前くらいだったかな。アルガト王国に悪魔共が攻めに来たのは。
あの時は抗争が激しかったからな、しょっちゅうそんな事があったから詳しくは覚えてないが、ドーラの件は別だった。
神伐隊内では要注意人物として危険視されていた奴だったのもあったが、ダテ兄がいたってのが一番大きいがな。
「この話はやめだやめやめ、昔話をしに来たわけじゃねぇんだとっとと帰れバカ共」
「バカはお前だ。国を守ってくれた先輩に失礼だろ」
「いたたたっ。ギブッすレイカ先生」
締め上げてくるレイカ先生の腕を叩き降参の意を伝えるカズキ。だが力を緩めてくれる気配は全く無い。
ひどい。
「お前らもこいつに用があるかもしれないが、まだ試合が残っているんだ。終わってから来てやれ」
「ちぇ、つまんないの」
「ふてくされるな。私も、終わってからこいつに聞きたい事が山ほどあるからな」
むっ。やなよかん。
「まっ、隊長が負けるとは思えませんけどね」
「私達は失礼します」
「またお話を聞かせてください」
「おう」
三人は立ち上がると礼をしてから寮から出ていく。
「へー、礼儀正しいね。ちゃんと教育がなってるじゃない」
「当たり前だ」
「……ミチノ、夜も遅いお前も帰れ。記事集めは試合が終わってからにしろ」
「そんなー」
レイカ先生の手により、ミチノも寮からトボトボと立ち去る。
「ったく、訪問者が多すぎる。ここは溜まり場じゃないのに」
最近Fクラス寮に人が集まってくる事がおおいので、少しご立腹のようす。そりゃそうだ、夜遅くまで仕事をしてるのに騒がれたらイライラする。
こんど仕事を減らせないかテラさんに頼んでみよう。
「で、だ。私の夕食はあるんだよな」
「……ん?」
そういえばわたくしとリュークとミチノさんの分しか作ってない。で、リュークは自分の分と俺の分も食べた、ミチノさんもちゃっかり完食してる。当然レイカ先生の分はない。
これは怒られる。なにか打開策がないか、とりあえずリュークの方を見ると女子部屋に戻ろうとしている姿が。
「おい、あ、テメェこらリューク、逃げんなよ」
「お前だけ食べて私の分を作ってないとはどういうことだ!」
「え、あ、いや、その、残業で遅くなって食べないと思い作ってませんでした」
「そんなわけあるかー!!」
「じょ、冗談です。出来立ての御飯を食べていただきたく今から作るのです。ささっ、仕事の疲れをお風呂で流してください」
「即興の言い訳だな。まあいい、私が上がるまで作っておけ」
「了解しました!」
そう告げると浴場へと向かう。急いで夕食の支度をする。
死のタイムリミットは近い!!
逃げやがったリュークを怨みながら作るのであった。
つづく