「さて、さくっと決勝戦終わらしますか」
「やっとだね」
「お前戦えよな」
「やーよ、めんどくさい」
「お前何しに大会に出てるんだよ」
「この世界の進化を観察してるの」
「はいはいご苦労様です」
ついに来た決勝戦。結局残ったのはカズキとリュークのみ。本来なら全員で挑む予定だったが、準決勝での相手が悪すぎた。
ここで負ける訳にもいかない。きっちり優勝し剣舞祭への出場権を頂く。
試合場に入ると歓声も罵声も何もない。前まではあれほどうるさかったものが今では無人のように静かだ。
対戦相手はAクラスの上級生。勝てないと思ってもせめて一太刀と覚悟を決めてある顔をしている。そして恐怖よりも怒りの感情が前に出ていた。
「あの覚悟……手強いな」
「骨のある生徒がいて良かったね」
「あぁ、申し訳ない気持ちで一杯だ」
本当なら学園の猛者達と高め合い勝ち、もしかしたら剣舞祭に出れたかもしれない。すまねぇな大会を自分勝手に滅茶苦茶にしてよ、俺なんかが出てきちまってよ。
だが俺にも勝たないと、剣舞祭優勝しないといけない理由があるんだ。
試合開始のブザーが鳴る。カズキはゆっくりと刀を鞘から抜き構える。
「さあかかってこい。俺と戦ったという剣舞祭優勝などという名誉以上をくれてやる」
「うおおおお」
「せめて一太刀でも」
「やってやる」
手に神威で顕現した武器、ミスフォルツァを握り一斉にカズキにめがけ攻撃してくる。
「気現の太刀で仕留めてやる」
向かってくる生徒をミスフォルツァごと切り捨てる。
「なっ!?」
「うっ、うわあああ」
臆しながらカズキに向かうも、全て一撃で斬られてしまう。
「気現流に二撃もいらん。全て一撃で仕留めるその覚悟に威力がうまれる。覚悟こそ強さだ、よく覚えとけ」
僅か数十秒足らずで試合終了のブザーが静かに鳴らされる。
長期にわたる大会、その決勝戦があっけなく終わった瞬間だった。
「大会も終わったし打ち上げでもやるか?」
「みんな退院してないのに?」
「……お預けだな」
なんて会話しながら寮へと戻るカズキとリューク、ちなみに表彰式があるのにもかかわらずだ。
「で、これからどうするの?」
「そうだな、剣舞祭まで日数あるしな。また授業と修行の日々だな」
「そうじゃなくて、カズキがどうするの」
その問にカズキはしばらく黙ったあと
「……別に、いままで通りさ」
そう答えた。
「……ふーん」
リュークも興味無さそうな反応で返してくる。
「明日から普通の授業だ。やってらんないぞー」
「そうだね」
「まずはベットで寝ている仲間に優勝報告だ」
と、寮へ戻る道を回れ右して医務室へと向かう。
「よお元気かい諸君!優勝手土産にお見舞いに来たぜー!」
いつも通り医務室内で無礼な入り方をするカズキ。
当然医師に怒られる。すみません。
「相変わらずバカまるだしだなカズキ」
その姿を見て笑いながらやってくるジェルマン。
「その悪態元気そうだなジェルマン」
「こちとらいつも元気だよ。ただここの医師が出させてくれねーだけだ」
「他は?」
「ノアとルリーは大人しく寝てる。レオンは飯食ってる」
「で、お前は?」
「暇だから病内徘徊してる」
「本当に暇してるな」
「今日の夜には退院だ」
「やっとだな」
「……俺は、俺達はもっと強くならなきゃいけねぇ。準決勝戦の時に自分の力の無さを嫌と言う程思い知らされた」
あの試合は蹂躙に近かった、手も足も出ずにただただ圧倒されただけだった。
「気にするな。と言いたいが、最強を目指すお前には避けて通れない通過点だぞ」
「分かってる。俺達が束になっても届かなかった強さ。だがお前はそれを越えちまった」
「それは俺があいつらより強かっただけの話だ」
「けっ、憎たらしい。俺が言いたいのは、お前は何者なのかそれが知りたい」
「知ってるだろ?俺はヒノモトのサムライだ、お前らがギャーギャー騒いでるレオルド帝国を滅ぼした一人ってなだけの普通の人間だ」
「ヒノモト……不死身のクニヨシ、千人斬りのダテ。ヒノモトの人間は必ず世界の話題になる、お前もそれに肩を並べてるのか」
「さあな、偉大な二人ほど俺は有名じゃない」
自身の知名度なんて考えた事もなかったが、ジェルマン達がカズキの事を知らなかったのでそんな有名ではないと簡単に推測できる。
「ヒノモトの話なんてどうでもいい。お前はこれからどうするんだ」
「俺は、修行してもっと強くなる。いずれテメェをぶっ殺してやるからな」
「殺意なら対戦相手にぶつけろよな」
「うるせぇ。俺は俺より強いやつに勝つ。たとえ仲間でもだ」
「素晴らしい精神だ。楽しみにしておこう」
「で、お前は何しにきたんだよ」
「あぁ、お見舞いだよ。ついでに優勝報告」
「優勝したのは知ってる」
「なーんだ。つまらん」
「まずお前が負ける訳ないだろ」
「まあ知ってるならいいや。退院祝いと優勝祝いを兼ねて打ち上げでもやろうぜ」
「おっ。お前にしては気がきくじゃねぇか」
「うるせぇほっとけばーろい」
「みんな連れて寮へ戻るから待ってろ」
「へーへー」
てことで、寮でしばらく待っているとジェルマンら全員が帰ってきた。やっと全員が揃ったぞ!
「やあやあ。退院おめでとう諸君!」
「なにがおめでとうだバカ」
「表彰式にでないで。あとでレイカ先生に怒られてもしりませんわ」
「後が怖いですよ」
と、なんかめっちゃ怒られてるんだけど。別にいいと思うんだけどな。
「で、どこにご飯食べに行くんだ?」
そんな奴らとは別に食事の事で頭一杯のレオン。医務室の飯は美味しくもなく量もすくなかったそうだ。
「街にいいレストランがあるんだ。そこ行きましょ」
外食しようと提案するカズキ。まあたまにはね。
「ん?外食か?」
「いいな」
「いいですけど。お金は大丈夫ですの?」
「足りなければわたくしが出しますわ
「それは悪い。しっかり割り勘だ」
「レイカ先生の夕食はどうするんだ?」
「置き手紙を書く。店の名前も書く。これなら文句ない」
メモ用紙にサラサラッと書いてテーブルに置く。これでバッチリだ。
「なら大丈夫だか」
なぜか納得するジェルマン。
「決まったなら早く行こう。腹が減った」
「そう急かすなよ」
てなわけで、Fクラス移動中……。
街
街頭で明るく夜になるとまた違った賑やかな街並みに変わる。
いつも、といってもたまにしか来ない街の変わった雰囲気を感じながらもカズキの案内でその店へと向かう。
「ここだ」
石造りで少し古びた感じがする外装のお洒落なレストラン。看板には『天上天下』と大文字で場違いな漢字が書かれている。
「……ここって」
「天上天下。ヒノモトの言葉で天の世界と地の世界、つまりこの世の全てって意味だ」
「ヒノモトの言葉…?」
「俺の知り合いがやってるんだ。まあお前らも知ってるやつなんだけどな」
とりあえずドアを上げ中に入る。内装は木製で外装と違って綺麗で清潔感溢れている。
カウンターとテーブル席がある少し狭い空間、そこには一人の少女がテーブルを拭いていた。
「いらっしゃいませ、何名さ……まですか」
青髪のポニーテールも揺らせ満面の笑顔で接客をしていたルイス。カズキ達を見るなりその笑顔が崩れ固まる。
「宣言通り来たぜルイス」
「か、カズキ。なぜここに。しかもみんな連れて」
「優勝祝いだよ。外食するならやっぱりここだろ」
「ノア、ジェルマン。なぜ止めなかった」
「まさかルイスさんのお店に行くとは思ってもいませんでしたわ」
「ああ、なぜここにしたんだよ」
二人を見て言うが、知らなかったと答えるだけだった。
どうやらノアとジェルマンはここがルイスの家がやってる店とは知っているようだ。
「ここだと色々と都合がいいんだよ」
「まあいい。好きな席にお座りください」
「お?切り替えがはやいね」
「いくら友人でも大切なお客様だ。しっかりとおもてなしはする」
「けっ、どっかで聞いたことあるセリフだな」
「ですわね」
カズキ達は全員が座れるテーブル席に移動する。
「へー、素敵なお店ですね」
「そうだな。ルイスも家の手伝いもして学園では風紀委員として頑張って、偉いな」
店内をキョロキョロみて感想を述べるルリーとルイスを見て感服するレオン。
「メニューがお決まりになりましたらお声をかけてください」
水が入ったコップを人数分テーブルに置くとメニュー表を渡す。
「いろんな種類があるんだな」
「ルーンブラッドの料理もありますね」
メニューの種類の多さに驚き何を頼もうか悩んでしまう。
「俺はもう決まってるぜ」
「わたくしもですわ」
ジェルマンとノアを除いてだ。
「はやいな」
「何度も来たからな」
「そうですわね」
「……常連なのか?ルイスの事苦手そうだったのに」
「学園のルイスさんは苦手ですけど、プライベートのルイスさんはとても良い人なのですわ」
「そうだな」
ノアの言葉に頷きながら賛同するジェルマン。
プライベートで会ったけどあんまりかわらなかった気がするんだけどな。
しばらく雑談を交えメニューを決める。
全員が決まり終えると、ルイスを呼ぶ。すぐにメモ帳を持って出てくるのがさすがだ!
「俺はこの危険種のステーキ盛り合わせを頼もう」
「おいこら共食い」
「知らんな」
「私はグラタンをお願いします」
「俺はまかない丼だ」
「わたくしはシーフードパスタの貝抜きですわ」
「ヒノモトの料理を頼もうか」
「んー、この店のオススメがいいな!」
「申し訳ございませんお客様、メニュー表に無いものはご注文できません」
「だってよ、はやくかえろよな」
そんな失礼なことすんのかよ。信じらんねー!
「……カズキ、メニューにないものを頼むな」
「あ、俺ね」
なんだ、俺の事かよ。
「ヒノモトの食文化なんて私が知るわけ」
「いいぞ、作ってやる」
呆れるルイスの後ろからエプロン姿の青年が言ってくる。
「あ、兄上」
「お客様のニーズに合わせて料理を作るのは料理人の仕事だぞルイス」
笑いながら言うこの青年。ルイスの兄、シバ。兄妹そろって青い髪と凛々しい顔つきが似ている。
「でも、ないものをつくれだなんて」
「大丈夫。近々ヒノモト料理もメニューに加えようと思っていたんだ。採点頼むよカズキ」
「任せてください」
「みんなもルイスの友達かい?妹が世話になってるね。不器用で硬いやつだけど仲良くしてくれ」
「兄上、そんなことはいいから料理を頼むよ。ほら注文表」
メモ帳をシバの胸に押し付けながら厨房へ戻すルイス。
恥ずかしいのか、顔が赤い。
「相変わらずの兄貴だな」
「うるさい黙れ」
「仲良くていいですわね。微笑ましいですわ」
「黙れ黙れ黙れ、頼むから言わないてくれ」
顔を真っ赤にして厨房へ逃げるように立ち去るルイス。
「人間味があるねかーわいー」
「学園の堅物が見違えるな」
「そうですね」
ルイスの意外な一面も見えた所でカズキがある話題をあげる。
「みんなは、剣舞祭までの間に何かするのか?」
「何かする……ですか」
「あぁ、何か準備とかなんでもいい」
「んなもんトレーニングしかないだろ」
「ジェルマンの言う通りだ。俺達はお前ほど強くないからな、遊んでる暇はない」
「レオンさんの言い方はトゲがありますけど、私も同じ考えです」
みんな、自分の弱さを知り修行に明け暮れるようだ。偉い、偉いぞ!さすがだ!
「……そうか、みんな大変なんだな」
「カズキさんは何かするんですの?」
「俺か?俺は一度ヒノモトに帰ろうと思う」
「ヒノモトにか!?」
「いつ帰るんだよ」
「近々ある長期休暇の時だ」
「長期休暇ぁ?そんなもの合宿とかになって潰れるのがオチだろ」
顔を歪ませながら言うジェルマン。
「だが、故郷には帰っておきたいな」
「そうですわね。家族に剣舞祭出場の報告をしておきたいですわ」
「ただの帰省じゃない。レオンの妹の件や、ルイスとシバの兄さんの件について話さないといけない」
「ルイスとシバさんについてもか?」
「ダテ兄から機会があればヒノモトに案内しろと言われましてね。できれば例の恋人も連れていきたいなーと思ってるんですよ」
「恋人か、案外近場にいるものだぞ」
「近場ばぁ?」
「へー、千人斬りのダテか」
「ダテって、あの数年前に悪魔の軍勢を食い止めた英雄!?」
「魔軍ドーラとの戦いだろ?有名だぞ」
レオンもその会話に参加してくる。めっちゃ有名なんだな。
「ダテ兄があんなカス相手に負けるわねーだろ」
「死の太陽が降ってきたりしたのにな」
「あぁ魔炎星か、そんなんあったな」
「伝説の戦いですね」
「伝説ね。そんなに凄い戦いではなかったと思うぞ」
ここで料理を持ってきたシバが言ってくる。
「そうなんですかシバさん」
「俺もその戦いに携わっていたからな。あとレイカも」
「レイカ先生もですか」
「悪魔達は強かったよ。一人一人が強い、それが軍勢として襲ってくるんだ、さすがの俺もダメかと思ったよ。でもダテが来てから一気に逆転してな。神伐隊も来たし、そこからはすぐに終わったさ」
悪魔によってほとんど壊滅状態だったが、ダテ達が来てから一方的に叩き潰したあの光景は今でも忘れられない。
「俺達にとっては伝説かもしれないが、あいつらにとっては当たり前なんだろう。なぁカズキ」
「そおっすね」
「……神伐隊か」
「神の為世界の為戦う組織。最強を名乗るなら越えなければならない壁」
みんなの反応を見て、やはり知られている組織なんだなと実感したカズキ。
「まあそんな堅い話はともかく、腕によりをかけて作った料理だ。おいしく食べてくれ!」
「はい」
「いただきます」
「うまい。濃くもしつこくない味付け、噛めば噛む程肉汁が溢れるぞ」
肉の盛合せを食べ進めるレオン。
「俺特性のタレで味付けしたからな。肉も今朝狩った危険種で新鮮だろ」
「このグラタン、チーズがたっぷりでのびのびです」
「ここのパスタはどれもおいしいですわ。レシピも教えほしいくらいですわ」
「おー、これがおすすめ!おいしそう!」
「はっ、てめえらわかってねぇな。ここのまかない飯がいっちゃんうめぇんだよ」
「ジェルマンは時々食べにきてくれるよね。あと稽古にも顔を出すしね」
「あんたを倒すまでは通ってやんぜ」
「天ぷらと寿司か、無難だな」
カズキの前に出された料理は海老や野菜を揚げたものと様々な魚の寿司。彩りもよくどれもおいしそうだ。
「うまいな。だがなー、醤油が無いってのは痛いな」
「ショウユ?たしかあのしょっぱいやつですわね。ヒノモトの調味料なのですか」
「まーね。あの時振る舞ったのもヒノモトの飯だしね」
「そうなですの。こんどレシピを教えてほしいですわ」
「おっ。いいぞ」
「そういえばお前達はトーナメント優勝したから剣舞祭に出場するんだろ?」
「そうですね」
「いやーまさか下級生に出場権を取られるとは、アルセウス学園も落ちたか」
「というよりも、カズキさんがいたからだと思います」
「悔しいが、そうなんだよな」
「ミカルド先輩とセラフ先輩にも勝ちましたもんね」
「ほー、現役の神伐隊の面々がいたのに勝つとはな。さすがはカズキ、最強無敵は違うな」
「バカ言わないでくださいよ。最強でも無敵でも無いっすよ。まだ勝てないやつもライバルもいるんですから」
「お前が勝てないやつか、気になるな」
「いるんかそんなやつ」
「当たり前だろ。案外近くにもいるかもよ」
「えー、気になるなー」
「うっせ、だまれ」
「お前ら酒は飲めるか?」
「葡萄酒くらいなら少しだけ」
「そんな手持ちないぞ」
「金なんて気にするな。再開と優勝祝いで今日は俺の驕りだ」
ワインとグラスを持ってやってくる。
「親睦を深めるために話そう…」
「兄上、みんな門限があるんだ。ほどほどにしてやってほしい」
「わかってるよ。酔い潰すのはまた今度さ」
「あ、わたくしはルリーさんの生い立ちとか気になりますわ」
「わ、私ですか」
「魔女ってどんな暮らしをしているのかとっても気になりますの」
「ルーンブラッドか、俺も行ったことないから気になるな」
「え、えっとですね」
突然の事で焦っているルリー。
だが、神威とは違った力である魔力を持ちそれを活用した魔法はルーンブラッドだけで、文化も異なる所が多くそれも広まっていない。最大面積と秘境をもつアニマニアとは違った意味で謎が多い。
皆が興味を示すのも納得だ。
「その、私の事はそんな話す事はありませんがルーンブラッドという国の説明ならできます」
「おお、よろしくたのむよ」
などとルーンブラッドの話で盛り上がりながら食事とお酒を楽しんでいたが、門限がどーのこーのとルイスがうるさく言うので少ししたから寮へ戻るのだった。
ちなみにこの後レイカ先生に色々と言われたのは別のお話ってやつだ。
つづく