てことがあり、今は馬車に揺られながらサーマリア地方へ向かっている。
ちなみにグラトニーとはピンク色の長い胴体に六本の足、二つの腕に四つの小さな目と巨大な口を持つ。名前の通り大食いで自分より大きくてもどんなモノでも丸呑みにし捕食する魔物だ。
サーマリア地方にある森の奥深くに巣があるのが確認されており、これ以上被害が出る前にしとめるそうだ。
「グラトニーだって、珍しい事もあるんだね」
「ここは裏世界に繋がる唯一の場所だからな、いても不思議じゃない」
「裏世界?」
「こっちの話です。気にしないでいいよ」
「気になるじゃねぇか。なんだ裏世界って」
「悪魔や魔物がいる世界、お前らで言う魔界だな」
「え?じゃあグラトニーって」
「魔物だな」
「危険種じゃ勝てない訳だ」
レイカ先生はその事を知ってたから依頼を受けるのに渋っていたんだろう。相変わらず素晴らしい先生だ。
そんな先生は学園に戻っている。なぜかと言うと、俺達生徒の依頼だからだ。
「……なぜその事をお前が知ってるんだ?」
魔界からの敵は主に神伐隊が戦っているので一般人には情報がほとんど流れてこない。だが、カズキは詳しく話しているので不自然に思えてるのは当然だろう。
神伐隊は知られてるから魔界の事も知られているはずだと思っていたカズキ。誤算ッッ!!
「そりゃ、ヒノモトだからだよ」
「そうなのか?」
「そーさそーさ」
と、首をポリポリかきながら適当な事を言って誤魔化そうとする。
「なんだ?ヒノモトには悪魔がくるってか?」
「悪魔は来ないが、それよりも恐ろしいお方がくる」
「なんだそれ」
「ヒノモトも大変なんですね」
なんとか誤魔化せたようだな。別に嘘を言った訳ではないしいいよね。
少しほっとしていたら急に馬車が荒れだす。外では馬が鳴き声を出しバキバキと木々が倒れる音がする。
「何事ですの」
急いで馬車から降りるFクラス一同。
目の前にはグラトニーの巨体が道の真ん中で倒れている。
ただ倒れるのではない。体には切り傷があり、手足が斬られ緑色のドロンドロンの血が流れている。
明らかに戦った後で、絶命している。
「あれがグラトニーか」
「死んでるな」
「……カズキ、本当にうまいのか?あれ」
「見た目はああだけどな、ゲテモノ料理ってやつさ」
「ゲテモノねぇ……」
「お前こんな時でも飯のこと考えてるのかよ」
「いいだろ別に」
「警戒を緩めないでくださいまし。これを倒したモノが近くにいるかもしれません」
ミスフォルツァを展開し周囲を警戒しているノア。
「おっと、それもそうだな」
それに続くようにそれぞれ四方を警戒する。
「こいつを倒したってことはスゲェ奴なんだろうな」
「人か危険種か、それとも悪魔か」
とにかくグラトニー以上の化物が出てくるはずだ。
一体どんなやつが出てくるのだろうか周囲に気を配っていると、倒れてたグラトニーがグオオオオと大声を上げて大口を広げ此方に倒れるよう捕食しにかかる。
「こいつ、まだ生きて」
死んでいるんだと思い完全に不意をつかれた。すぐに戦闘体勢になる。
だが、胴体を横に真っ二つに斬られ横へ倒れる。
「正義粛清!です」
グラトニーの屍を踏みつけながらニッコリ笑顔で呟く緑の長髪に紫の瞳の少女。
こ、こいつは……。
「あ、あなたは……」
「誰だ?」
「大丈夫ですか旅のお方……おや?アルセウス学園の制服。私の後輩か、良かった良かった」
駆け寄って近づくなり、制服姿を見て更に安心する少女。
よく見るとこの少女も汚い血が付着しているが、アルセウス学園の制服を着ている。
「あ、あの、あなたは」
「あああああタイチョー!お疲れ様です!!」
ルリーが問いかける途中。その少女はカズキを見るなり近づくと頭を深々と下げる。
「み、ミカルド先輩」
この少女は準決勝で戦ったあの鎧の奴だ。試合後寮に押し掛け正体を明かした健気で純粋な少女だ。そして、俺の後釜という……。
「はい。なんでしょうか」
「隊長はやめて」
「……うぅ。ご、ごめんなさい。やっぱり私なんかがひっく、ぐすん」
すぐに泣き出す。
「うーわーカズキが泣かせたーサイテー」
「女の子を泣かせるなんて酷いです」
「レディにそんな事するなんて最低ですわ」
「お前がそんか奴だったとはな。見損なった」
「けっ、ゴミグズが」
するとリューク筆頭に罵声罵倒罵詈雑言の嵐。
他は知らないから仕方ないが、リュークテメェは知ってるだろうが!
「泣くな泣くな」
「わ、私は仲間外れ」
むしろやめた身である俺が仲間外れな気がするが、今そんなこと言ってる暇はない。
「んなこない。入った奴全員が仲間だファミリーだ」
「ほ、本当ですか」
「本当本当。だから泣くな、守る側なんだ常に笑顔だ!分かったな」
「はい」
「よーし、いい返事だ」
ふう、なんとか切り抜けたな。
「で、この人とはどんな関係なんだ?」
「親しく話してる所を見ると、お知り合いなんですの?」
おっと。肝心な所が切り抜けていなかったな。
「えぇ?あ、えーっと」
ここで返答を間違えれば変な方へ話が進む。だが素直に話せば神伐隊がどーのこーのとなる。最悪だ。
「ミカルド・バルティグンです。よろしくお願いたします」
「ミカルド……」
「バルティグン?」
「……って、あの学園最強の鎧野郎か!?」
その名前を聞いて思い出す。あの時戦った化物の事を。
「こんな可愛らしい人だったなんて」
「そもそも女性だったんです!?」
「え、あ、はい。私、女の子なんです」
「この人に俺達が勝てなかったのか、信じられないな」
「嘘だろ………」
「…で、なんでここにいるんですか?」
「街で噂になっていたので、ちょうどクエストであったので人々の不安を無くすためにグラトニーを討伐しに来ました」
ようは人助けらしい。そういえばギガドラの依頼も受けていたし、根っから善人のようだ。
「あらら、俺達の獲物が」
「まあ仕方ないな」
「そんな事いいから食べようぜ」
「食欲ばっかだなお前はよ」
「え?何かあったのですか?」
「いや、俺達も依頼で来たんだけど先輩に先越された」
国王から依頼受けたんだよー的な事をミカルドに説明する。
「この程度、隊長のお手を煩わす程でもありませんよ!」
説明を受けて納得したかと思えばそんな事を言う。
頼むからみんなの前で隊長とだけは言わないでくれ
「なんでしたら、私から説明しますよ」
「いや、大丈夫だ。話が拗れる」
「拗れる?」
「いや、なんでもない」
ここで俺が拗らせる訳にはいかない。とりあえず今は一度宮殿に戻ってあの王女に事情説明をしよう。
と、思ったが空から黒い何かが勢いよく降下してきて、グラトニーの遺体を掴み飛びさっていった。
あまりにも一瞬の事で、皆は呆気にとられていた。
カズキとミカルド以外は、だ。
「ここで会ったが初めてだなぁ。ガンジ」
炎の鎖がその何かを捕らえており、力任せに引き寄せ地面に叩きつける。
「三ヶ月前に悪魔共をアルガド王国に差し向けて来たのはテメェだよなぁ?覚えてんぞ!あぁ!?ぶっ殺す!」
その正体は黒い剛毛を身に纏い羊のような捻り曲がった角にコウモリのような羽をもった筋骨隆々の化物。それは誰しもが連想する悪魔の姿だ。
「へー、もうここまで侵略してきてるんだ」
「ガンジってジンカンの部下」
「そんなの知らん」
「ミゼバーサーカー。それにカズキまでいる……新旧小隊長が揃いも揃って出くわすとはな。俺の命もここまでか」
「遺体の回収。今回の件……テメェらの仕業か?」
「答える必要はない」
「ならば死ねい」
「ぐわああぁぁぁ」
足に繋がれた炎の鎖が燃え上がり身を焼かれるガンジ。
おぞましい断末魔を上げながら死に絶えてゆく。
「ジンカンめ、小賢しい真似しやがって……ぶっ潰してやる」
「私の正体を知っているとは……なかなか侮れない悪魔ですね。で、どうしますか」
「……まずは王女に連絡。その後はお前らに任せる」
「おいカズキ。どうゆう事だ」
「とうした?」
「どうしたじゃねぇよ。さっきのはなんだ」
「あぁ、魔界の悪魔だ」
「あ、悪魔!?」
「あれが悪魔なのか、初めて見た」
初めて見た悪魔に驚きながらもその存在は伝説ではないことを認識する。
「アルガド王国に目を付けてるな、近々大群で来そうだな」
「魔界に唯一繋がっている大陸ですもんね。恐れていたことが起こりそうですね」
「……そうだな」
詳しい話や質問は後にし、乗ってきた馬車に乗車しアルガド宮殿へと戻る。
その最中で、魔界の事や悪魔についてなど軽い説明を皆にする。
魔界とは、まだ発展されていない大陸で、世界の裏側にあるとされている。強力な精霊や妖精、魔物、悪魔などが暮らし魔王が支配している未開の地である。
悪魔とはみんなが思っている通りの奴らなので説明はなし!!
ただ一つ伝えた事としては、魔界の住人にも良い奴はいる。特にミカルドには言い聞かせた。
などとしているとアルガド宮殿へと戻り、再びラウラ王女と対面する事になった。
「なるほどね。グラトニーはミカルドが倒したと」
一通り説明すると溜め息をつき不服そうな顔をするラウラ王女。
「まあいいわ。どっちしろ仕留めてくれたのだし、無駄足だったけどありがとうね」
「ちっ、イライラする言い文だな。ドルツェルブの皇帝陛下の方が礼儀正しいぞ」
ラウラ王女の上から発言に額に青筋が浮き上がるほど憤りを感じるジェルマン。
「ミカルドも忙しい中でありがとう」
「当然の事をしたまでです」
「……でも、悪魔が現れてカズキが倒したってのは信じられないわ」
悪魔が現れて、更にカズキが倒す。カズキの実力を知らない者にとっては信じられない事だ。
「隊長をバカにするのは私が許しません」
「落ち着けミカルド、この程度で怒ってたらダメだ」
「しかし」
「……隊長?」
隊長という言葉に首を傾げるラウラ王女。
「用件は以上です。それでは失礼します」
不味いとすぐ察知したカズキは間髪入れず話を切り上げ帰る。
「あ、ちょっと待ちなさい」
当然待つわけもなく、そそくさといなくなろうとするが、扉の横に立つ近衛兵に止められる。
「ラウラ王女殿下がお呼びです」
「お戻りになられるようお願いします」
手に持つ槍をカズキの首元に向け、殺意むき出しのくせして優しい口調で警告をする。
ここで強引に突破しても構わないが、そしたら大問題になってしまう。
かといってこのままここに入れば色々と面倒な事になってしまう。
どうする。
「ちっ、わかったよ」
とりあえず素直に従う。その方が良い方へいく可能性が大きい。
「……それで、隊長とはどういう事なの?」
「どういう事なんだジェルマン」
取り敢えずジェルマンにふってみる。
「俺が聞きてぇよ!」
ちっ、ダメだったか。知ってたけどね。
「だってよレオン」
「俺も、セラフ先輩やハート先輩がカズキの事を隊長って言っていたのが気になる。どういうことだ」
くそ、レオンでもダメか。なんか墓穴掘った気がする。
「セラフとハートも言っているのか」
それを聞いて驚くラウラ。やはり墓穴を掘った!
「どういう事か説明してちょうだい。あなたは神伐隊なの?」
「……個人の事情に首を突っ込むのはいくら王女殿下でも無礼かと思われますが」
「国民の事情を把握するものも王の務めよ」
「安心してください。今ここに在籍してるだけで、すぐに去ります」
「在籍してる間でも私達の管理下、危険種から安心して眠れるのは誰のお陰かしら?」
「御言葉ですが、自身の身を守れる力量は持ち合わせております。そちらこそ、私の力を借りる事のないようにお願いします」
「相当な自信ね。剣舞祭優勝を楽しみにしているわ」
「楽しみにしていてください」
「……王女の前で口の減らない人ね」
「俺の国の王女じゃないからな」
「………もう我慢ならないわ。この不届き者を捕らえなさい!」
カズキの悪態にとうとうキレたラウラ王女は近衛兵を呼び集める。
「……俺に刃向けるってことは、覚悟できてるんだよな?」
カズキを囲い首元に刃を向ける近衛兵達。
そんな状況の中、一切動じないカズキ。
「そっちこそ覚悟はできてるんでしょうね。戦争よ」
「おやめくださいラウラ王女殿下」
「俺もやめた方がいいと思うぞ」
ラウラ王女の宣戦布告を聞いて必死になって止めるノア。その隣からレオンも忠告するように言ってくる。
知っているのだ、カズキを敵に回すということがどういうことなのか。その強さ実績を知ってるからこそ止めているのだ。
アルガド王国の為に。
その事を理解しているジェルマンは笑い、ルリーはあたふたしている。そしてリュークは、寝ている。
「何を恐れているのノア?こっちにはミカルドやセラフ、他の神討隊もいるのよ?」
「え?私は戦いませんよ?死にたくないですし」
ラウラ王女の発言を聞いてミカルドは戦う意志がないことを言う。
「え?」
それにはキョトンとしてしまう。
「それに今ここで手を出したら滅びますよ?この国」
加えて衝撃的な発言をする。
「俺は構わんぞ?ここはばあちゃんとテラさんと父さんだと思われる人の故郷だが、知った事ではない。俺の邪魔するなら老若男女はもちろん。仲間だろうが家族だろうが、許嫁だろうが……殺す!」
「許してください隊長。ここは私の大切な場所なんです。ですから」
「安心しろミカルド。お前も国も仲良く滅ぼして歴史から消してやる」
「そ、そんな」
「で、戦争でいいんだよなあ?王女さん?」
「ええいいわ!」
「じゃあ。合戦の始まりだな」
その言葉を合図に、突き付けられた槍の刃を切り捨てると跳躍しラウラ王女に斬りかかる。
ラウラ王女が横に振るう剣を台にし頭上を回転して背後に回り込むと首元に刀を向ける。
「いい反応だ。だが、これまでだ」
「くっ」
「貴様、ラウラ王女殿下から離れろ」
「安心しろ。今こいつを殺して殺さなくてもこの国を滅ぼす、あの世で死者集めて国でも作ってろ」
「やめてください隊長。殴るなら私を、殺すなら私だけで許してください」
「俺の敵は国だ。一人個人殺しても意味がない」
「はやまってはダメですわカズキさん」
「そうですよ考えて直してください」
「犯罪に染めるとレイカ先生がうるさいぞ」
「とばちりはごめんだぜ」
「あ、もうお昼だ。パスタがいいな今日」
王女を殺そうとするカズキを止めようも説得する。中には保身や全く関係ないことが聞こえたが気のせいだろう。
「うっ、確かにレイカ先生に怒られるのは嫌だな。あと今日の昼はピザがいい」
「……そんなんで揺らぐのですね」
「でも怒ると怖いですよね」
「えー、ピザ~…いいね!」
「ふざけるな!いいから離れろ」
こんな緊迫した状況なのにまったく緊張感のない会話に、近衛兵は声をあらあげる。まあ当然だな。
「なんだなんだ。騒がしいなと思ってきたが、何事だ」
そこへドアを開けやってくる胸元が露出された白いスーツを着こなした少女。
白の長い髪き凜とした黒い瞳、整った顔立ちは女でも魅了されそうなほど格好いい。
「……なんだカズキか。騒ぐならほどほどにしろよな、こっちは悪魔退治後で疲れてるんだ」
緊急事態なこの場面を見て溜め息を一つこぼすと呆れた顔をして立ち去ろうとする。
「へーへー」
「ぼ、ボス!隊長が暴れてるんです。なんとかしてください」
ミカルドが彼女を背中を掴み助けを願う。
「ん?いつものことだ。暴れたりないんだろ?妹にもいい刺激になるから別にいいだろ」
「で、でもそしたら国が」
「あいつは優しいから大丈夫だ。そんなことするやつならもう世界は滅んでいるさ」
「なんだと!?史上最凶最悪の悪魔と呼ばれたこの俺に」
「そんな事誰一人も言ってないから無視して構わないぞ」
「おいこら」
「で、なんでお前がここにいるんだ。こうゆう所は大嫌いだろ?」
「訳有り」
「なるほど」
「ボスこそなんでここに?新たな就職先?」
「ここは私の家だぞ?」
「へー」
「お前こそアルセウス学園の制服着て、受かったのか?」
「お陰様で」
「お前が勉強教えてと泣きついてきたときは何事かと思ったが」
「泣きついてねーよ!!バーーカ!」
「はいはいそうですねっと、あと戦争する気はないなら妹を放してやってくれ。かわいそうだ」
「それもそうだな」
刀を納め、ラウラを解放するとメーテルの方へ歩く。
「妹よ、勝手に国ぐるみの喧嘩を売るな。せめて一対一の勝負にしろ」
「だっ、だって」
「あれ?ボスって妹いたん?」
「あぁいるぞ」
「ボスと違ってかーわいー、にてねー」
「養子だからな、私が」
「へー、養子ねー、お前がかーい」
「おいカズキ、誰だこの女は?」
「知らんのか?神伐隊七番隊隊長を!」
神伐隊知ってるくせに、隊長共の事は知らないんだなと思ったカズキ。また墓穴掘ったか?
「覇軍のメーテル、軍神天開は有名ですわ」
「なに!?あの覇軍なのか!?」
「ハグン?」
「なんですかそれ?」
ノアとジェルマンは知ってるようだが、レオンとルリーは分からないようす。
てことで詳しく説明することに!
「メーテル・レイ・アルガド。カズキさんが言っていた通り神伐隊七番隊隊、彼女に兵を率いて戦わせたら右に出る者はいない程の策士戦略家。勿論個人の強さも抜群ですわ」
「神伐隊の隊長は授業で習うほど有名だぞ」
「へー、そーなんだー」
「そういえばルーンブラッドにもいますね」
「アニマニアにもいたな」
「百聞は一見に如かずだ、今度挑んでみるといい」
「そうだ、ちょうどいいカズキ」
「いやだ!ぜーったいいやだ」
「何を言う、お前と私の仲だろ?一つ頼まれてくれないか?」
「やかましい。おめぇの頼みは大事なんだよ」
「そんなことはないさ、ガンジの討伐なんてお前なら簡単だろ?」
「ガンジ?ふふっ」
「どうした?」
「そいつなら既に俺が燃やし尽くした、頼みなんて聞かなくてよくなったな」
「さすが、仕事がはやいな」
「でもなんでガンジを殺してほしかったんだ?」
「あいつがここに悪魔引き連れてくるからな、大変なんだよ」
今回討伐した悪魔の軍団はガンジが差し向けたものだったらしく、それだけでなく何度も送り込んでいたようで元凶をはやく叩きたかったらしい。
「あんなカスも倒せないとは神伐隊も落ちたものだな」
「落ちたんじゃなくてお前が強すぎただけだ」
「まっ、俺には関係ない話だけどな」
「で、お前はなんでここにいるんだ?」
「訳有り」
「なんでここにいるんだ?」
「剣舞祭に出るから、その挨拶」
「剣舞祭!?お前が出たら絶対に優勝じゃないか」
「決めつけは早い、神伐隊の奴らもでるらしいしな」
「確かに機能はほとんど停止してるが暇ではないぞ」
「知るかそんなん」
「ちょっと待て、なんの会話をしてるんだ、ついていけねぇ」
しまった、つい戦友と話混んでしまった。
絶対不審がられているわこれやだー。
「なんだカズキ、正体隠していたのか」
「一応隠してはいたんだが、ボロがボロボロと出てしまった」
「嘘下手だしつけないもんな」
「うるせ」
だが、事実は事実。ここで強引に誤魔化しても構わないが今後やっかいなことになるし、どっちにしろ知られる事だから今ここで伝えておくのも一つの手だな、あともう疲れたし。
「突然だが、今からお前らに隠していた事を発表する」
「なんだよ」
「お前ら、神伐隊って知ってるよな」
「知ってる」
「第七番隊の傘下にある九十九番小隊ってわかる?」
「あぁ、あの天下の九十九番隊だろ?」
「そこの隊長ってわかる?」
「神伐隊最強、いうなられば世界最強だろ?」
「そいつって誰かわかる?」
「知らん」
「それ俺」
「へー……へ?」
「えええ!?」
まあ、こうなるわな。
「神伐隊関係の人かとは思っていたが、まさか九十九番小隊の隊長だなんて」
「こいつが、最強!?」
「最強って勝手に言ってるだけで最強ではないぞ。めっちゃ負けまくってるし、勝てないやつもライバルもいる」
負けまくってるのに最強呼ばわりとか風評被害にも程がある。
「ふざけるな!俺の、俺の目標はこんな間近にいたのか!」
あれだけ最強になると言いふらしていたのにも関わらず黙っていられたらそら怒る。
「いや、別に最強って訳じゃないし」
「俺と戦え、ぶっ殺してやる!!」
「ミカルドにも勝てない奴が何を言ってるんだか。果敢に挑むのは構わないが、挑戦と無謀は違うぞ?」
「うるせえ無謀じゃねえ」
「剣舞祭終わって、俺達が最強と証明できたらね」
「俺も強くならないとカズキに任せっきりになるな」
「そんなのわたくしは絶対に嫌ですわ」
「私、達の手で勝利を掴みたいですね」
神伐隊で最強と呼ばれ、今この世で最も強いと名高いカズキがいるなら心強いと思う反面、剣舞祭では任せっきりになるのではという焦りも生まれる。
「神伐隊が出てきたら俺一人じゃ勝てねぇよ。頼りにしてるぜ、みんな」
「カズキさん」
「っしゃあ帰って飯にしようぜ、隠し事無くなったからすっとした」
大きく背伸びをしながら扉の方へ歩く。
「じゃあまたなボス。ラウラ王女、お先に失礼します」
扉を開け体半分を外へやると、顔をラウラ王女らの方へ向けると手を振る。
「今度は酒でも奢れよな」
「うわっ、元部下で友人にたかるとかサイテー」
「元上司で友人に勉強を教わって、寝床も紹介して、仕事を提供して、飯も奢ってもらったバカは誰だっけ?」
「すみません、また今度謹んでお礼をさせていただきます。さようなら!逃げるぞお前ら」
ご丁寧に挨拶をすると、扉を開き慌てて逃げ出す。
「ははは、相変わらずだなあいつは」
「いいんですかボス、神伐隊に引き戻さなくても」
「引き戻したくてもできないし、私らにはミカルドがいるだろ?」
「でも、私なんかじゃ隊長の代わりなんて」
「ミカルド、あいつの背中は追うなとは言わない。だが、しっかり目に焼き付けておけ、最高の存在を」
「……はい」
「ラウラ、お前もいずれこの国の王になるんだ。世界は広い、不可能を可能に変える存在もいる事を覚えておくんだ」
「はい」
「君らも、あのバカの事を頼むよ」
「けっ、何を頼まれてるかわかんねぇよ」
「大丈夫、一人にはさせないから」
ジェルマンとは反対に真面目そうな顔で答えるリューク。
「ははは、頼もしいな君は」
「俺達も帰るぞ」
「おう。帰って修行だな」
「失礼しますわラウラ王女」
こうして王室での一件を終えたカズキ達。
カズキの正体、魔界と呼ばれる裏世界、悪魔、魔物の存在を成り行きで知ってしまったFクラス一行。
これが後に影響を及ぼすとは誰も思いもしな、いや、もしかしたら覚悟を決めた瞬間かもしれない。
つづく