カズキが神伐隊の一員で最強と呼ばれてた存在となんか知った一同。かといってそれがどうした!と言わんばかりにいままでとはなんもかわらずいつも通りの普通普通な生活を送っている。
「止まるな!戦闘中は動き続けろ」
剣舞祭が近くなってきたのでレイカ先生自ら練習相手になってくれている。
「くっ、はああ」
レイカ先生の鞭と剣による攻撃に思うように戦えず一方的にやられるジェルマン。
「遠距離戦と接近戦を見分けろ、相手は両方やってくるかもしれないんだぞ」
「はあ、はあ、こっちは接近戦しかできねーっつーの」
「止まるなと言っただろ」
「ぐわああ」
「よし次。ルリー来い」
手荒だが、今俺に足りてないものは実戦だ。より猛者と戦い戦闘における技術、勘を鍛えものにする。個人では分からないことや気づけないとこもある故に、生徒同士戦わせ指導するという方針だったが、未熟同士が戦っても伸びるものも伸びない、よって時間はかかるがレイカ先生自ら胸を借しマンツーマンで指導している。
それにしても世界ランク三位炎魔のレイカ、流石の強さだ。
カズキも目を見張るものがあった。
こんなトレーニングではなく、ぜひ一戦交えてみたいものだ。
せっせと素振りをこなすカズキ。レイカ先生いわく、カズキに教えるものは無いそうで、神威を教えるにもカズキ自身が神威を否定してる故使えないことに気づいたのか路線変更で徹底的に技と体を鍛えろと、重り付きで今頑張っている。
また、今回で優勝を狙ってるなら、レオンやルリーなど神威が使えない者に無理に神威を教える事なく今までの戦い方を鍛える方針をとった。
学園の方針故に神威を教えていたが、そんなのがなければこの方法を真っ先に取っただろう。
「ほらカズキ、見てないでやるやるー」
そんなカズキを見て指摘するリュークはと言うと、木陰で横になっている。
「指導してないでお前もやれよ」
「嫌よ、疲れるもん」
「お前な、みんなやってんだからやれよな」
「きゃーカズキが怒ったー」
この野郎。こっちは本気なのに不真面目な奴だ………俺が言えた事じゃないか。
「なら、私の相手してよ」
「いいのか?こっちはもうアップ済みでいつでもいけるぜ?」
両手両足につけた重りを外し構えるカズキ。
「……そっか、もう戦っちゃうのか」
ゆっくり立ち上がりぐいっと背伸びをすると、名残惜しそうな表情でカズキを見つめてくる。
「戦いとはふとした瞬間から起こるもんだぞ」
その顔を見てすぐにわかった。こいつは俺を殺すんだな。と
「そうだよね、ふとした瞬間で死んじゃうもんね」
リュークが微笑んだ瞬間。拳がカズキの目の前に来ていた。
カズキは後ろへ下がりかわしたが、鼻先が擦れ血が滲んでる。
「っ、容赦ねぇな」
「つまんなかったらすぐ殺す。悪いけど容赦なんてしないよ」
やろう。俺が瞬きした瞬間攻撃してきやがって……最高だ!
「それはこっちも同じだ。せいぜい楽しませてくれよな」
すぐにリュークの顔面に前蹴りを放つも、両手で防がれる。
それでも後ろへ大きくとばし、ルリーとレイカ先生が戦ってる真ん中に止まる。
両手から無数の雷の球を作り上げると、リュークめがけ全球投げつける。
「飛び道具を出すには早いんじゃない?」
「スポーツをやってる訳じゃないんでな」
かわし弾き一気にカズキとの距離を縮めたリュークは、カズキの繰り出す正拳突きを掴むと両足を首元に絡め、体を回転させると同時に腕を捻りあげる。
「このままへし折る」
う、動けない。
(こんな華奢な腕にこれほどの力が)
凄まじい力に抵抗できず、倒れれば二度と立てない。更には首を足で締め上げ血流を止めてきやがる。
仕方ない、強引だが。
「うるああ」
体から炎と雷を放ち、無理矢理離れさせる。
「おっと、あぶないあぶない」
放つ瞬間離れた為リュークにダメージは無い。
恐らくカズキに触れていたから、炎や雷を出す時に動かす筋肉の動きや血流、呼吸などで察知したのだろう。
「おい、これは修行で、殺し合いじゃないぞ」
何か不穏な空気を察知したレイカがすぐに間に入る。
「止めるな!こいつは死に合いなんぞ生ぬるい真剣な勝負、俺自身の挑戦だ」
だがカズキは止まりはしなかった。なんせ、目の前には自身が追い求めた強さがあるからだ。
今の俺がどれほどなのか、それを知りたい確かめたい。そして勝ちたい。
「挑ませてもらうぜ、異端児さんよ」
「……やめた」
「なに!?やめだと?」
「うん、だって、このままやると世界壊れちゃうよ?」
「知ったことか」
「いいの?守るべき世界を、守ってきた世界を自身で壊しても」
「構わん。強い奴と戦い勝っていくなかで、結果として守ってきただけだ。それだけに過ぎない」
「へー、かわってるね」
「俺の人生は俺だけの為にある。誰かの為なだとありえん。さあ俺と戦え、最高の最後にしようぜ」
「ダーメ、今は気分じゃないの、また今度」
「……そっか、やる気がない奴と戦っても意味ないもんな。じゃあまた今度、絶対だぞ」
「ふー流石はかの有名な絶対のカズキ、絶対が好きだね」
「うるせえ。あーくそ、力を半端に出し過ぎてイライラする」
「戦闘欲くらい制御しなさい」
「戦い抗う故に我ありだ。そんなことしたら俺の存在意義がなくなる」
「怖い人ね、破滅の男だわ」
「どっちが怖い人だ。次は全力でお願いしますよ、リューク様」
「あら、様付けたなんて大層ね。崇め称えてもいいのよ」
「珍しいじゃねぇか、お前がむきになるなんてよ」
「……お前ら、リュークってどんな奴か知ってるか?」
「どんなやつって………どんな奴だろう」
確かに今までの戦いぶりをみるにただ者ではないことはわかっている。初めて会った時からもリュークだけは周りとは違う何かがあるとは感じてはいたが。
「カズキが目立ってたから考えもしなかったな」
どっかのバカが目立っていたので特に気にはしていなかった。
「あいつは、俺が目指す場所にいる。何が言いたいかわかるか?」
「お前より強いってのか?」
「そうだな」
「は?」
「何を驚く、俺は最強でも無敵でもない。勝てない奴はちゃんといるって前言ってたろ」
「たがお前、リュークとまともにやりあったことないだろ」
「なくてもわかるんだよ。あいつは、とんでもねぇ存在ってことくらいよ」
初めて会った時から薄々気づいていたが、最近確信を持てるようになった。リュークという凄まじい存在が。
「見とけ、俺が奴に勝った瞬間歴史が変わる」
カズキは外した重りを付け再び素振りを始める。
「修行再開!お前らもレイカ先生に負けるなよ」
「うぐ、見とけボケ次は勝ってくるからな。レイカ勝負だオラ」
「次は俺だから早めに負けろよな」
「うっせえてめえの出番なんざねえよ。あと、誰が負けるかボケ!」
意気揚々怒りに身を任せつつも再びレイカ先生に挑戦するジェルマン。
「魔法使いなんだから、一対一で正攻法じゃ勝てないからトラップ系を使って相手を翻弄すればいいんじゃないかな?」
「トラップ系ですか、あまり得意ではないですけど参考にしてみます」
「私は相手をからかうのに結構使うよ」
「え?使うんですか?」
「そだよー、今の私は少しなら使えるよ」
「そうなんですか、万能なんですね」
「そだね、えっへん」
対するリュークは戦い終えたルリーにアドバイスをしている。
野郎、俺と戦ってる時にルリーとレイカ先生の戦いを見ている余裕があたったとは、流石だ。
それにしても、教わる事がないと言うのはつまらないものだ。
周りを見ながらせっせっと素振りをしていると
「あ、いたいたタイチョ~」
なんか聞き覚えのある昔の隊員共の声が聞こえる。
……無視。
「ターイーチョ~」
気づかないふりして素振りしているとハートのフライングクロスチョップが側面にぶち当たる。痛い。
「いてて、いてーなハート」
カズキの上に被さるように倒れたハートを持ち上げながら立ち上がる。
「きゃー、隊員のえっち」
「捻り潰すぞ?」
「いたたた、うそでーす、悪いのは私です、だから許してごめんなさーい」
持ってる箇所をギュッと締め上げる。
「ったく、相変わらず過ぎてミカルド先輩も苦労するな」
「私達もタイチョーに振り回されて何度も死にかけてたけどね」
「懐かしいですね、特攻だ突撃突撃ぶっ殺せー!でしたもんね」
ハートとセラフは苦笑いしながら言ってくる。
そんな脳筋だったか、俺。
「で、何しにきたんだ?サボりなら授業でろよ」
「嫌だなー、隊長達の修行相手に来たんですよ」
「修行相手?」
「剣舞祭に出るんですから絶対優勝してもらわないといけませからね」
「他の神伐隊が出るんですから、相手として不足はないですよね」
「俺は不足だ」
「他ですよ、他」
「他ぁ?」
他と言うとジェルマンとかノアとかとかだ。
「幹部や隊長も出てくるんですから私達で慣れておかないと」
「神装化にも慣れておかないと神格化に対抗できませんから」
「まあ、そうだな」
確かに神装化に太刀打ちできなければ神格化に勝てる訳がない。
「やるのは助かるが、ほどほどにしろよな」
「わかってますって」
「ノアさん私とやろー」
「え?え?わたくしですか?」
「そうだよ。その弓の腕と神威の扱い凄かったよ。もう一回見せてよ」
ノアに挑むハート。前回もノアの事を誉めていたから気になってしょうがないんだろう。
「なんだカズキ、先輩方が相手してくれるのか?」
ここでさっきまで休憩していたレオンが混ざってくる。
「らしいな。実力は本物だから全力でぶっ飛ばしてこい」
「それは有難いな。ぜひ胸を貸して頂きたい」
「いいわよ坊や、お姉さんがお相手してあ・げ・る」
ニコニコしながら近づき不意をつくようにレオンを蹴り飛ばす。
それをガードするも後ろへ押される。
「へぇ、いい反応じゃない」
「……グラン・ギア」
セラフの足を岩でガッチリ拘束し逃げられないようにすると、レオンは飛び蹴りで報復する。
足の拘束は砕け、大木にぶつかるとバキバキと中部から折り倒す。
「はあ」
「アダマンフィスト」
後方へ回転し、体勢を整えたセラフは神威を集め顕現した剣をふるうもグラン・ギアで纏った腕で受け止める。
「ふん」
折れた大木を持ち力任せに横に振るう。
しゃがんで回避すると、剣を持ち変え上へ斬り上げる。
顔をずらし避けると手を掴み振り回す。
「へし折る」
地面に叩きつけると、首元を膝で押さえ腕を両腕で極める。脱出不可能な関節技
「このっ……」
セラフから巻き上がる炎、舞い散る羽毛。その威風に吹き飛ばされるレオン。
「ヘブンリーセイバー」
「おい、殺すな」
神々しく光輝く剣を振るおうとするセラフの手を止めるカズキ。直ぐ様体勢を整え攻撃してきたレオンも止める。
「た、隊長」
「カズキ、止めるな」
「すまないなレオン。こいつスイッチ入ると手加減が出来なくなるんだ、少し待ってくれ」
まさか神装化を使うとは思っていなかったので、カズキ自身も少し焦っているのかとても早口た。
「……わかった」
「お前が神装化を使うとはな、強いか」
「思ったより強いですね、真正面からやりあうなら素の私より実力は上でしょう」
「お前地上戦苦手だもんな」
「素の力で戦うなら神伐隊でまともにやりあえるのは隊長達とミカルドかルミスぐらいかと」
確かにレオンは強い、以前戦ったが吐血までやられたしな。ミカルドやセラフ、ハートを抜かして戦ってきた中では一番強かった。
神威無しのフィジカルでここまでの強さだ。良い師匠、良い環境にいたならば神伐隊にいてもおかしくはない程にだ。
「神威のせいで素の力が認められないとは悲しいな」
「そうですね。隊長みたいになれたかもしれませんし」
「ない。それはない」
「あ、はい」
「ちなみにミカルドさんはどこにいるん?」
「ミカルドならボスを連れにいってますよ」
「は?」
「隊長達が出ると思われるんですから、予行練習ですよ予行練習」
「予行練習て」
「私の頭は冷えました、はやくやりましょうレオン」
「あ、おいこら」
「ヘブンリーセイバー!!」
「うお!?不意打ち?」
「見せてあげる。私の神装化、天翔神翼を」
空高く飛翔し、剣を振り上げる。
「ヘブン・レディアント」
「おいこら、殺すなって言ったばかりだろ!」
「どうしたジェルマン、息があがってるぞ」
「ほらほらノアさん、こっからだよ」
「まだまだレオンさん、いくよいくよ」
嵐の如く猛威を振るう三人。ここからは地獄絵図となった……。
「はぁー、はぁー、はぁー」
「げほっ、げほげほ」
「……………」
木陰で倒れるレオンとジェルマンとルリーとノア。
「まだまだだなお前ら」
「全く修行が足りませんね」
「全然修羅場を潜り抜けてませんね」
こんな化物相手に組手を続けてやっていたのだ。よくやったと誉めるべきだろう。
「神装化を使ってそれは無いだろセラフ」
「レオンは強かったの!」
「やったなレオン、セラフに認められるって大した事だぞ」
「はー、はー、そ、そうなのか?」
「信頼寄せてるからな」
「その信頼のせいで私は大変でしたけど」
「いいだろ。もう二度と頼む事はないんだからよ」
「そ、そんなー」
「あれ?もう終わってます?」
「なんだ、折角出向いたのに残念だな」
休憩している最中にやってきたミカルドとメーテル。急な登場にその場が慌てる。
「め、メーテル様」
「ボス、本当に来たのか」
「当然だ、剣舞祭の優勝がかかってるんだ。一国の王族の一員として手を貸すのは当たり前だろ?」
「養子のくせに何が王族の一員だよ。笑っちまうぜくぷぷー」
「はっはっはっ、それな!わかってるなカズキ」
「だぁアデデデ、痛い、痛い痛いボス痛いボス痛いボスボスボス痛タタ夕タタタ」
カズキの頭を脇に抱え腕で締め上げる。
「はははは、相変わらず愉快な奴だ。退屈しない」
「つー、いてーいてーこれでテストの点悪かったらボスのせいだからね。いいねレイカ先生!」
「たわけ!何ふざけた事言ってるんだ」
「いいででで凄痛ッめちゃ痛ッイタタタ」
レイカ先生にも締め上げられるカズキ。
「お前がこんな楽しい奴とは未だ驚きだぞ」
やられているカズキを見て笑っているメーテル。とても国の王女とは思えないほど柔らかな表情を見せてくる。
「ですね」
「メーテル様が戦ってくれるんですか?」
「あぁ、そうだぞ!神伐隊七番隊隊長メーテルが相手だ」
「じょ、上等だ!隊長がどれ程かお手並み拝見だ」
「神格化は使うなよ、神装化にも勝てないんだから」
「勝てないのは当然だ。だが、隊長共と戦うなら経験しておいて損は無いはずだ」
「そうだとしてもだ」
「物は試しだ。相手をするぞ」
そう言うと皆んなから少し離れると、メーテルは大きく深呼吸をしゆっくり吐く。
「はっ!!」
風がゆらゆらと静かに吹き荒れる、特に変化を起こす事も容姿に表す事も無くごく自然体のまま変身を遂げたメーテル。
カズキと違い膨大な力を発する訳でもなく、天変地異を起こす訳でもない、静かで優しくそして激しい。
「天覇武芸の軍を引き、制する武力を持って戦を天開し勝利へと導く。さぁ刮目せよ、軍神の力を!」
「か、勝てる気がしないぜ」
「本当に参る、世界がこんなに広いなんてよ」
「これが、軍神天開。神々の力ですの」
それでも伝わる。不気味なまでの静かさと冷静さから秘められる激しい闘争心と貪欲なまでの勝利への渇望、戦いとは何か理に適う姿を見せつけてくる。そう、まるで神を相手にしているのではないかと思う程に。
「神格化なんて俺も戦禍乱を使って本気出さないと勝てないぞ」
「戦禍乱って?」
「俺がミカルドさんとセラフのバカヤローを倒した時に使ったやつ」
「私だけ言い方酷くないですか」
「日頃の行いね、はい。で、神格化って言うのはな」
神格化。それは神威の力以外に神が与えた別の力により膨大な力を得る読んで字の如く神と同格する進化。
神装化の違いは更なる身体能力の増加、特殊能力以外に神が与えた力が加わったもの、その与えた力が問題なのだ。
ノア達に出来るだけわかりやすいよう努力し教えるカズキ。正直俺もわかってない。
「あいつは軍神から力を与えられ軍神になれる。戦場全てを見通し常に戦況を見て読んで一手を出す、覇軍と呼ばれる由縁だ」
「個人よりも指揮に長けてるのはそういうことなのか」
「もっとも、あいつの特殊能力……アトリファクタスは普通に強いがな」
「どうした?やらないのか?」
「上等だ。お相手願うぜ覇軍様よ」
当然のように満身創痍のジェルマンが名乗りをあげる。
「手加減はしないぞ、起きたら明日になってる覚悟はしておけ」
「それはごめんだ、まだ夕飯どころか昼飯も食べてねぇんだ」
バトル・トンファーを持ちかまえる。
「うるああ」
ジェルマンの殴打それら全てを紙一重でかわす。
(なんだこいつ、人を手玉に取るように動きやがって)
「どうした、動きがまるわかりだぞ」
「こいつ」
「こいつぶっ殺してやる。と言いバーストショックを放つ」
「ぶっ殺してやる」
ありったけの神威を込めバトル・トンファーを振り落ろすジェルマン。
その瞬間背後に回り込んだメーテルはジェルマンの首に手刀を落とす。
「ッ」
爆発が起こる前に崩れるように倒れるジェルマン。
「まずは一人だな。さぁ次こい」
「神髄、あれくらうと意識飛ぶんだよな」
昔にあれをくらって一瞬意識が飛んだことを思い出す。神経を攻撃し遮断させ意識を飛ばすなんて狡い神技だよな。
「……私がいきますわ」
「無理はするなよルリー」
「大丈夫です。私、試したい技があるんです」
「そうか」
「早くしろ、この姿は長くもたいんだぞ?」
「傍若なる剛力よ。紅き守護の炎となりて我が身に纏え……イグニストクラフト」
詠唱を唱えるとルリーの真下に赤の魔方陣が広がり炎と共に光を発する。
「剛力と炎の力を身につける身体強化魔法。うん、まあまあいいんじゃない?」
「爆嵐風波(ブラストハリケーン)」
両手に魔力を込めつき出すと同時に凄まじい暴風を放つ。
渇ききった熱風、草花は触れるだけで燃え、大地は干からびる。
その暴風の前にさすがのメーテルも驚いた表情をする。
「瞬間移動(ディメンション)」
その隙に魔方陣を用いてメーテルの背後に瞬間移動する。
「爆魔獄炎封」
両手に集中させた魔力は炎となり、メーテルを囲う。
「ほぉ、獄炎封を使うとは…あれ魔法だっけ?」
「炎の加護があるから自然と炎の火力が上がる、炎の魔法なら威力は数倍にはねあがる。考えたねルリー」
「でも、」
「通じていなければ意味がありません。か、その通りだ」
「通じていなければ意味がありません。…て、あれ?」
「神威のバリアを創ってなかったら危なかったぞ。威力ならソウルにも引けを取らないな」
炎を神威で吹き飛ばすメーテル。
包まれる瞬間神威を纒うことでダメージを受ける事なく難なく吹き飛ばすことができたのだ。
「ほら、褒美だ」
「がっ」
メーテルが放った神威による真空波はルリーの内部からダメージを与え気絶させる。
「ハート、セラフ。ジェルマンとルリーさんを医務室へ連れてってくれ」
「はいはーい」
「ボス、お手柔らかにね」
ジェルマンとルリーを抱えて医務室へと向かう二人、なんか嬉しそうな表情をしているのか気のせいかな。
「わかってる、さてどんどん来な。他の隊長共はこんな優しくはないぞ?」
「……俺がいこう」
続いてレオンが構える。
「ビースターズ」
カズキや他の猛者と戦う時に見せた自身の身体能力をあげる技だ。
「これは危険な技だ」
「うおおおおお」
「夜叉刈り」
「神道楽」
素早いジャブからのレオンの丸太のような片腕を横方向に突きだし振るう。
それをしゃがんでかわすとレオンの喉に指を突き刺す。
「か、くハァ」
倒れると喉を押さえながら踞る。
「ボス、喉にやるな窒息するだろうが」
「こうでもしないと倒れないだろ?」
「大丈夫かレオン、今楽にしてやるぞおりゃ!」
踞るレオンの両肩を掴み後ろに引いてやる。
「かっ、はーはーげほげほ」
「大丈夫か」
「あ、あぁ」
「まだやるか?」
「………いや、もういい」
「らしくないな、どうした」
「やっても無駄だ、動きが違いすぎる」
「どういう事ですの?」
「見てから反応するカズキとは違う。先を読んでいるなんてもんじゃない。フェイントは全て動じず攻撃だけ反応した、まるで未来でも見てるかのようにだ」
「未来を、見ている?」
「わからないが、それくらい凄い反応だ。やればわかる」
「わかりましたわ!わたくしが皆さんの仇をとってさしあげます!」
「死んでないけどな」
「アルバートン家の令嬢か、いつも妹が、国が御世話になっている!」
「どういたしましてですわ、フリーレイン」
軽い挨拶から始まった戦い。先手必勝ばりに弓を展開させ放つ。
(どうやらレオンさんの予測は本当のようですわ)
無数に放たれた氷の矢。しかし、メーテルは一つの挙動で全ての矢をわかした。
そこはノアがわざと避けれる場所を自然的に作った場所。
それを見て予測は確信へとかわった。
(まさか、メーテル様にこんな凄い属性能力を持っていたなんて驚きですわ)
「詮索は止してもらおうか」
「え?」
一瞬だった、本当に一瞬だ。気づいたら意識が飛んでいた。
「おいおい、やり過ぎじゃないのか?」
「そんな事はない、神威の扱い方を教えただけじゃないか」
メーテルが放った膨大な神威の量により意識を保つ事が出来ず倒れたノア。
「良い経験として捉えるよ。ミカルドさん、ノアさんを医務室へ」
「わかりました」
「で、あとは君だけだが?やるかい?」
「私はいいよ」
そっけない返事をするリュークは興味無さそうに蝶々を目で追いかけている。
「そうか?滅多にない機会だぞ?」
「カズキより弱いんじゃ結果は見えてるからね」
「ははは、手厳しいな」
「事実だからね」
「カズキ、リュークは強いのか?」
「そうだな、さっきも、一本取られたし」
「それは本当か。じゃあ次は私から挑ませてもらおうかな」
「私は気分屋だからね、機会なんて滅多に無いよ」
「流石、気分屋だな」
「カズキに言われたくない、カス」
「ひどい」
「お前達は仲が良いな、心配して損した」
「心配?」
「カズキは人付き合いが悪いからな、友達が出来るか心配だったんだ」
「てめえは俺の親か」
「お前のボスをやっていたんだ、心配にはなる」
「嘘つけ、気にも止めてなかったくせによ」
「人付き合いが悪かったのか?」
「昔はな」
「くだらねぇ昔話をしに来た訳じゃねぇんだろ。要件を言え」
こいつがそんな理由でわざわざここへ来るわけがない。なにかある、きっとある、絶対ある。
「流石だな、実は明日魔族が襲ってくる情報があってな」
「そんなもんセラフとハートに任せればいいだろ、くだらねぇ
「そうもいかないんだ、率いてくるのが地獄姉妹だ」
「……ペカドとぺリアか、とうとう侵略に動き出したか」
「そうだ」
「その情報はどこで」
「偵察にきた悪魔からだ」
「そうか、あのザコも動きだしたか」
おかしい、あいつらからそんな情報はきてない。まさか、な。
「明日とは急だ、神討隊は何をしている?」
「前も言っただろ?機能はほとんど停止してるって」
「あの時から戻ってないのか、カスが。神の使いとして聞いて呆れる、やめて正解だ」
「どうだ、お前にとって良い情報だと思うが」
「確かに良い情報だ。だが、今の俺には関係ない」
昔だったら飛び付くような話だった。だが、それは昔の話で今は関係ない、関係ないはずだ。
「俺はもう、違うんだ」
「……そうか、なら今のお前に関係するように言ってやろう」
「なに?」
「暴れて剣舞祭が中止になったらどうする?」
確かに剣舞祭がある今に暴れてもらって中止となれば皆の願いも俺の計画も消えてしまう。
「何を叶えてもらうかは知らないが、充分なデメリットだろ」
「ちっ、わかった。きっちり滅ぼしてやる」
「話が通じて助かる、さっそく兵士との」
「ただし、俺一人でやる。お前らは待機してろ」
「なんだと!?」
「勝手に英雄扱いされたら堪ったもんじゃない。俺は俺の為だけに戦う」
そう言うとカズキはレイカ先生の方へ向くと頭を下げる。
「レイカ先生、明日休ませてもらいます」
「おいカズキ、王女が来てくれてるんだ勝手は許さんぞ」
「いや、賢明な判断だ。ぺリアは病原やら呪いやら使ってくるからな、感染者一人で国が滅ぶ」
「……まさか」
「あぁそうだ。奴の疫病で神伐隊で滅んだ小隊もあるんだ。感染者は消されてな……助かる手段はあったはずなのに、なのに」
「言うな!!」
「カズキ」
「次言ったら、俺は元老院(クソカス)共をぶっ殺しに行っちまう」
カズキには過去に二度、戦いで心を痛めている。そのうちの一つが、今再来しようとしている。
(アルス達の為にも二度と悲劇はおこさねぇ、大罪も絶望もまとめて破壊してやる)
「上空からセラフに監視をつける。街の守りはミカルドとハートでなんとかする。最悪兵士にも戦わせる」
「心配するな、俺がきっちり滅殺してやる。跡形も無くな」
「北西方から攻めてくるとみていいが、何するかわからん。すまないが一晩見張るような形になる」
「いつもの事だろ。それより次に神伐隊の召集がかかったら伝えとけ、二度はないってな」
「わかった。私も胸に刻んでおこう」
「レオン、レイカ先生はこのことは他言無用でお願いします」
「いいのか、俺達も手伝わなくて」
「ボスが言っただろ、感染者が出たら終わりだ」
「お前が感染したらどうする」
「自害」
「っお前」
「相変わらず優しすぎる奴だ、昔から何も変わらないな。全てにおいて」
「やかましい。今から監視に行くから、じゃあな」
そういうとカズキはふわっと浮かび上がると猛スピードで北西側へ飛んでいくのであった
とある場所。二人組が上空から街を眺めていた。
「ククク、あとは待つだけだ」
「随分念入りなのね」
二人は黒のフードを深く被り姿はよくわからない。
「当たり前だ。確実にするには計画が必要なんだよ。さぁこれでまとめて血祭りに上げられる」
「ほんと、残忍な人」
「それは互さまだろ」
「でも、それくらい徹底しないと勝てないなんて嫌よね」
「今に見ていろ世界、絶望の淵に沈めてやる」
獰猛な笑みと不気味な笑い声が闇夜に消えるのであった。
つづく