駄作   作:匿名希望ただの人

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いざ、アニマニアへ

 

 

 

 

 

 

 

八時四十二分

港

「おおい、ロウラクシア連国行きの客船が沈んでいるぞ」

「なんであんな頑丈な船が沈むんだ」

「良く見ろ、何かが船を襲っているぞ」

巨大な船から黒煙が立ち上がり海や空から何者かに襲撃を受けている。

「早く助けに行かないと」

「兵士に連絡を」

それを見て街中パニックになっている。

しかし、次の瞬間には船から凄まじい音が響く。

煙も消え、海や空から襲われる事もなく静かな時間が流れる。

そんな中、船の方から一人の青年がなんとバシャバシャ音を立て海上を走ってきた。

「っと、失礼」

街に上がると船の方へ向きおもむろに片手を前へだす。

「こんなもんかな…っと、ふん!」

ぎゅっと何かを掴んだ仕草をすると、こんどは思いっきり引っ張る動作をする。

すると、沈んでいた船が浮き上がるとこっちに向かって飛んでくる。

そして

ザッパアァンと波音を立て街に引き寄せられた。

「あ、あんた。何者なんだ?」

「俺か?俺はヒノモトのサムライだ」

青年は笑顔でそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七時三十分

寮

「しまった、制服以外服が一着しかない」

「それは俺達全員だ」

「着替え持って来ればよかったな」

アニマニアでの合宿に向け荷造りをする。

「アニマニアか、行った事ないから楽しみだな」

「俺も久々だな」

「俺は半年ぶりだな」

「は?」

「言わなかったか?俺は二年間世界を旅してたんだよ」

アニマニア大国、ドルツェルブ軍国、ロウラクシア連国、ルーンブラッド、ドラグニア竜国、聖レイクロウ神国、主な大国の他にエルフやドワーフなどの民族とも交流を深めてきた。

「そんな話は初めて聞くぞ」

「まあどっちだっていいだろ」

「国籍をドルツェルブに出来た訳がわかった」

「あれは宛がいたからね」

「ふーん、宛ねぇ」

偽造は簡単だが、あのレイカ先生や学園長に通じるかどうか。

ましてや、あの他者排除的なドルツェルブが国籍を造ってくれるかどうかも妖しい。

「アニマニアにもいるのか?」

「神伐隊繋がりが多いな」

「あなた達、朝御飯ができましたわ」

ドアからノックと共にノアの声が聞こえる。朝荷支度する俺らは昨日の夜修行に明け暮れてたのでそれどころではなかったのだ。

とはいうが荷物がカバン一つだけと恐ろしい程に少ない、恐ろしい…。

「今いくよ」

「飯だぞ、急げジェルマン」

「急がなくても飯は逃げねぇよ」

「ジェルマンの分もいただき」

「あ、テメェカズキコラ」

競うようにリビングに行くと恐らく合宿に持ってくであろう荷物が沢山置いてあった。

「うお、さすが女子。荷物多い」

「なんか、俺達の荷物が不安になってきたな」

「後で見直すか」

「何を言ってますの、これはわたくし達とルイスさんとシバさんの分ですわ」

「なに!?ルイスだけでなくシバの兄さんまで来るのか、なんで」

「わたくし達の相手をしてくださるようですわ。シバさんなんかはわたくしの代わりに御飯も作ってくれるそうですし」

「気合い入ってるな」

「ああ、そうだな」

「出発は授業が終わってすぐだそうです」

「準備するなら今か昼休みだけだよー」

朝食を取っているルリーとリュークが言ってくる。女性陣は昨日のうちに支度を済ませたので余裕の態度を取っている。ただ単に男共はバカなだけである。

「まあなんとかなるだろ」

「だな」

「飯だ飯飯」

腹が減ってはなんとかなので取り敢えず朝食を取ってから考えよう。

と、するも食べていたら登校時間ギリギリになったので結局そのまま登校するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

九時十五分

街

「こんな男を探しているが、知らないか?」

街人に写真を見せては手当たり次第探している男。

「んー、知らないねぇ」

「あれ?アルセウス学園にこんな生徒居なかったか?」

「ああ、剣舞祭に出るってなんかポスター張ってあったな」

「腰に剣を刺している奴は少ないからな、多分こんな顔だったし」

「そうか、ありがとう」

情報を得ると一言礼を言ってそそくさと立ち去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

九時三十分

「はああくたばれ、バースト・クラッシュ」

「甘いんだ、よ」

「ぐは」

「威力が足りん、技がワンパターン、動きが単純、いつもいつも毎日毎日同じような戦い方、一日を永遠に繰り返してるかと思うレベルだ」

「なめやがって、うるあ」

ジェルマンがレイカ先生と激闘を繰り広げている中

「カズキ、動きが雑だよ」

「いててて、この野郎」

リュークと組み手をやってるカズキは、その動きに翻弄されていた。

攻撃しても全て受け流されてしまう。それどころか、こちらの力を利用して攻撃してくる。

「ちっ、究極の柔に対抗する技がねぇ」

このカウンターをなんとかしなければ、俺に勝ち目は無いだろう。

「剛だけ鍛えてるからよ、バランス良く鍛えてなさい」

「傍若無人のような無理難題を押し付けるな。だが、それがいい」

「覚えるまで相手してあげるわ。優しいでしょ私」

「あぁ、サクラギ家に教われるなんて感激過ぎて地獄に送られた気分だ」

「とんでもない。地獄以上を見せるわ」

「ぐっ、もっとこいや!」

リュークの強烈なハイキック、あまりの威力に後ろに倒れるのではなく浮き上がってしまう。

これが柔と剛を極めた者の戦い、凄まじい。

第三者からでは決して解る事のない、戦ってる者にしか伝わらない絶望的力量差。

カズキの時だけにしか出さない、だが周りからはカズキと対等もしくはそれ以上の印象を与えない。

「ドーーン」

腹部に拳を真っ直ぐ突き刺し後ろへ倒れる。

それに加えカズキの日頃の行いもあるため、何度倒れようともふざけてるんだなと、手を抜いているんだろうとしか思われていない。つらい。

必死にやってるのに伝わらないなんて、あんまりだ。

「剛で耐えない。力を抜く」

「無力!」

脱力してからの平手打ち。

「力使ってる」

しかしリュークに平然と受け止められるやいなや速攻で同じ技でやり返してくる。

「いつぅ、肉抉れるわ」

「脱力脱筋柔軟」

その場でべちゃーっと流動体のように横になるリューク。まるでゼリー、いや水だこりゃ。

「隙あり」

「ノー隙あり」

踵落としで粉砕してやろうと振り落とすが、蛇のようにカズキに絡み付き締め上げる。

「ぐおあおお」

「柔で相手に絡み付き剛で締め上げる、その逆もまた然り」

「ぐおお……ぬあああああ」

力で強引に引き剥がすとリュークの手を取り叩きつけると足で胴体を押さえ締め上げる。

きーんこーんかーんこーん

ここで授業終了のチャイムが鳴ってしまう。

「ちっ、いい所だったのに」

「残念だったね」

技をかけられていたのに余裕の表情をしてるリューク。あの状態でも技を返せたとでもいわんばかりの態度だ。

「ちっ、あーあーしんどいしんどいしんどいな」

すげぇきついが、やっとリュークがやる気を出してくれたのだ、この機を逃さない。毎日戦ってレベルアップ、合宿中に技術をものにしてやる。

「いつになく手こずっているな」

木陰で休もうとフラフラ歩くカズキにレオンが言ってくる。

「当たり前だろ、相手は格上なんだからよ」

「格上、か。俺とやってる時はそんな風には見えないけとな」

「そんなもんさ。あーいてて、次の授業は雑学か。組み手よりしんどい」

こんな激しい組み手の後に雑学とか寝てくださいと言っているようなものだ。

嘆きながらも教室へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

十時五十分

アルセウス学園

校門前

「久々のアルセウス学園か、懐かしいな」

「お?校門の前で不審者発見、何奴!?」

たまたま校門前付近を歩いていたミカルドがその男を発見すると、近づいてくる。

「ちょうど良かった。イオリ・カズキってやつがここに通ってると聞いたけど会わせてくれないか?」

「ぬ?隊、カズキさんに会わせてほしいですって。まさか」

「あ、俺は」

「御友人が何かで」

「……そうだ、あいつに言伝てがあってな。あと説教」

「いいですよー、許可取ってきますので待っててくださーい」

特に疑う事もせず身の上を聞く事もせずスタコラサッサと先生に許可を取りに行く。

「純朴な人だな」

疑う事を知らない彼女の行動に思わず感激してしまう。

「私の監視付きで許可がおりました」

手には来客と書かれた札を持ち笑顔で戻ってくる。

「ありがとう」

「あ、そう言えば御名前を聞いてもいいですか?呼び方が無いので」

「そうだな、俺はダテ・ゼンリキ。よろしくな」

ピッタリ過ぎて筋肉が浮き出て見える黒のシャツに真っ白のボトムス、装飾が施された黒のコートを羽織った男。ダテが笑顔で答える。

「はい、私はミカルド・バルティグンです。よろしくお願いしますダテさん」 

「ミカルドさんは何年生なんだ?」

「三年生ですよ」

「そうか。思い残す事なくちゃんと、卒業するんだぞ」

「はい。みんなが入れてくれたのですから絶対に卒業します」

「ははは、その意気だぞ」

話をしながら歩いていると、前からジェルマンとノアが言い合いをしながら歩いてくる。

「テメェのせいでプリント配りするはめになったじゃねぇか」

「あなたがコーヒーを投げなければ良かった話ではないですか」

「テメェが避けるからだろうが」

「避けるに決まってますわ」

「あ、ジェルマンさんとノアさんですよ。ちょうど良かったです、カズキさんの場所を聞きましょう」

そう言うと走って行ってしまう。

「あら、ミカルド先輩どうしたのですか?」

「カズキ隊長の居場所を教えてください」

「カズキ?あのバカならグランドで組手をしているぞ」

「グランドですね、ありがとうございます」

ぺこっと頭をさげるとダテの所まで走って戻ってくる。

「グランドにいるそうです、行きましょう」

そういうとグランドまで案内してくれる。

見ず知らずの人にここまでやってくれるのかと少し感動を覚えるダテであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

十時五十二分

グランドにて

「こ、こうか?」

「違う違う、こうやって気を体に纏うような感じで、こう」

全身の体に力を入れるレオンに対して、すいーっと浮かび上がるカズキ。

レイカ先生はジェルマンとノアを連れて事務作業をしているので、カズキとリューク、レオン、ルリーで自主練習をしている。その中で空飛ぶ方法を知りたいと方向がそれて今にいたる。

「浮遊魔法なら出来るんですけど、そんな速く動けません」

ルリーも詠唱を唱えるとカズキと同じ高さまでプカプカと浮かぶ。

「箒に魔法をかけて飛ぶという手もあるんですけど、魔力と集中力の消費が激しいんですよ」

「俺も最初は気の消耗が激しかったな」

「神威も自身を押し上げるイメージで纏えばいけると思うよ」

手本を見せるように浮かび上がるリューク。

「ほら出来た」

「いや、初めてやったんかい」

「その神威が無いんだが」

「どのみち難しい事なんですね」

「そもそも気ってなんだ?」

「こういうのだよ」

片手にボワンと赤く光る球が浮かび上がる。

それは以前カズキが投げつけたもので、凄まじい破壊力を宿した球だ。

「ヒノモトは神威の変わりに気巧術(きこうじゅつ)、気を使ってるからな。まあ空飛べる奴は少ないけど」

そこは神威と同じでセンスとか努力とかが関わってくる。ほとんどが飛べなくてもいいやと思ってるのが原因だろう。

「ヒノモトに行った者は皆強くなって帰ってくるって噂はそういうことなんだな」

「武器とか顕現できないけど、使い勝手がいいぞ」

気とは自身がもつパワー、神威ほど強力ではないが己を鍛えることでより強くすることができる。つまり、努力しだいでは神威を超えることも可能とする無限の力。

「神威と気を両方使えれば強いじゃないですか」

「そうだな、理想の戦士だな」

神威と気、その両方を使えるのならば理想だ。

だが、それは非常に困難な事でもある。

「でも神威と気の使い分けが難しいからね、凄い消費が激しいわ」

「出来る人はいるが、ありゃ修行の虫だからな。凡才には出来ん」

その人物は血反吐を吐く努力でそれを成し遂げた猛者だ。決して見よう見まねで、パッとできるものではないとカズキとリュークは知っていた。

「話がずれたな。最初は気の扱いからで、まずは集中します。両手に気を集めます。おわり」

「それが分からん」

「という訳で、体に負荷がかかるけど俺の気を流すから感覚掴んでみ?」

「バカ、危険だからやめろ!」

レオンに気を分け与えようとするカズキの顔面を殴り飛ばす。

「人には気が収まる要領があるの、それを越えると体が壊れるわ。弱ってるならまだしも、バカじゃないの」

「す、すみませんでした」

珍しくふざけるの無しで怒るリューク。それほど危険なことだと一瞬で理解できた。

「どうせほとんど飛べない奴ばかりだから覚えたって意味ないわ、大会が終わってからゆっくり学びなさい」

「ちっ、わかったよ」

「あ、神伐隊で何人かに気の扱い教えたから使ってくるかもよ?」

「なんでそんなもの教えたんだよ」

「知らん知らん、こんな事なるなんて知らんよ普通」

まさか小隊を強くする為命を守る為に教えたのが巡り巡って自身の障壁となるとは思わなかった。

「あ、でも多くは死んじまったから関係ねーか」

「……なんか、ごめんなさい」

「殺し殺される仕事だから仕方なし。まあ自ら進んで入ったんだ、自業自得」

「カズキがバカなのは勉強してないから、自業自得」

「くぅー。なんか俺ずーっとバカにされてる気がするぞ」

「そ、そんな事ないですよ」

「くー、優しいのはルリーさんだけだぜ」

ルリーの優しい言葉により立ち直るカズキ。

「よし、修行再開。さぁこい秘技必殺の奥義奥の手三歩三撃だ」

「なんだそのダサい技名は」

「ひどい、ぐすん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十時五十九分

「あれはなんだ」

「あれはコロシアムですね」

コロシアムには『第百三十六回アルガド剣闘大会』大々的に書かれていた。

「そう言えば今日はコロシアム一般貸し出しで、大会に使われているんですよね」

それほど大きな大会ではないが、市民の娯楽として親しまれている大会のため意外と歴史があったりもする。賞品もなかなか良いので、アルガド王国の兵士とかも出てるそうだ。

「腕試しか、俺も出来るかな?」

「もうトーナメントは始まっているから無理ですね」

「それは残念」

「あ、でも見て行きますか?」

「いいの?俺急いでるけど見たいんだ」

「そうですよね、ダテさんから闘気が感じられました」

「お?分かるかい?」

「はい」

てなわけでコロシアムに入る。

なぜかまだ出場枠が残っていたらしく、一回戦の途中らしいのでエントリーができてしまった。そんなバカな。都合良すぎぃ。

「やりましたね」

「そうだな、まさかエントリー出来るとは思わなかった」 

「私はここで見てますので優勝目指して頑張ってください」

「おう、優勝をプレゼントしてやるぜ」

そう言うと直ぐ様試合が始まるのでリングへと向かう。

「前大会、前々大会、さらに前々々大会これ以上言うとキリがない。出場回数なんと十二回全て三位、アルガド王国切り込み隊長サンシマ・テンデイ。それに対するはトーナメント募集ギリギリで駆け込んだ正体不明の戦士、ダテ・ゼンリキだああ」

「今回こそ勝つ」

「悪いが、そうはいかない」

「破壊し両断する戦刃よ我が元へ、戦斧(バトルアックス)」

三面の刃がついた大斧を顕現させる軽装な鎧を身につけた大柄の男。

「こい、天突き」

空から降ってくる槍を持つとくるくると華麗に回し構える。

「いくぜぇ、爆裂斬り」

「いい威力だ、常人なら一発だな」

大きく振り下ろした大斧を爆発にも動じることなく受け止めるダテ。

「うおおおあ、負けるかあああ」

身の丈以上の大斧を軽々しく振り回す。しかし身軽にかわすダテには当たらない。

「大爆裂斬り」

「ふん」

狙いをすました一閃突きは大斧を砕き、サンシマを貫いた。

「ごはっ、ばかな」

サンシマは後ろへ倒れると光の粒となり消える。

「な、ななななんとサンシマ選手まさかの一回戦敗退。勝ったのはダテ選手だあ」

まさかの展開に観客が沸きに沸く。

それを他所にダテは控え室へと戻る

「すごいですねダテさん」

「言っただろ、優勝をプレゼントするって。このまま優勝するぞ」

「はい」

この後もダテは順調に勝ちに勝ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十二時三十分

「んー、やっと飯だぁ」

長い長い授業を終え昼休みへと入るカズキ達。

今回は教室ではなく外で食べようと良い場所はないかとうろうろしている。

「なんか賑やかだな」

「そういえば、今日は一般人向けの大会をやっているらしいですわ」

「くだらねえ」

「…俺見ていくわ」

カズキは弁当を持ってコロシアムへと走り出す。

「もう、勝手なんですから」

「だが試合を見ておくのも勉強になるんじゃないのか?」

「はっ、見たところで勉強にはなるかよ」

「おい、ミカルド先輩が戦うってマジかよ」

「相手は全力で戦ったハート先輩を倒したらしいよ」

「あのデュールウエポンに勝ったのかよ、信じられない」

「今すげぇ激闘繰り広げてるんだってよ」

「やべぇ急げ」

何かの噂を聞き付けた生徒達がぞろぞろとコロシアムへと向かっている。

あのハートを倒した、それもそんな騒ぎを起こすこともなくだ。そんな人物がハートよりも強いとされるミカルドと戦うのだ、それだけで見る価値はある。

「………」

「見に、行くか」

「ですね」

ジェルマン達も急いで見に行く事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

十二時二十分

コロシアム

「ただいまより、スペシャルエキシビションマッチをおこないます」

「誰もその素顔は見たことがない。張り裂く咆哮は怪物の如し、戦う姿は狂戦士、その強さはまさに悪魔。アルセウス学園最強の象徴!ミカルド・バルティグン!」

「おい、なんだあの女は」

「ミカルド先輩じゃないのか!?」

「いやでもミカルド先輩の姿誰も見た事ないし」

「あれがミカルド先輩!?」

「滅茶苦茶可愛いじゃんか」

リングに上がるミカルドを見て観客は騒ぎ出す。

学園七不思議とまでされてしまったミカルドの素顔だ、驚かれるのも無理はない。

「対するは、並みいる強豪に飛び入り参加でまさかまさかの優勝を納めたこの男、絶対無比の槍裁きで最強を貫くか!?ダテ・ゼンリキ!」

「ダテ・ゼンリキだって?」

「知らないな」

「名前からしてアルガド王国の生まれじゃなさそうだけど」

「もしかしてスパイ?」

「こんな大胆なスパイがいるかよ」

「なんか聞いたことあるような、ないような」

「随分と盛り上がっているな」

観客席の盛り上がりを見て言うダテ。

先程とは違い観客席には多くの生徒達が入ってきている。これだけの人数を集めるということはそれほど注目されている試合なんだとわかる。

「そうですね」

「それよりも、ミカルドさんが学園最強だなんてな。案外身近にいるもんだな」

「はい、ビックリです」

「でもいいのか?なんか正体ばらしてまで俺なんかと戦って」

生徒達から聞こえるのは驚きの声ばかりだった、理由は分からないが正体を隠していたように聞こえる。

「いいんですよ。だって一目会った時から思っていましたの。この人と殺りたいって」

「そうか、根っからの戦闘狂って訳なんだな。大好きだぜそういうの」

「全力でいきます」

「その意気を評していいものを見せてやろう」

光輝く神威の原子がダテの体を包む。

「閻羅鬼王(ラージャリオ)」

火柱が立ち上がり白く輝く光がダテを包み白の鎧を形成する。

「これが俺の神威武装だ、久々過ぎて使えるかわからなかったぜ」

「か、格好いい」

龍をあしらったデザインの兜にマントがついたシンプルながらも王道をいく鎧に思わず見いってしまう。

「お?こいつの良さが分かるか」

「はい。じゃあ私も悪役っぽいですけど……我が身を喰らえ禍威狂甲」

背後に人型の黒竜が現れるとミカルドを侵食するかのように一体化し鎧を形成していく。

「こいつは神威武装じゃねぇな。神具にも匹敵するなにか、凄まじい悪寒がするぜ」

その禍々しい姿にダテは不適に笑う。

「禍゛宿゛ノ゛剣゛(マガヤドノツルギ)」

自身の何倍もある巨大な大剣を顕現させるとダテめがけ振り落とす。

「いいねぇ、燃えてきた!」

受け止め弾くと天突きを横一閃に振るう。

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」

それを弾くとダテの腹部に蹴りをいれる。

「力任せのバカではないようだが、力任せの攻撃しかないのか」

ミカルドの冷静で理性的にして暴力的攻撃に思わず苦笑いしてしまう。

こいつ、誰かに剣術を教わった事がない。全て独学と身体能力、自身の直感のみでこれほどの実力をつけたのか。

「ちっ」

受ける度に一撃一撃が重く鋭くなっている。加えてダテの攻撃に見てから反応している。常人に比べて反射速度が速いのだろう、俺やカズキですら持っていない才能の一種。

何者にも当てはまらない我流は戦い難い、それがミカルドの持ち味かもしれないが大雑把過ぎる。故に勿体ない。

「恵まれ過ぎたそれら才能だけで勝てると思うなよ!」

「オオオオオオ」

「迅雷烈風」

咆哮を上げ大剣を振り下ろす。その瞬間、雷の如き速さで風のように鋭い目にも見えない一閃突きを放つ。

それは禍威狂甲の装甲を意図も容易く貫いた。

「オオオ、オォォ」

ミカルドは片膝を突き光の原子となり静かに消えた。

「努力に勝るものなし、お前には良い師匠が必要だな」

「決まりましたあ!勝者はダテ選手だあ!」

解説者の勝利宣言により、全ての試合が終わったのであった。

その後、閉会式が始まりダテは優勝賞品、長期アニマニアペア旅行券と賞金を受け取り

「最後に一言お願いします」

マイクを渡される。

何をいおうか、ここは無難に選手達をたたえるような、いやここは

「アルガド王国の強者達よ、この程度じゃまた魔物共に蹂躙されるぞ。もっと強くなれ」

その場にいる全員に挑発をする。

アルセウス学園の生徒達も個人で鍛えている住人も冒険者もアルガドの兵士達も全員にだ。

「文句があるやつは三年前の事を思い出してから言え。以上だ」

反論しようとした、文句を言おうともした、だがその言葉を聞いて誰を言い返せなかった。

三年アルガド王国は魔物に襲われほとんどの者が太刀打ち出来ず多くの命が奪われた。

だが、あの時とレベルが全く変わっていない。

このまま行けば滅ぶのは確実、少しキツイ言い方だがこれくらいがちょうどいいだろう。

「あ、もしかして千人斬りのダテかお前」

「ヒノモトに帰ったと聞いたが」

「なぜここに」

ここで改めてダテ・ゼンリキについて詳しく説明しておこう。

元アルセウス学園総番にして英雄と呼ばれた男。一番有名なのが千人斬りのダテだろう。

荒れていたアルセウス学園をまとめ上げたことから総番。

各国を旅していた時、国を揺るがす大事件を治めたり魔軍ドーラを倒した事から英雄。

そしてレオルド帝国を滅ぼした時に千人斬ったことから千人斬り。

どれも敬意と畏怖でつけられた異名だ。

その人物だと観客席にいる人々は今ようやくわかり始めた。

「ダテ兄、なんでこんな所にいるんですか」

観客席からリングへ飛び降りたカズキ、顔は驚きと嬉しさで混ざっていた。

「おおカズキ、やっと会えた」

「会えたって、試合なんかやってたら会えっこないですよ」

「まあ騒ぎを起こせば手っ取り早いと思ってな」

「ダテ兄らしくないな、急用ですか?」

「そういう訳ではない。お前に言伝てと説教をしに来ただけだ」 

「せ、説教!?」

「お前ふったそうじゃないか?しかも伝言で」

「な!?」

「わざわざヒノモトまで真相を確かめに来たぜ」

「それは、あの場にいなかったから仕方なく」

「伝言か口伝えかなんかの問題じゃねぇ、なぜ会いもせずふった」

「だ、ダテ兄には関係ない」

カズキを殴りとばす。それはコロシアムを貫き山まで吹き飛んだ。

「馬鹿野郎!!てめぇそれでも男か!八年もお前を思い続けた女の気持ちを踏みにじるんじゃねえ!」

空いた穴から一直線に飛ぶと、倒れるカズキの襟を掴み揺さぶる。

「らしくねえんだよ。お前にとってあいつの存在は全てだったはず、何があった言え!」

「俺には、時間が無いんだよ。ダテ兄」

「時間だと?学園生活を送っておいて何が無いだ」

「学園は剣舞祭が終わったらすぐやめる。俺には通すべき筋があるんだよ、父さんと同じで」

「お前それでも」

「俺の道にキューちゃんとの婚約が障壁になった。だから、破棄した。俺の道を邪魔をするものは全て排除する、どんな事でもどんな手を使ってもだ!」

「その道をあいつと一緒に歩めばいいだろ」

「それが障壁になるんだよ!」

「ダテ兄が、愛してた彼女をおいて世界守るため戦ったあなたならわかるはずだ」

「けっ、その話を出されたら大口出せねぇ。だがなカズキ、兄貴として失敗談として後悔した男としてお前に忠告しただけだ」 

「ダテ兄」

「俺はしばらくここにいるつもりだ、気が向いたら話てくれよカズキ」

「気、向かせてみてください」

「ぬかせ、ガキが」

「今言うのもおかしいかもしれませんが、久々に戦ってくれませんか?」

「いいだろう。二年世界を見てどう成長したか見せてくれ」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

十三時五分

「遅い。カズキは何をしているのだ!」

グラウンドで怒りに満ちたレイカ先生が鞭をバシンバシンと地面に叩きつけている。

「試合会場に行ったきり戻ってきませんわ」

「ミカルド先輩と鎧野郎の試合見損ねたしよ」

「はっ、あのバカの事だ挑んでるんじゃねぇのか?」

「まさか、さすがにあり得ま」

「うわーーーっ」

噂をすれば傷だらけのカズキが飛んでくる。

方向からしてコロシアムの方から一直線に飛んできたようだ。

「したわね」

「……そうですね」

視界から通りすぎると地面に激突し転がる。

「オオオアアア!死緑ッ」

雄叫びを上げながら立ち上がると不気味に発光する緑色の手を突き出す。

「白王!」

猛スピードで飛んできながらそれをかわし蹴りを放つダテ。

「がっ」

後ろへ吹き飛び倒れるとダテがその上に胡座をかくように乗ってくる。

「勝負ありだ。強くなったなカズキ」

「こちとら制されてんのに、嫌味だぜダテ兄ィ」

「正直ここまでラージャリオが砕けるとは思わなかった。戦禍乱は恐ろしいぜ」

「白王を蹴りで放つ、愛沢流を思うがまま自在に使えるそっちが恐ろしい」

「そんなのは努力でなんとかなる」

「そう上手くいかねぇがな」

「お前なら出来るさ」

「あーあ、課題ばっか増えて嫌になるわ」

「課題があるってことはまだまだ強くなれる証拠だ、やったな」

「裏を言えばまだ弱い未熟ってことだろ、くそ」

「後ろ向きな、もっと前見ろポジティブポジティブ」 

「前向きねぇ」

「俺は完成に近い強さ、だが裏を言えばここまでの男。だが俺はこのままでは終わらん、俺は常に全力全開無限突破よ!」

「うおおおダテ兄ィ、なんて前向きで熱い漢なんだああ」

「当たり前だろ、もっと誉めてもいいんだぞおおーー!」

「最高だぜダテ兄ィーーッ!」

うおおおおおっと燃え上がっている二人を見て苦笑する一同。

その異様ともいえる空間に入ることができずただ遠くから見ているだけだ。

「な、なんかとても暑苦しいですわ」

「ここだけ炎の中にいるみたいに熱い」

「暑苦しいんだよ」

「うお!?もう授業の時間か?いっけねー、後でねダテ兄」

ジェルマン達を見るなりすぐに駆け寄る。

幸いな事にレイカ先生が、いるよなーやっぱり。

「カズキ、貴様授業に遅刻しておいて騒ぎまで起こしやがって」

「いってー、体罰だあー!」

鞭がカズキの顔面にめり込む。凄まじい痛みに踞ってしまう。

それを見たダテはふと微笑み安心したような顔つきで立ち去ろうとする。

「いつものトレーニングを始めるぞ、手始めに山越えしてこい!時間内に帰ってこれなければ寝れないと思え!」

レイカ先生の罵声と共に皆は急いで走るのだった。

生徒達が居なくなるのを確認したレイカは血相を変えダテが歩いていった方向へ急いで走り出す。

「はあ、はあ、はあ」

一目見てわかった。あの時から何も変わっていない愛おしいあの人。

「ま、待って、ダテ。ダテ・ゼンリキなのか?」

呼吸が定まらず掠れるような声で呼び止める。

「……おいおい、教師が授業をサボっていいのか」

「指示は出した、問題ない」

「抜かりは無いってか、ったく。会うつもりは無かったのに気づきやがって」

「なんで………なんで、突然居なくなったんだ」

「野暮な質問は無しだ、簡潔にしよう」

「……まだ、私の事は好きか」

「あぁ、好きさ。大好きだ、愛してるよ」

「なら」

「……親が結婚しろとうるさくてよ、見合いの話も結構きてな」

そろそろ二十代後半になりそうなのだ、親にこれ以上無駄な心配をかけたくはない。ダテが出来る数少ない親孝行だと思っている。

「勿論全て断った、だがこのまま断り続ける訳にはいかなくてな」

「なら」

「だから本当はお前をヒノモトへ連れていこうと思った、強引で自分勝手だがやろうと思った。だがな、お前が教師をやってる姿を見て考えが改まったよ」

「………」

「お前の居場所はアルガド王国で、俺の居場所はヒノモトだ。互いにやることがある。なら自然消滅するのが当たり前、だから今ここではっきりと別れ」

「勝手に決めるなよ!!私がとんな気持ちでお前を待っていたか知らないくせに。お前の考えだけで、私達の仲を壊さないでくれ」

「レイカ、すまない」

「謝らないで。私はお前に何度救われた、お前が居なかったらここにはいない。私にとってお前が全てだった」

あの時、私に手を差しのべてくれたから今の私がいるんだ。私が尊敬し愛した男の為なら私は

「だから、一緒に居よう?場所なんてどこでもいいからさ」

「良い女に巡り会えた。俺は、なんて幸せな男なんだ」

カズキ(弟分)に言った手前だ。

この気持ちに応えなきゃ男じゃない。

「愛してるよ、レイカ」

「私もだよ、ダテ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後にレイカ先生の前で息を切らした生徒達が集まっていた。

「はあ、はあ、あーーくそがしんどい」

「速かったな、以前より大分体力がついたんじゃないのか?」

最初の方だと走り終えたら倒れていたが、今では息を切らしているだけだ。

そう聞くと確かに成長したとわかってくる。

「確かに、前ほど苦しくはないが」

「それ、でも、はあ、苦し、いですよ」

その点で言えばルリーが一番成長したと言える。なんせ最初は完走すらできていなかったのに今では皆と同じく走れている。

「一呼吸終えたら組手いくぞ」

「よーーし、俺が相手になってやるぜ生徒共」

レイカが組手をやると言ったとたんダテがひょっこり現れる。

「あれ?ダテ兄、帰ったんじゃ?」

「言っただろ、しばらくここにいるってよ」

「誰だカズキ」

「紹介するよダテ・ゼンリキ、俺の兄貴だ。んで右からジェルマン・オルガノート、ノア・アルバートン、レオン・ビースタルク、ルリー・マキフィルム・クライシスだよ」

「ほう、オルガノートの令息とアルバートンの令嬢か。大きくなったな、久しぶりと言っても覚えてはいないだろ」

「あれ?知り合いだった?」

「一目見た程度だ。ゴルマン領主もハウル領主も流石って感じだったな」

「ヒノモトのダテ、まさか千人斬りのダテ・ゼンリキか」

「無抵抗な兵士を千人も斬っちゃいないさ。カズキが外壁を斬った時点で向こうは戦意喪失だったからな、ただ」

「ただ?」

「国を守る兵が武器を捨て逃げるのは、ちょっとな」

「それで千人斬ったと?」

「まさか、斬るに値しないよ。命は大切だもんな」

笑いながら答えるダテ。

だが、それがジェルマン達を怖がらせた。

その余裕そうな口振りをみるに、ダテにとって万の軍勢は簡単に捻り潰せるムシケラ程度にしか、いや無いに等しかったのだろう。

「じゃあ千人斬りって」

「話に尾びれがついて勝手につけられた感じかな?」

「ちっ、ただの噂話かよ」

「そんなもんさ。あ、しばらくここに通っていいかなレイカ」

「いいが、明日からアニマニアで合宿するぞ」

「アニマニアで合宿か。………アニマニア?はて、何か忘れているような」

「ダテさーん、優勝賞品忘れてますよー」

大きな封筒をもってこちらにやってくるミカルド。

「うお!?しっかり殺したはずなのになぜ動ける」

体内で風と雷が暴れグチャグチャにしたはずなのに、あそこから出ても後遺症は残るはずなのになぜ動ける。

「??アストラルエーテ内ですから、出たら元通りですよ」

「迅雷疾風を受けて後遺症無しか、とんでもない回復力と精神力だな」

「そんなことより、はい優勝賞品のアニマニアペア旅行券です」

「アニマニアのペア旅行券!?」

「タイミングが良いよな、お前ら。まるで運命の導きのようだ」

腕を組み頷きながら言うダテは嬉しさに笑みを溢す。

「………つまりだ」

「俺達も協力するぜ、合宿によ」

「俺、達?」

「ミカルドを連れていく、こいつの才能を放置するのは心が痛む」

「え?えええ!?」

それにはミカルドが一番驚く。

「剣舞祭に出るんだろ?カズキがいれば優勝は簡単だろうが、必要以上に鍛えても損はない」

「わ、私も一緒にいいんですか?」

「当たり前だ。お前には暴力的な有り余る才能がある、俺やカズキを超えてみろ」

「私が、隊長やダテさんを越える才能がある」

「そうだ、お前にはある。だから全力で最強を狙ってみろ」

「は、はい!私頑張ります」

「移動はどうする」

「そんなもん走るに決まってるだろ」

「場所はアニマニア精霊学園ですけど、旅行券ではツアーって書いてありますよ?」

「もちろん、観光もするさ。アニマニアはいい所だぞ」

「ダメだ、ダテ兄がああなったら止められないぞ。きつくなるな合宿」

「だが、確実に強くなるには絶好の機会だ」

「その通りだ。神伐隊共を蹴散らすくらい強くなってやる」

「よーし決まりだな。ミカルド支度の準備だ、出来次第出発」

「は、はい」

「俺達は先に言ってるから、またなレイカ」

「私に別れの挨拶をするな、二度と」

「ははは、すまないな。後で会おう」

そう言うとミカルドと共に行ってしまう。

「ダテ兄も協力してくれるとなると優勝が更に近づくな」

「アルセウス学園三大世代と呼ばれた三人が教えてくれるんだ、嬉しい限りだな」

「そうですわ」

「私達もしっかり準備をしないと」

「まずは授業だ、しっかり追い込んでやるからな」

「ゲゲゲ、了解だ。よーし、組手やろうぜルリーさん」

「わ、私ですか」

「魔法使いと戦うのは楽しいからね、次は何してくるかワクワクだよ」

「そ、そうですか。じゃあがんばります」

 

 

 

 

 

 

つづく

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