「む、娘だと!?」
「バカな、そんなバカな」
激しく動揺するアディラとアニク。
そんな訳がない、あいつの性格的にも年齢的にもあり得る話ではない。
「戯れ言は良い、まとめてぶっ壊れろ。炎雷・大殺斬!」
刀を大きく振りかぶり力を溜め、一気に放つ。
放たれた一撃は斬撃となり地面を抉り斬りながら一直線に突き進む。
「サンダー・トライデント」
ジェットブーストで飛び上がりかわすと、雷を纏い低空飛行で突撃してくる。
「ふん」
それを双刃で受け止めると、下へ弾く。
「雷曇(らいどん)」
雷を集中させた拳を後頭部に打ち込む。まるで雷が空から降ってきたかのように雷の柱が出来る。
「うおおお」
その腕を取り力任せに振り回し地面に叩きつける。
「いいぞ。いいぞヒメギ、これほど愉快な戦闘は久しいぞ」
「あああああああ」
力任せに振るわれる重たい一撃一撃が炎や雷の斬撃となって飛んでいく。その圧倒的弾幕は華やかで美しくも、絶望させるものだ。
「エレメンタリアを崩壊させる気か」
建物は雷で破壊され、炎で燃える。あれほど賑わい活気溢れた街は崩れ地獄と化す。
今のヒメギは勝つ事しか頭になく、後先の事なんて何一つ考えてない。
だがら、請求は任せたなのか。
「これ以上の破壊は許さん、はああ」
嵐のように暴れるヒメギに槍の一閃を見舞う。
火陽鬼神刀で受け止め、雷鳴龍神刀でアニクを切りつける。
切口が雷にうたれたかのように焼けるように痛く痺れる。
「はっ、はっ、はぁ!」
二つの刀による猛攻。縦へ横へ振るい、突いたり、回転したり、持ち方を変えたり、柄を合わせて双刃刀にしたり、投げてきたり、キックやパンチも混ぜてきたり、同じ攻撃法をしない巧みでトリッキーな攻めはまさしく絶技。
こんな時だが、華麗で気高く舞のような剣技に見惚れてしまう。
「ちぃ、とことん父親に似てるんだな」
一方的に押されながらも嫌味を吐く。
「一緒にするなぁ!」
それに過剰に反応するヒメギ。
「貫き通す槍(ライックランチャ)」
その隙は大きく、アニクの刺突が肩を貫く。
「うぐっ」
「バーニング・ギアよ、槍に集え」
刃に炎が宿り、ヒメギの肩から燃え上がる。
「うぐっ。こ、こんな炎」
「ブラスト・ギアよ、我が拳に纏え」
振り上げる拳に激しい風のエネルギーが集まる。
「ノゲイルクロー」
渾身の力を込めた一撃でヒメギを殴り飛ばす。
「はああああ」
片腕のみ更なる神威を流し威力を底上げする。
「精霊達よ、俺に力を!!」
炎、風、氷、雷の力が拳に集まり共鳴する。
「スピットスラッシュ」
筋肉が膨張し更なる豪腕となり、エネルギーが集まった拳を大きく振り下ろす。
瞬間、ヒメギはその場には居なかった。
耐え難い威力に、その身を吹き飛ばされたのだ。
「はあ、はあ、とんでもない奴だ」
神格化を解くと地面に片膝を付き呼吸を整える。
「アニク様、大丈夫ですか」
心配したアディラが駆け付ける。
「アディラ、あいつをヒメギを探せ」
「しかし、生きてるかどうか」
「奴は生きてる。探して剣舞祭のメンバーに加えるんだ」
「わかりました」
「さあ復興だ、獣人の建設技術をみせつるぞ」
街は崩壊し大惨事な結果で終えた大会。
この後に建設物は精霊の力もあってすぐにもどせたが、巨大なクレーターや亀裂だけは完璧に直すことができずにいた。
この試合を最後まで見届けたカズキ達は改めてアニマニアの脅威を感じたのであった。
んで次の日
「くたばれやオラアァァッ!」
バトル・トンファーを振り回しているジェルマンはアニマニア精霊学園の学生を相手に連戦連勝を重ねていた。
「なんだこの人間、滅茶苦茶強いぞ」
「さすがは剣舞祭に出るだけはあるな」
「どうした獣人はこの程度か!?」
「なめるなど、次は俺が相手だど」
カバの獣人が手に持つモーニングスターを振り回しながらジェルマンの前に立つ。
「食らうんだど、風鳥(ビレントバード)の加護を加えた炎の鉄槌(フレイムクラブゾン)」
「おせぇんだよ、大口野郎が!」
飛び上がりかわすと、そのまま頭部にバトル・トンファーを振り落とす。
「ぐえーだどー、やられたどー」
ごぉんと鈍い音が響き、ふらふらと後退りをして倒れる。
「次こいや!」
「張り切っているな」
「それは昨日あんな凄い戦いを見たのですかわ、燃え上がるのは当たり前ですわ」
いつも以上に燃え上がっているジェルマンを見て感心してるシバに言うノア。
ジェルマンだけではなく、ルリーやカズキもいつも以上に気を引き締めている。
「うおおお」
「はあああ」
そのカズキはというとミカルドと斬り合ってる。
相手の動きに合わせながら上手く振るっているカズキに対して、ミカルドは斬るというより叩き潰す感じで力任せに振り回している。
「力任せでも勝てると思うなよ」
つばぜり合いになった瞬間に押しきり、続けて蹴りを入れる。
「禍゛威゛狂゛甲゛ッ゛!゛」
ミカルドの背後から人形の黒竜が咆哮を上げながら現れる。
「喝ッッ!!」
カズキの気合いの入った一喝に黒竜はひっこむ。
「な、なんで変身できないの」
予想外な出来事にミカルドは戸惑いをみせる。
「また暴れてもらうと困るんでな、少し眠ってもらった」
「眠った?鎧が寝るんですか?」
「そいつは狂魔と呼ばれる悪魔竜(ディアボロス)を生きたまま鎧した代物だ」
「へー、詳しいんですね」
「当たり前だ、それは俺が創った鎧だ」
「え!?隊長が創った鎧なんですか!?」
「俺が神伐隊の最初の方に使ってた奴だ。危険だから閉まっておいたんだが」
あれは確かに宝物庫に置いておいたはずだったのだが、なぜかミカルドが着ていたのを見て驚いたなと思い出す。
「そうなんですか、急に目の前に現れたので気づいてたら着ちゃってました」
「なるほど、ミカルドさんに惹かれ動いたか」
ディアボロスは生きた鎧だ。血と闘争を求め動き出す事くらいは出来る。だが、問題はミカルドが鎧を生きてると知らなかった事だ。
馴染んではいるんだろうが、確実に使いこなせていない。
「そうだったんですか」
「もっと使いこなせる用に頑張れよな」
「はい」
もしそうだとするならば、使いこなせたときには大きく化けるだろう。
満面の笑みで答えるミカルドを見ながら新たな好敵手が現れるかもしれないと内心喜ぶカズキ。
「あれ、そういえばレオンはどうしたの?」
「あいつなら実家に帰らせた」
キョロキョロ見渡すリュークにレイカ先生が答える。
「へー、帰ったんだ」
「本来ならで明後日に行かせようと思ったのだが、どうも心配性過ぎてな」
修行に身がはいらないようで、その状態で続けても意味がないので帰らせたのだ。
「実の妹だからね、心配過ぎるくらいがちょうどいいと思うよ」
「ふっ、そうだな」
「故郷に帰って何か掴んでくるといいですね」
アニマニアに戻ってきてレオンの実力は上がってきた。
本人いわく感覚が戻ってきたとのことだ、ならば故郷へ帰ればまた変わって帰ってくるかもしれない。
「今年はいい人材が入ってくれた。リューク、お前に一番期待しているぞ。影の支えになってくれ」
「先生に期待されちゃ頑張る以外ないですよ」
「頼もしい限りだ」
「よーし、じゃあカズキと練習だぁ!」
そういうとミカルドとやりあってるカズキめがけ走るとフライングクロスチョップで吹き飛ばし、乱入するのだった。
交流戦を続けているジェルマンとノア。
「やっているな」
そこへ、学生服に身を包んだアニクがやってくる。
「あ、アニク様」
「アニク様だ」
「昨日の戦いは凄かったな」
「ヒメギもまさかあんなに強かったなんて知らなかったな」
昨日のヒメギとの激戦を制したアニク。その戦いはアニクの強さを誇示し、ヒメギの強さを世に広めた。
その為学園は今祭りのように騒いでいたりする。交流戦でみんな張り切っていたのは、それに触発されてだ。
「本人自ら視察たぁいい度胸じゃねぇか」
ふてぶてしい態度をとりながらもアニクを睨み付ける。
「剣舞祭に出場する何名か連れてきた、これで平等だろ?」
それに対して冷たい眼差しで見下ろす。
「はっ、何が平等だ。見学者がよ」
「見学?まさか、模擬試合のつもりだが?」
「面白え。雑魚ばかりで飽き飽きしていた所だ……ぶっ殺してやるよ」
「タスカ。相手をしてやれ」
アニクの後ろに立っている二本の巨大な牙、長い鼻を垂らした象の獣。三メートルはあるだろう巨体、大岩の如くごつごつとした腕、巨木を連想させるようなずっしりとした脚、鍛えぬかれた筋肉はまるでそこに山があるのではないかと思ってしまう程の存在感、とにかくでかい。
「なんだこのクソデカ象は!?」
「タスカ・パオパオム。元神伐隊で俺の側近だ」
「……アニク、このような羽虫を潰せと?」
「誰が羽虫だゴラァッ!」
「エレパレスラリアット」
大地を力強く踏みしめ豪腕を一閃振るうとジェルマンを振り落とすバトル・トンファーごと吹き飛ばす。
ボゴオオンとジェルマンの大爆発が起こるも、タスカの腕は平気のようだ。
「ぐはっ、なんて馬鹿力だ。力だけならカズキより上かこりゃ」
体を回転させ綺麗に着地をするも、ボコボコに曲がったバトル・トンファーを見て不適に笑う。
「あんな鬼神と一緒にするな」
大足で踏みつけてくる所を回転してかわすと、タスカめがけバトル・トンファーを投げつける。
それに気を取られてる内にジェルマンは背後をとり膝裏を両足で蹴り爆発を起こす。
体制を崩したタスカの後頭部に飛び蹴りをかます。
頭から倒れ、立ち上がろうとする所に横顔にトゥーキックをお見舞する。
「くたばれ、バーストナックル」
膝立ちになったタスカだが、象特有の鼻が伸びる。
とどめをさそうと顔面を殴りにかかるジェルマンの胴体に巻き付くとそのまま持ち上げる。
「うお!?放せ」
「なかなか良い攻撃だが、確実に相手を仕留める重さが足りん」
切れた瞼から流れる血を親指で拭き取りながら、ジェルマンを締め付ける。
「ふん、口程にもないな。いや、大口しか叩けないのか」
「なめやがって、爆破閃光(バーストフラッシュ)」
両手からタスカにめがけ爆発をぶち当てる。
「そんなものか」
なにごともなかったかのように笑うタスカは、締め付ける力を更に強める。
「ぐぬああ、ならこれでどうだ。爆破光線(バーストビーム)」
爆破を起爆させる部位を一点集中させ、貫通力を増した爆破を放つ。
「ぐわああ」
バーストビームはタスカの肩を焼き貫き、その痛みに苦悶の声をあげる。
「へっ、ざまぁみやガフッ」
ジェルマンを乱雑に投げ捨てると、その巨躯を活かしたタックルで吹き飛ばす。
学園の壁を何枚も貫き、鉄柵にめり込む形で止まったジェルマン。
「ジェ、ジェルマン」
「まちな、お嬢ちゃん」
ジェルマンの元へ駆けつけるノアを呼び止めるタスク。
「なんですの、まだジェルマンに追い討ちをかけるならわたくしが」
声を荒上げ返事をするノア。目は涙ぐんでおり、今にも泣きそうだ。
「……あいつに伝えてくれ、羽虫なんて言ってすまなかった。充分に強い、剣舞祭を楽しみにしている」
そう言うと、ジェルマンではなくアニクの方へ歩いていく。
「次は誰を相手にすればいい」
「あの魔法少女はどうだ?」
木陰で魔方陣を描き、その中心で精神統一をおこなっているルリーを指差す。
「……悪いが、俺にはできそうにない」
それを見て片手で頭を押さ数秒沈黙した後力無く答える。
「はぁ、小さい奴は殴れないはお前の悪いくせだぞ」
「頭では分かっているのだ、だが幼子を虐めてるようでだな」
「お前から見ればほとんどが幼子だろ」
「だが、あれは小さ過ぎる、俺の腰位もないぞ」
「相手なら私がしてあげますよ、選手じゃないですけど」
「ミカルド、なぜここに」
「知り合いか?アニク」
「あぁ、九十九小隊の隊長だ」
「ヤツの跡目か」
「俺達隊長に引けを取らない強さはある。だが、越えられはしない」
神格化。これが選ばれし者(隊長)とそうでない者との差であり、越えられぬ壁となっている。
「そんなやつが選手じゃないのか」
「はい、私もハートさんもセラフさんも隊長にコテンパンにやられちゃいましたから」
「ならカズキは剣舞祭に出るのか」
「はい、ほらあそこで今懸命に戦っていますよ」
「懸…命?」
指差す方を見ると
「どうかしら、ギブアップ?」
後頭部を膝裏に被せるように固め、もう片方の足でカズキの片足を動けないように絡め、両腕を上げるようにして極める。
「うおおおお」
それを無理矢理返そうと体全身に力を入れ踠く。立ち上がろうにも頭が潰されてる。歩こうにも片足が極められてる。両腕なんか動きもしない。
「ふん」
暴れるカズキを潰すように更に力をいれる。両腕の付け根と胸が裂けそうだ。
「ぐおああぁぁいいやあああ」
動けないなんて言ってる場合じゃない。はやく逃げないと腕が引きちぎられる。必死にガムシャラに動いていると思わせ実は片腕だけに力を集中させており、ロックが緩んだ一瞬の隙に振りほどき、リュークの腕を掴み地面に叩きつける。
だがリュークは叩きつけられた衝撃を利用したのかわからないが、跳ね起きのように立ち上がると同時にカズキを引き寄せその勢いのまま眉間に頭突きをする。
「っがあ」
「ったいわね」
鼻血を吹き出すカズキと、額が赤く晴れ上がるリューク。痛み分けのようだ。
「くたばれやクソカス」
「死に晒せクソカズキ」
互いに全力で放つ拳と拳がぶつかり合う。
「うおおおお」
踏み込みリュークを押し退ける。すぐさま首元を掴むと勢い任せに地面に押さえつける。
「もらったああ、雷曇」
そのまま顔面に雷を纏った拳を振り落とす。
巨大なクレーターをつくる威力、カズキは大きく飛び上がり距離を取った。
「化物が、寸前で受け止めやがって」
あの瞬間、掌で受け止め弾き飛ばしたのだ。
常人なら掌ごと、いや掌なんて消し飛んでいる。なのにやつはやってのけたのだ。
「おいたがすぎたわね、カズキ」
受け止めた掌は真っ黒に焦げており肘から血流している。
あの威力を片手で受け止めたのだ、前腕がダメになってもおかしくはない。
「けっ、それは互い様じゃろがい」
「………それもそうだね、これ以上やっても殺し合いになるからやめだ、やめね、やーめやめ」
「なんだ、逃げるのか。俺の勝ちだぞ」
「それでいいよ、私からも誘う口実ができたし。それに本気でやるなら覚悟が決まった時に言ってちょうだい、心置き無く全力でぶっ殺してあげるから」
「けっ、勝った気になれねぇなこりゃ」
先程殴った腕を振るいながらその場所を後にする?
「あの女もなかなかの実力者だな」
カズキに対して互角の攻防をしているのを見て、かなりの実力者と判断する。
「そうなんですか?いつもすぐやられてますけど」
いつもなら吹き飛ばされたり、極められたり、止められたりしてカズキが負けている姿を思い出すミカルドが不思議そうに言う。
「だろうな」
最強の称号を冠している男があんな訳のわからない少女に負ける訳がない。と誤解をするアニク。
「おお!?アニクとタスカじゃないか、久しぶりだな」
その場を後にしようとしたカズキは二人に気づいてこっちに向かって走ってきた。
「お前らもでるんか?完膚なきまでに叩き潰してやるぞ」
「貴様、会ってそうそうの言葉かそれかよ」
「カズキらしいな」
「アニクはともかく、タスカが出るのは意外だな。お前争いは苦手だろ」
「アニクの頼みだ、出るしかない。それに、今の俺がどれだけ世界に通じるのか試してみたくてな」
「戦いが好きなのか嫌いなのかわからんやつだ」
「精々覚悟しておくんだなカズキ、昔の俺達と思わない事だ」
「侮ったりはしてない、ただ昨日の戦いをみて俺の相手になるか不安には思ったがな」
「なんだと」
「あそこまで騒いだのに、あの様は不甲斐無過ぎる。きっちりぶっ殺せ」
「あくまで試合だ。殺し合いじゃない」
「だから場外勝ちか。らしくないんじゃないか?」
昔のアニクなら間違いなくあの場で殺していた。脅威となる芽は潰す、慢心はせず常に冷静で確実を求める性格だったのだが。大人になったのか、退化したのかわからん。
「お前はやつに勝てるのか?」
「当たり前だ」
アニクの質問に即答する。
「その自信ある返答はお前らしいな」
「そういやアディラはどうした?あいつもメンバーなんだろ?」
「お前を倒したいと気合いが入ってるぞ」
「色々とセンス良いからな、お前から出し抜いて正解だった」
懐かしいな、ファロンの移籍の時は久々に激昂したな。上層部まで行って話し合ってきて、アディラと交換と言う事で落ち着くしかなかったな。
「だが、ファロンを出し抜いた罪はでかいぞ?」
「……そうだな」
一瞬微笑みながら言うアニク?
「ファロンも出るんだろ」
「おいカズキ、ファロンはもう」
「やめろ。いいんだタスカ」
「…………」
「どうした暗い顔してよ。かっかっかっ」
「お前らを倒すメンバーを揃えてやるから、覚悟しておけ」
「楽しみに待ってるぞ」
そう告げると二人は静かに校舎へと戻っていく。
行ってしまったので、再び修行へと戻る。シンプルに素振りをしよう。両腕両足に重りをつけてだ。
「肘打ち、裏拳、後ろ回し蹴り、からのローリングソバット!」
振るう度にパァンと空気が裂ける音が響き、汗が飛沫をあげる。まるで踊っているかのよな華麗で美しい素振りをする。
「また素振りか、大好きだな」
ルイスが若干呆れた口調で言ってくる。
「基礎だからな」
続けながら喋るカズキ。
「重そうだな」
つけているバンド型の重りを見て聞いてくる。
「少し重いかもな。お前もつけるか?」
「……いや、遠慮する」
軽々しく素振りをしているからそれほどの重量はないのだろうと思ってしまう。だがカズキのことだ、滅茶苦茶重たいのだろう。
「お前ら、昼飯が出来たぞ」
「午後は俺達がしごいてやるから覚悟しろ」
しばらくしてエプロン姿のシバとダテが昼飯の時間を知らせにくる。
「おお飯だ飯!」
腕につけたバンドを外し落とすと、ゴッと鈍い音と共に地面にどんどんめり込んでいく。
その光景を見てルイスは心のなかで呟いた。知っていた。
「自分で重さを変えられるから便利だぞ」
笑いながら重りを拾い上げルイスに渡す。確かに軽くなってる。
「さあ飯だ、今日のメニューはなんですか?」
「今日はアニマニア名物、ワイルドチキンの丸焼きだ」
「現地調達したからな、新鮮だぞ」
なるほど、だから朝早くに出ていったのか。
「新鮮もなにも、焼いたら変わんないだろ」
「アニマニアの名物って丸焼きしかないんですか?」
確かに今のところ名物と紹介されているのは丸焼きがほとんどだ。
焼けば食える、さすがアニマニア。
「いててて、肉だ肉をくわせろ」
ボロボロのジェルマンがノアと一緒にやってくる。
「酷いやられようだなジェルマン」
「うるせぇ、次は勝つ」
「隊長でもないのに、あの強さ。他国もどのような人が出るのか気になりますわ」
確かにアニマニアの脅威は理解した。となると、他の国もどのような人物が出るのか気になる。
「アニクも出るとなると各国にいる隊長共も出るのは確実か、オーウェンが出るならちとやっかいだ」
「聞いたことあるぞ。一対一(サシ)でやるならオーウェン、って言われてる奴だろ」
ジェルマンが口を挟む。
サシでやるなら、か。あながち間違ってはいない。
発言からして噂は知っているが、全容は知らないようだ。
「あいつは倒すのにちと苦労してな」
「そんなにか?」
「勝てない相手ではないがな」
俺は何度か戦っているが全て勝っている。だが、それはお互いに全力ではなかったからだ。
曲者揃いの神伐隊の中でも最強と名が上がるほどにだ。
「戦う時を楽しみにしな、驚愕するぞ」
それは俺に向けての言葉でもあった。
「何をぼさっとしてる。飯が冷めるだろ」
「はやくしないとリューク様に全部食べられるぞ」
「お肉おーいしー!」
物凄い勢いで肉を頬張っているリューク。それをみて急いで食卓へ向かうのだった。
つづく