急に訪れた悲惨な戦争。その結果は惨たらしいものだった。
多くの命が僅か数十分で消え、街はもう住めるものではなくなった。
アニマニアの富の象徴ともいえる最大の都市は崩壊したのだ。
「やってくれたな、悪魔共め」
「あの戦いで終わったんじゃないのか」
「タスカ、これが現実だ。今一度戦う必要があるようだ」
「神伐隊の活動再開……剣舞祭どころじゃないな」
「いい余興になるんじゃないか。どの隊長が強いか思い知らせてやる」
「その前に、やることがあるな」
「そうだな」
「おいシバ、木材持ってきてくれ」
「はいよ」
「この石材はここにおいとくぞ」
「手伝いに来てやったぜファミリー!」
「よく来てくれたファミリー!」
「自由に駆け巡れ、浮遊歩行(フライウォーク)」
「これが魔法か、すげぇ便利だ」
「なんの、精霊も負けてないぜ」
「誰かセメントつくれ、足りないぞ」
住民だけじゃない王族や兵士、学生全ての獣人がエレメンタリアに集結し復興作業へと勤しむ。悲しんでる暇はない、壊れたなら新たにつくればいい、そうやって一歩一歩強く歩んでいくんだ。
「ヒノモトの建築技術なめんな!釘よこせ釘」
「グラン・ギアよ、整地しろ」
「あんちゃんの精霊は便利だね」
「こんな事出来る精霊なんてなかなかいないぞ、もしかして上級精霊?」
「どう?この彫刻像、なんと作業時間十分もないよ」
「みなさん、昼食が出来ましたわ」
「わーい飯だ飯」
「こんなめんこいお嬢さんが作ってくれるなんて、オラ嬉しいだど」
「うめえうめえ」
「おかわりだノア」
「自分でよそえカス!」
「バーカバーカドルツェルブ」
「どういう意味だゴラァ!」
「お?喧嘩か?やれやれ」
復興作業を手伝いながらバカ騒ぎをしてるFクラスの面々。
「まったく、修行しにきたのに悪魔退治に復興作業とはな。やられたよ」
それを見て額に手を当てるレイカ先生。
本来の目的とは大きくずれてしまい、ため息が出る。
そういうが、先生もしっかり復興の手伝いをしていたりする。
「いい経験になったんじゃないか?」
そんなレイカのとなりにダテが座る。所々汚れた顔や衣服に、タオルを頭に巻いたタンクトップ姿はもはや土方仕事のお兄さんだ。
「……そうだな」
「ノアさんの力作だってな、滅茶苦茶うまいな」
「私も習おうかな、料理」
「お前はお前でいいんだぞ」
料理が苦手なレイカに対して気を遣っての言葉だが
「うるさい」
余計なお世話と言わんばかりに悪態をつく。結構気にしているとろこはあるようだ。
「うわー、先生とダテさんがイチャイチャしてる」
「ヒューヒュー」
「貴様ら先生を茶化すとはいい度胸だ」
「やべ逃げるぞ」
「ダテ兄の彼女だから、姐御?姐さん?」
「先生だろうが、たわけ」
「飯食ったから仕事しよ仕事」
「はやく復興させましょう」
「ですわ」
怒り狂ったレイカ先生から逃げるように立ち去る。いや逃げた。
「あー、あと少しで合宿も終わりか」
「そしたら学園生活に戻るな」
「あははは、笑えねえ」
「はあ、かったりい」
建物に釘を打ちながら駄弁っている男三人組。
完全復興まではまだまだ遠いが、少しでも助力になればと今日一日は手伝う事をレイカ先生から許可を得ている。
「もう、しっかりしてほしいですわ」
「そうだそうだ、働け働け」
「はい、お茶です」
労働者の方々にお茶を配っている女三人組。こちらは絶大な人気と支持を誇り、なぜか作業効率が上がっている。
「かー、ノアさん美しいな」
「リュークさんなんか神々しいぞ」
「ルリーさんも可愛いぞ」
「いやー目の保養目の保養」
「力がわいてきた」
「さあもう一仕事!」
ほら、なんか知らんが獣人共のやる気が上がっている。
「ほら、さっさと働けクソガキ」
「んだと、助けてやったのに労働させる気か!」
「助けるなら最後まで助けろ」
「そうだそうだ半端者」
「くそが!」
俺らだけ扱いが違い過ぎる。なんだよこの格差は、くそが。
などと復興作業を手伝っているといつの間にか日が暮れてしまった。くそが!
知っての通り日が暮れ、夜になり悲惨な戦争の後だというのに各地から獣人が集まったということで流れ的に大きな宴会となった。
獣人達いわく、死んでいった者の為に泣くのは葬式まで、生を喜び、戦士達を称える宴する。だそうだ。
森に生き、大地で育ち、自然の理に従う。常に命を賭けている種族ながらの考えだ。
工場中の建造物に急いで作られた簡単なランプを大量に置き、夜空には精霊が光を放ちながら浮遊しているのでほのかに明るい。
そして、樽でつくられたジョッキを片手にわいわい騒いでいる獣人達。
その中には、ジェルマンやルリーといったFクラスの面々も大いに楽しんでいた。
そんな中戦いの中で避難場所として使われダテ、シバが守る鉄壁の要塞として無傷だったアニマニア精霊学園。今では病室として使われ、その一室の中でアディラは窓から宴の様子を浮かない表情で覗いていた。
「邪魔するぞアディラ」
そんな部屋へやってくるカズキ。片手にはサンドイッチや果物といった食べ物、そして葡萄酒の瓶が入ったバケットを持っている。
「参加されないのですか隊長」
それを見てお見舞いと一瞬でわかったが、外では宴の最中。こんな時間に来なくてもいいのではないかと続けて口にする。
「ん?俺の可愛い元隊員が怪我してんだ、そんな気分じゃない」
とはいいつつも二つのグラスに葡萄酒を注ぐ。
「酒は怪我にさわるから雰囲気だけな」
グラスを合わせ乾杯すると、笑いながら一口だけ飲む。
「……まだ私に構ってくれるんですか?」
「構う?バカだな。お前ら隊員は俺の部下だぞ!今は違えど、その事実はかわらん。心配するのが普通だろ」
部下の事を気にするのは上に立つ者として当然だ。と言わんばかりに強くいってくる。
「お人好しはかわらないのだな」
何も変わっていないカズキに思わず一笑する。
「お前らがそうさせたんだろ。戯れ言口にするまえに強くなってくれ」
「強く、なったつもりだったんだがな」
「あん?」
「みんな隊長に憧れ、今も越えようと努力してるさ。でも、なかなか追い付かないものだな」
難関な任務をこなし名だたる猛者を倒し続け神伐隊最強(最強)と呼ばれ一人歩きしてる隊長。その隣に立とうと自ら努力し、ある者は諦め去っていき、ある者は任務中に命を落としてきた。
それでも一緒に戦い、隣に立ち同じ景色を見たくて今も足掻いている。
「何言ってるんだ?お前らは強い、充分頼りにしてる」
「嘘だ」
違う。御世辞や慰めなんかいらない、ただ欲しいのは真意。
「……いらないんです。その優しさは、辛いだけなんです。弱いなら、邪魔ならそう言ってほしい」
今回の戦いも結局は足を引っ張ったに過ぎない。
「そんな訳ないだろ。俺ら最後の戦いだってお前らが殿を務めたから多くの仲間が救われ俺らの隊全員が助かったんだ」
「……全員?」
「それに変に堅いよなお前ら」
ハートといい、セラフといいアディラまでも緩い癖に堅いんだよな。
「少しはルミスを見習え」
「あれこそ堅物だろ」
ルミスという規律には厳しい時間にも厳しい訓練にも厳しい付け入る隙のない堅物がいるんだが、それよりも堅物と言われるのが許せない。
「そうか?俺より弱いのに口答えはするわ、喧嘩売るわ、酒隠すわ、煙管壊すわ、人の部屋勝手に入るわ……なんかイライラしてきたな」
「それは隊長を思って」
「そうだな、俺の為に堅いなりにも柔軟に対応してくれてる。お前が俺に対して足りないのは友好さだ」
引き抜きからの叩き上げということもあってカズキに対して強い憧れを抱き、いつしか敬意と恐れ信仰に等しい畏怖の念が誰よりも強い。それが隔たりとしてある。
「俺のチーム見てみろ。喧嘩多いが仲良しだろ」
馴れ合いじゃない。互いに認め合い高め合い、意見が違えばぶつかる。
一つの目標の元で集まった面子だが、目標以上の為に戦っている。
信仰と信頼は違う。信じてるからこそ頼れるというものだ。
「俺がつくりたかった理想のチームだ。俺が未熟故に九十九小隊(前)じゃつくれなかった理想のな」
理想はあった。イメージもあった。だが、体現するのは難しい。自分がどうこうですむ事ではない、相手は意志を持った人だ。強制するのは簡単だ、だが欲しいのは自然体、仲間よりも先の友達だ。憧れや目標ではない、一人の友達としてみてほしかった。あ、寂しい訳じゃないよ!(雰囲気ぶち壊し)
「俺の理想に唯一体現してくれたのはルミスだ。だから、副長(俺の右腕)になれたんだ」
あいつはよくやってくれた、俺の為によく動いてくれた。
個人的だがいつまでも感謝してる。
「別に否定する訳じゃない。今のままでも構わない。けど、変わりたいなら行動しないとな」
「……そう、ですか。隊長は今も私を必要としていますか」
「当たり前だろ、俺ら友達なんだ。居なくなったら寂しいぞ」
「友達、私と隊長が?」
「嫌か?」
「そんな、嫌じゃないです」
「ならこの話は終わりだ」
「おー、いたいたカズキ!んなとこに居ないで飲もうぜ」
ドアを勢い良く開けて入ってくるジェルマン。片手にはワインの瓶が。
そうとう飲まされたのであろう、顔が真っ赤だ。
「たまには羽を伸ばしましょう」
その近くにはルリーやレオンもいる。あまり飲まなそうなイメージだが、飲むとこうなるのか。
「まったく、騒がしいやつらだ」
「少しカズキを借りてくぜ」
「レイカ先生がダテさんを酔い潰したぞ」
「なに!?あの酒豪をか、仇とらねば!」
「すみませんお邪魔しました。これ差し入れです」
手に持っていた葡萄酒をテーブルの上に置きお辞儀をするルリー。
そして連行されていく形でカズキを連れていく。
「友達、か」
嵐のように騒ぎ静かに去っていくその姿を見て、昔行われた小隊での食事会を思い出す。
誰もカズキにあんな態度取っていなかった。カズキという隊長に気を遣ってきっと取れなかったんだろう。
強弱立場関係なくただ同じ仲間、友達だから取れる当たり前の姿なんだろう。
「あれが隊長がほしかった関係、か。友達……友達」
そういえば、学園中は勉強や生徒会の仕事に追われ休日は同室のヒメギくらいしか話さない。出かける事もほとんどないし、時間があれば鍛練に使っている。よくよく考えれば友達というものが居ないのかもしれない。
若いうちから仕事詰めだなんて、なんかすごい人生損してる気がしてきた。
もう少し遊んでもいいのかな?
そう思ったらこんな所で寝ている暇はない。さっそく祭りに参加しよう。
痛い体に鞭を入れ立ち上がり、酒瓶を片手に下へ降りるのであった。
おまけ
「ダメだど、もう飲めんど」
「おう終わりか?まだまだ足りないぞ」
一気飲みして倒れる獣人に対して顔色変えず平然と飲んでいるレイカ先生。
「いけーカズキ!お前しか勝てない」
「こりゃ蟒蛇みたいに飲んで、化物かよ」
レイカ先生の周りで倒れてる十数名の獣人、そして椅子に座って寝ているダテを見てさっきまで連戦で飲み比べているのが容易にわかる。
「俺を誰だと思ってやがる?絶対のカズキだぞ、祭りと喧嘩はヒノモトの華!売られた喧嘩は買うぜ!」
数時間後見事にぶっ倒れているカズキがいたそうだ。
つづく