皆が酔い潰れ深い眠りについている中、カズキは一人早く起き校内を歩いていた。
「うぐあ、頭いてぇ」
昨日の宴でレイカ先生と飲み比べてから記憶が曖昧だ。
ただ潰れたのだけはわかっている。その証拠に頭がズキズキと痛む。あとシンプルに気持ち悪い、完全に二日酔いだ。
まさか連戦で飲み負かすとは、あれと真正面から張り合うにはじいちゃんか神様くらいだろ
レイカ先生の酒豪っぷりに驚愕しながら、カズキは頭を押さえながらある一室の前に止まる。
「フィロさんいるか?」
横開きのドアを開けると、白衣をみにつけた獣人の少女が机に顔をつけ複数の試験管とにらめっこしていた。
その容姿は腰よりも長く伸びた青色のふわふわの髪。驚くほどに色白の肌。金と銀の二つ巨大なしっぽ。頭にはウサギの耳、そして垂直に伸びた二本の角。一目でわかる、混血種だと。それもかなりのものだ。
そんなもふもふの化身のような彼女の名前はフィロ・ビースタルク。
昔ちょっとした仕事の時に成り行きで知り合った旧知の仲とでもいっておこうか。
「なんだ、カズキか」
こちらに気付き顔を向けるなり、がっかりした顔をして再び試験管とにらみ会う。
「なんすか、そんながっかりした顔は。久々の再開だってのに」
「久々なら真っ先に会いにきてほしいものだね」
「アディラから聞いたんだ。まさか、一室もらっているとは」
特待生だからって教室の一つ自由に使えるなんて思っていなかった。
「学園一の優等生だからね。特待生には特典がつきものなのさ」
「へー」
「それで、なんのようかね」
「二日酔いに効く薬とかないですか?十人分あれば助かる」
無駄話をしたくないらしいのか、すぐに要件を聞いてくる。
「昨日の宴のか、全く歯止めが効かない者達ばかりだ」
「昨日襲撃されてたのに参加せず実験に没頭していた人に言われたらおしまいですよ」
「どんな状況でも集中できるのは素晴らしい事じゃないか。誉めたまえ」
「限度があるでしょう。バカと天才は紙一重というが、どっちなのか本当にわからん」
「ほう。まるで君と私のようじゃないか」
「どういうことだ」
「カズキ(バカ)とわたし(天才)」
カズキを指を向け、続けて自身へ向けるフィロ。
「……意味を聞こうではないか」
「バカは頭が悪い以外にも背定的な意味もなす。一つの事に集中したり、常識知らずが故に新しい発想も出てくる。方向は違えどある意味では同じだな」
「誉めてるのかけなしてるのか、どっちかにしてくれ」
「失敬な、誉めているのだよ。その紙一重の間に沢山の者達がいるのだ。凡人か愚者か、半端しかいない」
「手厳しいことだ」
「彼女はそのどれに当てはまるのかな」
指をさす方を見るとソファーですやすやと眠っているヒメギがいた。
「ヒメギ、なぜこんな危険区域に」
「危険区域とは失礼な。可愛い娘故に叱ったそうだが、随分おちこんでいるぞ」
昨日突然入ってきては泣きつかれ訳を聞いて落ち着かせて寝かしたそうだ。
我が娘ながら単純なやつだ
「君から任されている身だが、君と同じで私も親にはなれない。あくまで友人として接しているが……」
「みなまで言うな。フィロさんは頑張ってる。俺がまだガキなだけだ」
「……二日酔いの薬なら、あそこの棚にある。私の朝食を作り終えたら持っていくといい」
「くそが、ただじゃないのか」
「当たり前だろ。何事にもそれ相応な代価が必要なのだよ」
「知ってた」
「まずコーヒーを入れておくれ、徹夜明けで眠くてしょうがない」
「まずは寝ろ。飯食って寝ろ」
「今目が離せないのだ」
「なんの実験してんだ?」
「バカに言ってもわかるまい」
ふっ、と鼻で嘲笑う。言っては悪いが凄いムカつく。
「なにを!?言ってるのかよくわかるな」
だがしかし正論なのは間違いない。故にムカつく。
「物わかりが良くて助かるよ。バカのわりにはね」
「かちーん!事実だがあまり言われると怒るぞ!かちーん!」
「発言がバカなんだよねえ」
「なんだと!?あったまきたよー」
「気晴らしに古代魔法を使用した実験をしていてな。蘇生魔法を応用した蘇生薬の実験をしているのだよ」
「へー、神への冒涜行為だな」
「全く持ってその通りだ、死があるから命は美しい。しかし、死者蘇生は命ある者全ての願だ」
「だが、死は逃れられない運命だ。皆平等にふりかかる。受け入れるのが道理だろ」
「死に場所を追い求めてるくせして生に執着している君に言われたらおしまいだよ。相も変わらずちんちくりんなその姿がなによりも証拠だ」
「ちんちくりんは余計だ」
「ならば速く成長したまえ、身も心も」
「やかましい」
「向きになるな余計子供に見えるぞ。だがまあ安心したまえ、あくまで気晴らしといったろ。こんなもの普及させるつもりも誰かに教える事もしない」
「なら安心はしておこう。で、食材は?」
「こんな所にある訳がないだろ。調達してきてくれ」
「………」
頼る相手を確実に間違えたなと今ハッキリとわかった。そして後悔だけが残ったのであった。
つづく