駄作   作:匿名希望ただの人

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半端ねぇ回復力

試合が終わりカズキを探すノア達。

大怪我を負ったのに医療室には行っておらず、どこかへ行ってしまったとのことだ。

「まったく、どこに行ってしまわれましたのですか」

「あの怪我じゃそう遠くに行ってはいない」

「あ、あの、あれってもしかして」

ルリーが指差す所に、間隔を開けて血痕が道になっていた。

「そっちは山じゃないか」

「一体どうして」

その血痕を頼りに進むと山の入り口付近でカズキがうろうろとさ迷うように歩いていた。

「カズキさん」

「その声はノアか、どうした」

「どうしたじゃありませんよ。大丈夫ですの、その傷」

「この程度、日常茶飯事だ。気にするな」

「気にするなって、そんなことできませんわ」

「は、はやく回復しないと」

「大丈夫大丈夫、なんともないから。気持ちだけ受け取っておくよ」

「大丈夫じゃありません。死んでしまいますよ」

「……じゃあ腹減ったから、飯作ってくんね?血が流しすぎて貧血でよ」

「わかりましたわ」

「あ、レオンは残ってくれ、頼みがあんだ」

「なんだ?」

「あー、みんな行ったら話すわ。お前にしか頼めない事だから」

「わかった」

「……行ったか?」

ノアとルリーが寮へ向かったのをレオンに確認を取る。

「あぁ」

「んじゃあよ、コオレンを取ってきてくれないか」

コオレンとは、冬を除き年中咲く花だ。それには止血や消毒薬の効果かあり、昔から張り薬や漢方として使われているもの。

アニマニアでは主流の手当てだが、大怪我がそんなもので治るとは思えない。

「本当は俺が取りに行きたいんだけどよ。情けないことに視界が暗くてほとんど見えないんだ」

「お前、失明してるのか」

「血の流しすぎでな、飯でも食えばすぐに治る」

「……わかった、すぐに取ってくる」

「ありがとう。俺は少し寝るからその間に頼む」

「お前達はカズキを連れて、寮に戻れ」

「わかりましたわ」

「おい、なんでいるんだよ」

「すまん、まだ行ってなかったみたいだ」

「さわんな、目も見えている一人でいける」

「……そっちは寮と真逆ですよ」

「やかましい」

「拉致があきませんわ。ルリーさん、押さえてください」

カズキの手を掴み引っ張るノアと、後ろから押すルリー。だが重傷者とは思えないパワーでその場からビクともしない。

「はなせ、これくらいなんともなぐぬあぁぁっ」

突然倒れ踞るカズキ

「あ、あぁ」

ルリーの手には大量の血が付着し、カズキの腹部から血が流れ出す。

「バカ、野郎ぉ、傷口抉るなぁ」

服をめくると、傷口から腸がはみ出ているおぞましい光景があった。

「腸が出ているな、よく生きていられるな」

「ちょ、腸ぉ」

初めて生きた人間の腸を見たルリーはショックのあまりその場に倒れる。

「女の情けはうけねぇ、こんな屈辱を俺にしてただですむと思うなよ」

「バ、バカですわ。こんな状態なのによくそんな口をきけますね」

「うるせぇ、俺に構うな」

情けをかけるなとバカ騒ぎするカズキにリュークが容赦なく腹部を殴る。

「がはっ」

さすがのカズキも意識を失い倒れるところをリュークが担ぐ。

「静かになった、行こう」

リュークは得意気に親指をビシッと立てて言う。

「あ、あなた、容赦ないのですね」

「騒ぐほど元気があるなら、これくらいで死なないよ」

「俺もすぐに行く」

「いっそのことこのまま医務室に連れていけばよろしいのでは?」

「いや、こんなプライドが高いやつにそんなことしたら殺されるか自害するぞ」

「そ、それはいけませんね」

「ノアはルリーをよろしくね」

「わかりましたわ」

リュークは寮へ向かい、ノアは気絶したルリーを揺さぶって起こす。

 

 

 

 

 

んで

 

「はああなああせええこおおのおおやああろおおお」

「ほら、暴れない暴れない」

「そんなに動くと食べれませんよ」

「熱っ、テメェわざとだろうが。誰だ、ノアかルリーかそれともリュークか、あぁ!?」

暴れるカズキをレオンが羽交い締めで押さえ、リュークが無理矢理口を開けさせ、ノアが料理を食べさせる。なんともシュールな絵である。

「一人で食える、こんな介護はいらん」

とは言っているが、目が見えないせいで食べようにもどこになにがあるかわからず、料理をこぼしたり、食器を割ったりして大惨事になっていた。

「ほら、食べないと死ぬよ」

「死んで結構」

吐き捨てようとするので口を押さえ、顎を手で動かし咀嚼させ、飲み込むように鼻をつまみ飲み込むまで放さない。拷問である。

「殺す気かお前」

「死んで結構なんでしょ?」

「ぐぬぬぬぬ」

「カズキさんってこんな性格でしたっけ?」

「ジェルマンにでも取りつかれたか?」

「お前ら、静かにしろよな………何してんだ」

やってきたレイカ先生もその光景を見て呆れる。

「先生も手伝ってください」

「いいスキンシップじゃないか、午後の授業が始まるまでに終わらせろよな」

そう言われて気づく、今は昼休みなのだと。そして授業開始10分前だと。

「カズキさん、私達はそろそろ行きますわ」

「ちゃんと食べるんだよ」

「お、お大事にです。カズキさん」

カズキの拘束を止めて急いで教室に向かう。

「最初っからそうしろよな、ったく」

寮にはカズキが一人たけ、あれだけ騒がしかったのが嘘のように静かだ。

傷口にはコオレンの花を張り包帯が巻かれている。気絶している間に手当てをしたのだろう。

とは言うがほんの十数分程度だろう、飯の匂いで起きた時にはあいつらに取り押さえられていたしな。

「あいつらに、酷い事言っちまったな」

特に女性陣に。俺の事を心配してくれたのに、素直に受け入れる事ができなかった。決して恥ずかしいからとかではない。

「……なかなか抜けないもんだな」

ふとそんな事を呟く。

食事はまともに取れないで諦め、その場で横になり寝る事にした。

 

 

 

 

 

 

「んっ」

目を覚ますと、男子部屋のベットの上にいた。

男子部屋といってもベットとテーブル、小さなタンスがある狭い部屋だ。ここで三人が寝ているのだ、まだ三日目だがなかなか良い住み心地で気に入っている。

部屋は暗いので、学園から帰ってきたやつらがここまで運んだんだろう。

リビングから声が聞こえる、みんなで夕食を食べているのだろうか。

そんなことを考えると腹が減ってきた。そういえば、ご飯を食べずに寝ていた。

一緒に食事を取ろうと一階のリビングへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

リビングでは、テーブルを囲み会話をしながら夕食を取っていた。内容はもちろん、決闘についてだ。

「カズキさん、強かったですね」

「そうだな、あれほど強いとは思わなかったな」

「まさかジェルマンがあんな負け方をするなんて、信じられませんわ」

狂人ことジェルマンを相手に戦いをバカにするような戦い方で勝利したカズキ、それは印象強く残った。

「余裕がありそうでしたね」

「そうだな、戦う時は覚悟しないといけないな」

「あら、レオンさんは戦うおつもりで?」

「あぁ、あんな凄い奴を見たら戦士として血が騒ぐ」

「お前ら、食事の時くらい物騒な話はやめて明るい話をしろよな」

一人酒を飲んでいるレイカ先生。ちなみに法律では十六歳なら飲酒は認められ、学園も生徒が飲む事を禁止しているわけではない。

「カズキも考えがあって、あんな戦いをしたんだろ?」

試合前にも礼儀をする律儀なやつが、あんな相手を侮辱する戦い方はしないと考える。

「でも、それが本心かもしれませんわ」

「だったらその内にボロが出るだろ。その時は失望でもなんでもするがいいさ」

笑いながらグラスに入った酒を一気に飲み干す。

「お?何か美味しそうな物を食べているな」

リビングへカズキが入ってきた。

「カズキ、目は大丈夫か?」

「あぁ、しっかり見えるぜ」

「傷はどうだ?」

「まだ塞がりきってないけど、明日には治るだろ?」

「そうか」

「お前らが、手当てしてくれたからだ。さっきはあんな事を言ったけど、正直嬉しかった。ありがとう」

両膝を折り、額が床につくまで下げる。

「変なの、嫌がっていたのに嬉しかったとか」

「今更いいですよ」

「いや、礼はしっかり言わないといけないからな」

「料理が冷める前向きに食べましょう」

頭をさげるカズキを空いている席へ移動し座らせる。ルリーさんがお皿を持ってきてくれる、なんて気が利くんだ。

ありがとう、とお礼を言い受けとる

「ジェルマンはどうした?」

「あいつなら医務室で寝ている、頭蓋骨にひびがはいってたそうだぞ」

怪我が酷く、完治するまで数日は医務室で過ごすそうだ。

「そりゃまぁ一応殺す気で打ったからな、それでも加減はしたんだよ加減は」

「加減して頭蓋骨にひびか、滅茶苦茶だな」

「そうか?俺の正拳突きはドラグニアの恐竜も倒すんだぞ」

「冗談はよしてくださいよ。そんなことできませんわ」

「ひど!?」

「んなのは、どうでもいいだろ。ほら、勝利を祝して食べろ食べろ」

酒が注がれたグラスを渡すレイカ

「先生、酒は飲みませんよ」

「つれないな、晩酌くらい付き合ってもバチは当たらないぞ」

どうやら一人で飲んでいるのが、悲しいようだ。だからって生徒を誘わなくてもな。

「怪我人に飲ませないでくれ、血が流れちまう」

「それもそうだな」

「頬と額の傷は治ったんだな」

「あの程度ならすぐに治る」

カズキは気づいてないが、切れていた額や刺された頬の傷はすでに治っている。

「すごい回復力だね」

「無駄に鍛えているからな、ちょっとの事じゃ俺は殺せない」

「ふーん」

「じゃあ明日から授業は出れそうか?」

トレーニングはきついが、全部の時間がそうなわけではない。多分大丈夫だろう。

「出ますよ」

「いい返事だ、みっちり鍛えてやるからな」

バンバンとカズキの背中を叩きながら楽しそうに言ってくる。

「カズキさんのせいで明日はハードになりましまわ」

「まだついていけてないのに」

「連帯責任だな」

「怪我人に対する手加減はないのか?」

「あるわけないだろそんなもの」

どうやら明日からハードになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

「うおおおおらーーーっ」

「もっと速く、深く、的確に」

「はい」

凄まじい勢いで腕立て伏せをするカズキ。宣言通り激しいトレーニングを課すレイカ先生、だがそれに食らい付くようにこなす。

「凄いな、本当に治しやがったぞあいつ」

脇に出来た傷も火傷も跡形もなく完治し、折れていた足やひびが入った背骨や肋も治っている。本来なら歩くどころかベッドの上で絶対安静の所を本当に一日で治したのだから、医者も驚いていた。

もっとも、傷を負ってから普通に動いていたので結果は明らかではあった。

「奇跡ですね」

「そもそも爆破衝撃(バーストショック)を受けてあの程度ですんだのが奇跡なんですけどね」

爆破衝撃(バーストショック)は爆発を利用しリングを粉砕できるほどの威力を持つ大技。本来なら城壁を破壊する為に仕様する技で、あんなのを受けたら肉体は跡形もなく吹き飛ぶだろう。

「俺達も、負けてられないな」

「ですわね」

「ふぇぇ、まだやるんですか~」

「がんばろー」

休憩を終えた四人は立ち上がり、ワンツーマンで指導を受けているカズキの元へ向かう。

今日も元気に死ぬギリギリまで追い込まれるのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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