日が過ぎて
「チェストオオォォッ!!」
アニマニアの生徒と交流試合をしているカズキ。
悪魔襲撃の件からアルセウス学園生徒の実力と気前さに更に気に入られたのだ。
そんな訳で、折角ならと練習試合をしたいと声が多くあがったので相手をしているのだ。
「うおおお!?ただの剣が神威武装を斬っただと!?」
そこでは愛刀であるクニキリを使用せずそこら辺に飾ってあった剣を使っている。
見せびらかすように相手の神威武装を斬り捨てる。
その度に生徒から驚きの声があがる。
「気現の太刀に斬れないものなどない。剣だろうと刀だろうとな」
ヒノモトの凄さを見せつけご満悦のカズキ。
「まさか、凄い剣なのかもよ」
カズキから剣を受けとると、ぶんぶん素振りをしてみて
「チェストゥオオォォッ!!」
近くの細木に思いっきり振るう。
ザクッ
「……鈍で斬れるんかよ」
近くの細木すら思いっきり振りかぶっても斬れない程の切れ味。
それにはがっかりするとの同時に練度の高さを改めて知る。
「ったりめぇよ。力だけじゃねぇ技術もしっかり身に付けてこそサムライ、文芸全般修めてこそモノノフ」
「ヒノモトすげぇ」
「この人の元で戦っていたアディラ先輩もすげぇ」
「アディラ生徒会長ずげぇ」
「生徒会長すげぇ」
なんかアディラが凄いみたいに話が変わってきたが、確かにあいつも凄いし俺の叩き上げみたいなものだから嬉しい。
「これで全員だろ?もうおしまいだ」
「くそ、全校生徒のほとんどがやられたぞ」
「たった一人にか、くそ」
「許せん、他にいないか」
「やれやれ、わたしが残っているではないか」
身の丈以上の薙刀を持ってやって来る女性の獣人。
金と銀の巨大な尻尾に頭から長い耳と立派な二本の角、明らかな混血種。
「あ、あなたは特待生のフィロ先輩」
「滅多に特別教室から出ないと言われている幻の!?」
「三年だけど、初めて見た」
「たまには運動させておくれよ、カズキくん」
妖艶な声で挑発をしてくる。
「いいのか?引きこもりが過労死しちまうぜ」
「心配には及ばんよ、我を輝き照らせ赫い太陽(レッドサン)」
上空に太陽を連想させる巨大な炎の玉が浮かびあがり温度を上げ周囲を灼熱の地へと変える。
「厄介な神威だ、だが俺には無意味」
刀を抜き捨て一気に斬りにかかるカズキ。
「異空より顕現せよ、エンドルス」
「!?」
空間の歪みから巨大な腕が飛び出しカズキを殴り飛ばす。
「エンドルス!?ちょっと待て、なぜ異空の魔王が精霊になってんだ」
こんな事が出来る奴は歴史上ただ一人。異空の魔王エンドルス。
太古の昔、神々と戦い封印という形でしか抑えられなかった魔王。
異空間に存在する厄介な存在だとカセン様が仰っていた。
「それはわからない。だが、わたしの契約精霊だ」
「こりゃ反則だ、俺も精霊ほしくなった」
「いくぞ、サンライズシャワー」
上空から無数の炎弾が降ってくる。
続けてエンドルスの双腕がカズキを狙う。
「過去の魔王なんか関係ない、やってやる。その首置いてけや!」
その頃
学園内にある来客室で、一つの事件が起きようとしていた。
「わざわざ聖レイクロウ神国から使い、ましてや聖騎士団が来られるとは。一体何を目的で?」
「とぼけないでください。アニク様」
アニマニア大国王子のアニク、生徒会長のアディラの前に座る二人。
白一色のシンプルな制服に銀色の胸当て、翼と剣をあしらった紋章が刻まれた肩当て。その紋章は聖騎士団、白の旅団のものだ。
ここで聖レイクロウ神国とはなにか、聖騎士団とは何かを簡単に説明しよう。
聖レイクロウ神国とは六大陸とは別として分けられる島国にして神の恩恵、信者が集中する聖なる大陸。多くの姫巫が在籍し神のお告げを聞く事ができる唯一の場所にして、全大陸の中心部と言っても過言ではない程の影響力を持つ。
聖騎士団は、優秀な神威使いを集めた集団で彼らはトップに居座る元老院の指示の元に行動をしている。
その中で更に優秀な人材を集めた精鋭部隊が白の旅団である。
他にも黒の旅団もいるが、それは別の話。
「父上に貴様ら俗物が簡単に会えると思うなよ」
「獣風情が我々に俗物とは失礼ですね」
「………」
「………」
雰囲気は最悪、なにか違えばすぐに喧嘩になる一触即発。
「……あー、俺達いる意味あるか?」
ここでジェルマンが声を出す。
この場にはジェルマンとノア、レイカ先生がいる。他の面々はどうしたかというと、レオンは逃げて、ルリーは図書館に閉じ籠り、ミカルドはドアの前にいる、ダテ、シバは遠くからこの状況を監視、ルイスはカズキが問題を起こさないかを監視、リュークは安定の知らん。
「重要参考人ですので」
「あの聖騎士団もこのような者しかいないとは、がっかりですわ」
「やめないかノア。無駄な戦火を起こすな」
「あ、あのロットさん。なんでこんな雰囲気になってるんですか。我々は悪魔襲撃の話を聞きに来ただけで」
ここで隣に座っていた少女?が声をあげる。
短い金髪で緋色の瞳、表情はとても柔らかく目を見張るような美貌だ。
「我々にも立場があるんだ」
「お前では話にならん、対等になるならイザベラでも連れてこい」
「団長は多忙なお方です。獣如きに引き裂く時間はないのです」
「やめてくださいロットさん」
「何を騒ぎにしているんだお前達」
ここでドアを強く開け入ってくる一人の少女、右手全体を覆うように鏝を付けている以外は先程中にいたルクスと全くの瓜二つだ。外ではミカルドがアワアワしている。
「全く、任せてほしいと私を外したのにこのザマか」
「姉さん」
「ルミスか、まともに話せる奴がいるではないか」
その少女を見て少し驚くアニクとアディラ。
「久しいなアニク隊長。アディラも元気そうで何よりだ」
「お前こそまだ戦ってるなんてな、カズキに泣きつかれるぞ」
「副長も、お元気でなによりです」
「内輪話をしにきたのではないのだ。さあ話てもらおうか、どんな悪魔が来たのか、なぜ狙われたのかを」
「口出さしをしないで欲しいな。これは俺の仕事だ」
座り場を仕切りはじめたルミスの肩を強く掴み優しくも嫌味のこもって言ってくるロット。
「だそうだ、命賭けて守った祖国では嫌われてるな。アニマニアに来ないか?待遇良くするぞ」
余程の人材なのだろうか、茶化しながら勧誘するアニク。
「勧誘なら後にしてくれ。ロットも態度を改めろ、そんな姿をイザベラが見たらなんて言うかな」
「っ団長には関係の無い話だ」
「さてルミスを怒らすと怖いから話すとするか。襲ってきたのはハンアンだ、悪魔や魔族を引き連れてな」
「目的はアニマニアの制圧と世界樹の伐採。本人が言っていたわ」
「……それ以外に心当たりはないか」
「……ないな」
一瞬だが微笑みながら言うアニク。
「嘘をついる癖が出ている。王になるなら直した方がいい」
「相変わらずだな、隊長に習ったか」
「旧知の相手だ、癖くらい覚えてる」
「そうだな、恐らくアニマニアに眠る兵器を手に入れようとしたんじゃないか」
「兵器?」
「古代に造られた兵器、その名はバーン。一撃で大陸を吹き飛ばす代物だ」
「そんなものが、どこにある」
「知らん。恐らく父さんしか分からないだろう」
「いい情報だ。そんなものがあるなら是非欲しいものだ」
「おいおい上層部にも他言無用だぞ。特にドルツェルブはな」
ジェルマンを睨みながらいってくる。
「はっ、そんな時代遅れな兵器ドルツェルブにはいらねーよ」
対するジェルマンは興味なさげに吐き捨てる。
「兵器欲しさで我々が争っては意味がない。我々だけで留めておきます」
「話が分かる人で助かる」
「勝手は許さないぞ」
「黙れ。我々は敵を作りに来た訳ではない、情報共有しにきたのだ」
「情報共有?」
「そうだ、悪魔襲撃は最近頻発している。ロウレシアもドルツェルブも我々の国もアルガド以外六大国全部が受けている」
「そうなのか」
「そうだ。あのドルツェルブですら話を聞いてくれた」
「それで、他はどうなんだ」
「地獄姉妹、ジンカン、ヴェルムンドの幹部らがそれぞれ仕掛けてている。ここ以外は追い払うのが限界だった」
「仕留めたのはアニマニアだけか、ふんザコめ」
「アニク様、隊長のおかげです」
「たまたま居合わせんだ、運も実力というしな」
「……カズキがここにいるのか?」
「そこの者達と観光に来てる」
ジェルマンとノア、レイカ先生を指差す。
アルガド王国の代表とは言わないのは彼なりの優しさなのだろう。
「そうか」
「カズキ……あのカズキか?」
「絶対のカズキさんですか、僕ちょっと用事が出来ました」
「ダメだルクス、仕事以外はするな」
「ですが」
「ロットも変な気を起こすな」
「ちっ、わかりましたよ」
「関わらない方が身のためだ」
「カズキは破滅の男だもんね。トップがああなら副長は苦労するよね」
ルミスが座ってるソファの隣でダランとしてるリューク。
相変わらず神出鬼没だ。
「な、なにやつ!?」
「いつの間?」
いつの間にか現れたリュークに驚きを隠せない二人はそれぞれ神威武装を展開し戦闘態勢に入る。
「やめないか、明らかな戦意がないだろ」
「……ですが」
「さすがルミス・セインティア。私ファンなんだよね、握手して欲しいな」
そう言って立ち上がると深々とお辞儀をし左手を差し出す。
「……かわった人ですね。ルミス・セインティア。よろしくお願いします」
「サクラギ・リューク。よろしくね、英雄さん」
差し出された左手をがっしりと握り互いに挨拶をかわす。
「あはははは、興味ある人と挨拶できるなんて嬉しいな。やったやった」
今までに見たことないくらいの笑顔を見せるリューク。
ルンルンの気分で部屋から出ていく。
「……話は戻して、今置かれてる状況はわかってるな」
「魔界からの侵略となれば」
「神伐隊の復活か」
「そうだ」
「それは元老院の計画か?」
「いいや、私の計画だ」
「イザベラは」
「関係ない」
「ちょっと待て姉さん、僕はそんな話は聞いてません」
「俺もだ。こんな大規模な事して上が黙っていないぞ」
ルクスとロットが口を揃えて言ってくる。
「私の独断だ。お前らが着いてきただけだろ」
この情報共有の仕事は本来ルミスが一人でやっていたのだが、上が何か怪しい動きをしてると思ったか監視として人数を増やしたのだ。
「もう二度と悲劇は繰り返さない。それが私の覚悟だ」
既にバレていると悟ったルミスは隠すことなく堂々と言う。
「全員には伝えてある」
「返事は」
「ほとんどは皆口を揃えて『考えておく』だ」
それはそうだ。そう簡単に返事が出来るものではない。
自己の判断で神伐隊を復活させ、魔界と戦うのだ。リスクが大きくそれなりの覚悟が必要だ。
「ドルツェルブだけは友好的だったぞ、確かビスマルク家だったかな」
「それは大将軍家の名だ、陛下ではないのか?」
ジェルマンが口を開く。
「皇帝は、その、なんだ……君の所は苦労している。とでも言っておこうか」
「……そうか」
その言葉を聞いて少し悲しい顔になる。
「堅物の大男。クラウザー大将軍だけか」
「……いいや、若い女性もいた」
「……ワルキューレか?」
「そうだ。まだこの世にあれほどの者がいるとは驚いた」
思い出すだけで震えが止まらない。あの感覚は隊長と同じ、いやそれ以上かもしれない。
震える手を押さえながらも平然を装う。
「ドルツェルブ最強だからな、当然だ」
「あら、最強を目指してるのにドルツェルブ最強を認めているのね」
「まだ勝ててないからな、カズキなんぞよりも強いぞ」
「まさか、アレが負けるなんてありえませんですわ」
「……それもそうか」
「あのドルツェルブが協力的なのか、世の中なにがあるかわからんな」
他国から干渉を受けない鎖国なのだが、いつから寛容的になったのやら。
「話は終わりだ。良い返事を期待してるよ」
「……皆が濁してるなら俺が先に言おう。俺達アニマニアは全ての獣人達(ファミリー)と他の全種族達(ブラザー)の為に戦う。もちろん参加させてもらう」
「アニク様」
「いいのか?」
「当たり前だろ。どっちにしろ起こる戦い、ならみんなで頑張ろうぜ」
「ありがたい」
「その前に剣舞祭で楽しもうぜ、他の奴らも出るんだろ?」
「……そうだな、私も考えておうかな」
「おいおいつれないな」
「これで失礼する。いくぞ」
ドアを開け退室するルミス。
「カズキの右腕に恥じない奴だ」
「良かったのですか、精霊王様に断りなく勝手に承諾して」
「構わん。それにお前は勝手に参加するだろ」
「そ、それは」
「神伐隊が機能しない以上、残りの我々で行動を移すしかない」
奴らに対抗するには実力がないと死人を増やすだけだ。たが、対抗出来る者はアニマニアの近衛兵達の中でも一握りだろう。
なら、それ専用に鍛えられた神伐隊が動くしか対策出来ない。
「さてお前らの邪魔者は消えたな、それでお前達の話も聞いておこうか」
「聞きたい事全部聞いた。もっと早く素直に話してほしかったな」
「すまないな。話すに値する者がきたものだから」
「なぜ皆はあいつを団長と同格扱いにするんだ」
「正真正銘の勇者だからだろ。少なくとも俺達同業者はルミスをそう呼ぶ」
ルミスの偉業。それは勇者と崇められる程の事だ。
その事は後々語るとしよう。
「勇者はイザベラ様で充分だ」
「イザベラ、ルミスを剣舞祭に出場させてくれ、実に楽しみになる」
「カズキ隊長が出ると言えば喜んで出ますよ」
「私を含み既にメンバーだ。今年は各国の気合いが違うからな、強制らしい」
「なら剣舞祭で会おうと伝えてくれ。優勝はアニマニアだがな」
「伝えておきましょう。それでは我々も失礼します」
「待ってくださいよ、ロットさん。皆さんご協力ありがとうございました、失礼します」
素っ気ない挨拶をして部屋から出るロットとそれを追うルクス。
「上が大変だと部下も大変だな」
ジェルマンが言う。
「わたくしは立派な領主になることを更に誓いましたわ」
「無理だな」
「なんでですの!」
「喧嘩はやめろ、話が終わったので私達は帰るぞ」
口喧嘩を始める二人を止めると、アニクに向け帰るという言う。
「すまなかった。お詫びといっては合宿の帰りは手配しよう」
「それはありがたい」
「アディラ、後は任せる」
「わかりました。皆様これで解散です、お疲れ様でした」
アディラの一言で全員が部屋から出ていくのであった。
その頃
地面にはクレーター十数個でき、所々火が燃え上がっている。見違えるように荒れ果てた広場では激闘に終止符が打たれていた。
「はっはっはっ、どうだゴラ。魔王と怪物相手でも勝ったぞオラ」
砂煙が晴れると血だらけの戦禍乱状態のカズキが笑いながら倒れてるフィロの首元に刀を向ける。
「くっ、不覚だ。まさかエンドルスを閉じ込めるだなんて」
「はあ、はあ、エンドルスなんて超大物どうやったら契約できるんだよ」
戦禍乱を解き刀を鞘に差し込むと、フィロの手を取り起き上がらせる。
「それは私の人望だ」
「魔王に人望が通じるか、ハンアンよりも苦戦したわ」
あの時参加してくれれば被害は少なくなっただろうに。本当に何してくれてるんだ。
「さあ終わりですよ、帰りましょう」
「疲れたからおんぶして」
「嫌です」
「え~~~、君に拒否権などないのだよ、はーやーくーお~ん~ぶ~」
「はいはいわかったわかったわかりましたよ」
駄々を捏ねるフィロを見かねて直ぐに背負う。
「ほらはやくダ~ッシュ!」
「無茶言わないでくださいよ全く」
「保健室へ早く傷が痛いよ」
「大した怪我してねぇのに」
「なんか言ったかいバカズキくん!そんなんじゃモテないよ」
手に持つ薙刀の石突でポコポコと頭を殴る。
「いて、いて、いててて。バカズキ言うなし」
「ほらほら走る走る」
「わかりましたよ、カズキ~ダーッシュ」
これ以上やられてはたまったものではないので走る。
「すげぇ戦いだったな」
「それ以上に仲がいいんだな」
「フィロ先輩あんな笑顔するんだ」
「可愛いですね」
凄まじい激闘もさながら生徒達は満面の笑顔を見せるフィロに釘付けになっていたのだった。
ちなみに広場を滅茶苦茶にしたのでカズキだけ怒られたのであった。
理不尽!!
つづく