「総合会合(パーティ)?」
顔をしかめながら言うカズキ。
「そうだ、剣舞祭に出る各国の代表との初顔合わせだ」
いつも通り何も知らないカズキに説明するレイカ先生。
そういやルイスとアニクがそんな事あるなと抜かしてやがったな。
「見知った奴らばかりで気が引けるな」
「これは国の面子が掛かっているならな、強制だ」
この集まりに参加したら出場メンバーは変えられない。
参加しないといった行為は卑怯国家という不名誉を貰える。
会合前にスパイやら暗殺やらやってるのに卑怯もクソもないけどな。
「それが明後日にある。くれぐれも問題を起こさないように……だが、なめられるなよ」
てなことがあって、今そのパーティの主催地であるアルガド宮殿へ向け馬車を走らせている。
場所は毎年変わり、今年はアルガド王国なのである。
「会合とかめんどくせぇな。顔合わせなんかいらないだろ、現れた敵だけを倒せ」
「会合と言ってもパーティなんだろ?旨いもんたくさん食えるな」
「踊りとかあったら最悪だけどな」
「あら?ダンスは社交辞令ですわよ」
「わ、私こういうの嫌いなんですよ」
「わかるわ、みんな気取っていて嫌い」
それぞれ乗り気だったり嫌がってたりしてまとまりがない。
こんなんで大丈夫なのだろうか?大丈夫だ、それが強みだ。
広場に入ってみると、既に大勢の人が集まっていた。
綺羅びやかなドレス、上品で清楚なスーツ姿の男女が楽しく踊っていたり仲良く喋っている。
「こんな騒いでいいのかよ」
「今はパーティだからな、私達は別室で固いお話タイムさ」
ここで赤いドレス姿のメーテル後ろからやってくる。
「ボス、どういうことだ」
「今は各国のお偉いさん達が仲良く食事とダンスを取ってるだけで、私のような更に上の立場はこれから難しい話をすんだよ」
なるほど、だからレイカ先生は別の部屋に招かれたのか。
「王族も大変だな」
「下手な事は出来ないからな。言っても無駄だとは思うが騒ぎは起こすなよ」
「知ってた」
「でもそれ以上に、なめられるな」
「……知ってた」
そうだ、こいつもレイカ先生と考えが同じな性格をしている事を忘れていた。これだからアルガド王国の人間は、イカれてやがるぜ。
「それでは楽しんでくれ」
そう言い残すと人混みに消えていくメーテル。
「制服の俺達は場違いか?」
「そんな事はないだろ」
周りを見ると制服姿もちらほらいる。絶対代表メンバーだ。
「でも、ドレス来てみたかったです」
「女の子の憧れだもんね」
キャーキャー言ってるルリーとリューク。
「けっ、くだらな」
「ジェルマンは身分高いから着なれてるからいいよね」
「ドレスなんか着るか」
「確かにジェルマンじゃ似合わないか」
「んなもん着せるな」
「おやおや、主催地の代表者が最後に来るとはいい度胸をしてるな」
ここで片手に葡萄酒を注がれたグラスを持ったアニクがやってくる。
「アニク、最近ぶりだな」
「ああ凄い最近に会ったな」
数日前に会っていたからな。気軽に話かけやすい。
「他のメンバーは?」
「各々動いている。折角のパーティーで規制行動は嫌だろ?」
そう言ってテーブルに座りもくもくとご馳走を食べている一人の少女を指差す。
ヒメギだ。その光景を見て思わず頭を抱えるカズキ。
一体どこで教育を間違えたのやら。
「レオン、なんとかしろ恋人なんだろ」
「別にいいんじゃないか?旨いし」
そういうレオンもちゃっかり大皿に大量の料理を乗せて食べている。
「類は友を呼ぶか」
「この場合は類は恋人となるじゃないか」
「やかましいわ!」
「ところでアニク様、わたくし達以外はもう揃ったのですか」
ノアが聞いてくる。
先程の発言からするに、アルガド王国以外は全員集まっていることになる。
「そうだな。ロウラクシア、ドラグニア、レイクロウ、ルーンブラッド、ドルツェルブ。一通り挨拶はしてきた」
「そうですの。ありがとうございます」
「カズキの元にいるには似つかわしくない程礼儀正しいな、さては男共に苦労してるな」
「いつものことですわ」
「それは逞しい限りで」
「隊長共々居たか?」
「自分で確かめるがいい」
カズキの問いにそっけなく返すアニク。
「んじゃあ挨拶しに行くか」
「そうするといい、俺もこの後用事があるんでな」
「王族は大変だね」
「これも血統の運命だ」
そういうと一礼をし大広間から姿を消すのであった。
「挨拶言ってもかったるいな」
「しなくていいんじゃないか?戦う時に嫌でも会うし」
「ダメですわ。ここは友好関係を結ぶ場ですの、戦いの場ではありませんのですわ」
ジェルマンとレオンの耳を引っ張り小声ながら力強くいうノア。
「うぐあ、痛ぁ」
「聴力がいいから耳がキーンとする」
「全く、もう」
耳を抑えながら悶える二人と呆れるノア。
「まずどこから挨拶しにいく」
「ルーンブラッドは、ちょっと私遠慮しておきます」
「えー、友達に会えるかもよ」
「友達、居ないので」
「……ごめん」
「ロウラクシアから行く?俺滅ぼして出来た国だけど」
「賛成、はやく行こう」
「俺には気を使ってくれないのね」
「いつも気を使ってるから使う最低ラインが高いのよ。あと気にしてないでしょ」
「ごもっともです」
リュークの正論に反論できない。今度から気を使って行動しようと思ったカズキであった。
「これより、アルガド王国代表者によるエキシビションを行います」
ここで何やら不審なアナウンスが流れる。
これは一体……?
「ちょっと待てそんなの聞いてないぞ」
「何やるんだよ」
「バックレる?」
「そんなこと出来る訳ないでしょおバカ」
「ど、どうしましょう」
「よ、よし。俺がいこうじゃないか」
「あ、おいまてい」
「アルセウス学園一年Fクラスイオリ・カズキいきます!」
ボールの上に料理を運ぶのに使われる大きめのトレーを乗せその上に立ちバランスを取りながら、食事に使われるナイフ八本を取り出し上へ投げ口から火をふくと、燃えるナイフでジャグリングしてみせる。
「はい~!更にここからバク転を加えます、出来たら拍手をください。いきます、せ~のっ」
「何をやってるんだこのカス」
近くにあった椅子を投げるジェルマン。
バク転と同時だったため、手に取り足場として追加する。
「はい、拍手!途中で足場が増えるアクシデントが起きましたがやってみせました!盛大なる拍手を!」
「お父さんかっこいい!」
「お義兄ちゃん大好きですよ」
「お師匠、すごい」
「感激ですよ」
「さすがです隊長」
「我らが隊長ぉ!」
「ありかとう愛娘。ありがとうピュアさん。ありがとう我が弟子。ありがとうアリスさん。ありがとう元部下達。ありかとうありがとうみんなありがとう」
一部の拍手と歓声に答えるように笑顔で手を振る。
「何やってんだよ。隠し芸大会じゃねぇんだよ」
「パーティーのエキシビションならこの程度でいいだろ。エキシビションなら」
「一部にしか受けてねぇじゃねぇか」
「そんなもんだろ、素人なんだから」
「このクソカスが」
「あ、もしかして傘回しとか良かったか?」
「ば、バカヤロー」
更に激昂するジェルマン。
「そんな怒るなって、どうせやること無かったんだから。文句は無茶振りした司会に言え」
「……確かに」
急に我に返り冷静になるジェルマン。こうなるやつって大抵怖いんだよな。
「だろ?」
「くそ司会がてめえ」
「こ、これはメーテル様の命令でして、すぐに注目を集める為だとかで……ごめんなさい」
迫り来るジェルマンに対して弁明する司会を勤めてた女性。
「おい、カズキだぞ」
「あのカズキだ」
「本当に剣舞祭に出るのかよ」
確かに一気に注目の的になっている。
「お?良く見たら見覚えのある神伐隊の一人抜かして雑魚共がいるな」
「なんだと」
「誰が雑魚だ」
「口悪いぞ、侮辱だ」
「やかましい。お前ら煽ってやんないと強くなってくれないだろ。だからこうやって口悪くしてるんだよ」
「誰も頼んでない」
「自己満足だ」
「俺だっていつも通りに謙虚で過ごしたいんだよ。俺のためにだ」
「余計なお世話だ」
「はやくヒノモト帰れ」
「なに!?てめえら弱いからこっちが苦労してんだよ。最低三回くらい滅べ苦労しろ」
「お前ってやつはよ」
「なんて事言うんだあの隊長は」
罵詈雑言の嵐だがその雰囲気は嫌悪ではなくむしろ楽しく皆は笑顔である。
「はははは、何度も世界を救った男の言うセリフは違うな」
「おだててもなにも出ないぞ。後で近場の酒屋で奢ってやるよソウル六番隊隊長」
「やりー」
一瞬にしてこの広場のペースはカズキが握り、話を進める。
「かったるい挨拶は無しだ。細かい事も敵味方御託は忘れろ、ここはボスの祖国でボスの宮殿だ、好きなだけ飲んで食って歌って踊れ!楽しんで困らせちまえ」
「うおおおおおおおっ」
「ではここで一曲、ETCシスターズより、『輝け』お願いします」
マイクを手に取り、ドルツェルブ製のラジカセなるものからスピーカーを繋げて音楽を流す。すごいね、いつでも曲が聞けるんだぜ。
「お前アイドルなんか知ってんのかよ」
「うるせぇファンだバーーカ」
「ロウラクシア出身のグループだぞ」
「ライブと握手会行ったことあります。ちなみに箱推しです」
「はい。俺もファンだぜ、推しはクイーンちゃんです」
革ジャンを着こなす傷だらけでサングラスをかけた強面のスキンヘッド大男が手を上げながら言ってくる。
「クイーンちゃん可愛いもんね、わかるわ~朝まで語らいたいですな。一緒に歌おうや」
先程の静かで優雅なパーティとは一気変わって笑いや音楽で賑やかな、宴へと変わっていった。
「ここまで雰囲気を変えるか」
「さすがですね」
「あぁ、せっかくのパーティが宴へ変わりましたわ」
「こっちの方が楽しいぞ。ほら!」
ブレイクダンスを披露するレオンの周りに人集りができる。
「ふん、獣風情が。本物はこうやるんだよ」
そこで紫色のドレッドヘヤーの男が入り込み激しいブレイクダンスを披露する。
「甘いな、竜国じゃそんなのお遊びだぜ」
上半身半裸の民族衣装を身につけた褐色肌の大男も続けて参加する。
「なんて激しいダンスなんだ」
「これは熱いな」
手拍子と歓声で更に盛り上がりをみせる。
「お嬢様、僕と踊っていただけないでしょうか」
深々とお辞儀をしながらノアに向けて手を差し出す金髪で緋色の瞳を持った生徒。
「あなたは」
確かアニマニアで出会ったレイクロウからの使いでおどおどしていた少女ですわ。
「ルクスさん?の方ですかしら」
「はい、覚えてくださり光栄です」
「えっと、踊りというのは男女でやるのが一般的でして」
「僕男ですよ」
それは衝撃の一言だった。
「え?」
「本当ですよ」
「嘘ですわ、こんな可愛らしい殿方がいるなんて」
脳が混乱して整理がおいつかなかった。
確かにあの時も今も男装をしていたが。まさか、これほどまでに美少女に近い顔を持つ男性がいるなんて考えもしなかった。
「どうですか、踊っていただけるでしょうか」
「え、えぇ勿論お願いしますわ」
「ありがとうございます」
ルクスの手を取ると静かで広い場所まで案内されていく。
「なにやってんだか、くだらねぇ」
浮かれた雰囲気に嫌気がさすジェルマン。
ガタンと椅子にもたれ掛かり、テーブルに置いてあった葡萄酒をグラスに注ぎ飲み干す。
「ふてくされた態度は相変わらずだなジェルマン」
真正面の席に座る黒い軍服を彷彿とさせる制服を身につけた気さくな少年。
「……ちっ、気にいらん奴が来たな」
その人物を見て悪態をつくもどこか嬉しそうである。
「そう言うな」
「てめえ剣舞祭に出るのか?」
「俺の戦果が良かったからな、選ばれた」
「はっ、大した戦争やってねぇくせによ」
「規模は大なり小なり戦果は戦果だ、大勢を殺してきたぜ」
「物騒なやつだ」
「あー、そんな所にいたのかジェルマン。次お前歌えよ、アイドルソングはダメだウケしか狙えない」
話を割って間に入ってくるズキが。手にはマイク、服には様々な色の染みができている。大方、音痴過ぎて反感食らったんだろう。
「そんなもん当たり前たろ、音痴のくせに」
「ぐぬぬぬぬ。まあ仕方がない、ここは落ち着こう……そちらは?」
さっきまで熱くなっていたのに急に冷めるカズキ。
こういう奴が一番ヤベェ奴なんだよな。
「俺はバッド、バッド・アークヒルデだ。よろしくな」
「そうか俺は」
「おっと自己紹介は不要だぜ有名人さん。革命では本当に助かったよ」
「いいってことよ。少しは皇帝陛下殿も政治がやり易くなったか」
「以前よりかはマシにはなったと思います。レジスタンスの頭が良くできた人で助かってます。食料問題もエルフと友好な関係を築け改善はされてきてる。なんとお礼を言ったらいいか」
「良いってことだ。ドルツェルブとは他人様じゃないからな」
「俺が離れてる間にそんなことが……あとお前なんでそんな関わってんだよ」
ドルツェルブという国が大きく変わり始めていることと、カズキとの関わりに驚くジェルマン。
「伊達に世界を旅してないんで。これが俺の出身をドルツェルブに出来た理由の一つだな」
そういえばこいつの出身はドルツェルブだった。なぜこんなよくわからない奴がドルツェルブを名乗ってたのか、なぜ偽造とバレやすい国を選んだのか不思議だったが理解出来た。
「今後とも御贔屓によろしくな」
「俺とドルツェルブは深い関係になるからな、こちらこそ良い関係を」
バッドと強い握手をするカズキ。
「あんたがかの有名なカズキか?」
「ガッシッシッシッ、勝負しようぜ勝負」
ここで青髪の少年と小柄の金髪少年が笑いながらやって来る。共に背中に猛々しい竜を模した紋章の軍服を着ている。
「ドラグニアの奴らだ」
「ああ、竜の国か」
バッドとジェルマンが小声で呟く。
ドラグニア竜国。山々に囲まれた地に住む竜と共存してる国家。
標高が高く天気が変わりやすい過酷な環境下ですごいしている為自然と屈強な国民が多い。その為身体能力は常人の領域を越えアニマニアの獣人と肩を並べられる程である。
「やだよ、折角のパーティで殺し合うのは勘弁だ」
そんな二人を良く思ってないのか、興味ないように断る。
「ははっ、無敵のカズキがビビってるぜ」
「最強の力を見せてくれよ」
「はっ、この世に無敵な奴なんかいねぇよ。最強もお前らが勝手に言ってるだけだ」
「確かにそれはあり得るな」
「ガッシッシッシッ俺達が勝てば俺達が最強だもんな」
「最強だの無敵だの青いなお前ら。もっと視界を広げろ世界を知れ」
「こいつバカな事を言ってるぜ。ガッシッシッシッ俺達ドラグニアが一番の種族だってのに」
「絶対のカズキ。どんな奴かと思えばこの程度か、がっかりだ」
小柄な青年は腹を抱えて笑い。もう一人は呆れている。
「分かったなら国へ帰れ。んで陛下は今どんな政策してるんだ?減税した?武器の生産からカデンに変えたか?あれ便利だよな普及した?」
話に一段落つき終わったと思ったカズキは再びバッドと話し始める。
「話はまだ終わってない」
「そう吠えるな、昔のギニラルとそっくりだぞ」
「なっ!?」
「やめなさい、あなた達」
喧嘩が起こる寸前で一人の少女が割り込んでくる。
黒のショートカットが似合う美少女。彼女も彼らとは同じ制服を着ているので同郷なのだろう。
「ギニラル様」
「ごめんなさいねカズキくんとそのお友達くん。うちはバカばかりだから」
クルッと振り向くと満面の笑顔で謝る。
「ぎ、ギニラル……くん付けは寄せ照れるだろ」
「アリスは良くて私はダメなの?」
「ダメ!!」
「ケチー」
「貴様ら……俺を無視するとはいい度胸だ」
「レックスさん、落ち着いてくださいよ」
「ぶつ切りにして獣竜の餌にしてやる」
怒りに震えるレックス。髪が逆立ち、顔に赤い隈が浮かび上がる。
「こ、この姿は」
「戦禍乱か、いや異国ではワイルドセンスだったか」
そう。カズキが時折見せる姿、戦禍乱だ。
「そうだ。数十年に一人持って産まれてくる脅威の力、それがこいつだ」
「そんなものイオリ家は例外だ、イオリの血を引く者は絶対に持つ力。母さんもじいちゃんも、姉ちゃん、そして俺も使える。この力はイオリ家の象徴だ、一緒にされては困る」
この力はイオリの誇り。それを貶す行為は許さない。
「そんな擬物よりもギニラルの竜の血(ドラゴン・ブラッド)の方が脅威だ。出来ればこの手で再び倒してやりたい程のな」
ギニラルを睨み付けるながら言うカズキ。
あの時の高鳴りは今でも覚えている。わくわくするようないい戦いだった。
「そんな。カズキくんが私を認めていただなんて、嬉し」
その言葉を聞いて顔を赤らめ照れるギニラル。
「ふん。ドラゴン・ブラッドか、平民風情が持っていい力ではない」
「ギニラルは望んでいようがいまいが特別な存在にさせられたんだ。選ばれし者なんだよ、お前のワイルドセンスと同じでな」
「貴様」
「やっちまうか。俺達飛竜山走団の強さを知るがいい」
二人が神威武装を展開した。
その時、間にメーテルが入り二人に剣を向ける。
「ここで争うのはやめてもらおうか?一応我が家なのでね」
「おぉ、ボス」
「騒ぎ起こすなと言っただろ」
「俺からは起こしてないだろ。んで集まりは?」
「ギニラルが集まりの時間になっても来なくてな」
「あらもうそんな時間なのね、残念。またねカズキくん」
「くん付けはちょっと」
「お前らも戦うなら剣舞祭だ。今は楽しめ」
そう言うとギニラルの手を引き大広場から出ていく。
「ちっ、興醒めだ。いくぞ」
「命拾いしたな」
二人もそう吐き捨てるとつまらげにどこかへ行く。
「無駄な因縁が出来たな。めんどくさ」
ジェルマンが呟く。
「そんなもんだろ。このスペアリブうま」
「俺のだバカ」
「これも因縁か」
「黙れ」
「……」
皆から離れた席で一人ポツンと座っているルリー。遠目に上品なパーティだったのが一辺しバカみたいに騒いでる光景を見ながらため息をこぼす。
友人と一緒ならなんとかなるが、どうも一人ではこういった場には馴染めない。
人見知りを直さなければいけないのはわかっているが、そう簡単にはいかない。
(人見知りが治る魔法とかないかな)
などと思いながらリンゴジュースを飲んでいる。
「すまない 隣 いいか」
隣にゆったりめの白のワンピースを身につけたとても背の高い少女が座る。
「いいですよ」
無愛想でとても怖い顔をしている。しかし、どこか顔から優しさが滲み出ているおばあちゃんみたいな安心感もでていた。
なにより、すごい落ち込んでいる用に感じられたので思わず相席を許してしまった。
「ありが とう」
喋るのが得意ではないのか、所々覚束なかったりしている。
「どうしたのですか?」
「?」
「悲しんでませんか?」
「オレ これから 婚約者に会う 八年ぶり」
「え?じゃあいいことじゃないですか」
「でも さっき 周りに、笑われた オレの 体型」
確かに少女はとても美しく整った顔をしていたが、太ましい肉付きをしていてとてもアンバランスな体型をしている。小顔と体格があまりにも不恰好過ぎる、人はバランスよく肉がつくのにこれは異常なくらいにだ。
「会ったら 嫌われ、る 自信ない」
見かけたが会うのが怖くなり、
「そんなことないですよ。その人の為に自分を磨き続けたのですよね。なら大丈夫ですよ、根拠はないですけど」
でも、肌は処女雪のように美白肌触ってなくてもスベスベしてるのがわかる。髪も後ろでまとめているがその長い金髪はサラサラでまるでしなやかで絹糸のようだ、光沢も出ている気がする。
凄まじい努力を積み重ねたのだろう。そうでなければ手に入らない。
むしろ外見だけで決める程度の男には相応しくないだろう。こんながんばり屋の彼女に失礼だ。
「ありが、とう 君は やさしいのだな」
ルリーの力強い言葉で少しは自信を取り戻したのだろうか。
表情を崩し微笑んで見えた、はず。
「自信持ってください」
「わかった 行ってくる」
そう言うと、立ち上がり深々くお辞儀をするとスタスタと歩き始める。
「待ってくださいお姉ちゃん」
そこへ黒の軍服をイメージした制服を身につけた笑顔が可愛い少女が走ってくる。
「ピュア そんなに急いで どうした」
「レースアップベルトを付け忘れてますよ」
息を切らせながら手に持つ黒色の腰ベルトを彼女につける。
「なんだ それは」
「お姉ちゃんはおっぱい大きいんですから、これしないと妊婦さんに見られますよ」
腰周りをキュッと締め付けると、驚くほどに引き締まり綺麗な括れができあがる。
肥満体型と思わせていた原因である胸が強調される。
顔と体格が不一致と感じていたが当たり前だった。本当に不一致だったのだから。
「折角お義兄さんに会うんだから、最高に綺麗にしていかないとね」
「そうだな ありがとう」
「あの、お名前を伺っても」
どこかへ行く少女に名前を聞くルリー。
「オレはワルキューレ。ワルキューレ・ビスマルク。よろしく、たのむ、ウィックの末裔」
「!?」
「仕留めに いってくる カズキ」
そう呟くとクルッと回って談笑してるカズキに向かって歩み出すのだった
つづく