大広間とは違いこじんまりとした部屋。飾られている装飾品や家具はどれも一流の品、その中心に円卓が置かれ七つの椅子がそれに沿うように並べられている。
各国の王族達が座りその隣にその代表者が立っている。
「なんでアルガドとドルツェルブは代表メンバーじゃないんだ?」
「失礼、カズキが来たら滅茶苦茶にされるので」
「他のメンバーでもいいだろ他の」
「他では話がついてこれない。なら、他の理解力のある人に頼むのが普通だろ」
「うむ、我々ドルツェルブも同じ意見だ」
この中で、いや剣舞祭に出場する誰よりも若い少女。
ドルツェルブ軍国皇帝陛下、クリス・カイザーヘルム。
「そんな事よりもあのドルツェルブの皇帝が子供とは驚きだな」
明るい衣服に身を包んだ陽気な女性。
ルーンブラッド総統、ムゥ・ソルセリア。
「我も子供故にまだまだ未熟。けれど侮ってくれるな、一国を背負う皇帝である」
「はっはっはっ、良い皇帝だ。ドルツェルブが今後どうなっていくか楽しみだ」
民族衣裳を身につけた獅子の獣人が手を叩きながら笑う。
アニマニア大国精霊王、ジャック・キーリング。
「この場で隣に上裸の覆面男を側におく時点でどうかと思うけどね」
下を向き常にメモを取っているメガネをかけスーツに身を包んだ生真面目な女性。
ロウラクシア連国大王、コムラ・フェデシオン。
クリスの後ろに立っている黒肌の大男。怒っているのかフシューフシューと息を荒上げながら周囲を睨み付けている。
「場違いならクラウザーの方が良かったか?扉の向こうで警護しておる。今からボリックと変えるが」
「レイカ先生で役不足でしたら私からテラ学園長にお願いしてきますが?」
クラウザー・ビスマルク。テラ・ヴァレンタイン。その二人はかつて世界中全てを巻き込んだ大戦争、ベリューバル戦争で無敵を誇ったとされる人物で互いに殺し合い激しく長い期間戦争になった原因ともいわれる。
中でもクラウザーは徹底的な性格をしておりその殲滅力は今でも最強といわれている。
そんなかつての英雄にして悪魔がこの場に一人もいればそれは会合どころではない。
「ここで暴れられても困る。遠慮しよう」
竜の鱗で造られた鎧を身につけた男。
ドラグニア竜国大帝、ゴラン・ゲシュタルタ。
「そうか。良い提案だと思ったのだが変なお方だ」
不思議そうにするクリス。
(こいつ子供だが頭のキレが良すぎる。本当に私らよりも年下なのか)
そのやり取りを見て直感的にこいつはやばいと察知する。
「それで本題はなんだ。この場を作ってほしいと頼んできたのだ、しっかり理由があるのだろう」
「………今一度、神伐隊を復活させようと思う」
長く伸びた髭が印象的な老人が重い口を開ける。聖レイクロウ神国教王、カルディナル。
そもそも神伐隊とは、魔界と呼ばれる裏世界に対抗する為に各国が協力し有望な人材を集め戦闘に特化した教育するという世界規模の計画だったのだ。
更に有望な人材は神様の元で指導させ、それをきっかけに神の組織として動くことになる。
今や隊員がほとんどいなくなり組織として機能せず自然と滅んだ。
「なんだと!?」
「十六年前に勇者リオスが世界を救い、三年前は神伐隊が世界を救った。だが、奴らはまた攻めてきた」
「今度は滅ぼすってか?」
「あの戦争で神伐隊は崩壊、どちらも痛み分けだ」
「たった三年の短い期間で戦争を起こせるとは思えないが」
「だが憎き悪魔共や魔族共がまた活発的に動き始めてるのは事実だ」
「これは全面戦争の前触れ、はやく手を打たないと我々が滅びる事になる」
確かにここ最近魔界からの襲撃が多発している。
「詳しくは、私から使者が来て話は聞いているだろう」
(ルミスの計画を我が物にしようとしているのか、だがなぜ)
カルディナルの言葉を聞いて引っ掛かるアニク。
ルミスは「私の計画」と言っていた。なぜ知っている。なぜこの場をつくってまで言う必要があるのか。
あの堅物がわざわざあんな嘘をつくはずがない。明らかに王族の間だけで話を進めようとしている。
(なるほど、二度とあんな悲劇は繰り返さないか)
ルミスの強い信念と覚悟を感じ取った一言が脳裏に浮かぶ。
そういえば奴はこのパーティに来ていない。確か代表に選ばれたとか言ってたような。
ここで嫌な予想が脳裏に浮かぶ。
「おい、イザベラ」
カルディナルの隣に立っている黄金の髪に黄金の瞳を持つ明らかに他とは違うオーラを放っている少女に声をかける。
「私語は慎め」
しかし、軽くあしらう。
「そう固いことを言うな、一つ聞いてもいいか」
「貴様」
「構わん。許す」
カルディナが許可を下すと、納得したのか話を聞いてくれる。
「なんだ」
「ルミスは、どうした」
「……なぜその質問をする」
その質問の意味がわからないのか、質問してくる。
「代表に選ばれたと本人が言っていたの来てないではないか、現にレイクロウだけ一人足りてない。立派な違反だと思うが」
「用事でこれないだけだ」
その一言で済まそうとする。
嘘だ。あの堅物がこんな行事に参加しない訳がない。
用事というのは会合以上に大切な任務命令か、もしくは……。
あまり考えたくないが、内容は極端な二つに絞られる。
「剣舞祭の代表者は全員参加がルール、神様の加護を受けた御国がそんな理由で卑怯国会に成り下がるのか?」
「そんなルールは勝手につくっただけだろう」
「提唱した国がどの口を。これじゃカズキが黙ってないぞ」
「どういう意味だ」
「ルミスはカズキの右腕。それがどういう訳かわかってるはずだ、なあメーテル」
「……ルミスがどうかしたのか」
ここでメーテルが会話に混ざる。
「確かにルミスから神伐隊の復活の話は聞いた。だが、俺はルミスが計画していた事と聞いた」
「ちょっとまて、俺は知らないぞ」
ジャックが驚いた顔をして聞いてくる。
「父さんに話すまでもない」
「はっはっはっ。大した奴だ、さすが俺の息子!俺を超えアニマニアは背負え」
アニクの背中をバンバン叩き大いに笑うジャック
「その話は本当だ、私も聞いていた」
「……それが本当だと、話の辻褄があってないな」
レイカ先生の証人により信じるメーテル。本当ならカルディナの言ってる事が嘘になる。
「確かに俺もなんか変だなと気になってたんだよな、さすがアニク鋭いな!」
コムラの真後ろに立っている三メートルは越える巨体の男が笑いながら口を開く。
オーウェン・バリフォード、神伐隊五番隊隊長。
「俺もルミスから裏でその話を聞いてよ、すぐ返事したけど」
「返事?」
「あぁ、オッケーてよ。あいつはキレる奴だ、何か考えがあると思ってよ」
「凄い信頼なんだな」
「当たり前だ。ダチだからな」
親指をグッと立ててニカッと笑う。
「御言葉ですが何か企んでないでしょうか」
「ルミスが勝手に話を進めているだけだ。何も企んでない」
「マジか、俺達だけでって所が燃え上がったんだけどな。また悲劇を起こさない為にも」
「その悲劇を繰り返さないために動いているのだ、言葉には気を付けろ」
「言葉には気を付けろ?こっちの台詞だ。俺達がこうして生きてられるのはカズキとルミス、死んでいった仲間達のおかげだ、侮辱するなら容赦はしない」
カルディナルの言葉にムキになって反応するオーウェン。
「オーウェン。まだ国内情勢が整ってないから喧嘩は売らないでちょうだい」
殺気放ってるオーウェンを冷ますように軽く伝えるコムラ。
「わかってる。でも、つく方はよく考えな」
「考えるまでもない。ヒノモトにつく」
「ふん、負け犬が」
「一度ヒノモトとやりあって滅べばいいわ」
「貴様!」
「俺達は戦争を起こすために集まった訳じゃないだろ。協力したいんだろ。神伐隊を復活させる、まずはそこからだ。そこから決めていけばいい」
円卓を叩き口論を止めるゴラン。
「……ダメだ、中枢となるカルディナル王に不審が出た。アルガドは降りる」
「アニマニアもだ」
「ロウラクシアも同じ意見だ」
「我は神伐隊の名前と実績し知らないからな。一存では決められないな」
「ドラグニアは構わんが、国を守る兵力を回すのは厳しい。ましてやギニラル程の強者をやるのは手痛い」
「ルーンブラッドもだ。せっかく立て直した国が惜しい」
結局は自分の国が大切で、他のために戦力は避けない。それが各国の本音なのだろう。
全部守れないなら、せめて自分の所だけ。しかしそれは自衛できる自信が無ければ無理だ。
「せめて疑心が晴れれば考えなおせるがな」
「私の国にはカズキがいるからな、侵略も前もって察知し任せたら被害はゼロだ」
まるで自分の手柄のように嬉々として語るメーテル。
「持つべきは優秀な部下だ、このまま永久移住させる」
「待つのだ。カズキ殿はワルキューレの婚約者だぞ。結婚した後はドルツェルブで暮らすのだ」
「ワルキューレ?婚約?結婚?」
「そ、それはとういう事だ!詳しく聞かせてくれ」
イザベラが円卓を叩き怒声に近い声量で問いかけてくる。
「説明も何も婚約者というだけしか聞いてない。わざわざ挨拶に来たのだからな、今頃感動の再開をしているに決まっている」
「ワルキューレもカズキ殿も居ればドルツェルブは安泰だ」
「そん、な」
「それは初耳だぞ」
「婚約者がいたのか……それならダメか」
「通りで色仕掛けが効かない訳だ」
「余も娘を嫁にあげようと思ったら断られた。マジギルティ」
他国からもらう武勲ほど鬱陶しいものはない。かつてカズキが言っていたことを思いだすメーテル。
強力な人材はその国に縛り止め我がものとしたくなるもの。どの国も同じ考えだったようで、中には失敗した事を思いだしてる王がちらほら居る。
「話を戻す。神伐隊復活は望まない、それでいいのか」
「今の所はその方向に進んでいるな」
「各々で自衛しろってことか」
「まっ、それが一番なんじゃないんかな」
「敵の動きもわからない以上攻められないしな」
魔界は人間が足を踏み入れていい場所ではない。更に広大な大地でほとんど解明されていない未開の地でもある。そんな危険な場所を宛もなく探すのは自殺行為だ。
「せめて情報を得る手段があればいいんだが」
「あそこは未開の地だ。絶望的だろう」
「どうしたものか」
対策を練れず会合は沈黙が続くのであった。
つづく。