夜が深くなり、一度止まった戦場は再び戦火飛び交う地獄へとなっていた。
街に魔物が入り込まれ、建物が燃え民が殺される。
各国の剣舞祭代表メンバーも居るが神威が使えず苦戦を強いられていた。
同じく隊長達がヴァイスと戦っている間。カズキとリュークも激闘を迎えていた。
「ぐぁぁ」
空中戦でリュークは両手を振り下ろしてカズキを殴るとそのまま地面に落下する。
「ぬぅ、とんでもない強さだ」
戦禍乱状態でも互角以下の戦いだ。
リュークが本気で戦っているのは分かるが、それでも力は隠しているようにみえる。
「その程度かしら。そんなんで世界は滅ぼせないわよ」
踏みつけようと急降下してくる。
それをかわすと両手から炎の球を造りだしなげつる。
「ぬるいぬるい!」
平然と受け止めながら前進してくるリューク。
くそ、世界を滅ぼすよりあいつを滅ぼす方が難しい。
「その心折る戦い方は父親そっくりだな」
「戦意を失くす方が手っ取り早いからね」
確かに戦意喪失させるにはもってこいの戦い方だ。俺も心が折れかけた。
「親を尊敬してるのは解った。だが、なぜだ」
それ故に解らない。
「ならばなぜ俺を止める。あの方と同じくこの世界を見てきたんだろ!!」
「どういうことかしら?」
「なぜ同族同士が、なぜ言葉が通じる者同士が戦い争うんだ」
それはカズキの心の底からの疑問だった。
「人間も獣人もエルフも魔族も悪魔もその他種族は言葉が通じるんだ。なぜ争う、なぜ独占する、なぜ虐げる。共に手を取り合う事が出来るはずなのに、なぜだ」
あの戦争の後に世界を見てきた。
土地だの食料だの資源だので争い、力なき弱者は自由を奪われ虐げられる。
私欲快楽の為に生物を安易に傷付け喜び、気に入らなければ殺す。
組織化された世界は自然界よりも醜くおぞましいものだった。
こんな世界の為に俺達は命懸けで戦ってきたのか、こんな戦争の為に大切な仲間達は死んだのか。
そんな訳がない。そんははずがない。そんなのあんまりだ。
「生物の欲求を失くそうだなんて無理な事。見てきたでしょ?その目で、現実から逃げるな!弱肉強食、大欲非道が世界の理にそんなの綺麗事よ!」
「何が綺麗事だ!お前はリューガ様が創り上げた幻想神域で育ち、理想の世界を知っているはずだ」
生きる上での弱肉強食やいざこざはあるが戦争などない、多種族が協力し合い暮らす世界。あれこそが俺が願った世界だ。
そんな素晴らしい世界を見ちまったんだ、見てしまったんだ、だからこの世界に絶望をし、求めたくなったんだ。理想郷を。
「わかるはずだ!俺の理想が!!」
その世界で育ち見てきたリュークなら分かるはずだ、この世界がどれだけ腐っているかを。同志なはずだ。
「わからないわ!あなたのくだらないエゴで今も多くが死んでるのよ。なのに理想を勝手に語って……今を守ってみなさいよ!」
なのに解ってくれない。なぜだ。なぜだ。理解に苦しむ。
「だから滅ぼすんだろ!造り上げらた社会の地位身分にふんぞり返ってるカス共を殺し腐敗した社会をぶっ壊す。そして争いの悲惨さを愚者共に叩き込み二度と起こさないよう多種族同士が平和を望む新しい時代を築き上げる!」
新らたな時代を築く為に滅ぼすのに今助ける必要がない。
「あなたは自分が嫌う暴力で屈服させた世界で暮らせるの?」
それだけ熱い思いがある者が、自らの手を汚して造り上げた世界で暮らせるはずがない。
「新時代に俺のような奴はいらん。礎になれれば充分だ」
俺は神でもなければ神にはなれない。結局は俺の嫌うカス共と同じ行動を取るしかできない。
それでもだ。それでも、どのように言われても、どのような仕打ちを受けても、俺が望む世界が創れたら満足だ。
「……本当にそうか?」
「…………っあああああああああ!!なぜだなぜ解らない!なぜお前が……お前ほどの者が、っなぜだぁ……」
頭をガシャガシャと引っ掻き回すカズキ。
「解り合えないなら、これしかないでしょ?話し合いで解決できないが戦争の原点なんだから、理を通して私を力で捩じ伏せ納得させなさい」
拳をカズキに向けて突き立てるリューク。
それを見て細く微笑むカズキ。
(あぁ。これがイオリ家の血、いや俺の本心なのか)
平和を願い、平和の為に戦うというのに自身は戦いを楽しみ戦を願いそして死に場所を求めるこの感情、この胸の高鳴りに心底苛立つ。
「鬼神降臨ッ!!」
両拳を強く合わせ力を込める。
空を黒雲が覆う。雨が振り風が吹き雷が落ちる。
荒々しい黄金のオーラを纏ったカズキがそこにいた。
髪は逆立ち深紅に染まる。真っ赤な瞳が鋭い眼光を放つ、背中には円の光背が現れる。その禍々しくも神々しい姿はまるで別人だ。
つづく