数十分前
各国が集う会合という大事な日に襲撃に合い亡びる寸前まで崩壊したアルガド王国。
夜が明け、復興に勤しむ。
アルセウス学園
山の麓に作られあまり目立ってなかった為か、襲撃の魔の手から逃れ無事だった。
その為避難場所となり今は住む場所がない人達が暮らしている。
学園も長い休みを取り、国民総出で復興作業を行っている。
そんな中、カズキはというと学園の医療室で椅子に座っている。
「ガハッ」
両手に持つバケツに夥しい量の血を吐いていた。
「キズは治ってるのに、吐血が重症ね」
たったの数時間足らずで傷や怪我、臓器の損傷ですら完治してしまったカズキ。
さすがの生命力、もはや人外れた回復力は再生力というべきか。
「鬼神降臨の反動だ。どうしても使いたくなかったのに使わせやがって」
生意気言うリュークを睨みつけるカズキ。
「使わなきゃ良かったじゃない、手こずらせやがって」
「しょうがないだろ。負けたくないんだから」
「勝っても死んでたかもしれないですよ?」
カズキにあれこれと回復魔法をかけてみるルリーが言う。
俺は実験台か!
「負けるくらいなら死を選ぶだろ。意外と常識知らずたな~ルリーさん」
「流石はヒノモト、カズキさんらしいですね」
その返答はもはや聞き慣れてしまったルリーは特に思う事なく返事を返す。
「平和を語ってた人に見えませんわ」
腕に傷薬を塗って包帯を巻いてもらうノア。
「そのくせ殺そうとしてきたよな」
頭部に包帯を巻いてもらうレオン。
「悪魔よりたちが悪いぜ」
いつも通り悪態をついてるジェルマン。
カズキが矛盾ばっかの発言をしたり、性格が良かったり悪かったり情緒不安定だったり、仲間でも平然と殺そうとしてきたりするのが最早当たり前となり馴染んでしまったFクラス。普通はありえないぞ!
「でも負けてるよね」
「やがフッまじい」
リュークの駄目押しの一言に激しく反論するカズキ。
「吐きながら喋らないの。ばっちい」
「このやどブッフオエェ」
「そろそろ止めないと多量出血で死にますわよ」
「一か八か血液を凍らす呪文を」
「流石に死ぬだろ」
「カズキなら大丈夫だろ」
「やっぱ大丈夫そうだな」
「はあ、はあ。くそうくそう」
「それで、カズキはどうするの?」
「どうするって?いままで通り普通に?」
「魔物の襲撃のせいとはいえ、騒ぎの一端です」
今回の襲撃もカズキが催眠なんかにかからなければこんな被害が大きくならなかったはず。
加勢どころか暴れて甚大な被害を出してしまった。
「いままで世界や国町村を守ったり亡ぼしたりしてるしな。何を今更といったかんじかな」
だがカズキは今までやってきたことだと特に気にもしていない。
「なら牢屋にぶちこまれて処刑待ちか?」
「それが出来てるならとっくの昔に処刑されてるよ」
手で首を切る仕草をしながら言ってくる。
ようは、俺を捕らえて殺すなんてお前らじゃ無理だ不可能!と言っているのだ。
「意思のある災害だな」
「むしろ意思あるだけ最悪ね」
意思はあっても所詮は災害。疎通できるものではない。脅威は脅威でしかないのだ。
「まだ自覚してるだけマシだと思います」
本人は悪意なんてないんだろうなとか思いつつ吐血してるカズキの背中をさすってあげるルリー。
「……お前らは、俺を許すのか?」
「何を今更、気にするだけ無駄だ無駄」
「カズキさんが急に暴れるのは慣れっこですわ」
「今回も命からがらてしたけどね」
「悪い思うなら少しは大人しくしときなさい」
「はやく怪我治して修行だぞ」
「……そっか」
「んなことより、はやく吐血止めろよな。血をどうやって処理するんだよ」
血で一杯になったバケツが床に複数個並ぶ。
「一滴も残さず完璧に処理する。クローン造られたらたまったもんじゃない」
「くろぉん?」
「なんでもない。焼却ッッ!!」
指を鳴らすと血で満たされたバケツが一瞬にして灰も残さず燃え尽きる。
「あーあ、学園の備品が」
「レイカ先生の説教だな」
「しらばっくれればよし!」
物は燃え尽きているので、知らないと言えばすむ話だ。大丈夫だいじょうぶ、ダイジョウブ。
「その炎の力はなんなんだ」
「いつの間にかしれっと使ってましたよね」
「最初の方から使ってるけどな」
腹立つ顔で何を今更といってくるカズキ。
「そうでしたかしら」
「ほら、ノアさんの矢を受けても凍らなかったじゃん?」
「そういえば、確かに凍ってなかったな」
病室で試合を観戦していたジェルマンが言う。カズキだけ普通の矢を射ったとは考えていたが、それが出来れば当てない事もできたはずだ。
「気づかなかったのかよ」
「……いえ、違和感は抱きましたわ。ですが、まさか神威なしで炎を出せるとは普通思いませんわ」
凍らない事に違和感はあったが、作戦で仲間ごと敵を射ち抜くことは心優しいノアにとって気が動転するような行為だった。
そのためその時はそれどころではなかったのだ。
「俺の自慢のカラミティバーンを凍らせやがって、いくら隊長とボスの神威を借りたとてその属性能力は脅威……キューちゃんにも引けを取らないだろう」
火の俺を凍らそうとするなんて大した威力だ。
鍛えれば化ける。神威もあなどれないものだ。
「ワルキューレ大将軍と同格と見るのか」
「可能性の話だ。もっとも、あいつは俺と同じで神威は使ってないがな」
「マジか」
「剣舞祭。キューちゃんだけじゃなく他の隊長達もでてくる。もうどこが勝ってもおかしくはない」
群雄割拠。この戦いは苛烈を極めるだろう。
「でも優勝するのは私達でしょ?」
リュークがしれっという。
「おっ。わかってるね」
「脅威なのは変わらんだろ」
「サシなら負けないが、徒党を組んでこられると厄介だ」
「それだけ作戦、連携…チームプレーが重要ってことだ」
「私達はカズキさんが殺しにきてるからできませんね」
「あれ、ルリーさんってそんな辛辣だっけ?」
「根に持ってるんだろ」
何度も殺されかけては流石に根に持たれる。当たり前か。
「せっかく相手の神威を見れるチャンスだったのに、まさか神威を封じられるとはな」
神が与えし力である神威を封じるとは誰も想像がつかなかった。いや、出来ると思えなかったのだ。
「神が与えた力なんて所詮そんなもんよ」
「バオバブスも滅んで良かったですね」
「ワルキューレがなんとかしたんだっけ?」
「話によると氷漬けにして砕いたとか」
報告によると、ただ指を鳴らしただけで凍らしたとのことだ。
カズキのように体から発した訳でもないので、どこからどうやって凍らしたのか理屈がわからない。
となると凍らせて戦闘不能にさせられるから下手に近づけない。
「おっそろしー。俺、勝ってかな……」
「お前が弱気になってどうするんだよ」
スパアァンとカズキの頭を叩くジェルマン。
「確かに!!」
「勝つのは私達ですね!」
「よおおし!勝ってやるオエェェッ」
意気揚々と拳を突き上げるが、吐血で全て台無しになった。
「締まらないな」
「カズキさんらしいですわ」
「イオリ・カズキはいるか」
そこへ、ドアが強く開き甲冑を身につけた騎士達がゾロゾロと入りこんでくる。
「聖騎士団か」
「なんのようだ」
咄嗟に構え、制圧されないようにそれぞれ牽制する。
「カルディナル様からお前に処刑の命令が下った」
「処刑……それは、俺への宣戦布告か?」
兵士の言葉を聞いて確認をとる。
「違う。命令だ」
「命令?はっ、従う義理なし」
「ならば」
瞬間、その兵士の片腕が床に転げ落ち、鮮血が噴水のように吹き出す。
「ギャアーーーッ」
「機嫌がいいから腕の一本で勘弁してやる。惨殺されるよりマシだろ」
身構える兵士達を他所に、ベッドから勢いよく立ち上がるとグイーッと背伸びをするカズキ。
「用事が出来た。ちょいとでかけてくる」
「あー……ほどほどにしろよ」
「相手次第だ。さあどけどけ、邪魔するなら惨殺惨殺ぅ」
怯える兵士達を尻目に部屋を後にする。
「し、止血をはやく」
「ボーッとしてないで手伝えや」
腕を飛ばされた兵士の止血をするルリーとジェルマン。
脇を布で縛り、切られた腕を合わせ、ルリーの回復呪文で繋ぐ。
「魔法は便利だな。医学術がバカらしくなる」
「黙ってください。集中が」
「すまないな」
「うぅ、ありがとう」
「いくら仕事とて、無茶しすぎですわ」
「相手を見て自分の身を案じたほうがいいぞ」
何をするかわからないカズキ相手に、いくら命令とて真正面から処刑宣言は自殺行為だ。
「いいや、こいつは自身の任務を真っ当した。結果はひでぇが、近衛兵として尊敬する」
「ドルツェルブらしいな」
「ふっ、じゃなきゃ助けねぇよ」
「治りました。しばらくは激しい運動を控えてください」
「わかった。……あんたら、本当にカズキの仲間なのか?」
「カズキさんがイカれてるだけです。それでも、私達にとっては最高の友達です」
「……はは、友達か。今の学生はいいな、お前達もレイクロウの兵として働いてほしいものだ」
「言葉だけ受け取っておきますわ」
「ふふ、よしお前らカルディナル様を御守りにいくぞ」
「はっ!!」
「失礼した」
一言礼を言うと、ゾロゾロと部屋から出ていく。
「いい根性してるぜあいつ」
「さすがと言っておこう」
「か、カズキがきたぞ」
「死にたくなければ、去ね」
「迎え撃て」
「なんだ、死にたいのか?仕方ないなー、じゃあぶっ殺してやるよ」
「た、助けて」
「挑んできたんだから逃げるな。ったくレイクロウの近衛兵の質も落ちたものだ」
問答無用で攻撃していくカズキ。通った道は赤黒く血塗られいる。
その姿に近衛兵達は何も出来ずただただ見守るしかなかった。
「さぁてと」
ドアを蹴破りふてぶてしく入室するカズキ。
「カルディナルのムシケラはいるかっ!」
中には各国を納める王共が呆気にとられた顔をしてこちらを見ている。
「あれ?キリさんじゃねぇのか、だれこいつ」
この学園にあるなかで一番高価な椅子に座るいかにも教王みたいな格好をした老人。
そいつを見て思っていた人物とは違って少し戸惑う。
「カズキ、ここをどこだと思っている」
「あ?誰だテメェ。俺が探してるのはカルディナルだ」
「私がカルディナだ」
「……………そうだよな、あいつが俺を処刑するわけないもんな。そういや隠居するっていってたわ。あははは」
「先代からきいてはいたが、ここまでイカれているとはな」
落ち着いた声とは思えないほどにカズキを睨むその瞳からは殺気に満ち溢れている。
「わかってるなら放っといてくれ。先代から聞いてるんだろ?」
「もちろんだ。神伐隊は、カズキが神様のもとで修行をしている姿をみて発足された、いわば先駆けのような存在」
なんか神伐隊の話もしてくる。それは知らなかった。
「だが、誰よりも力を得たカズキが神伐隊に入らねば意味をなさない。故に先代はカズキと友好な関係を築かねばならなかった」
そんな思惑あったのか、出会いはフツーだったけどな。
「今は神伐隊は機能せず、ただの遺物になった。そうなり世界に刃を向けたお前は敵でしかない」
「安心しろ。もうこの世界に興味が失くなった。勝手にしなウジ虫共」
もはや人を人ではない生物として蔑む視線で周囲をぐるっと見渡す。
自分とは違う別の生命体として扱われていると瞬時に察した。
「さて、そんなクソカスみてぇな話はどーーだっていい心底興味が無い無駄」
カルディナルの前に行き、一枚の写真を叩きつける。
「こいつぁ どういうことだ?」
「それはどこで手に入れた」
「ここに来る途中にルミスが渡してきてくれたんだ」
教会と思われる広間でカルディナルと一人の少年が話している姿が写られている。
「ルミスは今治療を受けているはず」
「拷問部屋なら抜け出したんだとよ。大切な戦友に対してなめたことしやがって」
ルミスは明らかに人為的に傷つけられた。あいつに対してこのような仕打ちをできるのは抵抗出来ない身内くらいだ。
「ボス、こいつらに見覚えはあるか」
写真をメーテルの方へ投げつける。それにつられ王達も集まり写真に目を映す。
「……ウェルムンド」
「ウェルムンド。かつて魔界を裏から操っていた大悪魔、神伐隊に関わる者なら全員知ってる仇敵だ」
「なぜそんな奴と関わっているのか、説明してくれるよな」
精霊王ジャックが聞いてくる。
「それは交渉してる時だ」
「そうか?密告にしかみえないがな」
「教王が悪魔に交渉とか、正気じゃない」
「うむ、これは一大事だな」
「話を聞け。私は連れていかれたのだよ、奴らは常に人知を越えてくる」
突然寝室に現れ、一瞬の内に教会へと連れていかれた。
ウェルムンドは丁寧に自己紹介をすると簡潔に目的を行った。
『デストヘルの遺産を探し物をしている。それのありかを知らないか』
知らないと言うと、なにも言わずにその場から消え去ったのだ。
「デストヘルの遺産?」
「なんなんだそれは」
「悪魔共が探してる限り良いものではなさそうじゃな」
「カズキは知らんのか?」
「……いや、聞いたことくらいはある。勿論あると思われる場所もな」
デストヘル。遥か昔に存在したと言われる絶対的な死の神だ。
その神が残した遺産。その力は強大で万物を超越する代物だ。
「デストヘルの話はカセン様から聞かされたから存在は確かだ」
「それは本当か」
「あぁ、恐らく一番の有力者な情報だ」
「それは一体どこにある」
「お前が聞いてどうする。神に使える教王様には知らなくてもいい話だ。まさか、ウェルムンドに繋がってるのか?」
「奴らの計画を崩すチャンスでもある」
「魔界にあるんだ、お前ら弱者には無理な話だ」
「それでも、知る必要がある」
「はー、繋がりある奴に情報与えるのは気が引けるな。お偉いさんがいるんだ、多数決とろうか?」
「我は却下だ。取りに行くにもリスクが高すぎる、それにわざわざ敵に情報を与えるかもしれん」
「余は興味はあるが……漏洩のリスクが高い。あとでこっそり教えてくれないか?」
「俺も同じ意見だ。全部言われた」
「私も同じです」
「俺もだ、危険すぎる」
王全員が満場一致で話さないという意見だ。
彼女残して
「いいや、話した方がいい」
メーテルが待ったをかけた。
「なぜそんなリスクを?」
「受け身過ぎる。このままでは遅かれ早かれ力をつけた魔界の連中に侵略されるだけだ」
「流石に割に合わないんじゃないか?」
「いいや、話を聞けば神伐隊の復活に尽力するんじゃないか?」
「その為だけにか」
「漏洩を危惧してるなら、カルディナル様抜きでもいいんじゃないか?」
「それでは、結束にヒビが入る。共に戦う以上裏切りだけは避けなければならない」
「おい、神伐隊の話は」
「今日の戦いを見ただろ。一国でどうにかできるものだはない。なら早めに手をうつ、戦にたらればなど言語道断、予測し先手をうつ」
いずれ起こる大戦に向けて互いに信じる事が大事と語るメーテル。そんな話を聞いてるとなんか、いいくるめられてしまった。
「……さすが軍神だ。いいくるめられてしまった」
「これでは王の立つ瀬がない」
「だが、一理がありすぎる」
「まっ、騙されてやるか」
「てことだ。話せカズキ」
「はぁ、この野郎。話す流れになっちまったじゃないか」
こんなはずではと思うカズキ。我ながら恐ろしい上司だと思う。
「魔界にあるヘルマウンテン、その麓にある洞窟だ。行くにも大変だが探すのが難しい、俺もまだ見つけていない」
「その遺産の性能は?」
「不明……てわけじゃない。地獄ノ剣(じごくのつるぎ)、死神の仮面、そして進化の秘玉」
「一つじゃないのか?」
「三つで一つだ。なかでも進化の秘玉が狙いだろう」
よくわからないが、生物の進化を速められるとかなんとか。
「やけに詳しいじゃないか」
「天神界の伝と魔界で手に入れた地獄の書物に記してある。確かなものだ」
「それは大したものだ。よくそこまで情報を集めたな」
「お前と違って顔見知りが多い。王なら己の足で現地に赴く事を進める」
「ふ、ふふふ。ヘルマウンテンの麓に洞窟があるとは知らなかったぞ」
体を震わしながら笑うカルディナル。体からドス黒い煙のような何かが現れ頭上に集まる。
「なっ!?」
「なるほど、取り憑いてやがったかウェルムンド」
先ほどの写真に写っていたどこにでいもいるような少年が浮かび上がってきた。
「やっばりリスクが高かったか」
それをみてやはり情報を話すのは悪手だった。
「思念体か、引きこもりにしちゃ大胆だな」
「しょうがないよ。主がせっかちさんでね、苦労するよ」
「せっかく部屋から出てきたんた。殺してやるから首をよこせ」
即座にウェルムンドに斬りかかるも、致命傷を負わす事が出来ずに避けられる
「遠慮するよ。流石に思念でも斬れたら痛いもんね」
袈裟斬りにされた胴体を擦りながら、ニッコリ微笑む。
「御託はいいからさっさと死ね」
直ぐ様に投げナイフを放つも、片腕を犠牲にし受け止める。
「おお怖い怖い。これ以上の長居は命が危ないね」
「何が狙いだ、お前らは」
「遺産の情報をここまで知ってるなら我々の情報くらい掴んでるよね」
「おいおい、一方的情報交換はずるだろ!対価払え!」
「みんな知ってる君に話す情報はないよ。それじゃ有益な情報感謝するよ。じゃあね」
笑顔で手を振りながら姿が次第に透けていき、跡形もなく消え去る。
「ちっ、死に損なった亡霊が」
刀を納め、その場にドカッと座る。
「それにしても流石だぜボス。よく俺の意図が読めたな」
「当然だ。何年の付き合いだと思ってる」
カズキの考えを瞬時に汲み取り、同じ考えを持つ王達をあっさりと言いくるめた。どんな完璧な作戦にも否定する癖が役に立つ。
「おかげであぶりだせたが、なんも情報得られなかったな」
「そうだ、向こうに情報は流れたぞ」
「これからどうするんですか」
ゴランとコムラが聞いてくる。何か文句言われるかと思ったが、自分達が納得して許可出したことだからか何もいわなかった。
「あ?あれは嘘だ嘘」
「う、嘘だと!?」
カズキの言葉に驚く。あれだけスラスラと話すからてっきり本当なのかと思った。
「いや、一つだけが嘘だ。洞窟には遺産はない」
「他は本当か」
「騙すには真実を混ぜる。これ定石」
「じゃあどこにあるんだ」
「さあ知らない。あると思ったんだけどな、所詮は昔の書物だ。誰か取ってんじゃないの」
「その遺産とやらは存在するのだろう」
「我々が関与するならば争奪戦になるのか」
「さすがテラさんとお義父さん。話がはやいね」
「勝つには先に奪取せねばならぬか、厄介だな」
「けど。まっ、お前らには関係の無い事だ。頭を悩ます必要はない」
「どういうことだ」
「どうもこうも」
「説明は我々がします」
「なにやつ!?」
「初めまして地上の方々様。ナマエルと申します」
突然窓から神々しい光が放たれたかと思うと、目の前に少女が現れる。純白のトーガに腰まで真っ直ぐに伸びた黒髪。背中からはえてる六枚の翼を優雅にはばたかせている。
その姿は伝説上に語られる天使の姿にそっくりである。
「て、天使だと!?」
「それだけじゃない、ナマエル様も言えば最高位の」
その姿を見て自然と方膝を床につけ頭を垂れる。
「ナマエルさん、わざわざ下界へどうしたんですか?」
「鬼神降臨は天神界にも影響がでます。あなたの身に何かあったのかとかけつけてきました」
「そんな心配性な、俺はイオリ・カズキだぜ?」
「あなたでも、神に愛され天使に守られる可愛い人間なのです。心配になります」
カズキをそっと優しく抱き締める。
「我らが君主イオリ・カズキに祝福あれ」
「君主って、見かけだけですよ。それより説明するんですよね」
「えぇ、私なら皆さんも納得いただけるかと」
「それは無理なんじゃないかしら」
何もない空間から円形の黒い何かが現れるとひょこっと少女の顔が現れる。
ド派手な真紅の長髪に、ねじり曲がった小さな角が二本が特徴的な少女が天井から体制をくるりと変えながら降りてくる。
「何も言わず終わらすのがこいつらの為よ」
「サタナさん」
「ナマエル。あなた優しすぎるのよ、ビシッと言わないとこいつらのためにならないよ」
「おいサタナ。話をこじらすな、めんどくさくなるだろ」
「いい情報を手に入れたのよ。ナマエルの話が終わったら話してあげるからさっさとして」
「生意気な、それじゃお願いします」
「それでは、丁寧に長く説明いたします」
ここから長い長い説明が始まるのである。
つづく。