説明の前にまずは二人の軽い自己紹介から始めた。
ナマエル 天使の中でも最高位の熾天使。生を司る極めて稀な性質をもつ。
サタナ・スピリア 魔界を統べる大魔王。かつてカズキが倒した魔界最強の魔王の孫。
「サタナ・スピリアだと!?」
「お前、まさかグラティアの……スピリア一族か」
「話す義理はないわ。ナマエル、続けて」
「それでは」
「待ってください。なんで天使と魔界の奴らが仲良くしているんですか」
話しを続けようとするナマエルに対しコムラが割って入る。なかなか度胸があるな。
「それも説明しますので、黙って聞いててもらえませんか?私、忙しいので早く天神界に戻らないといけないので」
「し、失礼しました」
なぜ天使と魔王が手を組んでいるか。それは。それは共通の敵を倒す為である。
だが、相反する組織が手を組むのは簡単ではないし、有り得ない。だから、どちらにも顔が利き、尚且つ実力を示し支配できるカズキをトップとした組織を一時的に創り皆平等という契りの元で成立しているのだ。
そしてその共通の敵、ラシン。奴は遥か昔に封印された悪魔神王ジドゥを蘇らせ世界を滅ぼし支配しようと企んでいるのだ。
そいつを倒すべく今活動している。
ざっくり説明するとこんな感じ、ナマエルの説明だと眠くなるので代わりにカズキ風の説明を貼っておく。
「ラシン……まさか、ラシン・ルイワールか」
その名前を聞いて血相を変えるメーテル。
「知っているのか」
「神伐隊二番隊隊長……あいつが!!」
「そうだ。あのゴミクズまた人様に御迷惑を御掛けしてるんだぜ?さっさと殺してやるのが人の名誉の為だ」
カズキも人相が更に恐ろしくなる。
「どんな人物なのだ」
「そこに寝てる教王にでも聞いてみろ。それより、サタナの話を聞きたい」
気絶し倒れているカルディナルを指差す。誰も何もしてやらないのは流石に同情してやる。
「そのラシンの動きが掴めた」
「でかした!続きはアジトに行って聞かせよ」
「待て待て。ここまで話してそれはないんじゃないか?」
ジャックが口を出す。
「やだよ。神の御加護が無ければ戦えないか弱きお前らの出る幕はない」
「その力は神様に与えられたものだろ。なら変わりはないはず」
カズキ自身も神の元で鍛え強く成った身だ。ほかの隊長と同じなはず。
「与えられた?ふん、習って自分のものにしたんだ。神威無しで己を高め続けた結果、人を超越した。お前らじゃわからない話さ」
指先に火、雷、風を纏わす。カセン様から頂き奪った火ノ神とヒノモトの青龍による雷の力、悲しみと絶望でなぜか使えるようになった風の力。これらはカズキが死に物狂いで手に入れた決して揺らぐ事のない確実な力だ。
「魔界は神の恩恵を受けにくい所だ。各隊長がいながらあの程度の侵略すら手こずるんじゃ足手まといだ」
神威が使えないとなれば戦力にもならない。ましてや神伐隊でもなんでもない兵士など犠牲者を増やすだけ。
「歴史に名を連ねる大戦にお前らは不要なんだよ、いくぞサタナ」
「ナマエルも来てよね。大切な話なんだから」
「全く、忙しいのですよ私」
「後で手伝ってあげるからさ」
サタナは指を鳴らすと黒いナニかが空間から現れる。
「それでは失礼します」
「あ、そうだクラウザーさん。このことワルキューレには無言でお願いしますよ、俺の大切な」
ドゴォン
「みんな 大丈夫か」
壁を斬り乱入してくる両手にガンソードを持った少女。ワルキューレだ。
「げっ、なぜこのタイミングで来る」
「!? カズキ どこへ行く」
「いくぞ、振り返るな!」
ナマエルとサタナの肩を掴み急いでその空間の中へ入ろうとする。
「両手に花だな カズキ」
しかし、気づけばカズキの襟を掴まれ引き戻されていた。
「花に見えるか?どう見ても天使と魔王だろ」
「カズキから動揺を感じる。何者かしら?」
「私も知りませんが、ただ者ではないね」
「お前ら先に行け!俺個人の問題だ、口出しを挟むな」
「これはこれはカズキのお嫁さんのワルキューレではないか」
「おいボス手前!」
「カズキの」
「お嫁さん?」
その言葉に一気に興味を引かれる二人。ワルキューレにじっと視線を当てる。
「カズキの お嫁さん」
そのワルキューレはというと顔を赤くし、和らいだ表情をしている。頬に手を当て照れている仕草が初々しい。
自負はしているが、言われ馴れてないのだろう。
「可愛い仕草してもダメ!危ないからここから離れて」
「カズキ 離れない」
「何を突っ立ってるお前ら先に行ってろ」
「へー、彼女があのワルキューレさんね」
「噂は重ね重ね聞いております」
ワルキューレに興味深々の二人は黒い空間を閉じカズキを無視して話をし始める。
「陛下、ワルキューレを呼んだのですか」
「すまない、留めるにはこの手しかなかったのだ」
手に持つ小さな四角い機械を見せながらクラウザーに謝る。
「……聡明な判断です」
「しかし瞬時に反応したメーテル殿は流石だな。あのフォローが無ければナマエル殿とサタナ殿は行かれてしまった」
既に帰る気だった二人の足を止めるには最善の一言だった。
「女子会始まった。ああなったら二人は長いぞ」
三人を見てため息をこぼしながら、ドカッと椅子にもたれこむように座るカズキ。
「さて話の続きといこうか」
その目の前に椅子を持ってきて座るメーテル。
「はー、お前らは俺に何を望んでるんだ。戦に参加せず無駄な血を流すことないのに、なにが不服なんだ。国の為を国民よ為を思え」
「我々を舐めている。それが気に入らない」
「そら舐めているだろ。神威の力無しじゃまともに戦えない。じゃなかったら魔王と天使に力を借りる前にお前らに協力を願っていたよ」
「それでも話すくらいは出来るだろ」
「無駄な死者を出す必要はない。今回の件はカセン様の命によるもの、お前らには関係がない」
「あるだろ!お前でも知ってるはずだラシンの許されざる罪を、他の隊長も同じ事を言うだろう」
「知って尚行動を起こしてないんだ。その程度の考えの奴に何を求めろと?」
本当に怒り恨み許さないのなら行動に移しているはずだ。それなのに、行動を起こしていないそんな奴らを今更宛にしろと?
「俺は違う。一度奴を殺した。首も斬った。だが奴は不死の力で蘇生し逃げやがった。そこから何度も追い今新たに情報を掴んだ……やっとチャンスを掴んだんだ。次こそきっちり殺してやる」
「あらあら、それが出会いなの?」
「よくカズキをあそこまで夢中にさせたな」
「カズキは 単純 だから忘れなくすればいい」
「その年齢で策士ね」
「おいお前ら、話は終わりだ。先に行ってろ、AZ(アズ)から後で話しを聞く」
「それじゃあ」
「決行は剣舞祭の後だ。まだやるべき事がある」
「了解。それまでに兵力を高めておくわ」
「私も準備をします。カズキさんもお願いしますね」
「任せろ。わざわざすまなかったな御足労をかけた」
「我々は部下なのですから、コキつかってください」
「仲間なんだ、一人で抱え込むなよな」
「けっ、信用しろっての」
「信用してますよ、総大将さん」
「近くまで送るよ」
「凄く助かります」
黒い空間の中に吸い込まれるように入っていく二人。
「やっと行ったな。さて解散だ!」
それを見届けると、パァンと手を叩き大きな音を出す。
「そうはいくか。カズキ、本当に戦いが始まるのか?」
テラが呼び止める。
「そうだが、お前らには関係の無い話さ。俺達が失敗したら自国を守り、神にでも祈ってろ」
「お前、この世界を守る為に戦うんだろ。なら」
「俺が戦う動機はカセン様の命と殺された友の為、今を生きてる家族と友の為だ。それ以外はない」
「お前ってやつは」
俺が守る。へそを曲げたような言い種だが、確かにそう言ってるようにテラは聞こえた。あの時聞いたリオスの顔にそっくりだった。
「滅ぼすのか守るのかどっちかにしたらどうだ?」
「別にお前らを守る為に戦うんじゃない。自分の意思だけで戦う、俺は父さん程甘くはない」
「そういう所はクニヨシそっくりだ」
「イオリの血って事だ」
「仕方ない。私達老兵はゆっくりさせてもらうよ」
「そうしててくれ。死ぬまで長生きしてろ……っても死ななそうか」
「ふん」
「もうなにもあるまい。仲間の元へ帰らせてもらう」
「カズキ 戦いって どういうこと?」
「ん?剣舞祭だよ剣舞祭。神々の御前で俺はお前に勝つ!」
ビシッと指を差し宣戦布告をする。
「 楽しみにしている」
「それじゃその時まで、またな」
Fクラス寮
「カズキさん遅いですね」
「取っ捕まって殺されたとか?」
「ありませんわ。絶対に」
「だな。またなんかやらかしてるんだろどーせ」
いつもの一室でカズキの帰りを待つ。
「それにしてもカズキが世界を滅ぼそうとするとはね」
「あぁ意外だったな。身近にある危険って感じ」
「カズキさんが世界を滅ぼすきっかけはこの社会を正したい気持ちからですわ。やり方さえ間違えなければ素晴らしい考えなのに」
「これきっかけで奴隷制度や差別を失くすことはできないかな?」
「無駄だな。国ぐるみの差別や階級ってのは反乱を抑える役割もあるんだ。底辺がいるから頑張れる、差別は民衆の意識を高められる。失くすなんてそれこそ一度無に返さないとだ」
これでも貴族出のジェルマン。
こういった制度があるおかげで守られる秩序もある。
上にいけば上の、下にいけば下の、その立場でしか見られない世界や考えがある。善だけで決められるほど簡単なものではない。
「行き過ぎるとドルツェルブみたいになるな」
「けっ、反論できねぇな!」
「カズキが滅ぼそうとするわけだ」
「じゃあ革命ですね!」
「帝国の再来だな」
「おいおい物騒な話しだな」
返り血で制服が真っ黒なカズキが戻ってきた。
「カズキさん、どうでしたの」
「あ?勿論言いくるめてきた、これでな」
ぎゅっと握る拳を笑顔で見せる。
「やはり世の中暴力なのか」
「違いねーや」
「それで、この後は何かあるのか?パーティーはどうなったんだ?」
パーティーは途中で終わり、代表達は今日中には各国の国へ帰るとのことだ。
「あと少しで剣舞祭本番ですわ。残念ですがわたくし達は復興を手伝えません」
「整地なら得意なんだがな」
「まっ、なんとかしてくれるだろ」
「それより、まともに修行できるのか?学園避難所みたいになってるけど」
「まっ、今からハードに鍛えて怪我しても仕方ないからな。そんな影響ないだろ」
「俺を代表としてこの国受け入れてくれっかな」
「何を今更。それより、何か情報はないのか?対策でも練ろうぜ」
「そうですね。ルーンブラットから出る選手達の得意魔法は」
「各隊長の神格化は、それと他の元隊員の特徴と」
「ドルツェルブのメンバーは、特殊部隊から」
「うーむ。混合チームの強みが発揮されているな」
「そうですわね」
アルガドにアニマニアにドルツェルブにルーンブラッドにヒノモト。このチームは本当に寄せ集め、その中でも異端児ばかりが集まっているなとつくづく思う。
「アルガド代表がわたくしだけというのが少しばかり悲しく思えますわ」
「そういえば、リュークはどこの出身なんだろうな」
「そういえば知りませんわ。レイカ先生もわからないと言っていましたですし」
「謎が多いな」
「何別の事話してる。作戦会議だ」
「はいはい、紅茶入れてくるので待ってくださいまし」
「あっ、手伝うぜい」
「ノートもってきます」
「早くしろよな。……テーブルの上でも片付けるか」
「少し周りの掃除でも」
作戦会議の前に各々動くのであった。
つづく